誰にも何も言わず、俺はアビドスに向かう。
携帯電話は置いてきた。阿慈谷から連絡が来ているかもしれないが、どうせアビドスに着いてきてほしいとかそんなところだろう。結局、行き先は同じなのだから問題はない。
指でくるくると二丁の『S&W M500』を回す。砂漠でこうしていると、まるでガンマンにでもなったような気分だ。あっ、タンブルウィードが転がってるじゃん。マジで西部劇みたい。これならそれっぽい帽子でも持ってくればよかったな。
これから本編における決戦のバトルフィールド、KBFに向かうというのにも関わらず、呑気に歩を進める。まあ、これくらいは許してほしい。これからガチでマジのバトルが始まるのだから。少しでもリラックスしておきたいのだ。
歩いていると、前方に数人の人影が見えた。たぶん先生とアビドス生徒達だ。ここから先にある基地にいる小鳥遊ホシノを救出しに行く最中だ。
俺は背後から近づいて声をかける。
「や、先生」
"その声は、ネムリ?"
「ああ、ブラックマーケットでは世話になったな。例の件のせいで俺は......いや、何でもない。忘れてくれ」
"......?"
危うく「上に目をつけられた」と口走ってしまいそうだったが、何とかこらえた。俺からしたら軽口でも、先生は結構重く捉えるかもしれないからな。別に責めたいわけじゃないし、言わなくてもいい。
"そういえば、ネムリはどうしてここに?"
「ん?ああそうだ、本題に入ろう。先生、そしてアビドス復興委員会。君ら、カイザーに乗り込むんだろう?」
言うと、全員が驚いたような顔をした。黒見セリカが何か言おうとしたが、言う前に手を突き出して待ったをかける。
「何も言わなくていい。どうして知ってるか、だろ?そりゃあ、ココ最近アビドスの方に結構目を向けてたからな。ちっとばかしカイザーに動きがあったように見えたんで、何かあったんだろうな、とね」
「なるほど......ご協力はありがたいですけど、どうして......?」
十六夜ノノミの問いに、俺は答える。言語化は難しいがこれでいいはずだ。
「まあ、なんて言うか.....そう、俺は穏やかに過ごしたいんだ」
「......?」
全員が頭にハテナを浮かべる。そりゃあそうだ。穏やかに過ごしたいとか抜かすやつがこれからドンパチに乗り込もうとしてるんだ。矛盾しているように見える。俺もそう思う。ただ......。
「この先、カイザーを放っておくと、確実にトリニティにも被害が及ぶ。そうなると、俺の平穏も脅かされる。そうなる前に対処しておけば、平穏なままってことだ」
「ん......それじゃあ本末転倒なような......」
まあ、建前だしな。どうせこの先、本編ではチョイ役なんだ。そうなるなら、ここでしっかり見せ場を作っておきたい。そんな下心が強い。
「まあいいんだよ。んじゃ、俺は別行動で。雑兵共は俺が相手するから、君らは目的のところに向かえ」
"うん、ありがとうね"
"......ところで、今日はヒフミは一緒じゃないのかい?"
「ずっと一緒にいるわけじゃあないさ。......ま、今回は別行動さ。楽しみにしてなよ」
俺はそう言い、皆の顔を見ずに先に進む。
さて、ここからが勝負だ。原作的に俺がいなくても全く問題はないが、まあ、何があるかわからないし、少しでも体力は温存させておこう。
「さァて、暴れますかねえ。久々に!」
全身に力を込めて先に進む。身長にそぐわない速さで進み、目の前にカイザーの兵士が見えてきた。
素早く照準を合わせ、撃鉄を下ろし、引き金を引く。
一撃一殺。本当に殺すわけではないが、これを目標とする。
「なっ!体制を整えろ!敵襲────ぐあっ!」
声を出した兵士を撃つ。
銃の引き金に指を置いた兵士を撃つ。
銃口をこちらに向け威嚇している兵士を撃つ。
逃げ出した兵士を撃つ。
このように優先順位を決めて撃っていると、いつの間にか周囲に兵士はいなくなっていた。
「こんなモン、か。奇襲とはいえ、案外呆気なかったな」
ぽつりとつぶやく。
少し本気で挑んだからか、直ぐに終わってしまった。便利屋の見せ場を奪うわけにはいかないので、あまり暴れすぎてもいけない。つまり、ここからは手を抜いて適当にやっていこう。
「さてと.....ま、頑張ってくれよな、先生」
身体の力を抜いて歩きだす。
トリニティに帰りつつ、見かけた兵士を撃っていくという方針を定め、ゆっくりと砂漠を歩いていく。
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部屋に帰ると、携帯電話に阿慈谷からの連絡が大量に入っていた。とりあえず今はいい。後で返信する。とにかく今は疲れたし眠い。普通に考えてトリニティとアビドス砂漠を歩いて往復するとか頭おかしかったわ。
ベッドに横たわり、柔らかいマットレスに身を沈める。すると意識は一瞬で切れ、穏やかな眠りについた。
後日、アビドスの襲撃が成功したことをしっかり確認した。......阿慈谷の説教もセットだったが。なんでさ。
ボツになったセリフとして、ネムリが「神秘が高まる......溢れる......!」というものがありました。まあ......ボツだよね......。
ネムリくんの強さについて
基本的に上澄み勢には勝てない想定。あと、ネムリくんの強さは既に本人の限界を迎えているので、他の生徒と違って伸び代がありません。なので、時間が経てばネムリくんは中堅ちょい下位の強さで落ち着きます。まだ覚悟決まってない人が多い現状なので、まだ強く感じられると思います。
ネムリくんが強くなる方法はもはや武器を変えるか反転するかの二択しかないのです......()