夢見がちなオカルト部   作:晴れのち曇りのち雨

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SCP-999

 

「やぁやぁ、いらっしゃい由クン!」

「どうも…。」

 

あっという間に時が流れて、放課後だ。今はまだ夏だから空はオレンジではない。オレンジで昨晩の夢を思い出す。本当にあれは何なのか、魔女からさっさと説明してもらおう。

 

「んふんふ、気になって仕方がない様子だね由クン。」

「はい、まぁ。」

「それじゃあ、早速教えてあげよう! あのスライムはSCP-999、くすぐりオバケと言われているんだ。」

「どういったSCiPなんですか?」

 

あの夢から想像すると、最後撃たれたということはよほど重要性があるヤツなのだろうな。じゃないと、死に損だ。

 

「このSCiPはその名の通り、対象が満足するまでくすぐりをしてくるSCiPだよ。」

 

…あたりに少しだけ静寂が訪れる。

 

「え、あ、へぇ…。」

「今君それだけ?とか考えただろ。」

 

図星だ、喉から思わず「はい」の「は」まで出てきた。

 

「君は正直だなぁ、まぁ正直なのは嫌いじゃない! 説明に戻るが、このSCiPは財団の中でも安全、無害、なんならこちらを助けてくれる完全善良なSCiPなんだ。」

「SCP財団って、そういう安全なSCiPの記事もあるんですね。」

「あるというより、いるの方が私的には満足するんだが…、あ、財団はあくまで異常存在の確保収容保護が目的だからね、意志をもって動くオレンジ色のスライムなんて本とかゲームの中くらいしかいないだろ?」

 

なるほど、たしかに納得がいく。

 

「SCP-999は、自由に形を変えることができるし、対象者の好みに合わせたにおいを出すことも可能で、触れるだけで多幸感がでるし、もーとにかくストレス発散に向いていて…。」

「あの、さっきから思ってたんですけど、対象者って?」

「あぁ、説明していなかったかな? 対象者というのは、くすぐりレスリング…君の夢で行われたあのくすぐり天国だよ、その被害者…とは言いたくないのだが、そいつだ。誰でも対象になるのだが、心が傷ついていたり、不幸な人によく関心を向けているね。」

「あー、なるほど。」

 

思い当たる節しかないな。ストレスに関して。

 

「うーん、ほかにも説明したいことはあるのだが…スマホとかあるかい?」

「ありますけど…。」

「おぉ! ならいいんだ。それでSCP-999と調べてごらん。きっと出てくるはずだから。やっぱりSCP界隈は自分の目で報告書を見ることに意味があると思うのだよ私は。」

「は、はぁ…。」

 

帰り道にでも見ようかな、なんて考えている間に目の前に座っている魔女はソファから動き出す。

 

「あと、きみSNSとかメールとかやってるかい? よかったら交換してほしいんだ。」

「え!?」

 

そこそこでかい声が出てしまった、まさかそんなこと言われると思っていなかったのだ、誰だってこの夢は治らないだなんて見捨てられたら今回限りで関わるのは終わりだと思うだろ!

 

「あ、いや、だったかい?」

「いや。」

「お願いだよ! 君みたいな面白い人いないし、何しろ君の夢をもっと聞いてみていたいんだ! なるべく安全な仕事ふってあげるし、夢から起きる時もいたくないようにするから!」

「いや、全然大丈夫!大丈夫です!! 交換しましょう!!」

 

自分よりはるかに小さい女子が泣き出しそうになって、思わず了承してしまった…、う、またストレスが…。

 

「え、え。え! いいのかい!! やっ、やったー!! これっこれ私のQRだ!」

「はいはい…読み取ります、読み取りますから動かさないでください…。」

 

読み取って、プロフィールが画面いっぱいに映し出される。名前の欄には舞と書かれていて、背景は空がきれいな、花にとまった蝶々の写真だった。そういえば、初めて名前知ったな。見かけによらずかわいい名前だ。

 

試しに、スタンプを送ってみる。自分がよく見るファンタジー漫画のスタンプだ、最近アニメ化された。

 

「お、ぉ。えっと、どうやるんだったけ…。」

「どうしました?」

「いや、えっと私もスタンプで返したいのだが…どこを押したらできるのだったっけ?」

 

マジか。スタンプのやり方がわからない人って現代にいるのか。あんまりスマホいじらないのだろうか?

