伊地知虹夏のbucket list   作:大塚ガキ男

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こんばんは!
お待たせしてごめんね!
なんと今回30000字弱あります!




¥ 幼馴染は共に在りたい(我慢ならない)。 ▽

 

 

 

 

「あっ、起きた」

 

 天井。

 見慣れない天井が目に入った。

 知らない天井だ、だなんて使い古されたパロディをする気にもなれないほど、俺の頭は混乱していた。

 

「…………」

 

 俺は今寝転がった体勢でいる。

 目を開けてすぐ天井が目に入ったということは、仰向けで寝ていたらしい。寝起き故に身体の感覚は鈍く重たいが、それでも背中に感じる柔らかさから布団──いや、スプリングの押し返されるような感触からしてベッドの上にいるらしいというのは分かった。

 見慣れない天井ということはつまり、普段眠る場所ではないということ。

 何故そんな場所で呑気にも眠ってしまっていたのかと直前の記憶を思い出し、身体が跳ねるようにビクリと動いた。

 虹夏の涙、それからこちらに向かってベースを振りかぶった山田。

 その二人の表情を──記憶を思い出したからだ。

 いや、そんなことよりも。

 

「そう、今気にかけるべきは何故自分は縛られているのか。ということ」

 

 そうだ。

 今身体を動かしたことでようやく気付いたのだが、俺は今両手を縛られている。先程のケースのように後ろ手ではなく仰向けに、手幅の狭いバンザイのような姿勢で。

 首を動かして縛られている手首の方を見れば、ベルト。腰に巻く用途で使うベルトが、俺の両手首に巻かれ、両手首の間を通すようにもう一本ベルトが通されて、更に頭上へと伸びていた。

 可動域的にこれ以上首を動かすことはできないので正確な素材は不明だが、ベッドの上にいるということはベッドのヘッドボード部分のどこかに固定されているみたいだ。

 

「……俺の心を読むなよ、山田」

 

 そして、現実へ。

 滑らかに、自然なタイミングで俺の心の声を代弁して見せたものだから、声からではなく心当たりからついその人物を探り当ててしまった。俺の心を読むだなんてそんなことが出来るのは、生まれてこの方一人しか心当たりが無い。

 どういうトリックか時折俺の考えていることを透かして見せる──スカした顔で透かして見せる山田リョウの名を──俺は呼んだ。

 

「この状況には驚かないんだ」

「十分驚いてるって。……ただ、まだ少し寝ぼけてるのかもな」

「ふぅん」

 

 生返事。

 声がした方へと首を動かせば、そこには山田がいた。静かに近付いてくる山田と合った目が少し赤い。もしかして泣いていたのだろうか。

 山田が歩みを進めている刹那、室内へと視線を運ぶ。そうか、ここは山田の部屋だったのか。

 

「殴られて意識を失ったから、地下室かなんかにでも運ばれたのかと」

「私の両親でも、流石に地下室は作らないと思う」

 

 別荘ならあるけど。

 当然のように言ってみせた山田の発言に心の中でずっこけながら、室内へと向けていた視線をベッドの傍らに立ち止まった山田へと移した。

 話しかけられる。

 

「……怪我、どう」

「さあ。ズキズキはするけど、泣いちゃうほどじゃない」

「……ごめん、気が動転してた」

 

 山田が浅く頭を下げる。あの山田が、とつい感心しかけたが、思考の邪魔をする頭の痛みに現実へと引き戻された。

 

「いや、俺こそ悪かった」

「うん、それはそう」

「…………」

「というか、殴る瞬間『ベースが壊れるかも』と思い至って力を緩めた私を褒めてほしいくらい」

「…………」

「……なんか言って」

 

 なんだコイツ。

 いや、そんなこと言わない方がいいか。

 

「……それで、このベルトのことなんだけど」

 

 解いてくれないか。

 拘束されている為、未だバンザイの姿勢のままそうお願いしてみた。

 両足は縛られていないのでジタバタは出来るが、それでも両手が縛られてるままでは何もできないのと同じ。

 

「解かない」

 

 しかし山田の答えは冷たく、突き放すように言われてしまった、

 

「解かない、って……」

 

 拘束してくる意図も、それを解かない意図も読めない俺は、呆れ半分にそう呟く。

 ふと、無音。

 その数秒の間に山田はなにかを思い出したような素振(そぶ)りを見せたあと、おもむろにベッドの上へと上がり込んできた。

 

「ちょ、山田!?」

 

 あまりにもな距離感に、身動きが取れない俺は言葉での制止を試みる。しかし言葉だけではそこまでの効力は無く、仰向けのままの俺の上を四つん這いで越えていった山田は、当然のように俺の左隣へと寝転がった。

 ベッドの上。

 添い寝のような体勢、そして距離感。

 俺と壁との間に挟まるように、ジャストフィットな場所を陣取った山田は、ふんっと満足げに鼻から空気を出した。

 

「……は、なに?」

「なんでお前がキレるんだよ」

 

 なにをしているんだと視線を飛ばせば、山田は不機嫌そうな顔で睨み返してくるのだった。

 

「…………」

 

 山田が無言のまま寝返りを打ち、でろーんと俺の胴体に上半身を乗せる。山田の重さと柔らかさに身じろぐと、再び睨まれた。

 

「ここは私の部屋。加えて、その中でもかなりプライベート性の高い私のベッドの上。そこにあるものは、すべからく私の物である。そうは思わない?」

「思わないし、誤用してるぞ。その()()()()()

「ごちゃごちゃ言ってないで、太介は私の言うことにすべからく従うべし。……これで良い?」

 

 良くない。

 しかし山田の冷たい金の瞳に見入られていると、最早そんな返答すらも憚られる雰囲気があった。

 無言。

 というか押し黙ってしまった俺の行動をどう解釈したのか、山田は俺の胸に顔を埋めてもごもごとなにかを喋っている。生憎その仔細こそ知ることは出来ないが、山田とてこちらに向けて言ったわけではないのだろうというのはなんとなく察することができた。

 

「──ぷはっ、危ない危ない。変態になるところだった」

 

 俺の胸から顔を上げた山田が(恐らく酸素が足りていないままモゴモゴ喋り続けていたのだろう)、慌てて口呼吸で酸素を取り入れている。片腕で額の汗を拭うジェスチャーをしている時すらも俺の上からはどかず、ただ山田の体重の芯が左右へとズレてのしかかっていた。

 

「友達をベッドに拘束して添い寝決め込むような奴は、もう立派な変態ではあると思うぜ」

「私やってない」

「バレバレの嘘吐くな」

「信じてもらえないか。まあ良いけど。……太介、聞きたいことがある」

「なんでも答える。無理な体勢でそろそろ両腕がキツくなってきたけど、俺のことは気にしないでくれ」

「嫌味ったらしい」

「そう心がけたつもりだよ」

 

 丁重な態度で接してみても、どうやらこの拘束は解いてもらえないというのは理解できた。それならばといっそいつもの通りに受け答えをしてみれば、山田はむしろ嬉しそうにしていた。表情こそほとんど変わらないものの、なんとなく分かった。

 

「太介、香川に帰るの」

 

 俺の胸骨の辺りに顎を置いている山田が、至近距離で真っ直ぐに見つめながら問うてくる。その話題の末にベースでぶん殴られる羽目になった俺からすればなるべく避けたい話題だったが、今この状況でその選択をするのは至難を極める。

 それこそ、もう一度殴られてもおかしくない。

 だから渋々答えた。

 

「……あぁ、帰る。卒業したらな」

 

 でも、なにも今生の別れってわけじゃ。

 そう続けようとして、唇を奪われた。

 

「ッ!?」

 

 俺の胸の辺りにあった山田の顔が、目の前にある。

 俺の目じゃピントが合わないくらいの至近距離に山田がいる。

 俺の胸と山田の胸がくっついている。

 唇同士が、長く触れ合っている。

 戯れ(キス)というよりかは、キスと呼ばれる行為そのものを達成する為のような淡白なソレ。押し付けるような──しかし触れたまま一向に離れない唇に、俺の頭の中は混乱を極めていた。

 

「……ゲッチュ」

 

 何秒経過したかなんてとてもじゃないが数えられないほど混乱している脳内。しかし体感では永遠に思えたキスは、やがて終わった。

 ゆっくりと離れていった山田の唇。その表面を舌が一周舐っていき、口内に収まってからようやく発せられた一言。

 ゲッチュ。

 俺は混乱やら羞恥やらでわなわなと震えた(のに)、思わず声を荒げた。

 

「ふっ、ふざけんな! 俺、ファーストキスだぞ!? それにお前も、キスをそんな簡単に……!」

「別に初めてじゃないから安心して」

「……は? それ、どういう」

 

 というか、どっちの意味の。

 

「失言。兎に角、そう落ち込むことはない。むしろ私とキス出来るという最上の幸運を、骨の髄まで噛み締めるべき」

 

 摩訶不思議な状況、そしてそんな状況を作った山田の口から発せられた奇妙奇天烈な言葉に思わず目を白黒させていると、離れてから目まぐるしく開閉していた山田の唇が再び降ってきた。

 唇に落ちる。

 頬に落ちる。

 額に落ちる。

 今度は短く、触れて離れての回数が多いキス。

 顔を背けて逃れようとしたが、いつの間にかこちらに伸ばされていた山田の両手で顔の角度を固定されていて、されるがまま。

 みじろいで山田を俺の上から退かそうとしたかが、いつの間にか腹の上に跨られていて、されるがまま。俺には力が無い。

 両手は縛られている。

 無力だ。

 

