(自称)先生の超親友兼連邦生徒会副会長、紫青ライラ 作:ふしあな
えー。最初に白状しておきます。
この作品はもう原作:ブルーアーカイブとは全く異なるストーリーになります。
ライラとか言うもう1人の超人が現れたからとは言え、タグ:原作死亡キャラ生存がある時点でもう初っ端からかけ離れたストーリーになる事が確定しました。
ですので、キャラ崩壊・設定矛盾などを含む可能性があります。
それらを踏まえた上で楽しんでいただけると幸いです。
ようこそアビドス砂漠探掘委員会へ!
先生がシャーレに来てからおよそ一カ月ほどが経った頃。
その間に、かつての部下であるFOX小隊をライラは最後の命令として休ませていたと言うのにいつの間にか勝手にシャーレに忍び込み生徒として正式に任命されてライラの近くに居ようとしたり、そんなFOX小隊とライラと先生でとあるスケバングループを鎮圧しようとしたら横からワカモがダイナミックお邪魔しますの飛び膝蹴りをリーダーに撃ち込んで戦闘が始まる前に終わってしまったり、とある某三大校と名高い学校のサンクトゥス分派のリーダーから大量のお手紙がライラの元に届いたりしたが、まあ大体は順調に名前が広がっていると言っていいだろう。
「“………これで、ヨシ!!”」
「あ、ちなみにミスがここに……」
即座にライラの入れる赤ペンを前に力が抜けた様に額を机に打ち付ける先生の姿にライラは前々から考えていたひとつの計画を実行する事を決めた。それは……所謂、先生へ遠方の学校への視察を含めた旅行という事だ。シャーレに比較的近い学校には何度か依頼によって行った事があるが遠方となると足を運びにくい。ここらで息抜きを含めて副会長にとって信用するに値し、いざという事があっても問題が無いだろう上に先生としての経験も積めるであろう学校をライラはよく知っていた。
「では、先生。早速ですが……砂漠で観光旅行なんてどうですか??」
「“砂漠で観光!?”」
初耳だと顔を上げる先生にライラは説明する。
一面、というより学区全体が砂漠地帯である学校“アビドス高等学校”への視察。砂漠に埋もれた街並みと自然の雄大さは息を呑むほど圧巻だ。郊外に赴けばかつて栄華を誇っていたアビドス高等学校が残した多くのオーパーツや遺物が出土される事もあってかアビドスの生徒たちと企業が中心となって発掘作業も盛んに行われている学校である。
「はい。先生にはそこでアビドス砂漠探掘委員会のお手伝いをして欲しいんです」
「“探掘、カッコいい響きだね……”」
お手伝いと言ってもする事は少ない。
その委員会に連邦生徒会が支援している物資の受け渡しと、探掘時に出土したオーパーツの買い取り交渉、そしてその出土した貴重品を狙う不良や指定企業以外の回し者から護ったりする仕事など一風変わった仕事があるとライラは解説する。
勿論、先生もどちらかと言えば部屋に籠って延々終わらない書類を整理するより色んな生徒と関わり、出土するオーパーツなどと言ったロマン溢れる言葉に惹かれない訳がなかった。
「“なるほど……そうなるとオーパーツはこっちで選んで買っていいのかな?”」
「まあそうなりますね……でも向こうも大体分かってるので、後は先生があの子たちと仲良くなりながら値引き交渉するだけで済むと思いますよ?」
様々なところで使うオーパーツが地面から湧き出てくる(比喩)のはアビドスかトリニティかゲヘナと言ったある程度、歴史があり学区が広い学校が殆ど。特にアビドスは色々とあるせいで自分達が使う以上のオーパーツなどは早めにお金に換金してしまいたいという事情があるから、どうであれ売ってはくれるだろうがそれでも双方気分良く売買出来れば長くお付き合いする事が出来ると考えている。
