「よぉ。」
「うわっ、ビックリした、えっとおはようございます…。」
ベッドで眠りにつき目が覚めたらまたもや牢屋だった。今まで見た景色と違うところは檻の前で警備員がヤンキー座りしているところだろうか。
「あ、なんか勘違いしてない? 俺、俺だよ、京。」
「あ、京くんか。ごめん勘違いしてた…。」
「サイテー、俺の名前だけじゃなくて声も忘れちゃったの?」
「しょ、しょうがないじゃん!京くん今口元隠れてるんだから声がくぐもって聞こえるんだって!」
「ジョーダンだよ、ジョーダン。」
昨日からわかったが…京くんって意外と冗談が好きなんだと思う。休み時間では誰とも話さず机に突っ伏しているから、まともに喋ったことがなかったけど…想像してた性格とは違ったな。“人は見かけによらない”とはまさにこのことなんだと思う。
「というか、何で?何で座ってるの?めちゃくちゃラフに話しかけるし、変な目で見られない?そういうの…。」
「今昼食の時間なんだよね、だから周りに人はいない、監視カメラは舞が何とかしてるらしい。」
「何とかって…何?」
「俺がねえちゃんのやってること知ってる訳なくない?本人に聞いて、俺は何も知らない、興味もない。」
これも昨日からわかったが、京くんって舞先輩のことが嫌いなんだろうな…だろうなっていうか、本人も朝に言ってたなそういえば。
「ごめん、そりゃそうだね、明日にでも聞いてみるよ。」
「わかれば、いいよ。うん。」
「そういえば、今日もSCiPの実験?に参加するの?俺。」
「多分な、俺はそういうの提案できないからわからん。多分舞が実験を考えてると思うよ。流石にトラウマ与えるような奴とはまだ出会わせないと思うから安心しな。」
「…“まだ”?」
「まだ。」
「まだかぁ…まじかぁ…。」
「ワンちゃん今日だけどな。」
「なんで怖い話するの?」
「好きだろ?」
「そんな訳!」
「じゃあなんで舞の話聞いてたの?SCPの話ならともかく都市伝説とかの話もしてたらしいじゃん。」
「…」
何も言えなくなった、俺意外と口論弱いのかもしれない。
かなりウザいドヤ顔をしてる京くんとそれを睨む俺でしばしの沈黙が流れる。
その沈黙が着信音でかき消される。どっかで聞いたことある着信音だと思ったら、アニメのOPテーマだ。舞先輩に送った例のスタンプの作品。京くんも好きなのか。
「ごめんちょっと電話出る…はい、もしもし…、…?あぁ、なんだ舞か…。いや、そりゃそうか。んで?どした?あ、実験?場所は?由も必要?おっけー、んじゃもういい?おう、じゃあな。」
電話にしては、とても短い通話だったな…。もしや、俺が考えている京くんの舞先輩嫌いとは程度がちょっと違うのだろうか。
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「それじゃ、今から車乗るからこの目隠しとヘッドフォンして。」
「わかった…てかほんとに誰もいないね。」
「ここはDクラス職員くらいしかいない棟だからな。特に人間がするべき警備はないんだよ、機械が進化してるからさぁ、警備もお任せってわけ、例え一人二人逃げても、逃げ切りは無理だし。」
「なるほど…?」
京から目隠しと音楽が流れるヘッドフォンを渡される。この音楽は例のアニメのEDテーマだ。人間が不必要な警備って凄いな…相当高性能なんだろうか、もしくは人手不足?どうやら、人が儚く消えていく場所みたいだし。まぁ理由は一つではないかもしれないけど。
真っ暗闇の中、推定京の手を握りながら段差を上る。もう車の中なのだろうか。視覚と聴覚が縛られるとこうも怖いのか、知りたくなかった。
そんなこと考えているとヘッドフォンが外される、今いいところだったのだけど…というか外していいのか?
「いいの?怒られない?」
「怒られない怒られない、目隠しも取っていいよ、どうせ運転手もAIだし、この車に乗ってるの俺と由だけだし。」
「そっか…、あ、そういえばさっきのさ、■■■■■のED曲だよね?」
「えっ、知ってんの。」
「知ってるよ、いいよね■■■■■、俺まだアニメは追いきれてないんだけどさ、漫画は全部見てる。」
「マジ?誰推し?」
「俺はやっぱヒロインの■■かなぁ、ギャップ萌えっていうの?」
「うわ、わかる。」
「京くんは?」
「俺は敵側なんだけどさ、■■様が好き。」
「いいよね~!!めっちゃ美人だし何より声がいい!」
「■■様の声優さんほんとに神で、□□□の〇〇ちゃんの声もやってんの、あ知ってる?□□□」
「ほんのちょっとだけ見たことあるけどそこまで詳しくないんだよね~、でも同じ声優さん出るんだ。今度再放送とかあったら見ようかな。」
「マジおすすめだから見な。」
「見る見る、他にオススメアニメとかある?最近暇だから暇つぶすために見るわ」
「…」
そこでまたもや沈黙が流れる、アレ、なんか気に触わっちゃったかな、結構楽し気に話してたんだけど…いや、すっごい熟考しているだけかもしれない。でもこのタイミングの無言はちょっと怖い!