「……ふぅ、私も変態の仲間入り」

 

 もう俺の顔面に山田の唇が触れてない場所なんてないんじゃないかと思えてきた頃、満足した様子の山田はようやく顔を離してくれた。

 俺の顔を固定する為に力が込められていた山田の両手も引っ込み、今現在の山田は俺の胸の上で頬を潰している。

 

「……ずっとこうしたかった」

 

 早い鼓動は、果たしてどちらのモノか。

 俺も山田も息を荒くしているので、分からない。

 キスは想像よりもスタミナが必要らしい。

 

「なんで、俺なんかに。こんなことを」

「なに? 好きでもない男にこういうこと(キス)するなって説教したいの?」

「……大体そう」

 

 山田が行った突飛な行動に、睨みで質問。山田は俺の眼力なんぞものともせず、素知らぬ顔でこう言った。

 

「前提が間違っている」

「というと」

「私は太介のことが好き。だからキスしても問題は無い」

「……は?」

 

 言われた俺も、言った山田も、暫し沈黙。

 言葉の意味を理解しようとしている俺も。

 言ってやったぜと満足げに微笑む山田も。

 暫し、沈黙。

 室内に、エアコンが稼働する音だけが孤独に消えていく時間。

 合点がいかず、得心もゆかず、なによりワケが分からず。どういう角度からのボケなのかと気を遣って逡巡してしまう始末。

 そんな、疑問符で埋め尽くされた俺の脳内すらも山田にはお見通しのようで、全くコイツはと呆れた様子で溜め息を吐いてから──

 

「……太介、好き」

 

 ぽつり、と呟いた。

 思えば、この短時間で何十何百とキスをされたのだ。山田がそんな身体を張るタイプのボケをするような人間では無い以上、俺がそこまで裏を考える必要もなかったのかもしれない。

 ……。

 どうやら、山田リョウという人間は俺のことを好いているようだ。

 いやまぁ、なんで俺を、という疑問はあるけれども。

 なんなんだ。

 脳内で言葉にしただけでも顔が熱くなってくる。

 

「……いつからだよ」

 

 視線が交わらなくなった今も、脳裏に焼き付いている山田の瞳の金色。脳内で得た答えを噛み締め、天井をぼうっと見ながら俺は問いかけた。

 

()()()から」

 

()()()

 ピンとこない。

 それが伝わったのか、山田はほんの少しだけ恥ずかしそうに息を吐いてから、補足を入れるように続けた。

 

「中学の時、太介が虹夏の為に歌った日から」

「え、じゃあほぼほぼ初対面の頃じゃんかよ」

 

 なんで。

 

「なんでもなにも」

「おい心を読むな」

「今のは別に読まなくても分かる」

 

 …………。

 

「私も、放送室で太介の歌を聴いた。良いと思った」

「……俺の歌に惚れたってこと、か?」

 

 山田をからかうように言ってみるが、自分で言っていてなんて恥ずかしい奴だと思った。本当に勘弁してほしい。今すぐに俺を殺してくれ。

 そんな感じで上歯と下歯の間に舌を挟み込んだ(のち)に歯を閉じてみるが、しかし。山田の発言を聞く限り、俺の言った風に思える。虹夏の為に歌った俺の声で何かを感じ、好意的な方向に心を動かされたのだと。そう取れる。

 しかし山田はすぐに「違う」と返してきた。

 ……それはそれで傷付く。

 

「あれはあくまできっかけ。あれから、太介のことを知り合いとして認識出来るようになった。山口太介という人間のことを知りたくなった。一目惚れじゃなくて、私の好意は加点式によるものだから」

「……はぁ」

「話していくうちに、居心地が良いと思った。気を使わなくて良いし、なにより太介とは趣味が似てたから。

「気付いたら好きになってた。それからずっと、毎日欠かさず太介のことが好きだった」

「…………」

 

 目こそ合わないが、胸の辺りからしっかりと山田の意思が伝わってくる。ひょっとして俺は告られているのかと、この非日常の中に甘酸っぱい日常を感じて面映くなった。

 両手が縛られていなければ、照れ隠しに頬を掻いていたことだろう。

 山田の告白(独白)は続く。

 

「……でも、太介には虹夏がいたから」

「虹夏?」

「だから我慢した。私は虹夏のことも大好きだから、虹夏と太介が幸せになるならそれが一番良いと思った」

「ちょ、ちょっと待て。俺と虹夏はなにも」

「そう思っているのは太介だけ。もう山口太介という城に外堀も内堀も存在しない」

「……良かった。ちゃんと堀が二重にあったんだな、俺の城」

「そういうところが大好き」

「っ」

 

 微笑む山田からストレートに伝えられた好意に、思わず怯む。たった数時間でガラリと変わってしまった関係性に、俺はたじろぐしかなかった。

 ……成る程、もしかしたら山田の言う()()()とはこういうことなのかもしれない。

 

「太介と虹夏がくっ付いて、あわよくば私も一緒に暮らせたらなくらいのマインドで私は何度も虹夏の助けをした。

「時折虹夏の行動に疑問を抱くことはあったけど、基本的には虹夏の利になるように色々手を回した。

「太介は、私よりも虹夏といた方が幸せになれるって分かっていたから」

 

 山田の口から語られる、知られざる滅私の精神。普段の山田ならば言葉のイントネーションから『褒めて』という単語が浮き出てくるのだが、今は全くその気配がない。

 つまりは。

 

「でも、今日。太介と卒業後に離れ離れになっちゃうって分かって、どうしようもなくなった。

「太介にも虹夏にも幸せになってほしいけど、私にだって最低限譲れないラインはある。

「私にだって幸せになる権利はある。

「訳が分からなくなって、気が付いたらベースを握ってて、気が付いたら太介が倒れてて。

「……日常を硬く枠組んでいた倫理観が私自身の手で取り払われてしまった以上、もうこうするしかなくなった」

 

 やりたいようにするしかなくなった。

 尻上がりに語気が強くなっていく山田の言葉。俺のシャツは、山田の両手で固く握り締められていた。

 山田が動く。

 モゾモゾと、また俺の顔へと顔を近付けてくる。思わず目を細めたが、近付いてくる山田の顔が少し横にズレていることに気がつく。

 山田の顔が俺の真横に。俺の耳のすぐ隣に山田の顔があるような感じ。俺の胸と山田の胸はしっかりと密着していて、互いの鼓動が不器用なセッションを奏でている。

 山田の両手が、俺の両肩を掴んだ。

 

「──太介、大好き」

 

 耳元で、囁かれる。

 

「──太介、大好き」

 

 耳元で、説かれる。

 

「──太介、大好き」

 

 耳元で、溶かされる。

 山田リョウという一人の少女が今の今までひた隠しにしてきた感情が、堰を切って溢れ出す。感情が暴れるままに、想いの全てをぶつけにきている。

 

「太介、耳弱いから。こういうの好きでしょ」

 

 俺の耳元で山田がクスクスと笑う。言葉一つ、仕草一つ取っても耳元で行われればそれは、俺にとって必殺となってしまう。ゾワゾワと背中が震えて(あわ)立った。

 

「──太介、返事を聞かせてほしい」

「へ、返事……?」

「そう。私は太介に好意を伝えた。ならば太介にはそれに返答する義務がある」

「……また今度っていうのは?」

「別に良いけど、返事をもらえるまで私は太介の耳元で囁き続けるから。私の繊細な喉が枯れるのが先か、太介が私の美声に耐えきれずに失禁するのが先か」

 

 勝負ね。

 言われて、耳に息を吹きかけられた。背中が跳ね、俺の上にいた山田も同じように跳ねた。

 その際山田の口から漏れた「うわっ」という驚いた声。うわっと声をあげられれば同じようにうわっと驚いてしまうのが人間というもので、『なに驚いてんだよビックリするじゃないか』という意味の視線を向けてみる。

 俺の視線を受けた山田は睨むように目を細め、どこか憮然とした態度で、誤魔化すようにこう言った。

 

「……ここ、私のベッドだから。漏らしたら怒る」

「か、勘弁してくれ。俺、耳マジで弱いから。洒落にならないからッ」

「こちらとしても、こうなった以上洒落で済ませるつもりもない。答えをはぐらかして私の前で痴態を晒すか、はっきりと自分の口から『山田リョウさん大好きです一生一緒にいます』って宣言するか」

「耳元で長文喋るな! すっごいくすぐったいんだぞ!」

「別に私の知ったことではない」

「知っとけ馬鹿!」

「……あっ、今馬鹿って言った。悪いけど、そんなこと言うならベロチュー解禁するかも」

「悪いと思ってるならすんな!」

「太介に対しては悪いとか思ってない」

「じゃあ誰に対して言ったんだよ!?」

「ふふっ。懐かしいね、太介。うちでホラー映画観てる時、ラブシーンでよくお互い気不味くなってたよね」

「あったけど! グロいホラー映画ほどラブシーン濃厚なんだよなとか今は良いんだよ!」

「じゃあ、ベロチューと耳責めを交互に行うことにする」

「なんの()()()だよ!」

「太介、口開けて。舌入れるから噛まないでね」

「ちょっ!? ストップ! ストオォォォップ!」

「──リョ〜ウ〜? キッチン広過ぎて料理酒の場所すっごい探しちゃったんだけど! ……ってあれ、なにしてんの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ▽

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「に、虹夏!」

 