勿論、出土するのはオーパーツだけでなく昔の書物や機械の残骸などが見つかる事もある。そういうのは積極的に買い取り、研究を行っているトリニティやミレニアムに寄付か売却するまでが連邦生徒会…主にライラの仕事だった。
「“その間の仕事はどうするの?”」
「一応外遊という事ですので、回ってくる仕事は減りますよ」
今回のライラの言っている旅行を言い換えればお得意先との定期的な深いお付き合いの意味がある事を先生は察しながら最初から思っていた質問をする。それはズバリその間のシャーレにくる仕事は誰が片付けるのかと言う話だ。ライラはその質問を待っていたとばかりに、これも仕事の一部だからシャーレの仕事は一部免除される事になっていると答えた。
「まあ気張らずに行ってください。あの子たちも非常に友好的で、お人好しですから」
「“ライラがそう言うなら間違いないんだろうね”」
先生もこの案件が“先生にキヴォトスの事をもっと知って欲しい”という純粋な善意である事を知っているからこそ断りにくい。それが例え、ライラが今回の売買の為に準備するお金が想像よりも大きくてもだ。……確かにこの機会を逃せば遠方の学校に赴くチャンスも無いかもしれない。そう考えれば先生として動かないという選択肢は無かった。
「“……だけどライラも来るよね?”」
「?……ええ、はい。後で合流しますよ。」
なので先生は先にアビドス高等学校の方へ向かっていて下さい。あ、勿論水分や日差しへの準備はお忘れ無く。先生も女性なのですから、帽子か日傘の準備はしておいた方が良いですよ。とサラリと言うライラに先生は、優しいのか鬼畜なのか分からなくなってきたと後に語ったという。
「“じゃあ先にアビドスに向かっているね”」
「ええ。すぐに後から追いかけます」
ライラの助言通りにペットボトル数本と日傘を用意して先生は後ろを振り向く。既にシッテムの箱のアロナが交通機関の道なりを示しているとはいえ初めての旅だ。アクシデントが無いとは言い切れないからアビドス学区に一番近い駅に着いたら待っておいて下さいというライラの暗黙の了解はどうやら先生には先にアビドス“高等学校”に向かっておいて下さいのつもりだったらしい。
そんな2人の小さな勘違いと行き違いが、これまた笑い話になるのは今の2人は知らないのであった。
「……………FOX小隊、ここに」
「「「「はっ」」」」
見送った先生が見えなくなった時、ライラが冷ややかな声で呟く。
その背後に音も気配もなく姿を見せるのは、彼の刃にして執行人の少女たちが跪き命令が下されるその時を待っていた。
「……七囚人の脱走に間違いなく手引きした何者かが存在しています」
「背後関係を洗って下さい。危険と見たなら退いても構いません」
「「「「了解いたしました。副会長」」」」
世間は、多くの生徒は副会長がシャーレの部長という役職に下ったのを見て堕落したや大人の女性に惑わされたのだと口さがない言葉を聞くがその本質は何も変わっていないとFOX小隊だけが知っている。そう跪きながら少女たちは恍惚とした顔を隠しながら久々の命令を胸どころか魂に刻むのだった。
「“………う、暑い………”」
勘違いには最後まで気が付かず、先生はアビドスの砂漠を彷徨っていた。アビドスまでの電車も相当の時間が掛かっており、着いた頃には昼過ぎであった事も含めて先生の買っていた水はもう尽きておりどうにか日傘を頼りに歩いては居るがその足取りは次第に重くなって行っている。
脱いだ上着にシャツのボタンも緩めているが、それでも暑いものは暑い。ライラからの勧めで日傘を買っていなかったら今頃倒れていてもおかしくなかったと頭の中で感謝を告げながらアロナが指差す先に向かってひたすら歩いていたその時だった。
