凪の気分を ~先輩の妹が何だかしつこい上に周りの女子もおかしくなってきたような~ 作:冴木甲士
冬休みの年明け。
俺は二年の女子四人と岸姉妹とともに、
「あけましておめでとう」
「やー、おめでと」
「おう、今年もよろしく」
今年は春野・日高が一番乗りだったらしく、俺が神社に着くと二人が待っていた。
「今年も振袖なのな」
「あ、あはは、そうなんだ……」
去年に引き続き振袖姿で新年を迎えるつもりらしい春野。
何となく新春って新しい春野の略か、などとくだらないダジャレを思いついてしまう。口にはしないけど。
「ねー。綺麗だよねー。ね、黒山」
日高が俺にやたらと催促してくる。
「ああ、綺麗だな。夕日が」
「思いっきり朝なんだけど」
「黒山君、夕日好きなの?」
「え、その話広げるの凜華?」
「朝日と夕日どっちも嫌いじゃないな」
「あ、ホントにその話題で行くんだ……」
日高がなぜか春野と俺の会話にツッコミをしている間に、見慣れた二人の影が確認できた。
「あ、ミユマユだ。おーい」
「ミユちゃんも振袖だね」
「ああ。去年も同じか。加賀見の方も」
安達も春野と同様振袖姿だが、安達のは藍色の寒色系に対し、春野はピンクや赤を織り交ぜた明るい色合いとなっており対照的だった。
加賀見はいつもと変わらない私服姿。ファッション性よりも動きやすさと防寒に重点を置いたのだろうコートとジーパンの服装が実年齢より幼い感じを強調していた。
「黒山君も、マユちゃんのいつもと違う姿見てみたいとか思ったりするの?」
春野のよくわからない質問に対して、
「いやできれば二度と姿を見たくないというか」
「あはは……もう、ダメだよ、黒山君」
つい正直な答えを返す。
そんな話をしているうちに加賀見と安達が俺達の近くまでやって来たが、
「ねえ、黒山。何か誰かのことを二度と見たくないとか言わなかった?」
地獄耳らしき加賀見より、詰問がなされた。
「俺じゃないぞ、岸姉妹がお前のことを二度と見たくないって話してたような話さなかったようなと」
「多分言ってない」
「うん、言ってないよそれ」
加賀見の否定に合わせるように春野が同意する。おい春野お前。
「これで残すはナオミオだね」
「うん。二人が来るまでに黒山の処分方法を考えないと」
こうして俺は加賀見の対処方法を考えないといけなくなった。
何とかかんとか加賀見に許してもらった俺は、この後に着いた岸姉妹と合流し、改めて境内に入る。
この前春野とともに訪れた神社とは違い人の賑わうこの神社は、人という人で埋まっていた。
それ以外は普段通りの冬服という具合で揃い、神社の行列に並んでいた。
「それにしても葵さんが来ないのは意外でしたね」
「葵も友人多いわけだし、今回はそっち優先したんでしょ」
そう、葵はこの場におらず「友達と先約あるから」と別の神社に行ってるらしい。
その後も姉の合格祈願などに付き合うらしく、冬休みの間は俺らと会うことはなさそうだ。
ちなみに二年の女子四人は固まってずっと会話している。
去年のいざこざの後、何だかますます親密になったようで、今日も正月の話題で盛り上がっていた。
「先生、どうかされましたか」
「ん? いや別に」
俺はその四人の後ろに立ち、同じく後ろに並ぶ岸姉妹の相手をしていた。
「そうですか。何か真剣に考えてるように見受けられましたので」
「そうか?」
いつもの通りに振る舞ってたんだけどな。
「去年のうちに何か変なことでもあった?」
奈央も俺のことを追及してくる。
「いや特には」
春野には話してしまったが、クリスマスに葵から告白を受けた件など基本口外しない。
そもそも春野と葵とクリスマスに出掛けたこと自体も他に話してないし、これなら詮索されても白を切って終わりだ。
「ふーん……」
奈央もこれ以上のことは聞いてこなかった。
しかし、
「妙なことにならないといいんですが」
深央の思わせぶりな言葉が、今年の一日目の中で一番印象に残った。