凪の気分を ~先輩の妹が何だかしつこい上に周りの女子もおかしくなってきたような~   作:冴木甲士

178 / 178
第178話 子供っぽい

 とうとうこうなったか。

 というのが、俺が先程の成り行きを見て思ったことだった。

 

 件の球技大会において加賀見が日高へ宣言したことは、俺も忘れてはいなかった。

 加賀見が俺以外の人物へあれだけ怒りを露わにするのも、そうそうないことだったから。

 

 言い換えればそれだけ加賀見にとっては、友人と思っていた相手に隠し事や嘘偽りを受けるのを嫌っていたということでもあった。

 春野への配慮もあったからとは言え、今回のような俺・日高・春野が共謀して加賀見・安達に黙って()け者にするような行為が、加賀見の逆鱗に触れてもおかしくなかった。

 

 日高とて、こうなることぐらいは予期できたはずだった。

 春野がどこまでこの事態を予想できていたかは微妙だが、日高は球技大会において加賀見へじかに警告されていた。

 今回のように噓をついてまで俺らで集まって何かやっていたことが、球技大会と「似たようなこと」とみなされる恐れがあることぐらい認識していたはずだった。

 そしてそれが露見したら加賀見の堪忍袋の緒が切れることも、予想できたはずだった。

 

 にもかかわらず今回みたいなことを押して進めた辺り、日高にはよほど春野のことが大事だったようである。

 皮肉にもそれは、加賀見と安達に対して春野が日高の共犯であるという認識を植え付けるに至っただろうけど。

 

 

 安達と加賀見は案の定早退した。

 春野と日高が二人と同じクラスである以上、あの後(・・・)にクラスへ居づらかったのは想像に難くない。

 春野と日高も、あの後は別の友達の元へ移るでもなく二人で過ごし、放課後もやはり二人きりで帰っていった。

 

 俺もさて帰ろうかと下駄箱に行くと、

「……今日は一斉にか」

 葵・奈央・深央の一年女子三人が揃っていた。

「ちょっと今日は、ね」

「四人で話したいこともありますし」

「よろしくお願いしますね、胡星先輩」

「……」

 いつも通りの軽口ながら、いつもより神妙な表情の三人を見たら断りづらかった。

 

「それで、話って何だ」

 変な前置きは要らないと、さっそく本題に入ることにした。

「先輩方のことです。まず、三人でのテスト勉強をなぜ加賀見先輩と安達先輩に教えてなかったんですか?」

 葵には一学期期末テストの勉強会を開いていたことを、前もって俺らが伝えていた経緯がある。

 安達と加賀見には伝えなかったのか、と疑問を抱くのも当然といえば当然か。

 

「日高からあの二人には黙っていた方がいいって言われててな。何でかは知らん」

 日高が当時言っていた、あの二人は異様なほど仲がいいから二人きりでいさせた方がいいかも、という理由は伏せておいた。何かすごくややこしくなりそうだし。

「日高先輩から、ですか?」

「ああ」

「へー……」

 何かを考察しているらしく、葵が少し無言になる。

 

 その間に今度は深央から質問が飛ぶ。

「加賀見先輩は球技大会のことに触れてましたけど、何か特別な出来事があったんですか?」

「今年じゃなくて去年にな」

「……ひょっとして榊先輩関係で?」

 去年の王子のやらかしがすっかり伝説みたく広まっているようで、深央がすぐにそこと関連付けた。

「一応それ絡みだ」

「何があったんですか?」

 そりゃ一年達には気になるか。

「知ってどうすんだ?」

 ただ女子四人のいないところで勝手に吹聴してもいいものか判断に迷い、一年勢に念を押す。

 知ったところでお前らに何かできるのか、と。

 

「どうするかはわかりません。でも、それが今回の先輩方の仲違いにおいて重要な事柄なんですよね。ならそもそも知らないと何をしようということすら決めかねます」

 

 ……先輩相手に生意気な意見だとは思うが、深央も深央なりに真剣に考えているようだ。

「お前らも一緒か?」

 と奈央・葵に確認を取る。

「はい」

「聞きたい」

 二人とも簡潔に返事した。

「……はー、しゃーねーか」

 女子四人には後で事の仔細を一年勢へバラしたことを謝んなきゃならんのかと思うと、面倒この上なかった。

 

 

