(自称)先生の超親友兼連邦生徒会副会長、紫青ライラ 作:ふしあな
1話が短いため連続投稿。
週末にこうして2話投稿できたら良いですねマジでね……
そう言えばゲヘナの未開の地は〈アビス〉という名前があってミレニアムにも〈廃墟〉という名前があるんですよね。
アビドスの砂に埋まったかつての栄華の名残。砂漠の地下に眠る繁栄の名残。……さて、この未開の地をなんて言うべきでしょうね?
それでは続きです。どうぞ
「やっほー!!ライラくーん!!」
「久しぶり、ライラ」
その車は瞬く間にドリフトをしながらライラの前にドアを付けるかの様に滑り込んできた。その瞬間、ライラが返事をするよりも先にドアの向こうから華奢な少女の腕がライラを引き摺り込んで走り出す。見る人が見れば、どう考えても拉致現場にしか見えないがこの閑静なアビドスの駅前にいるのはライラ1人だけであった。
身体が抵抗するよりも先にフカフカなシートと、よく冷房が効いた車内に気がついたらライラは入っていた。外をチラリと見ると既に発進しているのが分かり、ライラはため息混じりに呟く。
「……お久しぶり。ホシノにユメ先輩」
ライラを引き摺り込んだ張本人であるピンク色の髪に赤と青のオッドアイ。そしてライラの膝の上に座っていても、問題ないほど小柄な少女…ホシノと呼ばれたその子はライラに微笑む。
その前で運転席に座る少女はライラがユメ先輩と呼んだ緑髪に黄色の瞳をした子である。ちなみに体格はホシノとは対照的で何がとは言わないが非常に大きい。手慣れたハンドル捌きで荒れた地面を疾走するその姿は、まさしく先輩と言っていいだろう。
「……倒れたって聞いてたけど」
「そうだよ〜!大丈夫だった?」
ライラの後1人付き添いが居るという話を思い出してユメがUターンしたのを機にホシノから話を切り出す。
アビドスの日々に変わりはない。
いつものように砂漠の探掘に出かけ、たまに入ってくる企業からの護衛任務をこなし、学業も少しは頑張る。探掘には細心の注意を払っているし、戦闘も大きな怪我とかは無い。かつてアビドスを蝕んでいた“大きな問題”の頃を知っている二人にとっては今のアビドスはまるでオアシスの様である。
だがそんなユメたちとは反対にライラの取り巻く環境はお世辞にも良いとは言えないんじゃないかと二人は心配している。離れ地、秘境とまで言われたアビドスの地でもライラが過労で倒れた事を聞いている。そんな心配を受けてライラはどこかいつもより嬉しそうに返答する。
「大丈夫。今は大分マシになってきたよ」
「………そっか。」
「いつでも帰って来て良いんだよ?」
ライラくんもアビドス生の一人なんだから。そう口にするユメに同意するかのように首を縦に振るホシノ。実はライラはかつてアビドス生徒会に所属していた事がある。あれはどちらかと言えば連邦生徒会からの体のいい左遷みたいなモノだったが意外とライラ自身がアビドスに馴染み、アビドス側も少しずつライラを認めて、最後には去っていくライラを引き止める程には惜しまれたほど仲が良かった。
まあ尤も、去っていく際に不幸にも砂嵐に遭ってしまって一緒に途中まで行こうと同行していたユメ先輩と共にアビドス砂漠の真っ只中で遭難騒ぎがあったので帰りが遅くなったのはまた別の話だが
「ありがとう…でも、もう少しだけ頑張ろうと思えるからさ」
「それが、言っていたあの先生?」
「ああ…シャーレの……」
そんなアビドスでの生活はドタバタしながらもライラにとっては、夢の様な輝かしい日々だった。ユメもホシノもいつかライラがアビドスに帰って来ると信じながら、きっと今日が“その日”なんだと思っていた。
だがそんなライラの顔に浮かんでいる疲れから来る儚い笑みではなく、これからを信じた光を宿した真っ直ぐな瞳。……ああ、私たちはこの光に灼かれたのだとユメたちは今のライラに帰るところは必要ないんだと分かった。
「うん。……信じてみよう、って思えたからさ」
「“信じる”……か、なら仕方ないですね」
「だね、ホシノちゃん」
信じるという言葉。その言葉に込められた意味をよく知っている2人にとって、今のライラの道を阻むことはできなかった。そこにはかつてアビドスを蝕んだ“大きな問題”の際、大人も、企業も、他校も、連邦生徒会も、何も信じれなかった先に紫青ライラというありし日のまだ連邦生徒会副会長で無かった彼に救われたからこそ今のライラならきっと大丈夫だと、2人は頷いた。
まあそれはそれとして、その“シャーレの大人”に妬む気持ちが無いとは言えないが
「うんうん!湿っぽい話は終わりにして!…ライラ君はいつまでここにいるの?」
「まったく……確かに。できる限り長い方が私も嬉しい、から」