 

「この顔のマーク押したら開けますよ。」

「おぉ!感謝するよ由クン!」

 

そう言われ、どんなスタンプを持っているのか気になって舞先輩のスマホをちらっと見てみた。初期スタンプしかなかった。まぁそんな気はしたのだが、なんというか意外だ。

 

「んふ、んふふ…。」

 

さっきの涙が嘘みたいに干からびて、口がいびつに曲がっている。まぁ喜んでいるみたいでよかった。

 

「てか、あの聞きたいことあるんすけど。どうやって先輩は俺の夢出てきたんですか?」

「せんっ…んふふ、そういえば説明をしていなかったね…。私が由クンの夢に出てきた理由、それは…。」

「それは…?」

 

またもやあたりに静寂が訪れる。先ほどとは違って緊張感がある。この間までオカルト的なことは興味なんてなかったくせに、めちゃくちゃに気になってしまっている。自分は案外、こういうのに騙されやすいのかもしれない。将来気を付けなくては。

 

 

 

 

「それは、わからない。」

「は?????」

 

めちゃくちゃデカい声が出た。ガチで?ここまでためといて??

 

「まぁまぁ、残念がらないでくれ。わからないものは解明するのが我々オカルト部の役目なのでね。」

「我々って、俺入ってますそれ?」

「いや、入れてるつもりはなかったのだが、入れて話してもいいなら全然話すが。」

「大丈夫です。」

「つれないなぁ~。まぁ、私の自認では、私がSCP財団の職員になっている夢を見たのが君より前なのだよ。だからどちらかといえば君が私の夢に入っているの方が説明は適しているのだよね。まぁそんなことはどうでもいいな。とにかく、私たちが何らかの形で同じ夢を見ているのは確かだ。そして目が覚めたら死んだときや気絶した時についた傷が現実にも反映されるのも確か。あぁ、なんて面白いのだろうか。由クンもそう思うだろう?」

「まぁ…はい? ちょっとだけ、面白いと思いますけど。」

「おや!君は話が分かるねぇ、家の弟とは違うなぁ~。」

 

へぇ、魔女に弟がいるのか。

 

「え!?弟いるんすか!?」

「うん?いるぞ。君と同い年の弟が一人な。」

「へ、へぇ~…。」

 

なんというか意外だ、てっきり一人っ子なのかと思っていた。人は見かけによらないな本当に。

 

「他に聞きたいことはあるかい?」

「え、う~ん、とくには…?」

「そうかい、んふふ、なぁ、由クン。本当にこの部に入る気はないのかい?」

「ちょっと、ない…ですね。陸上部の方があるんで。」

「別に好きな時に、好きなことを話すだけだよ。それで放課後とか休み時間にオカルト的なこと調べたり、体験してみたりするだけ、実際に部員の一人は美術部と兼部してる!」

 

オカルト部の部員って2人だけだよな、しかも舞先輩合わせて。今日や昨日の部活だって見かけていないし、幽霊部員じゃないかほぼ。

 

「あー、テスト、テストとか兼部してるとちょっとつらいじゃないですか。落とすわけには行けないっす、成績。」

「おや!成績が心配かい? それなら大丈夫! 私の親友に頭が良くて教え上手な奴がいるんだ! 今度紹介するよ!」

「え、いいんですか。あっいや。やっぱ大丈夫っす。」

「遠慮しないでくれ、部活に入らないからといって紹介しないわけではないよ!」

「え、あぁ、えぇ…?」

 

善意なのか?悪意なのか?どっちだ?どっちなんだ??