 窮地に現れた頼れる幼馴染の名を、俺は高らかに呼んだ。

 そうだ。

 俺が気絶している間に山田と虹夏が仲違いでもしていなければ、虹夏は未だ山田の家にいたはずなんだ。

 山田の奇行によってすっかり頭から抜け落ちてしまっていた。

()()に及ぶ寸前をバッタリと目撃されてバツが悪いのか、山田は俺の胸に顔を埋めて隠れてしまった。この隙に振り落としてやろうと身体を揺らしてみるが「酔うから揺らさないで」となんとも勝手な言葉が返ってくるだけだった。

 断念。

 

「ごめんね太介くん! 重かったよね! ──ほらリョウ、早く退いて!」

 

 両手に持っていた荷物を壁際に置いた虹夏が、慌てた様子で駆け寄って山田の行動を咎めた。

 

「重くない。むしろ私は軽い。太介も全然嫌がってない」

「虹夏、助けて!」

「おい」

 

 俺の胸の中でくぐもった声でごちゃごちゃ言っていた山田が、なにを思ったか突然俺の肩に、僧帽の辺りに噛み付いてきた。

 ガブリ。

 

「痛ってぇ! なにすんだ!」

 

 痛みから逃れる為、本能的に身体が暴れる。しかし山田は噛むことだけはやめたものの俺の上から退くことはなく、「酔うから揺らさないで」と抜かすだけだった。

 

「リョウ! 乱暴しないの!」

 

 そして、そんな山田の横暴も遂に白日の下に晒された。

 大天使(伊地知虹夏)は叱責を飛ばしてからまるで猫を持ち上げるように山田の両脇に手を入れ、ひょいっとロクに腰も入れずにそのまま持ち上げた。

 俺の身体の上から重みが消え、持ち上げられた山田が──しかしその手足の長さから完全に宙に浮くことは無く──そして伸びた両手が名残惜しそうに俺のシャツを掴んで離さない様が本当に猫のようだなと他人事のように感じて。

 

「……怒るよ?」

 

 虹夏が引っ張るたびににょいーんと山田の腕と俺のシャツが伸び、一向に俺から離れようとしない山田に業を煮やした虹夏がボソリと呟いた。

 その言葉だけで山田はすぐさま両手をパーの形に変え、怒りの対象ではない俺も思わず背筋を伸ばすのだった。

 

 閑話休題。

 

「ごめんね、太介くん。リョウが勝手なことして」

「勝手なことはしていない。当然のことをした」

「無茶苦茶言わないの! 寝てる太介くんになにかあったら困るから、側で大人しく見守ってるって話だったでしょ!」

「うん。だから、行動に移したのは太介が起きてから。それ以前はちゃんと黙って見てた」

「〜〜〜〜〜っ! もう! 太介くんからもなんとか言って!」

「えぇ……」

 

 ベッドの側、漫才師のように横並びに立っている二人。咎める虹夏とすり抜ける山田の舌戦は、されど決着が付くまでには至らず。

 このままでは(らち)が明かないと察したのか、虹夏が俺に応援を求めてきた。

 

「…………」

 

 さて。

 同意無く異性の友達に跨りキスをしまくるような奴に対して有効な説教とは、一体なんなのか。いやそれ以前に、なんで俺は未だベッドの上で拘束されているのかと考えてしまう。

 しかし虹夏のピンチである。

 断るわけにはいくまい。

 

「……山田」

「なに」

「勝手に人にキスしちゃいけないんだぞ」

「うぅ……」

 

 山田の目をしかと見つめ、ありきたりで面白みのない説教。この体たらくに流石の虹夏も顔を背けてしまい、果たして虹夏は俺が説教する様をきちんと見ていてくれたのかと不安に思った。

 というか今のこれを説教と認識してくれたのかと不安に思ってしまう。

 今のノーカンだったらどうしよう。

 これ以外になにを言えば良いんだよ。

 

「虹夏、こんなもんでどうだろう」

 

 なので、振ってみる。俺の説教見ててくれた? という意図も込めての振りである。

 

「…………」

「虹夏?」

「……リョ、リョウ? カッテニヒトニキスシチャダメナンダヨ?」

「……虹夏?」

 

 ロボットだとしてももう少し流暢に喋ってくれるのではないかというほどの、油の足り無さ具合。つまりはギクシャク。

 カウントされたのなら良いか、と俺はロボ虹夏のことは受け流すことにした。ロボであろうと虹夏は虹夏だ。

 

「反省してまーす」

山田(お前)いつからドレッドヘアーになったんだよ」

「きゅん」

「うわ、そうじゃん加点式だった」

「太介を好きになる一定のラインは(とお)に超えてるから、それ以降はやり込み要素だけど」

「や、やり込み要素?」

「加点時、気まぐれでスキンシップを取りたくなる。今の気まぐれはベロチュー」

「うわああああ! 虹夏ああああ!」

 

 閑話休題。

 

「自重しなさい」

「はい……」

 

 瞬き一つの間か、それともCMの一つや二つでも挟んだ頃か。

 いつの間にか、拳から煙を上げる虹夏と両手で頭頂部を押さえる山田という図が出来上がっていた。

 

「ほら、これ貸してあげるからちょっと大人しくしててくれる?」

 

 これ。

 虹夏が私服のポケットから取り出したのは畳まれた状態の一枚のハンカチ。

 ハンカチを使う場面といえば、水場で手を洗った後か涙や汗を拭う時だ。全てではないが、大体そう。

()()と自らの言葉に保険をかけたのは、ハンカチを差し出された山田の状態が上記のどれにも当てはまらないからだ。

 水場で手を洗ってもいないし、

 涙を流してもいないし、

 汗ばんでもいない。

 ハンカチが水で濡れていたならば、熱を持った山田の頭頂部に当てるのだろうとも考えられるが、その様子も無い。

 

「虹夏ありがとう」

 

 しかし山田は迷うこと無くそのハンカチを両手で掴み、当然のように鼻元へと持っていった。

 

「……まぁ、匂いは混ざってるけどこれはこれで」

 

 ぶつくさと何かを言いながらハンカチを鼻に押し当てる山田。もしかして俺の気付いていないところで鼻血でも出したのかと勘繰ってみたが、それにしては幸せそうな表情をしていやがる。

 山田はハンカチ越しに鼻呼吸をしたまま、近くのクッションにちょこんと正座で収まった。伸びた綺麗な背筋をこちらに向け、スンスンスンスンとここまで音が聞こえるほどの鼻呼吸を一心不乱に続けている。

 

「…………」

 

 唖然、としてしまう。

 普通ではない状況に置かれ、友達が普通ではない行動を取っているからだ。

 先程の山田しかり、今の山田を良しとしている虹夏しかり。

 山田が大人しくなったことを目視で確認した虹夏が、こちらに向き直ってはにかんだ。思わず見惚れてしまうその笑顔に、俺はまたしても口を開けたまま言葉を失うのだった。

 

「リョウったら、一度のめり込むと聞かないからさ」

 

 参ったよ本当。

 虹夏が溜め息混じりに笑いながら、ベッドに腰掛けた。虹夏の重み分、俺の腰辺りが虹夏の方へと傾いた。

 

「手首痛くない? 大丈夫?」

 

 問われ、未だバンザイのような姿勢で固定されている両手首に意識を向けた。

 そうだ。

 俺は一体いつまでこの体勢で──というかなんで俺は拘束されているのだろうか。ついそのまま質問してしまいそうになったが、まずは問いかけに答えるのが先だ。

 

「あ、あぁ」

「痛かったら言ってね? 少し緩めるから」

 

 というか、俺は何故手首を縛られているんだ。

 そう続けようとしたが、虹夏の『緩めるから』という言葉によってなんとなく意思を感じ取ってしまった。

 

「リョウになにされたの?」

 

 山田がハンカチの虜になり、虹夏と二人きりの会話になってからの何個目かの質問。

 声のトーンと同時に、室内の空気の重みも増したことを悟った。

 虹夏の問いは早くも質問ではなく、詰問に移りかけていた。

 液体の足りない口内。それでも潤いを求めて喉が動く。

 その動作が、固唾を呑んでいるようにも見えたらしく。

 虹夏の笑みが不自然なほど自然に深まった。

 

「答えづらい?」

「……や、山田から聞いた方が」

「私、太介くんの口から聞きたいな」

 

 見下ろされている分、視線に自由落下分の重さがプラスされている。

 避けては通れず、そして有無も言わせない虹夏の語気に俺は心の中で両手を挙げた。現実の俺もとっくに両手を挙げてはいるのだが、無論降参という意味での挙手だ。

 

「……匂いを嗅がれて、キスをされた」

「キス? 何回くらい?」

「…………」

「言いたくない?」

 

 言いたくはない。

 しかしその選択をしてみたとして、虹夏が許すとは思えなかった。

 だから、言うしかない。

 ハナから選択肢など無いのだ。

 

「……分からない。数えきれないくらい。顔中に」

「あとは?」

「あと……告白もされた」

「ふーん……」

 

 生返事と共に、虹夏の目が細められる。

 瞳の奥でなにを考えているのか。

 俺にとって好都合ではないなにかを考えているに違いない。

 漠然とだが、そう思った。

 

()()()

「なに」

 

 虹夏が、山田の名を呼んだ。それだけで意図を理解した山田がハンカチを片手に握り締めたまま虹夏の(そば)に寄った。

 

()()()

「よっしゃ」

 

 果たしてなにを()()のか。

 虹夏の不穏な声色によって背中に嫌な汗をかいたところで、二人が動き出した。

 虹夏は壁際に置いてあった料理酒(パッケージにデカデカと料理清酒と書かれている)と盆の上に置いてある缶ジュースを取りに。

 山田はハンカチを仕舞ったポケットから代わりに目薬を取り出し、俺のベッドの上へ。

 それぞれ、動き出した。

 

