過酷な世界を平穏に生きていく(予定)   作:Ask〈アスク〉

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疑わんといてくださいよ〜!俺、悪いトリニティじゃないよ!

 アビドス復興委員会主導によるカイザー基地襲撃からある程度時間が経ったある日、俺はシャーレに顔を出していた。理由としてはまあ......男の話相手が欲しかったってだけだ。

 トリニティ総合学園は、昔にいくつかの学園が集まってできたバカデカいお嬢様学校だ。故に、話の趣味が全然合わない。スイーツとかお茶はまあいいんだよ。俺も嗜むしな。だが、化粧品やら服やらの話は共感できない。トリニティ育ちだからファッションに興味が無いわけじゃないが、メンズとレディースでは勝手が違う。だから、ある程度砕けた話ができる阿慈谷としか交流がなく......っていっても、学園の奴らの大半は妬み嫉み陰口いじめのどれかしらはやってるから、そんな奴らとは関わろうとも思わないが。

 とにかく、先生とはただ話がしたい。その為だけに来た、のだが......。

 

「先生が、不在......?」

 

「そのようね。どうしようかしら......」

 

 何故か先生はおらず、何故かシャーレに来ていた空崎ヒナとエンカウント。なんで?????

 

「......」

 

「......」

 

 互いに交流があるわけでもなく、トリニティ生とゲヘナ生という関係もあり、沈黙が続く。気まずいね。

 気まずさに耐えかねた俺は、決心して話しかけることに決めた。

 

「......空崎ヒナ、だったよな?君はどうしてシャーレに?」

 

「......少し時間ができて、先生に会いに来たよの。そういうあなたはどうして?七望ネムリ」

 

 嘘だろ、俺の事知ってんの?一体どこで......って、もしや、何年か前に砂漠に行った時か?梔子ユメと会話していた時、もしかして見られていたのか?

 ......今考えても仕方ねぇか。案外、先生が話したとかかもしれないしな。

 

「俺は......そうだな、先生と話をしに来たんだ。トリニティってお嬢様学校だろ?だから、話が合わないんだよ。それで話の合いそうな先生に会いに来たってわけなんだが......不在ときた」

 

 はぁ、とため息を吐く。しかし、どうしていないのだろうか。先生がシャーレから離れるとなると、それは物語が進行したことになるのだが......。

 ......まさか、パヴァーヌ編一章がもう始まったのか?そうであれば説明がつくが......まあ、今回は完成に蚊帳の外だな。関わる意味もない。

 

「さて、と。先生がいないなら俺は帰ろうかね。んじゃ、さようなら、空崎ヒナ」

 

「待ちなさい」

 

 帰ろうとした時、空崎ヒナに呼び止められる。

 

「あなたにはいくつか聞きたいことがあるの」

 

「へぇ。ゲヘナの風紀委員長が、一トリニティ生徒の俺に何を聞きたいんだ?」

 

「......あなた、二年前にあの砂漠で何をしていたの?」

 

 ああ......やっぱそこで知ったのかよ。シラは切れねぇだろうな、こりゃ。

 

「......というと?」

 

「梔子ユメ......アビドス生徒会会長と、あの砂漠で会ったわよね?おそらく、最後に言葉を交わしたのはあなた。それにもかかわらず、彼女は死んで、あなたは生きている」

 

「......もしかして、俺を疑っているのか?」

 

「......あなたが梔子ユメを背負って、砂漠の入口辺りに運んだことは確認済みよ」

 

 なるほど......?殺したと疑っているわけではないが、行動が不可解だと。そう言いたいのか?

 

「まあ、そうだな。確かに俺は梔子ユメと話をした。どうしても、確認したいことがあったからな」

 

「それは一体、何?」

 

「......そうだな、名付けるとするなら......『夢の残した足跡』だったか。まあ、言ってしまえば梔子ユメの遺産みたいなものさ」

 

「そんなものが......でも、そんなものは見つかっていないわ」

 

「ああ、そりゃそうさ。あれは誰にも見つけられない。そういう風になっている」

 

「......どういうこと?」

 

「他言無用で頼むぜ。特にアビドスの奴らにはな。......俺は梔子ユメが遺した物を見つけたかった。だが、彼女はそれをどこかに隠していた。隠し場所はわからない。ならどうしたらいいか?直接聞けばわかるだろうってことで、探し回った。......その結果、砂漠の中で倒れていて、それを見つけたってわけだ」

 

「......それで、探し物の在処は......」

 

「ああ、わからなかった。聞き出そうとしたんだが......その前に、な」

 

 まあ正確には聞き取れなかったんだが......まあ、そこはどうでもいい。結局、わからなかったことに変わりないのだから。

 

「そもそも、俺がそれを見つけたかった理由は、それがあることで俺の平穏が脅かされる可能性が一つ潰れる......かもしれないからなんだ。まあ、今見つけたところで既に遅いがね。ここまで来たら、俺はもう静観するしかない」

 

「......あなたが何を目論んでいるのかはわからない。でも、話は無駄じゃなかったと思う」

 

「そうかい。お互い頑張ろうぜ。ゆっくり過ごすためにな」

 

「......!ふふっ、そうね。頑張りましょう、お互い」

 

 軽く微笑んだ空崎ヒナを見て、俺は背を向けて歩きだす。

 少し話し過ぎたかもしれないが......まあ、俺と梔子ユメが会っていたことを知っているのであれば、これくらいで問題ないだろう。

 さて、阿慈谷に何かお土産でも買って帰るか。シャーレペロロとかあるのだろうか。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 七望ネムリと予期せずして接触した。

 二年前に砂漠にて当時のアビドス生徒会会長、梔子ユメとの接触を報告された時から、気になってはいた。

 何故あの場にいたのか。何をしたのか。何か目的があったのか。その答えを得られた。

 所々、誤魔化された部分はあったが、概ね正直に話していたと思う。

 トリニティなのに、ゲヘナである私への感情は至って普通だった。そういった感性の持ち主は、探せばいるのかもしれないがそう多くはないだろう。

 キヴォトス唯一の男子生徒という点も相まって、とても不思議な存在だ。

 彼は何か、私たちとはどこか違う視点から物事を見ている気がする。そのような感覚が、今回直接話して伝わった。

 

「『夢の残した足跡』......ね」

 

 これを口にした彼は、その後に『だったか』と言った。どこかでその言葉を聞いたのだろうか。だとしたら何処で、誰に?

 そもそも何処で梔子ユメの遺産なんて知ったのか。あの小鳥遊ホシノですら、何か遺した物があると知らなさそうなのに。

 ......それでも、彼自身は警戒する必要が無いと思えた。何かを企んでいる感じではなかったし、そもそも私だけで制圧できそうだし。

 まあ、彼とはきっと、合ったら挨拶する程度の関係にはなれるだろう。




※この作品に恋愛描写はありません。今回のヒナのネムリくんに向けた矢印は恋愛的な意味は一切ありません。

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