凪の気分を ~先輩の妹が何だかしつこい上に周りの女子もおかしくなってきたような~ 作:冴木甲士
春野は一頻り黒山と遊んだ後、帰宅した。
今日は黒山と商店街を長いこと練り歩いた。
クリスマス当日だけに人も多く、いつもよりずっと体力を使っていた。
このままベッドに飛び込んだら、そのまま寝入ってしまいそうだった。
そんな体調のままに部屋に入ると、当たり前のように日高が待ち構えていた。
「おかえり、凜華♪」
「ただいま」
春野は休みたいところをこらえて挨拶を済ませるのに対し、日高は今にも跳ね上がりそうに体を浮き立たせていた。
「どうだった? 結果は」
「結果? あー……」
日高と計画していた
クッションを抱きながらワクワクと待ち構える日高と向かい合うような位置で自分のベッドに座り、春野は答えた。
「それね……。ちょっとやめることにした」
「え⁉」
日高が大声を上げる。
あまり気は進まないが、日高には理由を説明する必要があるだろう。
「葵ちゃん、昨日告白したんだって」
「あ、あー……」
日高も、昨日黒山と葵が二人で外出している件は把握していた。
そのため日高もある程度は想定していたのだろう。
「他の人には秘密ね。それで黒山君が葵ちゃんをフッたみたいで」
「あー、そうなんだ……」
安堵した感じに返事する日高。
「それ聞いた後で、やる気にはちょっとなれないよ……」
「そっかー……」
日高もさすがに事情が理解できたようで、これ以上追及しなかった。
葵もクリスマスの辺りに黒山と予定を取り付けていたと聞いていた時点で、そうしてくる予感がしていた。
葵の今までの黒山の対応について、好きな男性へのアプローチに見受けられるものは幾つもあったからだ。
告白までは行かずとも、何らかの勝負に出る可能性は高いと見ていた。
日高も同じ考えだったようで、先に外出することになった葵に対して黒山が告白を引き受けたらどうするか、という懸念は春野とも相談していた。
一方で、葵が告白しないこともあるかも、という可能性もあるにはあった。
それならばと当初の予定通り黒山とクリスマスにお出掛けしたわけだが、やはりそう都合よくは行かないらしい。
しかし葵には大変悪いが、黒山がフッたというのならチャンスはまだあると日高は思った。
「でも、修学旅行までにはさすがに、ね」
日高がちょうどチャンスを見出していたときに、春野が頼もしいことを宣言した。
「うん、応援してるよ。最後まで」
そう、自分は春野を応援する。
そのために、ここまで頑張ってきたんだ。
日高は胸に抱いていたクッションを、より強く締め付けた。