「由ってさ、意外とフレンドリー…だよな。」
「…え?」
「いや、なんというか、由って1軍感あるっていうか。男女分け隔てなく話してるし、放課後とかよく遊びに行ってる話聞くし。俺みたいな陰キャなやつとは関わらないのかなって。なんなら嫌ってんのかなって。」
「え!?そんなこと思ったことないよ!」
「だろうね。だから、なんというかちょっと…申し訳ないというか、そういう偏見持ったこと…ごめん。」
「いや、謝らなくていいよ。てかそれだったら俺も京くんのこと意外だったよ。」
「え。」
「思ってたより冗談よく言うし、思ってたより舞先輩と仲悪いっぽい…し、それに同士だったし!俺も変な偏見持ってたんだしまぁここはおあいこってことでさ。水に流そうよ。」
「…お、う。」
「え、引いてる?」
「いや、ほんとに1軍だなって。」
「何その感想…。」
そんなこと言いつつ、何とも言えない空気に二人して笑いが零れる。お互い変な偏見持っていたのは驚きだが、案外似た者同士なのかもしれない。先ほどよりも少し仲が良くなった気がして正直嬉しい。でも、この後実験に参加することを思い出して、少々頬が引き攣る、そうだ、先に京くんに今回の実験について聞いておこう。
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「え、言ってなかったの?」
「おー、数字は一つも出なかったな。ただ指定の場所言われただけ。いつもそうだよ。サプライズとか考えてるんじゃね?アイツのことだし。」
「あー…」
ないとも言い切れないのが、かなり嫌だ。出会ってからそんなに日が経っていないというのに想像できてしまう。それほど個性的だ、舞先輩は。
「俺がこういう夢を見始めてからもそういう感じだったよアイツ。別に俺番号言われてもSCPに関して全く知らないし、情報をはやく言ってほしかったんだけど、頑なに言わねーのアイツ、ほんとウザい。」
「そうなんだ…、てか京くんも実験に参加したことあるんだ?」
「おう…。」
「どんな実験だったの?あ、嫌なら言わなくてもいいんだけど…。」
「いや大丈夫だよ。どんなって言うと…、全身真っ黒な老人に沼みたいなものに落とされて追っかけられたり、ほぼ骨みたいな体つきのやつの顔を見て追っかけられたり、クッソデカい爬虫類に追っかけられたり…まぁ色々だよ。」
「基本追いかけられてるんだね…。」
「まぁ普通に死んだよ。しかも大体碌な死に方じゃない。知りたくなかったよ、死ぬ痛みなんて。」
「…そうだね、それはそう。」
「由はなんだっけ、アベルに殺されたんだっけ?」
「うん、そう。」
「ぜってー痛かったろそれ。」
「いやほんとに…というか076について知ってるんだ。」
「まぁ、4月頃から毎日こんな夢見てりゃあなぁ、それに家にはねえちゃんがいるし、嫌でも知識が増えるんだよ。」
「…嫌でも?」
「嫌でも。」
「そっかぁ…」
✡
出発から長時間が経っているはずだが、案外目的地には着かない。話題が切れたことをいいことに、ここ最近ずっと考えていることを口に出してみる。
「というか、よくよく考えたら、本当になんでこんな夢見てるんだろうね。3人共全員同じ世界の夢を見て、会話して、おかしい話じゃない?」
「今さらだな…、まぁ俺もそう思うよ。」
「調べたりしたら、何かわかるのかな。財団って割となんでもあるしいるし。」
「探そうと思えばな。ただ、俺らが起きているときの世界と、眠っているときの世界は、違うんだよ由。」
「え、それってどういう…?」
「この夢の世界では、俺たちの住む家、通う学校はあっても。俺たちだけがいないんだ。住む家に親がいても、俺たちはいない。学校に友達や先生がいても、俺たちの名簿と席はない。そんな世界なんだよ。」
「…」
軽い気持ちで、全くわからないねで終わるつもりの話がとんでもない方向に落ちてしまった。開いた口が塞がらない。俺たちだけがいない?同じ世界なのに?どうして?俺らはここにいるのに?
「不思議だよなぁ、でも財団も同じようなもんだよ。起きている時の世界では財団はネット上の創作。だけど、夢の世界では?実際に、あるじゃないか。だから、まぁ、不思議ではあるんだけど、なんとなくわからないか?」
「わ、わかんない…かな。」
「だよなぁ、俺も一緒だよ、ねえちゃんから説明された時も同じ顔したさ。結局謎だらけだよ。なんで俺たちなのか。なんで同じ世界なのに違う世界なのか。なんで夢での死因や傷が現実でも残っているのか、そもそも何が夢で現実なのか。なんで誰も前日に死んだやつがいても不思議に思わないのか。なんで、なんで…。」
「…」
「まぁ、とにかく今はわからないから。そういうSCiPがいるって思ってようぜ。そんなの聞いたことないけど、ちゃんと探せば、ちゃんと発見すれば、きっとすべてわかるさ。財団はそういう仕事だろ。」
「そう…だね。それじゃあ、俺がこれから頑張る理由はそれになるのかな…。」
もとより、夢に目的がある必要性なんかないが、それでも作らないと何かが壊れて、崩れてしまう気がするんだ。
「まぁ、由はDクラス職員だから俺とかねえちゃんが指示しないと何もできないんだけどな。」
「ねぇ空気感が台無し。」
「でも、ちょっと正気になったべ?」
「まーね…。」
そんな話に落ち着くと同時に車が止まる感覚がする。京くんは慌てて俺に目隠しとヘッドフォンをつける。またもや視覚と聴覚が奪われる。推定京くんの手が俺の手を握って引っ張る、先ほどのような段差はなく、坂道の感覚がある。どうやら、板か何かを置いてくれたのだろうか。そしてしばらく歩いていく。そして、目隠しとヘッドフォンを外される。一番最初に目についたのは、何か微妙な笑み…何かにおびえているかのような舞先輩の顔だった。
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全身真っ黒な老人↓
http://scp-jp.wikidot.com/scp-106
ほぼ骨みたいな体つきのやつ↓
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クッソデカい爬虫類↓
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SCP-076 “アベル”↓
http://scp-jp.wikidot.com/scp-076