「な、なにごと?」

 

 虚勢。

 それから、二人を無闇に刺激しないという意図も込めて平穏を装う。早くもベッドの上に乗り込み、俺と壁の間に滑り込んで座った山田が、全てを察したかのようにフッと笑った。

 

「なんでもない」

「なんでもないことないだろ。なんだよその目薬」

 

 山田が右手に持つ目薬に瞳のピントを合わせるや否や、虹夏もベッドの上へと上がる。山田とは反対サイド──つまりは俺を二人で挟み込むようなポジション。二人から発せられている言いようの無い迫力に思わず口角が下がった。

 

「大丈夫だよ太介くん」

「虹夏まで。料理酒と缶ジュースってどういう組み合わせなんだ」

「缶ジュースに中身は入っていない。ジュースの缶、と言った方がいいかも」

 

 太介、飲み終わるの遅いから私の缶空けた。

 山田が褒めろと言わんばかりに補足を入れるが、意図が読めずにただ胸がザワつくばかり。

 虹夏が料理酒のキャップを開け、ジュース缶(山田曰く中身は入っていない)にゆっくりと注ぎ始めた。

 意図はまだ読めない。

 

「本当は、親のお酒を拝借しようと思ったんだけど。バレたら面倒だから」

 

 虹夏が料理酒を注いでいる中、山田が間を埋めるように語っている。

 意図はまだ読めない。

 

「ごめんね太介くん。料理酒って飲用じゃないから美味しくないらしいんだけど、アルコールはちゃんと入ってるから──はい、リョウ」

 

 虹夏がなにかに対する断りを入れ、料理酒が入った缶を山田に手渡している。

 俺の身体の上を通り過ぎて山田の手へと渡ったソレから、俺は目を離せないでいた。

 意図はまだ読めない。

 

「なにをされるのか皆目見当もついていなさそうな太介に、教えてあげる。ここに目薬を垂らすとどうなると思う?」

 

 ここ。

 つまりは、料理酒の入ったジュース缶の中。

 ということか。

 さっぱり分からない。

 

「? ど、どうなるんだよ」

「あー、危機感無し。これは危ないですね、解説の虹夏さん」

「危ないですねぇ、実況のリョウさん」

 

 未だ読めない意図に頭を悩ませるが、答えは出てこない。そんな俺を笑うように、山田がふざけた口調で虹夏に語りかけ、虹夏もそれに乗っかって答えていた。

 意図はまだ読めない。

 

「太介くんが飲んだくれ(あの人)にお持ち帰りされちゃう前で本当によかったよ」

「お、お持ち帰り?」

 

 それがテイクアウト的な意味ではないことは俺にも分かる。しかし、何故その言葉が出てきたのかが分からなかった。

 一向に明かされない真相に、眉間に皺を寄せて考える。

 少し経ってから山田が口を開いた。

 

「太介、クロルフェニラミンマレイン酸塩って知ってる?」

「クロル……はぁ?」

 

 舌を噛んでしまいそうな、長文極まりないカタカナ言葉に眉を(ひそ)める。それとは別に、山田が得意気にしているのもなんとなく腹が立った。

 意図はまだ読めない。

 

「クロルフェニラミンマレイン酸塩。この目薬に入ってる成分なんだけど、クロルフェニラミンマレイン酸塩にはアレルギー反応を麻痺させる効力がある。でもクロルフェニラミンマレイン酸塩をアルコールと一緒に摂取すると互いを増強させる効果に変わる──つまりクロルフェニラミンマレイン酸塩はアルコールの効き目を強くさせて、アルコールはクロルフェニラミンマレイン酸塩の麻痺させるという効き目を強めることになるというわけ」

「急に長文喋んな。全然分からん」

「つまり、悪酔いするし眠たくなっちゃうってことだよ。太介くん」

「な、成る程……成る程?」

 

 山田の高速詠唱に脳みそを不用意に掻き回されていると、虹夏からありがたい要約が降りてくる。礼を言いながら頭の中で噛み砕いて理解してみると、背中にかいた汗が急激に冷えていくのが分かった。

 意図が、読めてしまった。

 

「ちょ、ちょっと待て!? それを俺に!?」

「そう、私達は太介を悪酔いさせて、()()()()()をする」

「お持ち帰り!?」

「中学生の時、保健体育でやったアルコールパッチテストのこと覚えてる? 太介くん、腕真っ赤になっちゃってたよね」

「太介はお酒に著しく弱い。つまりこの作戦は効果抜群ということ」

 

 左右から話しかけられて混乱する。見知った二人の顔が見知らぬ誰かのように見えて、身体中の筋肉が強張ってしまっていた。

 

「……狼狽(うろた)えてる太介くん、可愛い」

 

 虹夏が微笑みかけてくる。その笑みに本能的に安心してしまっている裏で、山田は抜かりなく缶の中に目薬を数滴垂らしていた。

 抵抗しなければ。

 縛られた両腕に結構な力を入れて身じろいでみたが、ベルトから少し軋んだ音が鳴っただけでどうということも無かった。

 抵抗しても、意味は無さそうだ。

 それでも──

 

「太介、安心して。目が覚めたら『落ち着いて聞いてください』ってネットミームちゃんとやってあげるから」

「それを聞いてどう安心できるんだよ! そもそも俺はどこに──と言うか一体全体なんでお持ち帰りをされるんだ!」

「太介くんのお家だよ。だから、言っちゃえばお持ち帰りというよりかは帰宅に近いんだろうけど」

 

 俺の家。

 今まで触れてきた映画などのイメージから廃墟的な場所を想像してしまっていた俺は、その言葉を聞いて少し安堵する。

 しかし虹夏の()()()()()という言葉を聞いて、それどころではないと鼓動が急激に早まった。

 

「太介を眠らせて、太介の家まで運ぶ。そこで太介を()()して、なんとか3人でずっと一緒にいれるようにするというのが私と虹夏の最終目標」

「だから俺は、じいちゃんとばあちゃんの仕事を──」

「太介」

「ッ」

「私も虹夏も、酷いわがままを言っているという自覚はある。──それでも、私達には太介を失うという選択肢は選べない。私達はエレン、ミカサ、アルミンのサンコイチのようなものだから」

 

 山田が当然のように告げた。

 つまり、山田はこう言っているのだ。

 じいちゃんとばあちゃんのことは放っておいて、ずっと東京にいてくれないか。

 と。

 勿論、心の底から俺の祖父母を蔑ろにしているわけじゃないのだろう。しかし俺の選択を認めない以上、どうしたって結果的にはそういうことになる。

 俺は自分の意思を伝える為に、声を張り上げた。

 

「今生の別れってわけじゃないんだって! 半年に一回、それが嫌なら二ヶ月に一回くらいのペースで集まって」

「駄目、足りない」

 

 譲歩とまではいかなくとも、和解はしなければならない。そう思った俺は案を出してみせるが、山田は静かに否定をしてみせた。

 

「足りないって……。せ、せめてここで話し合いを」

「話し合いならさっきして、決裂したばかり。今は説得のターン」

 

 太介はもう、私と虹夏にとってまな板の上の鯉だから。

 淡々と告げる山田、しかしその瞳には普段は感じられない()()のようなものが幾分か含まれているように感じた。

 端的に言えば、テンションが上がっているような──そわそわと落ち着かない感情が()()取れた。

 

「明後日は学校だから、明日の夜までに良い答えが聞けるように私もリョウも頑張るからね!」

「乞うご期待」

 

 意味が分からない。

 異国の言葉で話しかけられているようだ。

 虹夏の両手が俺の顔へと伸びて、通り過ぎた。

 

「寝転がったままじゃ飲みにくいからね」

 

 虹夏は呑気な様子で俺の後頭部を持ち上げ、そこらに退かされていた枕を間に入れた。

 少し上がった視界によって自分の身体が楽に見下ろせるようになったが、そんなことよりも言葉を発する虹夏の()()()()()()(かえ)って空恐ろしくて、俺は説得と時間稼ぎの両方の意図を込めて口を開いた。

 口を開く(時間を稼ぐ)しかなかった。

 

「虹夏、目を覚ましてくれよ……」

「? 覚めてるけど。どうしたの太介くん」

 

 虹夏は俺の言葉をどう受け止めたのか。

 それとも最初から受け止めてすらいないのか。

 虹夏は俺に視線を落としたまま、右手は俺の胸の上に置き──左手は俺の頭を撫で続けている。

 目を閉じてしまいたくなる温かさに抗うように続けた。

 

「手口も動機も全く分からないけど、山田に(そそのか)されたんだろ? ちょっと落ち着いて、深呼吸でもして……」

 

 でなければ、誰に対しても優しく思い遣りに満ちた虹夏のような人間がこんなことをする筈が無い。

 俺は確かな理屈を以て、虹夏の目を見て倫理を説いた。

 

「ぷっ」

 

 虹夏の目が覚めるまで、続けなければ。

 そう思って次の言葉を考えていたところで、視界の外から噴き出すような笑い声。

 顔を動かせば、山田が小馬鹿にしたように口元を押さえていた。

 

「……なんだよ山田。元はと言えばお前が」

「太介、本当に馬鹿。よりにもよって虹夏に助けを求めるなんて」

「うるさい山田。俺は今虹夏を正気に戻そうと──」

「私よりも虹夏の方が余程変態なのに。縋る相手を間違えると、後が怖いよ」

「なにを……」

 