「……そんなことがあったんですね」

 俺の知っている限りの情報を渡した後、黙ってその話を聞いていた一年勢が会話を再開した。

「で、加賀見先輩にとっては今回のがそれの再来だと」

「そういうことだな」

 俺の目から見ても大差ない行為に見えたし、そこは仕方ないだろう。

 

「……これは先輩達に伝えないでほしいんですが」

「何だ?」

「先輩方、結構面倒な性格してませんか?」

 わーお。深央さん正直。

「ちょ、深央、いくら何でも失礼過ぎ」

「失礼は承知の上ですが、それでもそう思わずにはいられないです。一度相手から本気で嫌だと注意を受けておいて同じことを繰り返す日高先輩も、いくら同じことされたからっていきなり縁を切るようにその場を抜け出した加賀見先輩も。はっきり言うと子供っぽいんじゃないかと」

「「あー……」」

 奈央が最初咎めたものの、その後の深央の言は特に否定していない。葵も奈央と同じく深央の意見に同調寄りな声を上げた。

 

 まあ、率直に言ってガキだよな。

 日高にしても加賀見にしても、もうちょっと折り合ってうまくやり過ごす方法はあったんじゃないかと思う。

 今回みたく事態が決定的に拗れてしまうところなど、後輩という立場からしたらなおのこと青臭く見えるだろうな。

 

 ただ、一旦拗れたものは仕方ない。

 明日からどうなるのか、様子を見てみるとしようか。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする(作者:烏丸英)(オリジナル現代/恋愛)

尾上雄介は、ある日の休日にクラスメイトの七瀬ひよりが幼馴染の江間仁秀を問い詰めている場面に遭遇する。▼実は二人は一年前からこっそりと付き合っていたのだが、仁秀は同じ時期に他の女子とも付き合い、ひよりに二股をかけていた。▼開き直った仁秀から最低な言葉を浴びせられ、傷心のままにその場を飛び出したひよりを放っておけなかった雄介は、彼女を追って話をすることに。▼この…


総合評価:3683/評価:8.13/連載:426話/更新日時:2026年03月30日(月) 07:30 小説情報

貴方は中央トレセン学園から追放されることを希望しています。(作者:はめるん用)(原作:ウマ娘プリティーダービー)

いつの間にかウマ娘の世界に転生した貴方は、何故か身に付いていたチート能力を駆使してウマ娘のトレーナーとなり大金を得て好き勝手に生きることを思い付きます。▼そして、いざトレーナーの資格を獲得し、これから中央トレセン学園で面接が始まるというタイミングで貴方は気が付いてしまいます。▼「そもそもチートあるんだから、わざわざトレーナーになって働かなくてもよくね?」▼さ…


総合評価:90743/評価:9.2/連載:223話/更新日時:2026年05月06日(水) 21:14 小説情報

*いしのなかにいるVRMMO*(作者:鈴華 朱芽/相転移)(オリジナルSF/コメディ)

:名無しの斧使い「ログイン直後から遭難してて草」


総合評価:14510/評価:8.83/連載:45話/更新日時:2026年07月13日(月) 21:02 小説情報

転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする(作者:popoponpon)(原作:ブルーアーカイブ)

いろんな娯楽はあるけど前世の娯楽もこの世界で楽しみたい!ということでTS転生したけど諦めずに自分の好きなものを作っては皆で遊んだり、本編に絡んだりしてくる女の子、夢見モルフォのお話。


総合評価:14455/評価:8.8/連載:243話/更新日時:2026年08月10日(月) 12:00 小説情報

家事代行先は闇堕ち寸前魔法少女の家でした~貧乏一人暮らしの俺は生活力を買われて内緒の焦れ甘同棲生活を始めることになる~(作者:水瓶シロン)(オリジナル現代/恋愛)

「ぎゅって、して……?」▼「構ってくれないと闇落ちしちゃうよ……?」▼ 高校入学を機に一人暮らしを始めた『御守望』は、青春を勉強とバイトに費やすような限界貧乏生活を送っていた。▼ 幼くして両親を失っている望が頼れる人は、田舎に住む祖父母くらいだが、なるべく負担は掛けたくない。▼ そのため、睡眠時間を犠牲にして死に物狂いで勉強することによって好成績を維持し、入…


総合評価:4885/評価:8.73/連載:89話/更新日時:2026年07月03日(金) 12:07 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>