凪の気分を ~先輩の妹が何だかしつこい上に周りの女子もおかしくなってきたような~ 作:冴木甲士
「じゃあ、俺はこれで」
ここでの用事は終わった。
後はどうぞ御自由にと、空き教室の出入り口へ向かう。
「あ、待って」
春野がそんな俺を呼び止めた。
「何だ」
「あ、あの……」
言い淀む春野。何だ、何もないならもう行くぞ。
「ミユちゃんとマユちゃんのこと、ありがとうね」
いろいろと端折られた言葉が出てきた。
が、意味がわからないほど鈍感でもない。
「お礼言うぐらいなら最初からこんなのやるなよ……」
「そうだね……」
「ゴメン黒山、またお世話になっちゃった」
春野に続き日高からもお礼を言われる。あー、こういうときどう反応していいのかわからんな。
「……じゃあな」
とりあえず、この教室を出ることにした。
少しして、
「いやー、やったじゃん」
「一件落着、ですかね」
「お疲れ様です」
奈央、深央、そして葵が追い掛けてきた。
「どうだかな」
「でも貴方がここまで他人の仲介に動くなんて、意外ですね」
あーそうだな。俺もこんなのするなんてこういう事態になるまで思わなかったよ。
でもな。
「不満を溜め込んだ奴との付き合いなんて、この上なく面倒なだけなんだよ」
あんな憂鬱を帯びたような状況に置かれた女子四人と卒業まで縁が続くぐらいなら、多少手が掛かっても憂鬱の元を消し去った方がいいと思ったまでだ。
「へー。先輩方が心配とかじゃなくて、ですか?」
「そこはどうでもいい」
「そうですか」
この後、また一年勢を連れて下校という流れになった。なぜ?
後日。
二年の女子四人は、いつもより朝早くに登校していた。
今日は朝に、特別な用事があったからだ。
「おはよう……」
「お、おはよう」
第一校舎裏の、普段人が立ち寄らない場所。
そこで安達と春野が数日ぶりに挨拶を交わす。
時間にしたら短いのだろうが、本人達にとってはやけに久しぶりのことのように感じられた。
「あ、その前に、ちょっといいかな」
「何?」
日高が通学鞄から、何かを取り出した。
「これ、ミユへの誕生日プレゼント」
「え?」
安達には、サプライズで用意されたものだった。
全くの想定外でもあっただけに、喜びよりもまず戸惑いが来た。
「凜華と私で選んできたんだ。喜んでくれるといいんだけど」
「な、何で」
「いやほら、私達はパーティーにはその、来れなかったから」
「せめてプレゼントだけでもしたいなって皐月と話し合ったんだ。貰ってくれるかな?」
「そ、そう……」
「貰っとけば、ミユ」
加賀見が安達の肩を押す。
加賀見にとっても知らされてはいなかったが、安達の誕生日については自分も春野・日高に知らせていなかっただけに罪悪感が大きかった。
「そ、それじゃお言葉に甘えて……ありがとう、二人とも」
安達は日高の両手に差し出された箱を受け取った。
「それで、私達のことなんだけど……」
日高の口から、春野とともにしていた隠し事の全容が安達と加賀見に伝えられた。
「それで、どうかな? 私達のやることに協力してくれると、助かるんだけど」
加賀見は、困惑していた。
いや、少しも予想していなかったと言えば嘘になる。
しかし、あまり都合のよくない展開でもあった。
「ミユは、どう?」
加賀見は、安達の意思を確かめた。
「うん、いいと思う! 私も、力になれることがあれば言ってよ!」
安達の反応は予想以上に春野達へ協力的だった。
もう、そうとなれば、加賀見も決意を新たにしなくてはならない。
「……わかった。私も、リンとサツキに協力する」
「うん、ありがとうね、二人とも!」
「ありがとう……本当に」
こうして、四人の関係は新しい形へと発展した。
最新話の投稿のペースについて1~2日に1回に変更したいと思います。
何卒よろしくお願い致します。