 

「無理にとは言わないさ、ただ少しでも気が変わっり、相談したいことがあったなら私に話してみてくれ、なに、後悔はさせないさ! なんてったって、君は大切な後輩だからね!」

 

…すごくキラキラしてる、今までは少し君が悪い感じだったのが嘘みたいにキラキラしてる。怖い。すごく怖い。そして罪悪感も湧いて出てくる。つらい。

 

「…考えておきます。」

「いい返事だ!!」

 

 

「それじゃ、また。」

「おっ、おぉ! またな!由クン!」

 

下校のチャイムが鳴る15分前に今日はお暇をすることにした。SCPやSCP以外のオカルト話を延々と聞かされたがために疲労感がすごい。しばらくオカルト話は聞きたくないなと思ったが、今日もきっとあの夢を見るんだろうな。

 

コツ、コツ、コツ

 

そんなこと考えていると、自分以外の足音が聞こえる。

舞先輩かと思ったが、扉の音は聞こえていなかった。

そして、音は階段から聞こえる。

 

「…。」

 

めっっっちゃ怖い。さっきこの状況に似た都市伝説の話を聞いてしまったがためにすごく怖い。体が無意識的に力む。

 

コツ、コツ、コツ

 

だんだんと音が大きく、近づいている。

 

コツ、コツ、コツ

 

音は、すぐそこの踊り場から聞こえる。

目が離せない、オバケが出てくるであろうところから。

音は、止まらずに、曲がり角にまで近づいて、そして

 

「うわあーーーっっっ!!!! …あ?」

「うおっ、何」

 

曲がり角から出てきたのは、京くんだった。京くんは自分に比べてめちゃくちゃ反応が薄い声をあげた。なんというか敗北感がある。

 

「いやっ、オバケかと思って…。」

「オバケぇ…? あ、あー、オカルト部行ってたのか。」

「うん、もう帰るところだけどね…っていうか京くんはここに何しに?」

「あー…お迎えだよ。」

「誰の?」

「…ねぇちゃん。」

「えっ、京くん姉さんいるの? なんて名前?」

「舞。」

「え。」

「佐藤舞。この学校では魔女なんて言われてる。オカルト部の部長。」

 

 

「うるせぇよ、そんな驚かなくてもいいだろ…。」

「いやっ!いやだって!!そんな話一回も聞いたことなかったし!!」

「…言ってなかったっけ?」

「行ってないね一言も!!」

「あー、じゃあ、ついでに言っとくけど昨日の夢あるだろ?」

「うん…うん?」

「それで、夢の最後、お前に向かって銃撃ったヤツいただろ?」

「ちょっとまって、なんで夢の内容知ってるの? てかイヤな予感するんだけど。」

「アレ俺ね。」

「待ってって言ったよね??」

「びっくりしてる間に言っとくのがいいかなって。」

「色々ツッコミたいんだけど…京くんも同じ夢見れるんだね?」

「うん、入学あたりに見れるようになった。ちなみにねぇちゃんも入学あたりから見れるようになってた。その時、朝起きたらすげー騒いでんの。めちゃくちゃ笑えるよな。案の定頭の病院連れてかれて、異常なし。マジで笑える。」

「ごめん京くん、情報量多い。一回の会話で処理できる情報量じゃないよ。」

「あ、ごめん。」

「いいよ、とりあえず。舞先輩が京くんのお姉さんで、京くんが舞先輩の弟ってことでいい?」

「後半全然聞いてなかったの? いいよそれで。てか舞先輩って笑える、魔女とか、舞とかでいいのに。」

「えっ、いやもう流石にでしょ。」

「…んじゃ、俺迎えに行ってくるから、また明日…いや今日の夜? まぁまたな。」

「うん、またね。次は殺さないでね。」

「いやあれ殺してないし、気絶だから。麻酔銃。てか気絶か殺すかしないと夢から覚めねーんだよ。」

 

そう言ってお互いに手を振って別々の方向を向く。今日はどんな夢をみるのだろうか。

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