 戯言。

 しかしそう一蹴するにしては、山田の瞳には過剰な憐れみの感情が含まれているような気がした。

 

「太介、今からでも遅くない。私に媚びるべき。この場に於いて、私は2番目に冷静であるという自覚がある」

「俺が一番冷静じゃないってか? 山田、お前さっきから言ってることがおかしいぞ」

「……虹夏が()に手を付け始めたら、止められるのは私だけ」

 

 まな板の上で()が暴れても、活きが良いと喜ばれるだけだから。

 よく考えてみろ、と山田の瞳が語りかけているような気がした。虹夏にバレないように、それこそこちらに向かって()()()でもしているかのように。

 訳が分からない。

 俺をベースで殴ってまでしてこんな状況にまで持っていった山田が、何故今更になって俺を助けようとするのか。

 山田の考えていることが分からない。

 

「……っ、同意無くキスしまくるような奴がなに言ってんだよ」

 

 だから、つい言い返してしまった。考えも無しに、ただ悪態を吐いてしまった。

 

「へぇ……」

 

 途端に、山田の瞳の温度が下がった。

 もうその瞳は友を見るソレでは無くなっていた。

 こちらを思い遣ることも憐れむこともない、被捕食者を目の前にした捕食者のような、ただただ冷たい瞳。思わず直前の言葉を撤回したくなったが、それよりも早く山田が。

 

「虹夏、始めよう」

「遂にやっちゃう?」

 

 山田の提案に、虹夏がどこか物足りなさそうな表情で返す。

 山田は溜め息混じりに続けた。

 

「うん。そろそろ親が帰ってきてもおかしくないし、お腹も減ったし」

「絶対後者が理由でしょそれ……まあ良いけどさ。太介くん、お家着いたらご飯食べようね。私が食べさせてあげるから」

「太介、抵抗しないで」

 

 話はまとまったようで、俺の胸の上に置かれていた虹夏の手に力が入った。上から押さえつけるように、息苦しく感じるほどに。

 山田が持つジュース缶が口元に迫る。抵抗し首を横に振るが、もう片方の山田の手によって顔の位置を固定されてしまった。

 ジュース缶の飲み口と唇が触れる。

 ゆっくりと手前へ傾けられたジュース缶。飲み口へと中の液体が流れ、唇に冷たい感触。しかし飲む準備などしていなかった俺は、口の端から溢してしまう。

 こんな状況でも不思議と『服が濡れてしまう』と感じてしまうようで。顎から首へと流れる冷たい感触に焦った俺は、ジュース缶の中身が酒である事をつい忘れて口に含んでしまった。

 塩味(えんみ)

 (ねつ)

 顔が──いや、顔だけじゃない。全身が火に包まれたのかと錯覚した。

 それ程の塩辛さと熱が、俺を襲った。

 異変を感じてからは早く、俺は口内の酒が喉へと下る前に自らの胸の上へと吐き出した。

 

「ッ!? ──ゲホッ……!」

「あ、溢した」

「太介くん、大丈夫!?」

 

 冷めた声色で他人事のように呟いた山田と、慌てた様子でボックスティッシュを持ってきて俺の顔を拭ってくれた虹夏。そして、何度も咳き込む俺。

 顔から全身へと広がった熱はその瞬間こそ身悶えする程の痛みではあったが、こうして咳き込んでいる今はもう痛みは引き始めている。代わりに感じるのは脳の重たさと、身体の輪郭を一枚薄い布で覆われているような不思議な温かさ。じんわりと口の中も熱くなり、ついでにしょっぱさから水分が欲しくなる。思わず改行することすら忘れてしまうレベルの混乱が、一挙に押し寄せてきていた。

 虹夏はティッシュを4枚ほど使って俺の喉やら服やらを拭い終え、それから一息ついた。その様子を瞳を動かして見上げるという動作すらも気怠く感じていることに驚いた。

 まずい。

 口に含んだだけなのに酔い始めている。

 アルコールパッチテストは、正しかったようだ。

 

「に、虹夏……」

 

 助けてくれ、とそんな思いを込めて名を呼ぶ。虹夏は俺の呼び掛けに笑顔で答え、頭を撫でてきた。

 

「大丈夫だよ太介くん。一口飲んでくれればすぐ終わるからね」

 

 風邪をひいた子供に粉薬を飲ませようとしているかのようなニュアンス。しかし俺が今飲まされようとしているのは酒であり、薬と違って飲まなかったからといって体調が悪いまま戻らないなんてこともない。

 俺はそもそも健康なのだから。

 

「でも、お酒は百薬の長とも言う」

 

 うるさい、思考を読むな。

 力の入らない瞳で山田を睨むと、山田はおどけた様子で肩を竦めた。

 

「太介くーん? 素直に飲んで欲しいなー私」

 

 虹夏が山田の手首を掴んで、俺の口の前へとジュース缶を誘導する。早く飲めと催促をされている。

 

「虹夏、助けてッ……」

 

 眼前に差し出されたジュース缶から、虹夏へと視線を移す。恥も外聞も無く、こんなことやめてくれと幼馴染に懇願する。

 俺の視線を受けた虹夏は、困ったように笑った。

 

「うーん。太介くんのお願いは出来る限り聞いてあげたいけど、こればっかりは聞けないかなぁ」

 

 ごめんね、太介くん。

 虹夏は笑って謝り、山田へ続きを促した。

 

「太介、飲んで」

「むぐっ──ゲホッ、ゲホッ……!」

「ありゃりゃ、また溢しちゃった」

「……太介、私のベッドなんだけど」

 

 唇にジュース缶があてがわれ、中身を流し込まれる。しかしすぐに吐き出してしまった。

 一口含んだ際に生じた身体の異変と、なにより味の不味さ。それを再度味わえと言われても、俺の身体が本能で拒むのだ。

 口内に残る酒の味を全て掻き消そうとするかのように何度も咳き込んでいると、山田に胸ぐらを掴まれた。

 山田の端正な無表情(かお)が視界いっぱいに広がった。

 

「時間が無いから、わがまま言わないでほしい」

 

 細めた瞳に睨まれ、思わず身体が硬直した。友であり親友である山田から怒りを向けられているから──というのもあるが、こんな状況に耐えられなくなった俺の頭が「美人は怒っても美人なんだな」と──逃避染みた思考をしてしまったというのも一因を担っているような気がした。

 そしてなにより、時間だ。

 山田の言葉から、今現在のおおよその時間──それから俺が目指すべきゴールが見えた。

 二人にバレないように

 

「『山田のご両親が戻ってくるまでの時間を稼げれば』──って思ったんだ」

「……本当、タネを教えてほしいぜ。それ」

「太介くんそんなこと考えてたの? もうっ! 酷い!」

 

 山田のセリフから俺の思考を知った虹夏が可愛らしく頬を膨らませている。

 それだけ見れば普段通りのようにも思えるが、虹夏が山田の異常な行動を止めることは決して無い。この場において、静観がどれだけ自らの立場を明確にしてしまうかなんて言うまでもない。

 山田が再び俺の唇にジュース缶をあてがい、俺が口内に流れてきた酒を吐き出して。

 三度に渡った飲酒の強要は、いずれも成功せず。

 このまま吐き出し続ければ良い。

 そうすればいつかは。

 塩味とアルコールの味(アルコールの味というのを今日始めて思い知らされた)が舌の上に不快に居残りつつも、俺は胸の中に僅かな希望を抱いていた。

 咳き込む。

 

「……中々飲んでくれないなぁ」

 

 それから数分後。

 酒に顔とベッドを濡らした俺を、見下ろした虹夏が困った様子で呟いた。

 山田がすぐさま助け舟を出す。

 

「虹夏、鼻を摘んで。私は口を塞ぐ」

「そっか! そうすれば吐き出せないし、息もできないから飲み込むしかないもんね」

「次で成功させよう」

「うん──太介くん? もう抵抗してほしくないなぁ、私」

 

 虹夏が念を押すように笑いかけてくる。

 

「太介、お酒で眠るのが嫌ならまたベースで殴って気絶させるという手もある。アルコールによる昏睡よりも気絶する時間が不確定的だからあまり気乗りはしなかったけど、()()()よりも躊躇しない自信はある」

 

 山田が強行策をチラつかせるように笑いかけてくる。

 二人の瞳が、見つめてくる。

 

「……い、嫌だ」

 

 怖い。

 何故幼馴染がこんな視線を向けてくるのか。

 何故その瞳に見つめられて動悸が止まらないのか。

 訳も分からずに歯の根を震わせていると、山田の片手が俺の顎に添えられた。

 

「太介くん、嫌々言いつつもそこまで暴れないから可愛いよね」

「両足は自由なんだから、蹴るなりして抵抗すれば良かったのに」

「あー、太介くんに蹴られたら流石に落ち込んじゃってたかも。『そんなに嫌だったんだー』みたいな」

「でも太介はそうしなかった」

「太介くん、優しいもんね」

「太介、良い奴だから好き」

「大好きだよ、太介くん」

「太介、大好き」

 

 矢継ぎ早に、テンポ良く、軽快に、二人の言葉が重ねがけされる。今の状況とはミスマッチな二人の微笑みに思考を停止させられている間に、唇にジュース缶の飲み口が当たった。

 虹夏が左手で俺の頭を撫でながら、右手で俺の鼻を摘んだ。しかしまだその手に力は入ってない。よって鼻呼吸自体は可能。それもいずれは……。

 近い将来訪れる恐怖にごくりと生唾を呑み込んでいると、山田が切り出した。

 