「ん……ライラの知り合い?」
「“み、水………”」
先生の目の前に立つ1人の生徒。ロードバイクに乗った少女が倒れかけの先生の顔を見ようと屈む。その少女は特徴的な狼耳を揺らしながら、目の前に居た珍しい大人の女性から微かに香る“知っている人の匂い”を前に鼻を鳴らしながら問う。
勿論、そんな少女に答えている余裕もなく先生は渇きに渇いた喉を震わせて助けを乞うかの様に手を伸ばす。まだまだ倒れないと思ったが流石にそろそろ限界となっては恥も投げ捨てられるぐらいには生命の危機を感じていた。
「水…?スポドリでいいなら………」
「“っ…ありがとう!!”」
「あっ、それ……飲みかけ……」
ロードバイクに取り付けたドリンクホルダーからボトルを引き抜き、コップに入れようと後ろ手を回したその時だった。ボトルを差し出されたと勘違いした先生がそのまま口を付けて飲み始めてしまったのだ。幾ら同性とは言え、自分が先に口を付けたモノを飲まれるのは恥ずかしいものがあったのか少女の頬には赤みが宿っていた。
「“ありがとう……助かったよ”」
「ん。行き倒れにならなくて良かった」
だがそんな少女の羞恥心には気が付かず、喉を潤した先生は大分復活したのかその少女の姿をようやくキチンと目に映す。銀色の髪に似合う狼耳を付けた少女。この子が今回の自分を助けてくれたのだと先生は深く感謝する傍、少女は言葉で平常であろうとも心の中では少しだけ訝しんでいた。
「……だけどどうしてこんなアビドスの僻地に?」
そう、それはこんな一面砂漠の所に行き倒れている事である。表面上は何も無い街として挙げられる寂れた所に来る人なんて中々居ない。それもこんな古い道を使ってるなんて疚しい事がありますと言っている様なモノだ。……だと言うのにこの人は水を忘れて死にかけるなんてアビドスを知っていたらあり得ないミスをしているのを見てどうもそのチグハグさが少女の頭を混乱させていた。
「“あはは……実はね……”」
先生は解説する。自分がシャーレの先生である事。そして部長であるライラの提案により今回のアビドスでの交易に参加する事になったと簡潔に答えた。
「なるほど…貴女がシャーレの先生」
「“うん、よろしくね”」
互いに自己紹介を終えて、少女…いや、砂狼シロコは納得した様に先生の隣を歩き始めた。運がいい事にシロコもアビドス高等学校の所属だからこそ案内できるのだと胸を張って。
「ん、よろしく先生」
けど驚きだなとシロコは内心目を見開いていた。
シャーレの先生という存在はニュースにもなっていたから知っている。“あの”ライラ先輩が部長という座に座った部活。連邦生徒会副会長という椅子まで棄てて座ったというニュースはシロコ含めたアビドス全員が驚きながら聞いていた話である。特に先輩2人の取り乱し様は酷かったな……とシロコは今更ながらこの先生と先輩を会わせて良いのか考えた。
だってアビドスはこの交流を“副会長のみ”に絞って交流している。言うなら全ての窓口をライラ先輩に任せていた中でのシャーレの先生の介入をあまり良く思わないのでは無いだろうかとシロコは考えた。それに、先生の言っていることが正しいのであるのなら副会長はこの砂漠を1人で横断させるつもりだったのだろうか?アビドス生でさえも迷い彷徨うこの砂漠の怖さはシロコも耳にタコができるぐらい聞かされている。
(………何かおかしい?)
シロコの野生の直感的な何かが訴えても分からないモノは分からない。
そうなればやはりこの先生を早めにアビドス高等学校に連れて行った方が良いのでは無いか?
