ゴリラが去って、迎えた月曜日。
俺が二番目に嫌いな曜日だ。
ちなみに一番好きなのは土曜日。一番嫌いなのは日曜日だ、理由はまぁ察してくれ。
にしても少し早く来すぎたか。始業まではまだ15分くらいあるし、とりあえず寝た振りでもしておくか。
「おはよう」
「ん!? あぁ」
教室で挨拶されるなんていつぶりだ? 思わずキョドって、挨拶を返すこともできなかったぞ。
声をかけたのは木本。金曜日からどうしたこいつ? 今まで話しかけてきたことなんでないだろうが。
そもそも、こいつが本当に木本で合っているのかも怪しいんだけど。けど今さら、名前を聞くことなんてできないよなぁ。
「金曜日、私のこと無視してすぐに帰ったでしょ」
「い、いや。あれは用事があったんだって」
「ふーん」
絶対信じてないなこいつ。まぁ、別に嘘をついているわけでもないしな。最悪、セナのやつに説明させればいいか。
「大体、俺みたいなボッチに用事なんてないだろ?」
「ボッチ?」
「そうそう。まぁ、俺が変人だって言うのは理解しているし、しょうがないのは分かっているけど」
「一応聞くけど、あなたのそれってキャラ付けなの?」
よく面と向かって聞けるなこいつ。普通は遠慮して聞かないもんだぞまったく。まぁ、別に俺は気にしてないからいいんだけど。
「そう言われると難しいな。昔は完全にキャラ付けというか、そういう感じではあった。今となったら素みたいなもんだ」
恨むぞ中学生の俺。まったく、余計なことしなければよかったよ。お陰でこの有り様だ。
「というわけで親友ルート第2段。約束通り、昼は持ってきてないだろうな」
「はいはい。持ってきてないよ。いきなりだったからお母さんに伝えるの大変だったよ」
「それは悪かったな」
「で、学食でも行くの?」
うちの高校には学食がある。まぁ学食といっても大した規模じゃないし、味も普通だ。その割にはいつも混んでいるんだけどな。
ともかく、今日の行き先は学食ではない。
「甘いな。今日の昼御飯はこれだ!」
「これってお弁当?」
「あぁ。俺が作った。同じ釜の飯を食うって言葉もあるくらいだし親睦を深めるにはもってこいだろ?」
意外かもしれないが俺は料理がそれなりにできる。昔から姉さんや母さんに手解きを受けてたからな。
まぁ、キャラに似合わないのは自覚してる。
「え、えぇ?! そんなの貰ってもいいんですか」
「なんで敬語なんだよ。それに良いに決まってるだろうが。お前のために作ったんだから。味の方も、まぁ大丈夫だとは思うけど」
少なくとも喰えないレベルのものは入っていないはず。味見もしたしな。
「コウが作ったなら何でも美味しいと思うよ」
そう言って貰えるとありがたいが、作り甲斐はないな。まぁ、美味しく食べて貰えることに越したことはないか。
☆☆☆☆☆☆☆
「おやまた、いつも以上にルンルンだねセナ」
「いやーミズキ。やっぱり分かるよね。何があったか聞きたい?」
やっぱり、体から幸せオーラが出ていたかぁ。
いやー参った参った。しょうがない、ここは恋人のいないミズキにも幸せを分けてあげるとするかぁ。
「聞いてほしいんでしょ。で、どったの?」
ふっふっふ。やっぱり気になるよね? 聞きたいよね?
「なんと今日のお昼、コウの愛妻弁当でした! いや、愛夫弁当かな?」
「それはおいとくとして。あの子、料理とかできるんだ」
「私も初めて食べたかも。厳密に言えば家庭科実習とか自然教室とかで食べたことはあるけど」
懐かしいな、一緒にバーベキューしたの。あの時のコウってばお肉ばっかり食べて怒られてたっけ。まぁ、私もコウの陰でお肉ばかり食べてたから、怒られたのは半分私のせいでもあるんだけど。まぁ、もう時効だよね。
「で、味の方はどうだったの?」
「…覚えてない。舞い上がりすぎてたせいで、舌の感覚が消えてた」
桔梗セナ、一生の不覚。
あの卵焼きも唐揚げも全く味を覚えていないんだよー。コウの手料理なんてめったに食べられないのに。
「あんたそれってどんだけよ。でも、また頼めばいいんじゃない?」
「そ、そうだよね。また作ってくれるよね」
「ま、まぁ多分大丈夫じゃない」
よし、今度は私から頼もう。自然に頼めばコウも作ってくれるよね。あ、でも私も作って交換するのも悪くないかも。