「太介、最後に質問。ちゃんと答えられたらお酒飲まずに自分の足で家まで歩いて良いよ」

「ここまで来て流石になにもせずに解放ってわけにはいかないから、私もリョウもやることやっちゃうけどね。でもちょっとは気が楽だろうし? 相思相愛ってことになるから盛り上がるかも? ──あはは、言葉にすると恥ずかしいね!」

「じゃあ質問。太介は、私と虹夏とずっと一緒にいてくれる?」

 

 質問。

 唇に缶のアルミの冷たさが続く中、()()と丁寧に前置きされた質問。これは山田なりの慈悲だったりするのだろうかと、虹夏に鼻を摘まれながら考えてみた。

 唇からジュース缶が離されることはない。つまり、YESかNOかを首の動きだけで答えろということなのだろう。

 

「…………」

 

 危機的状況に置かれて脳の回転速度が上がったことによる、刹那のシンキングタイム。

 周囲の時間の流れが遅く感じているこの不思議な空間にて、存分に考えるとしよう。

 回答は、間違えられない。

 決して。

 

「…………」

 

 まず俺は、虹夏と山田(二人)のことをとても大事に思っている。こんなことになってもその前提は変わらないし、揺るがない。

 二人がピンチなら理由も聞かずに助けに向かうし、悲しんでいるなら全力で励ます所存だ。

 二人の将来──つまりは結束バンドの活動だって出来る限り応援してやりたい。

 

「…………」

 

 そう、出来る限り。

 二人のことは大事だ。

 でも俺は、早くして亡くなった両親に代わって俺をここまで育ててくれたじいちゃんばあちゃんのことも、同じように大事に思っているのだ。

 

「…………」

 

 親の跡を継ぐのとはワケが違う。

 祖父母なんだ。

 じいちゃんばあちゃんなんだ。

 今は香川で農家として元気に働けているが、それもいつまで続けられるか分からない。

 いつかは──卒業後は俺が跡を継がなければ。

 じいちゃんとばあちゃんが元気なうちに継いで、二人を楽させてあげなければ。

 幸い、STARRYのバイト代は貯めてある。卒業後はこれを足しにして──話がズレた。

 つまり俺は、幼馴染と家族のどちらかを選べと言われたら家族を選ぶということ。

 二度と会えないわけでもないのだし、会う頻度が減るなら幼馴染の方が影響が少ない。

 今はスマホという便利なアイテムもある。ネットさえ繋がっていればどこにいても顔を見れる時代だ。

 だから俺は、卒業後は祖父母の元へ帰るよ。

 

「…………」

 

 というのを、馬鹿正直に言ってはいけないのだと今日この場で──ベッドの上で学んだ。思い知らされた。

 だから、嘘を吐かなければ。

 虹夏と山田にとって耳障りの良い言葉だけ言って、取り敢えずこの場を切り抜けなければ。

 胸は痛むが、今後のことを考えたら絶対にそうした方がいい。

 俺なんかの為に、二人に人生を棒に振ってほしくはないからだ。

 結束バンドには、どこまでも高く羽ばたいてほしいからだ。

 そうか。

 ……それが本音だったのかもしれない。

 

「──ッ」

 

 虹夏と山田の視線を感じて、意識が現実へと引き戻される。体感では一瞬だが、どれだけの時間が経ったのかは分からない。あまり黙っていると否定と取られかねないし、早いところ答えないと。

 

「いや、答えなくて良い」

 

 縦に首を振ろう。今まさに脳から指令が送られた瞬間に山田の言葉。それを受けて()()の指令が、首肯の指令に上書きされる形で全身に送られた。

 

「どういうこと?」

 

 虹夏が首を傾げて山田に問うた。

 

「顔を見れば分かる。太介、嘘吐こうとした」

「……そうなんだ」

「ちょ、ちょっと待て! 俺は──」

「喋るな」

「…………」

 

 気圧され、口を噤んだ。山田は数秒睨み続け、俺が山田の迫力にビビってしまって口を開かなくなったことを確認してから。

 溜め息。

 

「……太介、覚えてるよね。『嘘吐きには等しく罰を与える』って」

 

 首肯。

 

「なら良い。──罰は虹夏と考えておくから、今は気にしないで」

 

 首肯。

 

「じゃあ、今度こそお酒飲んで」

 

 首振(かぶりをふる)

 

「……チッ。まあ反抗しても良いけど、もう付き合ってられないから()()()()()()()()()()

 

 苛立った様子の山田が、遂にジュース缶を傾けてしまった。缶を持つ左手と俺の顎を押さえる右手によって傾けたまま固定されてしまったジュース缶は、続々と中身を流し込んできて。同時に、虹夏が俺の鼻をしっかりと摘んで鼻呼吸を不可能にした。

 

「太介くーん。口閉じてちゃ駄目だよ」

 

 発言権を奪われていたついでに、唇を結んでなんとか酒を口内に入れないようにと抵抗していたのを即座に見抜かれた。

 虹夏に摘まれている鼻が、万力で潰されたかのような痛みを訴えてきた。

 痛みに耐えかねて唇の力を緩めると「偉いね」と虹夏が微笑み、同時に鼻の痛みも無くなった。

 酒が口内に流れ込む。

 アルコールが味蕾に触れる。

 ジュース缶の中身が空になり、山田が空き缶となったソレをベッドのヘッドボードへと置いてから、左手で俺の口を塞いだ。空気の入り込む隙間も無く、強く、強く。

 

「──ッ! ──ッ!」

 

 呼吸が出来ない。

 苦しさに両足が暴れるが、その動作をしたことによってなにが変わるというわけでもない。

 しかしこの暴走は本能であり、俺の思考とは全く関係の無い範疇の動作である。

 苦しい。

 苦しい。

 

「太介、飲み込んで」

「そうだよ。飲み込んでくれたら手離してあげるから」

 

 両目の焦点が合わずに視界がぼやけ始める。脳に酸素がいかなくなっていることへの危険信号。その第一フェーズだ。

 虹夏と山田のことを髪型の色味くらいでしか判別出来なくなっている最中(さなか)、二人の声だけは両耳にしっかりと這入り込んでくる。

 呼吸は出来ない。

 身を捩って苦しさのままに暴れるという行為が余計に体内の酸素を消費し、やがて俺の両足は動きを止め、パタリとベッドに力無く投げ出された。

 呼吸が出来ない。

 大人しく口内の酒を飲み込んで潰れるのと、このまま酸欠で意識を失うのと。果たしてどちらが正解なのかと逡巡。考えられるということはまだ脳にはいくらかの酸素が残されていて──

 

「……太介、好き」

 

 左の耳元で、囁かれた。

 

「あー! ずるい! ……太介くん、大好きだよっ」

 

 右の耳元で、囁かれた。

 両の鼓膜を突き抜け、脳内を駆け抜け、ハイタッチをしてからそれぞれもう片方の耳へと通り抜けた二人の一言は、俺の思考を取り止めさせるには十分過ぎる衝撃で。

 耳から感じる場違いの快感に、俺の身体から意志が抜けてしまった。

 ごくり。

 

「あ、飲んだ」

 

 飲んでしまった。

 虹夏が手を離したことによって鼻から死にものぐるいで酸素を取り入れ──なんとか酒を吐き出せないかと口を塞いでいた山田の手のひらに咳き込み──山田が手を離したことにより口での呼吸が自由に出来るようになり──ようやくありつくことができた酸素を喘ぐように必死に取り込んで──ぶわりと額から汗が吹き出た。

 

「うわっ、太介くん顔真っ赤」

「そんなレスバみたいなこと言ってないで──本当だ、真っ赤」

 

 今すぐ北極まで行って分厚い氷に顔を押し付けたいくらいの顔の熱さに襲われながらも、道理でこんなに熱いわけだと二人からの指摘に納得してしまった。

 ふと、視界がぐるぐると回り始めた。

 意識が後退を始め、両目に映る画面サイズが段々と小さくなっていく。

 

「……?」

 

 目蓋が重たいような気がする。

 喉が焼けるように痛い気がする。

 頭が殴られたように痛い気がする。

 舌が滑らなくなったような気がする。

 鼓膜に蓋をされているような気がする。

 両手足の先の感覚が無いような気がする。

 両目が飛んでいってしまいそうな気がする。

 

「おーい、太介くーん」

 

 五感の全てが鈍り、自分事として感じられなくなってしまった中。それでも、どこからか虹夏の声が聞こえるというのはなんとなく分かった。

 面倒くさがりになってしまった瞳をなんとか動かして虹夏を探すと、虹夏は俺の顔の前で手を振っていた。

 ずっと目の前にいたのに、今気が付いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ¥▽

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇリョウ。ウトウトしてる太介くん可愛過ぎない? 心無しか目で必死に助けを求めてるような気がするんだけど」

「あー。太介、まだ虹夏が変態ってことには気付けてなさそうだから。……可哀想に」

「最後に結ばれるんだから良いの! というか、さっき抜け駆けでキスしてたことまだ許してないからね!」

「ごめん。代わりと言っちゃアレだけど、一回戦目(最初)は譲る」

「え、良いの? てっきりここで争いになるんだとばかり」

「良いよ。太介の貞操は()()()()()()()()にとっくに奪われちゃってるし、()()()()()()()()は太介を家のベッドまで運び終えたらそのままおっ始めたいだろうし、私はお腹減ってるし」

