凪の気分を ~先輩の妹が何だかしつこい上に周りの女子もおかしくなってきたような~ 作:冴木甲士
文化祭が終わり、二年二組の打ち上げが行われているファミレスにて、安達・加賀見・日高は同じテーブルに固まり雑談していた。
「……黒山とリンは結局来なかった」
「まあ昨日今日と働いたり遊んだりしたしね。体調崩すこともあるよ」
「でもリンちゃん大丈夫かな……」
「黒山がいるなら大丈夫でしょ」
日高は春野が仮病であることを知っていた。
何といっても前もって黒山と春野が二人になるよう仕向けた張本人である。
だからこそ、安達と加賀見に対しては勘繰られないように気を付けていた。
「黒山君といえば、あの劇ってやっぱそういうことだよね……」
あの劇、が指す出し物について日高も加賀見も安達とすぐ同じものを連想した。
「うん、まあ……」
「あまり説明はしたくないけど、ナオミオにはそう見えたってこと」
あの劇こと岸姉妹が主演を張っていた無題の劇は、黒山をモデルにした男が主役の一人だった。
そうなるともう一人の主役である女子は、岸姉妹がモデルだろう。双子にしなかったのはあまり忠実にやり過ぎると関係ない人まで実際にあった話がもとだと感付かれたくなかったからかもしれない。
そして、あの劇が黒山の件をもとにしているのなら「周りにいる複数の女の人」とは紛れもなく自分達を指していたのだろう。
あんなの、どう見てもハーレムものの要員達にしか映らなかった。
「男子一人に女子複数人だからね。事情をろくに知らない人にはそう見えるんじゃない?」
「発想が単細胞」
「あんまり気持ちのいいもんじゃないけどね……」
加賀見の辛辣な感想に日高は思わず笑いそうになったがこらえた。
安達の方もあの劇のあの演出には思うところがあるようだ。
「まーあの劇で客の目を引くための誇張した演出ってだけかもしんないし、あんま気にしなくていーんじゃないの?」
「……うん。所詮劇は劇。ナオミオも悪意があったわけじゃないと思う」
「うん……」
あまり劇の話題を続けてもいろいろ考えそうになるため、他の文化祭の出し物はどうだったかなどの話題に移った。
葵が自宅にて黒山との通話を終えた直後。
「……アンタ、いつになったらベッドから降りるの」
「えーもうちょっとだけ」
葵は雛の部屋のベッドで寝転んでいた。
寝転びながら、黒山と通話していた。
当然、雛には筒抜けだった。
「黒山君も今日は疲れてるだろうからほどほどにしときなさい」
「はーい」
黒山のことで注意しつつもさっきの通話を止めなかったのは雛もそれなりに黒山の様子が気になるからだろうな、と葵は思った。
「それにしても、奈央ちゃんと深央ちゃんのあの劇って何を伝えたかったんだろうね」
「さあね」
奄美姉妹も日高達と同様、あの劇のモデルはすぐ見抜いていた。
「単にネタがなくて自分達のエピソードを引っ張っただけかもしれないし」
「うーん」
その線も否定しないが、別の意図もある気がする。
ただあったとしても黒山への当てこすりとかその程度の軽い理由という感じもした。
つまり、あまり気にしていても仕方ない気もした。
「次に大きい行事はクリスマスかな」
「ん……まあ、ぱっと浮かぶのはそんぐらいかな。」
少し思案顔になった雛がそう答えた。
「それがどうか……って黒山君と出かけるんだっけ」
「うん、そう」
今のところはその予定だ。
「……まあ、楽しめるといいんじゃない?」
「うん、お姉ちゃんにもお土産買ってくるよ」
「要らない」
最新話の投稿のペースについて2~3日に1回に変更したいと思います。
また、次話以降は人を選ぶかもしれない展開が続く見込なので、ご留意いただけますと幸いです。
何卒よろしくお願い致します。