そんな2人の瞳に宿ったドロっとした光もライラが見間違いかと思う一瞬で、いつもの様にユメは後ろを振り向き微笑む。そこにあるのは膝の上に座るまるで兄妹の様な2人。やっぱりライラはアビドスの私たちの同級生であり、後輩であり、親友であり、相棒だ。
「んー……とりあえず前と同じ様に、交易が終わるまではいるつもりだけど……」
そんな2人の想いとは裏腹にライラの脳内では残して来た仕事とこれから増える仕事をざっくりと計算してアビドスに割ける時間を最大限増やそうと考えている。いつもならとっとと仕事を片付けて次の仕事へと向かうライラにしては珍しい考えだが、それほどライラはアビドスに掛ける想いが違うのだろう。
「今回はもう少し居れそう。少し多めに時間を取ったからさ」
「本当に!?……やったね!ホシノちゃん」
「ホント?……やった」
期待する2人の瞳にライラも微笑み頷く。
そこから3人の話は進む。今のアビドスの発掘はここまで進んだとか、今アビドスの売り上げはどこに繋がっているだとか。発掘の最中に起きた小さなミスだとかそうして情報交換をしながらライラの付添人である先生を待つことにしたのだ。
「………ん、今戻った」
「おかえりなさいシロコ先ぱ……って大人の人!?」
そんなユメたちとは離れて同じく、アビドス高等学校に帰ったシロコは先生を背負ったままアビドス砂漠探掘委員会の部室に向かった。ドアを開けて奥に座る黒髪に赤縁の眼鏡を掛けたエルフ耳の少女が手に持ったピッケルらしき物を磨いていた。
「えっ……ホント、シロコ先輩!?死体!?拾ったの!?」
「まだ生きてるみたいですよ〜☆…だと拉致になっちゃいますね」
そんな少女の悲鳴に、奥の部屋からランタンの様な入れ物を持ったまま黒髪に猫耳を付けた少女とゴーグルを付けたままの金髪の少女が面白そうな顔をして寄ってきた。流石に死体は売れ…売れないと思うんだけど……と耳を疑う事を口にする猫耳の少女に、冷静に突っ込んだゴーグルの少女。完全に目を保護するための大きめのゴーグルを頭の方にずらして先生を覗く瞳は好奇心に輝いていた。
「大人の人。ライラの匂いが付いてるから多分、お客さん」
「ライラ先輩のお客さん……って事は……」
シロコの鼻の良さはアビドス生全員がよく知っている。そんなシロコが言うには間違いないと納得する少女たちにある程度話を聞いていた。と言うより他校との付き合いの次世代の代表になると言われた赤縁のメガネの子…その名前をアヤネが何かを思い出したかの様に目を見開く。
「シャーレの先生……では?」
少し前、年に数回連邦生徒会副会長との交流があると聞きいつもの様に発掘したオーパーツなどを再度整理して待っていたら、ライラの方から1人追加で来ると聞いていた。……その追加というのが、ライラが部長を務める部活の顧問であるシャーレの先生という大人。
「“初めまして。シャーレの先生です……”」
まさかライラ先輩の付添人である先生をシロコ先輩が無理矢理連れて来たのか。というアヤネの外れて欲しい現状を否定するかの様に、先生は自分がシャーレの先生である事を報告する。勿論、胸にぶら下げた証明書を片手に。
「っあ!この度は、ウチの生徒が失礼しました!…私はアビドス砂漠探掘委員会の奥空アヤネと申します!」
「………そうですね☆シロコちゃんが迷惑をかけたみたいです。同じく、探掘委員会の十六夜ノノミです〜」
「え?ええ、え?……あっ、私も同じく、探掘委員会の黒見セリカ、です……」
「“皆顔を上げて。シロコには迷ってるところを助けて貰ったから”」
的中したアビドスの大切な取引相手兼援助して貰っている副会長の付添人にしてしまった今回のシロコの一件にアヤネは大急ぎに先生の前に立ち頭をきっちり90度傾ける。そんなアヤネの行動に少し驚きながらもゴーグルの少女…ノノミと言った少女が一緒に頭を下げ、そんな2人に合わせるかの様にランタンを持った少女が頭を下げる。
そんな少女たちの謝罪に先生が慌てる様に声をかける。
むしろシロコが居なければ先生はアビドス砂漠の何処かで干涸びていた可能性がある以上、命を救われたのは自分の方だと先生は謝罪は要らないし、むしろこちら側が感謝するべきだとここらで手打ちにしようと口にした。
「ん、先生を見つけてきたのは私」
「シロコ先輩はもう少し反省して……あれ?そう言えば先生とライラ先輩は確か車で来るって……」
「“車?…そんなの聞いてないけど……”」
頭を下げる3人に対して誇らしげに胸を張るシロコにアヤネは苦言を口にするが、その時思い出したのは確かライラ先輩はユメ先輩とホシノ先輩が車で迎えに行くのを待つって聞いていたのだが……
「…………ちょっとユメ先輩に連絡しますね」
「じゃあ先生は私たちと一緒にこの前発掘したのを見に行きませんか〜?」
「“いいね!面白そう!”」