「あははー……。じゃ、じゃあ帰りにどこか寄ってくる?」

「うん。──あ、ついでにドラッグストアにも寄ってきていい?」

「私は全然良いけど……ドラッグストア?」

「バンドマンに避妊具は必須だから」

「はいはい、バンドマンね。ここまで来ちゃったら私は別に無しでも良いんじゃないかなって思ってるけど」

「虹夏、あくまで私達の目的は太介を東京に──私達のそばに留まらせること。なるべく早くゴールインすることじゃない」

「? 一緒じゃん」

「…………」

「え、なにその顔」

「……はぁ。虹夏、結束バンドはどうするの」

「……あー」

「ご馳走を前にして現実を忘れないで」

「ご、ごめんごめん。確かに、太介くんが思いの(ほか)物分かりが良いってパターンもあるもんね。そうすれば明日からはまた()()()()()だし」

「そういうこと」

「……太介くんもすっかり寝ちゃったことだし、早いところ運んじゃおっか」

「賛成──あ、虹夏。これあげる」

「なんでもう既に避妊具(ソレ)持ってるの……」

「もしもの時の為に、何個か持ってた」

「……もしもの時?」

「うん。太介が私の美貌に我慢出来なくなった時とかの為に──嘘嘘、そんな睨まないで」

「……あーあ。もう別に良いけどさぁ、真顔でピースされるとムカつく」

「本当に略奪する気だったなら、今こうしてない。私は太介のことが好きだけど、虹夏のことも好きだから」

「……はいはい、私も好きだよ。幼馴染として」

「虹夏、大変だけど二人で愛していこうね。太介のこと」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「…………ッ」

 

 目を、開いていた。

 開いた自覚も無ければ閉じていた自覚も無いが、()()()()に遭えばこうしてベッドの上で前後の記憶が曖昧になってしまうのも仕方がない。

 そうだ、仕方がない。

 山口太介は、ズキズキと痛む全身に顔を顰めながら視線を動かして現状把握に努めた。

 

「うぅ…………」

 

 うつ伏せ。

 身体の前面を漏れなくくすぐる慣れ親しんだ心地良さと普段使っている柔軟剤の匂い。

 山口太介が今無様に転がっているベッドは、紛れも無く彼が普段から使用しているベッドだった。

 身体の全面(前面)をくすぐる慣れ親しんだ心地良さ。

 山口太介は全裸だった。

 

「…………」

 

 いつの間に眠っていたのか。

 そう疑問に思うことはあれど、しかし山口太介は自らが衣類を身に纏っていないことについては疑問には思っていなかった。

 なんの疑いも抱いていなかった。

 

「…………そうだ」

 

()()()()

 昨日の午後から夜更けまで──もしかしたら朝方まで続いていたかもしれない、出来事。山口太介の身を襲った悲劇。

 酒に酔わされ、昏睡状態で襲われた。

 幼馴染二人から、有無を言わさずに。

 強姦(レイプ)

 ベッド近く、開け放たれた小窓に小鳥が止まって楽しげに囀っている。

 秋の近付きを知らせる少し涼しい朝の風に頬を撫でられながら、山口太介は昨晩のことを思い出し、自身の肩を抱いて震えていた。

 

「…………」

 

 泣かされた。

 啼かされた。

 無茶をさせられ、乱暴をされた。

 喉は枯れ、背筋は筋肉痛を訴え、腰は抜け、背中には無数の引っ掻き傷。首や腕、腿には噛み跡やキスマーク。唇はヒリヒリと荒れて、股間は無くなってしまったのではないかと思うほどに感覚が無かった。

 幼馴染である伊地知虹夏に甘やかされ。

 幼馴染である山田リョウに責め立てられ。

 何度も何度も、ロクな休息も取れぬまま夜通し求められて。果てても果てても許してもらえず、しまいには得体の知れない精力剤のような物まで飲まされた。

 泣いても抵抗しても、二人をいたずらに興奮させてしまうだけの一晩。

 それでも──何故生きているのか不思議なくらいだが──山口太介は生きていた。生き残っていた。

 昨晩の蛮行を思い出し、涙を流すことが出来ていた。

 ベッドシーツはどうやら山口太介が眠っていた間に変えられていたようで(どうやったのかは不明)、シーツはどこも濡れてはいないし汚れてもいない。

 

「…………」

 

 そして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「…………」

 

 スマホが、鳴っていた。

 

「…………」

 

 なんの設定も変えていない、デフォルトの着信音。枕元に無造作に置かれたスマホが、それなりに大きな音と振動によって自己主張をしていた。

 鳴っているスマホは山口太介の物ではない。

 

「…………山田のか」

 

 ──リョウって呼んで。

 

「…………ッ」

 

 山田リョウの名を口にして、昨晩ファーストネームで呼ぶようにお願い(強要)されたことを思い出して息が詰まった。あまり思い出したくない記憶を頭の隅へと追いやり、重たい右手を伸ばしてスマホの画面を確認してみた。

 画面には大きく伊地知虹夏の文字。伊地知虹夏が山田リョウに向けて電話をかけているらしい。

 

「…………」

 

 そして山口太介は思い至った。

 二人は今この家にいないのではないか、と。

 前提として、同じ家の中で電話はかけない。緊急時──つまりは容態が急変した等の理由で助けを求めている可能性もあるにはあるが──たった今着信が止んだこと、そしてスマホの持ち主である山田リョウがいつまで経っても現れないことが、山口太介の中の仮説に補強をする形となった。

 

「……り、リョウ。虹夏」

 

 着信が止み、静けさを取り戻した寝室。山口太介は恐る恐る二人の名を呼んでみた。枯れた喉ではいつものように声を伸ばしたり張り上げたりは出来ないが、それでも今出せる精一杯の大声で名を呼んだ。

 静寂。

 

「…………いない、のか」

 

 不在。

 どんな理由で不在なのか山口太介には分かりようが無いが、今この家に誰もいないということが分かれば十分だった。

 両腕に力を入れて上体を持ち上げる。オットセイのような体勢になってから、右腕が耐え切れずに崩れた。

 ベッドから落ちる。

 受け身も取れずに背中を強打して少しの間悶絶し、ベッドを掴んでなんとか立ち上がることに成功した。

 

「…………」

 

 膝も震えている。

 腰も背中も酷く痛む。

 それでも、山口太介に今の絶好のチャンスを逃すという手は無かった。

 寝室内、ウォークインクローゼットの扉を開ける。中に入り、衣類の種類ごとに分けられたスペースから下着と靴下、それからハンガーにかけられていたTシャツとジャケット、畳まれた状態のデニムパンツをひったくるように取り出した。

 ベッドに戻り、腰掛ける。

 今の山口太介に、立ったまま着替えるだなんて芸当は不可能だったからだ。

 

「…………」

 

 数分後。

 色合いと統一感も無い格好ではあるが、山口太介は全裸の状態から衣服を身に纏うことに成功した。

 外に出ても恥ずかしくない格好になった。

 

「…………」

 

 そう。

 山口太介は、この機に外に出ようとしていた。

 昨晩の二人曰く()()なる行為は山口太介が香川行きを諦めるまで続けるらしい。

 昨日の自分が首を縦に振っていない以上(勿論、覚えていないだけで身に余る快楽に堪え兼ねて説得に応じてしまっている可能性もあるが)、()()は今日も続くのだろう。

 

「…………逃げ、ないと」

 

 壁伝いに歩き出す。

 恐る恐る寝室のドアを開け、リビングへ。

 たまたま静かだっただけで、二人は普通にリビングにいた──なんてことも想像していたが、リビングには誰もいない。

 綺麗に片付かれているリビングのテーブルに、ポツンと自分のスマホが置かれていた。

 足を引き摺るように、短い歩幅で歩いてスマホを手に取る。画面をタップしてみれば、充電は30%ほど残されていた。

 

「…………良かった、これで連絡が出来る」

 

 スマホをデニムパンツのポケットに入れ、玄関へと向かう。外に出て、安全な場所で誰かに助けを求めなければ。伊地知星歌か、廣井きくりか、SICKHACKの二人か結束バンドの二人か──祖父母には間違っても相談出来ない内容だが、それ以外なら兎に角誰でも良い。

 壁を伝い、廊下を歩く。

 洗面所に顔を向けると、ゴゥンゴゥンと洗濯機が回されていた。あの中には汚れたシーツや自分の衣類などが入っているのだろう。

 伊地知虹夏は洗濯をしてからどこかに出かけたのだろうか。目の前に広がるふとした日常に、山口太介は思わず目を細めた。

 どうしてこんなことになってしまったのだろう。二人の笑顔を思い出し、芋づる式に昨晩の二人を思い出してしまってしばし懊悩。

 

「…………」

 

 そして、玄関。

 玄関には山口太介が普段履くスニーカーが二足と、夜間コンビニに行く時等に使用するサンダルが一足。

 ドアにはコピー用紙がセロハンテープで貼り付けてあり、『逃げないこと』と伊地知虹夏の可愛らしい丸文字で大きく書かれていた。

 

「…………」

 

 山口太介は張り紙から目を逸らした。

 伊地知虹夏の靴も、山田リョウの靴も無かった。

 目論見通り、二人は外出しているようだ。

 現在時刻7時30分。

 もしかして各自家に帰って着替えでも取りに行ったのだろうか。

 それとも、秀華祭に備えて朝も早くからSTARRYに練習しに行ったのだろうか。

 二人の外出の理由をぼんやりと考えながら、山口太介は玄関のドアを開けた。

 山口太介はマンションに住んでおり、玄関のドアを開ければ目の前には下北沢の街並みと青空が見渡せるロケーションになっている。

 こんな朝でもいつもと変わらず目の前に広がった下北沢の景色に目を焼かれる。思わず泣いてしまいそうなくらいにはいつも通りで、思わず泣いてしまうくらいには山口太介の精神は乱れてしまっていた。