……そう、決断したシロコの動きは素早かった。
「……ん、先生。担がれるか背負われるか……選んで」
「“突然何、何!?”」
今まで特に問題もなく話していた相手が突然二択を突きつけてきたのだ。流石の大人と言えど驚き聞き返すほか無い。だがそんな先生の問いにシロコが再度突きつけるのは同じ二択。悩んだ末で先生は少しでもマシな選択を選んだ。
「“…………じゃ、じゃあ背負われる方で”」
「分かった……じゃあ飛ばすよ!」
「“えっ……ええええええええ!!??”」
先生が選んだ瞬間、シロコは先生の背中に手を回して持ち上げて背中に回してしまった。いかにも少女らしい華奢な腕には見合わぬ力で先生が反応するよりも先に背負い、先生の手と手を合わせて決して離さない様に力を込めてもう一度背中に持つ様に身体を動かした。
その瞬間、シロコは自転車に乗り走り出す。その速度は生身で感じる風にしては恐怖を感じるほどの速さ。それを先生は自身の両手だけで耐えているのだ。まさかそんな速度が出るとは思ってないとばかりに必死にシロコの背中にしがみつく。
「ん、離れないでね」
「“やっ…やっぱり担いでぇぇぇぇぇぇぇ!!”」
───────電車のドアが開く。
開いたドアから感じる熱風や独特な空気感というのはいつ来てもライラの感性に訴えるものがあると小さくため息のような息を吐き電車から降りていった。
ただでさえ僻地…もとい人口が少ない過疎地であるアビドスの昼間に降りるような生徒や大人は少なく、この電車から降りてきたのはライラ一人という閑静さであった。
トントントン…とリズム良く階段をかけ降りた先にある改札口を抜けた辺りに椅子があるのだが、そこには先生がいなかった。上の階にも居なかったのだ。流石のライラもこれには首を傾げるしか無かった。
「……………?」
まさか先に歩いて進んでしまったのだろうか。いや、それはない。流石の先生と言えど初めて来る場所で、それも砂漠が広がるアビドスを一人で行こうとするとは考えにくいと納得しながら椅子に腰掛ける。
そうして待つこと十数分。最初に考えていた最悪の可能性などライラの脳裏から離れて久しく、膝の上でラップトップにひたすら文字を打ち込んで仕事を始めていた。それもその筈、確かに先生の仕事は減ったがライラの仕事に関してはあまり関係ないばかりか先生の仕事の分も含めているのでその量は一時の修羅場に匹敵するぐらいには積み上がっていた。
(この書類は……)
ライラは連邦生徒会副会長を退いた。それは確かにライラの認識の中では正しいのだろう。だがよくよく考えて欲しい。ライラが倒れるまで連邦生徒会長と副会長の両方の仕事を卒なく熟した超人を、ただでさえバカみたいな量の書類と戦える人が少ない連邦生徒会は逃すだろうか?……それは、否だ。
行政官並びに室長の満場一致でライラの所属は連邦生徒会副会長兼連邦生徒会長兼シャーレの部長と言う権力の上乗せでどうにかライラの離反を防いでいるというのが事実である。というか連邦生徒会にとって最も重要な顔役でもあるライラが離れるのは非常に困るのである。
(……まあ、やっておくか)
だから今ライラがやっている仕事は副会長とほぼほぼ変わりがない。
連邦生徒会の行政権が復活したから大分少なくなったとは言え、その量は正直言って100が99.9になった程度の差しかない。だからこそライラは分かっているが何も言わないことを選択した。
ブロロロロロロロロロロ───────
そうして仕事すること少し。どれほど時間が経ったか分からないが遠くからエンジンを吹かす特徴的な音が聞こえたのを最後にライラは画面を閉じて仕舞い立ち上がる。その音が一番近づく外の道路に出て来て、その車から見える特徴的な緑色の髪とピンク色の髪を見て顔を綻ばせる。
「ホシノ……そして」
「
かつてアビドスは非常に栄えた学園だったらしいのです。
ですがいつしか砂嵐に、砂漠に呑まれ深淵となったかつての街には未だ多くの物資や貴重品。更にはオーパーツや遺物や古書が眠っていてもおかしくないわけです。
そんな場所を挑む少女たちを…探掘家と言ってもおかしくはないでしょう?
執筆意欲向上のため感想、評価お待ちしてます。