話がおかしいぞ。と黒い笑みを浮かべながらスマホを耳に当てるアヤネから、逃げる様にノノミが先生を誘う。先生が面白いかどうかはわからないけど少なくともこの場に来たという事はライラ先輩の仕事も手伝うという事だろうとノノミは考えていた。
「じゃあ案内しますね〜☆」
「この前私が見つけた大きいの見て欲しい」
そんなアビドスでのゴタゴタとは無縁の様にユメたち3人は車の中で変わらず話を続けていた。ライラにとってアビドスの話はどこか懐かしさを覚えさせるモノがあるし、何よりも足りていない物資などを見越してこちらも支援物資を用意するのだから当然情報が必要になってくる。ユメたちもあまりアビドスの外に出かけないから外の話は貴重だし、副会長が買い取ったオーパーツなどの行き先なども興味がないわけがない。……まあ、あとは単純にライラの口にする“敵”となりそうな少女の名前を聞き出そうとしているのは少女たちの淡い恋心だと思ってしまえばいい。
そうする事数十分。流石に先生とは入れ違いになったとしても遅いという心配がライラの脳内で湧き上がり始めた頃、ユメのスマホに入る一本の電話。その相手は同じアビドス砂漠探掘委員会の一年生であり、いずれ将来ユメ先輩の仕事の後を引き継ぐ事を期待されている少女である奥空アヤネからだった。
「あれ?アヤネちゃんから電話?…はい、もしもし」
「……そう言えばライラ。ひとつ言い忘れてたけど」
「なに、どうした?」
電話に耳を傾けているユメを置いて、膝の上からホシノが小さく呟いた。スッポリとライラの膝に収まるほどの華奢な姿。それでいて尚、ライラと同学年でこのアビドスに置いては最強と名高い“暁のホルス”には到底見えないだろう。
「おかえりライラ」
「ああ、ただいま」
だがそんな少女は戦いの銃を下ろし、気を張るであろう副委員長としての責務も下ろせば、そこに座っているのは年相応の少女そのもの。まるで手慣れた様にもたれ掛け、ライラの首筋に手を回すホシノの距離の近すぎる甘え方は2人にとってはいつもの事なのだろう。
「ねぇ!大変大変!もう先生がアビドスに着いちゃってるらしいんだ!」
「…………はぁ!?」
そんな空気を切り裂く様に声を上げたユメ。どうやら聞いていると先にアビドスに1人で向かった先生が倒れそうになっているところをシロコが見つけてアビドス高校まで運んだらしい。それを聞いて流石のライラもびっくり仰天。まさか単身で初めてアビドス砂漠に挑むとは思っていなかったからだ。
「その大人って人…アビドスを舐めていたんでしょうか?」
「ま、まあ外からじゃ分からないって」
「とりあえず無事なんですね…まあ無事なら……」
そんなユメの驚きとライラの驚愕の後に安堵する声を聞いてホシノが冷ややかに呟く。アビドス砂漠の砂嵐に巻き込まれてはライラであろうとも遭難するほどの環境がアビドスだ。その時は偶然、ライラがスマホを持っていたから奇しくも一緒にいたユメ諸共助かったが下手をすれば口にするのも悍ましい末路が待っているかもしれないほど過酷な土地である。
「ライラの付添人とは聞いてますが……」
「こら。一応立場的に俺が付添人なんだがな」
あまりそういう立場にはまだ慣れていない人だが、そこを履き違えるなよ。とホシノの額を軽く小突く。ライラにとっては今回から自分はシャーレの部長として先生を立てるつもりで来ている。
「………………」
「あはは、ホシノちゃんもまだ慣れないんだよ」
そんなライラの態度に何か言いたげなホシノの口を塞ぐ様にユメが横からフォローする。ライラは知らないと思うがアビドスは連邦生徒会と交易しているつもりは無い。あくまで連邦生徒会副会長…というより紫青ライラが連邦生徒会に居るから、介して売っているだけだ。あくまでアビドスはライラが居るから連邦生徒会に売っているに過ぎない。これはアビドス生全員の総意である。
「……とりあえず、飛ばすよ!!」
「事故だけは気をつけて下さいよ!!」
「……最悪私たちだけ外に吹っ飛べば助かるよ」
え〜!?ホシノちゃん酷い〜!というユメの泣き言を前に、ホシノは当たり前だと言いたげに口を曲げる。今となってはアビドス砂漠探掘委員会の優秀なドライバーだが、そこに至るまでどれほどぶつかったか。まあその相手が盗掘者だったりするからホシノはいいぞもっとやれと思っていたのは内緒だが。
アビドス砂漠探掘委員会のヒミツ①
アビドス砂漠に向かう際は絶対にスマホ、コンパス、閃光弾を持つ事を校則で決められている。
アビドス砂漠探掘委員会のヒミツ②
探掘の際に使うピッケルや靴、ランタンなど各自でデコったりして今では銃並みに大切な装備になっている。一番可愛くデコっているのは満場一致でノノミらしい。
アビドス砂漠探掘委員会のヒミツ③
実は委員会の中で一番素直なのはシロコだったりする。
前書きの砂漠の地下の名称と共に感想、評価お待ちしてます。