 共用の廊下を歩く。

 エレベーター乗り場に着いた。

 二つ並んであるエレベーターの内右側は内部の改修作業によって使用禁止になっている為、山口太介は左側のエレベーターの、下方向に向いた矢印のボタンに人差し指を伸ばす。

 しかしボタンを押す前に、ドア向こうのワイヤーが動き始めたのが目に入った。それでも惰性でボタンを押し、エレベーターが上がってくるのを待つことに。

 

「…………」

 

 上を見上げて、エレベーターの現在位置をぼんやり眺める。一階から上がってきているらしいエレベーターは、途中どこへも止まらず真っ直ぐにこの階へと上がってきた。どうやらこの階の住人らしい。果たして今の自分は挨拶を交わせるくらいの表情は浮かべられるだろうかと心配になったが、会釈一つで良いだろうと自分に言い聞かせて──

 

「…………」

 

()()()()()()()()

 

「あっ、おはよう太介くん」

「おはよう太介」

 

 二人はいつものように挨拶をしながら、普段通りの表情でドアの開いたエレベーターから降りてきた。

 対峙。

 昨晩のことを思い出して足が震え出す。とてもじゃないが二人とは目が合わせられず、恐怖に項垂れて視線を落としていると、伊地知虹夏の手が山口太介の肩にポンと置かれた。

 

()()()()?」

 

 触れられた左肩が──そして全身がガクガクと震え出す。呼吸も上手く出来ず、額に嫌な汗をかいてきた。

 

「太介、帰るよ」

 

 背後に回った山田リョウが、両手で山口太介の背を押し始めた。

 伊地知虹夏は肩に置いていた手を山口太介の手に絡め、先導するように引っ張った。

 山口太介が這々の体で歩んできた共用廊下を戻る形で、三人揃って。

 

「…………い、嫌だ」

 

 しかし、山口太介の足は動かなかった。

 その理由が恐怖によるものか山口太介自身の意思によるものかはこの際定かではないが、山口太介は震えながらもはっきりと自らの意思を二人に告げた。

 山口太介の言葉に伊地知虹夏が振り返る。その表情は笑ってこそいるものの、何故ここまで笑みを深められるのかと疑問に思うくらい口角が吊り上がっていた。

 

「ヒッ……」

 

 山口太介はその迫力に思わず半歩下がるが、それ以上は背中に当てられた山田リョウの両手によって阻まれてしまった。

 呼吸が浅く、早まる。

 自分の心臓の音がやけに聞こえるという身体の異変に苛まれながら、山口太介はなんとか呼吸を落ち着けようと口から空気を吸い込んだ。

 しかし極度の緊張によって山口太介の心臓は通常よりも素早く収縮を行ってしまっていて、吸い込んだ空気は肺が膨らむよりも前に、すぐに吐き出されてしまった。

 

「──太介」

 

 背後から声をかけられる。その冷たい声色に呼吸が止まった。

 心臓すらも止まってしまいそうな冷気を背中に浴びながら、背後に立つ山田リョウの続く言葉を待つ。

 山田リョウは一歩前に出て山口太介に近付き、後ろから抱き締めた。左手を山口太介の胸に回し、右手を山口太介の頭に回し──右手で強引に山口太介の頭をグイと横に傾かせて、空いた左耳に囁きかけた。

 

「──罰のこと、覚えてる?」

 

 罰。

 微笑み続ける伊地知虹夏を一瞥してから、山口太介は口を開いた。

 

「嘘吐きには等しく……」

「そう、それ。ゴミ捨てに行きながら、虹夏と罰の内容をどうするか考えてて」

 

 そうか、だから目が覚めた時いなかったのかと山口太介は心の中で合点がいった。今となってはどうでも良いことだが、それでも答えを得たという一点に絞ればほんの少しだけ心地良い気分になれた。

 

「1、家に居る間ずっと手錠をかける」

 

 背後の山田リョウが唱えた。

 

「2、家に居る間足首を鎖で繋ぐ」

 

 向かい合わせの伊地知虹夏が続いた。

 これは選択肢だろうか。

 山口太介は二人の口から発せられた恐ろしい選択肢を頭の中でよく噛み砕いてみた。

 昨晩は酔っていたこともあり(本音を言うと今も酷い頭痛に襲われているのだが)、抵抗なんて出来なかった。

 しかし二人の口ぶりからしてもう少し続くらしい()()に、上記の選択肢の内一つがオプションとして付け加えられるということなのだろう。

 どちらを選んでも明るい未来は見えないが、それでも二人に挟まれているという今の状況でどちらも選ばないなんて選択肢は存在しない。

 選ばなければ。

 山田リョウに心の内を読まれていても、それでもどちらか選ばなければ。

 高所から目を瞑って飛び降りるように、山口太介は意を決して口を開いた。

 

「──ッ」

「あぁ、そうだ。今の選択肢はもう使えないんだった」

「つ、使えない……?」

 

 ならば何故わざわざ提示したのだろうか。

 わざとらしく(とぼ)けて見せた山田リョウに怪訝な表情のまま聞き返すと、答えはすぐに返ってきた。

 

()()()()()()()()()()()()()()()

 

 水分も無いというのに。

 喉が、干上がった。

 

「太介くん、リョウのスマホの着信音で起きたんでしょ? あれ、リョウにわざとスマホをベッドに置いていかせて、私がゴミ捨て場から電話かけてたんだよね」

「目が覚めて私と虹夏がいなかったら太介はどうするのか──試した」

「私とリョウが帰ってきてもまだ部屋にいてくれたら、さっきの選択肢から選ばせてあげようって話してたんだ」

「でも太介は逃げ出そうとした」

「張り紙も無視したんだね」

「最低」

「着替えてエレベーターまで来ちゃったんだから、言い逃れできないよね」

「だから、この選択肢はもう使えない」

「今から新しく選択肢を発表するから、1番か2番かで選んでね?」

「虹夏と二人で考えたからお楽しみに。オススメは2番」

 

 前から、後ろから、山口太介の選択の結果をなじるように突きつけてくる。

 伊地知虹夏がジリジリと距離を詰め、山田リョウが回した両腕に力を込める。

 

「1、両手の指から計5本選んで折る」

 

 山田リョウが耳元で。

 

「2、両足首の骨を砕く」

 

 伊地知虹夏が眼前で。

 告げた。

 

「……あ、え、はぁ?」

 

 理屈も倫理観も感じられない二人の言葉に自身の耳を疑う。しかし告げた声色は間違い無く二人のもので、山口太介の脳は処理をし切れずに投げ出してしまった。

 その末の、間の抜けた声。

 どういう意味だ、俺はこれからどうなるんだ。

 様々な意味が込められた山口太介の声に、二人はクスクスと笑った。

 

「受け止め切れなかったんだ。太介くん、可愛いね」

「折った後も、説得に応じてくれるまで病院には連れていけないから。長期戦になったら変な形でくっついちゃうかもね」

「物を持てなくなっても歩けなくなっても、私が一生側にいるからね」

「ずるい虹夏。勝手に私を抜きにしないで」

「ごめんごめん」

「まぁ、私ベースより重たい物持ったことないから手伝えることはあまりないだろうけど」

「おいコラ」

 

 震え続ける山口太介を他所に、世間話のような遣り取りを続ける伊地知虹夏と山田リョウ。

 二人の言ってる意味が分からなくとも、山口太介はなんとなく『もう自分がどうにもならない』ことに気が付いた。

 気が付いてしまった。

 

「あ、あぁ……」

「あー、泣いちゃった」

「太介くん? 泣いても駄目だよ。エレベーターの中から太介くん見えた時、私すっごい悲しかったんだからね? 私達に黙ってどっか行こうとしてたんだし、しっかり罰は受けてもらわないと」

「太介、諦めて。今からでも入れる保険は無い」

「痛いの嫌だからって今ここで応じたフリしても意味無いからね?」

「嘘吐きの言葉は信じてもらえないというのが世の常。折って、また今日一日かけて説得してみて、答えを聞く」

「ほーらー。太介くん? いつまでも共用廊下に立ってたら迷惑になっちゃうから帰るよ」

「ごめんなさい……ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

「謝罪なら後で聞く」

「あー、今日の練習いけないって喜多ちゃんとぼっちちゃんに連絡入れないと」

「確かに。……あっ、今晩も泊まるから、親への連絡ついでに昼頃一度抜ける」

「私もお姉ちゃんに言っておかないとなぁ」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」

 

 

 

 

 

 

 





山田リョウ:体力が無いので()()は休み休み参加した。山口太介に2番を勧めた理由は、両手が自由なら触れ合えるから。

伊地知虹夏:()()は一晩ぶっ続けでしたし、ほぼ不眠の状態で朝キチンと起きて山田リョウを起こしてゴミ出しをした。山口太介との性行為バフで体力が回復しているので、これからの()()もやる気満々。へし折る担当。

山口太介:2番を選ばされた。




ルート開放条件:山田リョウと伊地知虹夏の好感度を一定以上上げ、然るべき時ではないタイミングで卒業後の進路を明かす。



こんなに長くなる予定じゃなかったのですが、書いてるうちにメチャクチャメチャクチャ膨らんでいきました。ガチで大変だったので、感想いっぱい送ってもらえるとハッピーです。
なんかちょっとエッチだけど行為そのものは描写してないからセーフという感覚で書きました。セーフであることを願います。

次回からはまた本編に戻ります!
じゃあね!


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