凪の気分を ~先輩の妹が何だかしつこい上に周りの女子もおかしくなってきたような~   作:冴木甲士

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第065話 あの二人は

「ねえ凛華、言いにくいんだけど」

「どうしたの?」

「今回のテスト勉強は黒山と私達二人だけでやらせてもらえないかな」

「え……」

 日高家の一室、テスト勉強会を開くと決まった後日に春野と日高の二人が過ごしていたところ、日高がテスト勉強についてそんな提案をしてきた。

 

 エアコンから出る風を妙に涼しく感じつつ、春野は日高に返事をした。

「えーと、ミユちゃんとマユちゃんは呼ばないってこと?」

「そう」

 日高が短く言葉を切る。

「いつも五人で勉強してたのに……」

「うん、私もできればいつもみたくって思うけど……」

 日高は手でクッションを押したり引いたりしていた。視線は春野でなくクッションの方にあった。

 

「でも、それ以上に凛華の願いを叶えたい」

 

 日高がクッションを手で思いきり押し潰した。

「皐月……」

「だから今回のテスト勉強の機会もしっかり利用する。そうでもしないとムリだと思う」

 皐月がクッションから手を離し、春野の方へ顔を向けた。

 

「そうなるとミユマユを巻き込めない。二人でそう決めたじゃん」

 以前春野の願いを成就するためにどうするのかを打ち合わせたとき、安達と加賀見には極力関与させないという方針となった。

 春野の願いを叶えるために動くというのは春野と日高の勝手な都合であり、そういう都合で友達に迷惑を掛けたくないからだ。安達と加賀見だけでなくもちろん他の友達にも事情は一切話していない。

 

 それに多くの人を関わらせたらそれだけ露見する可能性は上がる。

 別に自分達の友人を信用していないわけではないが何かの機会でうっかり口を滑らすのは人間だしあり得ることだと思った。

 

 そうなると基本的には安達にも加賀見にも春野と日高の事情がバレないように事を進めなければならない。

 一方、毎度安達と加賀見を誘わない口実を用意するのも手間でありムリが起きやすい。

「それで、前回のお出掛けと同じでテスト勉強も内緒で」

 必然的に黒山・春野・日高の三人だけのイベントは内緒にするという方針で動くようになった。

 

「……それで大丈夫なのかな」

 春野にとってはそんなことをしてもいつかバレるんじゃないかという不安が残っていた。

 そして事が安達と加賀見に露見したときにどんな事態が起こるのか気が気でなかった。

「うん、バレたらまずいよ」

 以前日高は似たようなことを安達と加賀見の二人に対してやらかし、それで二人に釘を刺されていた。

 その状況で今度のことが二人にバレたら相応の報いを受けるだろう。

 

「ねえ、皐月」

「ここまで来たらとことん行こうよ、凛華」

 だがもう事態は動いているのだ。

 今更引くつもりはないし、バレたときはバレたときだ。

 今は自分達のやりたいことに向かって進むのみである。

 黒山がかつてそうしていたように。

 

「……」

 春野は日高に協力を仰いでいる手前、日高をこれ以上強く抑えることができなかった。

 

 

 黒山・春野・日高が期末テストの勉強会を催していた日のこと。

 安達と加賀見は安達家の一室で寛いでいた。

 二人ともテスト勉強は粗方済んでおり、今日は箸休めに二人で会うことになったのだ。

 

「マユちゃん」

「ん?」

 加賀見は安達のベッドの上に腰を下ろして英語の単語帳をペラペラ(めく)っていた。

 そこに対面で机近くの椅子に座りながらスマホを見ていた安達に突然話し掛けられ、どうしたんだろうと少し構えた。

 

「最近、リンちゃんやサッちゃんと遊ぶ機会少なくなった気がしない?」

 話題は加賀見自身も薄々感じていたことだった。

「うん、ここ1ヶ月ぐらいは特に」

「まー私達より友達多いから仕方ないかもだけど」

 春野・日高は顔が広く一年のときからの友達と今でも交流がある。

 安達・加賀見にとっての友人は黒山・春野・日高……最近では葵ぐらいであり、他はもっぱらこの二人だけで遊んでいた。

 

「でも、他の友達との先約で断るっていうのが段々増えた気がする」

「確かに」

 一年のときでもそういうことは時々あったが、それが気になるぐらい多いなんていうのは感じたこともなかった。

 

 とはいえその背景は何なのか、と考えると

「……私達のこと、鬱陶しくなってきたのかな」

 安達が悲観的になってしまうので加賀見としてはあまり触れずにいたのだが、どうやらそうも行かなくなった。

「大丈夫、ミユ。あの二人はそんな性格じゃない」

 加賀見はそう信じている。

 

 一つは、一年近くの交流で二人の性格をそれなりに知っているから。

 もう一つは、自身もそうであってほしいという願望によるもの。

 

 加賀見自身、あの二人から疎まれているというのはあまり考えたいものではなかった。

「……うん、そうだよね」

 安達も素直に加賀見に同意した。

 安達もまた、春野や日高から避けられているんじゃないかという不安を少しでも和らげたかった。

 

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