凪の気分を ~先輩の妹が何だかしつこい上に周りの女子もおかしくなってきたような~ 作:冴木甲士
加賀見は九陽高校に入って間もなく、一つの目標ができた。
二年近く経った今まで、ずっと心掛けている目標が。
それは、加賀見が入学しておよそ1ヶ月半後に起こった。
黒山に騙されて校舎裏に誘き寄せられ、そこで初めて会った、安達という女子。
後に加賀見にとって無二の親友となる安達を、いきなり紹介されたのだった。
黒山は加賀見と安達を引き合わせた後、自身の用事は済んだとばかりにさっさとその場を去っていった。
当時の加賀見はそいつに孤独であることを友達を欲していると決めつけられ、知らない人を友達にいきなり宛がわれたことを屈辱に感じて黒山への怒りに燃えていた。
その一方で、黒山への仕返しに、加賀見と似た状況である安達に協力を取り付けた。
そこで加賀見が聞いた安達の協力する理由が、
「それに、私も黒山君と話すのが楽しいから」
とのことだった。
「黒山君はさ、私と離れたがってるしここまで煙たがられるのも正直ショックだけどさ。係の仕事で私から話しかけても返ってくるのはふざけたことばっかだけどさ。私にとってはそんな日々がすごく面白かった。だから、こんな所で黒山君との関係を終わりにするつもりはないんだ」
そこまで言うと安達は加賀見に頭を下げる。
「改めて、あなたを私達の事情に勝手に巻き込んでごめんなさい。そして私からもお願いします。黒山君とこれからも関わりたいので、あなたの黒山君への仕返しに協力させてください」
加賀見はここまで聞いて、気になったことをついぶつけた。
「黒山って男のことが、好きってこと?」
「へ?」
安達は意外の感に打たれたように呆けた返事をした。
「ん-と、異性として好きって意味じゃないなら、そうなるのかな」
どうやら安達は、単に黒山に友情じみたものを覚えているだけのようだった。
当時の加賀見にとってはここで恋愛感情とか見せられても面倒なだけだったので、都合が良かった。
それともう一つ、加賀見には重大な疑問があった。
「アイツと一緒にいたいだけなら、私に協力する必要は無いんじゃないの?」
「私、自分一人だけで行動を起こすのがどうにも苦手で。これまでは係の仕事のときだけ何とか喋ることはできたけど、今日の黒山君の行動を考えると、今まで以上に避けられそうで。だから、できれば加賀見さんの力を借りて黒山君と関わる言い訳を作りたいの」
何とも不器用な理由だと、加賀見は思った。
でも、あれだけ自分を避けている奴と一緒にいたいから、他人がソイツへ復讐するのを協力する、か。
確かにソイツのことが好きなのか嫌いなのかよくわからないね。
そう思うと、加賀見はふとおかしくなった。
だから、後に黒山が加賀見へ発した黒山への仕返しに安達を巻き込むなという発言には、頭に血が昇った。
安達は黒山ともっと一緒にいたいから、加賀見に協力してくれた。
安達の黒山に対する気持ちを何も知らない癖に、彼女の気持ちを蔑ろにするような態度を見て、加賀見は心の底から怒りがこみ上げていた。
――いっそ、安達と黒山が離れ離れにならないように私が二人を徹底して繋いでいくか。
一方で黒山には私をここまで巻き込み、安達を遠ざけようとしたツケを払ってもらう。
加賀見のそんな気持ちが確固たるものに変わった瞬間は、今でも忘れていない。
いないからこそ、春野と日高の
加賀見の目標に気付いていない安達は二人の願いを当然快諾した。
したがって、加賀見の考えも当初から一部転換せざるを得なくなった。
――黒山と安達を
それなら春野達の思惑とも衝突はしないし、問題ないはず。
安達自身も加賀見の見た限り、黒山へ未だに恋愛感情を抱いているようには見えないし、ちょうどいいのではないか。
目標を新たにした加賀見は、ベンチで雑談する黒山と安達をぼうっと見てこの後どう行動するのが最適かを考えていた。