大した期待もしないままやってきた今回の夢。昨日と変わらず檻の中だ。
「…D-3351。仕事の時間だ、ついてこい。」
今回の警備員は他のやつよりは背が低い…いや日本人の俺と同じくらいだ。意外とSCP財団は多国籍なのだろうか。
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「中に入ったら、ねえ…博士から指示が出る。それに従え。」
一瞬変な口調だったが素はフランクな人なのか?
とりあえず、一歩二歩と歩みを進めると背後のドアが閉じた。逃げられないという訳か。
『___ん、んんっ!あーあー、マイクテスマイクテス…私の声が聞こえるかい?D-3351、もとい西原由クン?』
背後の後は頭上か、そんなことを考えてたからか、それとも夢の中では一度も本名で呼ばれたことがなかったからかとてつもなく衝撃が走った。今西原由と呼んだか?
『フフフ…驚いているようだね。まぁ無理もない、なにせキミは私に名前を言っていないからね。別に特定したとかではないから学校の個人情報の流失の心配はしないでくれたまえ。』
学校とか、声色に合わない話し方の癖で気が付いたが、この声まさか魔女か?それなら合点がいく、確かに俺はあの人に名前を言っていない。それなら何故?流失していないとは言うが尚更わからない…
『まぁ細かいことはまた明日にでも話そうじゃないか。今は時間が押している。何せ無断なものでね。さ、実験を始めようか。』
「あの!実験って何ですか!!何が、無断なんですか!!」
俺の声はもう聴く気はないのかスピーカーからは一切音がしない。
その代わりのように部屋の隅にある布がかかった小さな檻から鍵が外れた音がした。
とてつもなく気にはなるが、昨日の夢が散々だったためとてつもなく近づきたくない。そう心の底から思って、警戒しながら檻の方をじっと見ているといきなりオレンジ色の何かが頭上に飛んで行った。なんだ今のは!?
少しも考える時間がなく呆気に取られていた俺は一瞬でオレンジ色の何かに纏わりつかれた。少し手を握ってみてわかったがコレは…スライム?
「ごぽごぽ…くぅくぅ」
スライムが鳴いた!?しかもこのスライムめちゃくちゃ良い匂いがする、この匂いは…洗いたての服?
色々なことを頭の中で処理していると少しずつくすぐったい感覚が出てきた。
「ふっふふっ、おいっやめ、やめろって、なにしだすんだよ。ちょ、ぐふっ、ははっ!あはははは!!!ほんとにくすぐった!!やめろってば!!!」
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「ぜぇ…はぁ…何なんだよ…おまえぇ…ふふっ…ぐふっ」
結局1時間たったのちにあのスライムから解放された。スライムは寝っ転がっている俺を小さいくせに見下ろす。どっちが上かわからせられている気分だ。
『__お疲れ様由クン。気分はよいかい?』
「あー、あ、まぁ…最初よりは幾分…いいかなって感じ…すね」
『そうかいそうかい、それはよかおいっ!直ちに実験を中止して出てこい!あぁ、気づかれたか…』
スピーカーから壁だか扉だかを強く叩く音が聞こる、それと怒声。魔女が先程無断だと言っていたがそのツケが回っているのだろうか。
『キョウ、由クンを頼むよ、なるべく怖がらせるんじゃないよ由クン、放課後に部室にまた来てくれ。そして今、目をつぶってくれ、大丈夫君を傷つけることはしないさ。』
正直信じられないが、おとなしく目をつぶる。
まず耳に入るのは機械音、扉が開かれたのだろう。その次に足音、重いブーツの音だってことがわかる。そして銃の音、走り出す合図の音。
「…傷つけないって言ったのに」
ゆっくりと目を開ける。景色は変わって、いや戻って? とにかく自分の部屋だ。安心感がすごい。
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「はぁ…」
ため息が出た。色々とダルい。でも興味はあるからか、早くに行っても放課後集合なので意味はないのだが、いつもより早めに学校に着いてしまった。
「おはよう、どうだった?オカルト部は」
教室には佐藤君だけがいた、佐藤君って結構早めに来るんだ。
「あぁ…おはよう、佐藤君。オカルト部は…色々あったよ、うん」
ほんとうに色々とあった。ほんとうに。
「だろうね」
だろうね?なんか引っかかる言い方だ…そういえば、佐藤君はなんでオカルト部を知っているんだろ…?
「あの、佐藤君」
「どうした?」
「あのさ、佐藤君って、実はオカルト部の部員だったりするの…?」
「は?違うよ…俺あーゆうの興味ないし…アイツと一緒にいたくないし…」
「アイツ?アイツって誰?」
「…部長だよ、オカルト部の部長。俺、アイツのことが嫌いなんだよ…」
「そうだったんだ…、って嫌いな人がいる部活に俺誘ったの!?」
「あー、それはごめん。でもアイツくらいしか解決できないと思ったから…」
そう話していると教室の前方の扉が音を立てて開く、俺と佐藤君以外の人がいない教室にはよく響く、響きすぎて俺達両方の肩が勢い良く跳ねた。
「あれ、西原さん、佐藤さん、おはようございます〜。お二人共早いんですね〜」
春奈先生だった、今日もよく伸びた語尾だ。
「あ、丁度良かった。佐藤さん、これ。今月の部費です、来週までに支払いお願いしますね〜」
「はい、わかりました」
春奈先生の手は細くて白くて綺麗だが、手首の方に少し焼けた跡がある。化学基礎を教えてきた形跡なのか、それとも科学部顧問の紋章なのか。もしくはどちらもの可能性がある。ただわかるのは、見ていてあまりいい気はしないということだ。
春奈先生の手から佐藤君の手へと渡された茶色の封筒の名前欄には佐藤 京と記されている。
「さとう、けい?」
「違うよ、けいじゃなくてキョウ。クラスメイトの名前間違えるとかサイテー」
「え!?いや、そんなつもりじゃ、えっと、ごっごめん!!」
「いいよ、でもこれでチャラにしてね、オカルト部誘ったの」
…佐藤君って案外冗談とか言う性格だったんだ。なんというか、印象がとても変わる。佐藤君が授業の班活動以外で友達と喋ってる所とかみたことないし、余計にだ。
「…なんか失礼なこと考えてる?」
「えっ、いやいや!そんなことないよ!ただ…」
俺が言葉を詰まらせると佐藤君がジッとコチラを見つめる。見つめるというか、睨む寄りかもしれないが。というか佐藤君の目って、明るい茶色なんだ。目に注目すると幼い感じがあるな…
「ただ…何?」
「ただ…その、なかよくなった証に名前で読んでいいかなって!」
「仲良く…名前呼びって許可制だっけ? ま、いいよ由。」
「へへっ、ありがとう京くん!」
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オレンジ色の動くスライム↓
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