バイバイベイビー   作:mikaon

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2300万の賞金首、バイバイベイビー

 町民は暴政王トータスに案の定苦戦してるっぽい。

 

 ざっと見回して状況を確認する。何人かの幹部らしき奴らを倒すまでには至ったが、こちらも相当怪我人が出ている。

 

 やはり2000万以上の首を持つ相手とやり合うには、どうしても損害が大きくなっちまうな。

 

 

 

「グワッハッハ! 口程にも無えなぁ! 賞金稼ぎの町ウイスキーピーク! 朕の槍の錆にしてくれるわぁ!」

 

 

 

 もじゃもじゃのヒゲを生やし、大きな頭にちょこんと乗っかった王冠が特徴の男、トータスが槍を振り払うと、囲っていた町民たちが吹き飛んだ。皆全身切り傷を受け、尻餅をついている。

 

 凄まじい剛力の持ち主なのだろう。

 

 何人かは戦意を失いかけいたその時、トータスの背後から巨大な丸太が襲いかかる。

 

 

 

「グワッ! あぶねっ! なんじゃこりゃ!」

 

「あたしの丸太食らっていきな!」

 

 

 

 ゲレッカとトータスが衝突した。先越されたか。

 

 槍を丸太で上手くいなしたかと思えば、リーチを生かして果敢に叩きつけていく。激しい攻防戦に、町民たちの折れかけていた心が熱く滾ってきた。

 

 

 

「うおおおおお!! 流石ゲレッカ! 町一番の力持ち!」

 

「俺たちも負けるな! 援護しろ!」

 

「待て、幹部達がいないぞ!?」

 

 

 

 先程まで追い詰めいたトータス海賊団の幹部達が姿を消していることに気がついた。

 

 おいおい何やってんだよ。

 

 

 

「バカめ! 部下達は目覚めさせて貰ったぜ!」

 

「野郎ども! 海賊をナメくさった賞金稼ぎの町を破壊し尽くせ!」

 

「俺たちトータス海賊団に刃向かった奴らは許しちゃおかねえ! 皆殺しだァ!」

 

「「うおおおおおおおおおおおお!!!」」

 

 

 

 幹部と総勢50人の海賊達が雄叫びを上げた。

 

 見張り番は既に首を落とされており、町民達は完全に狼狽えていた。

 

 

 

「やべえぞ、幹部達だけでも苦労したってのに……」

 

「クソッ! これじゃあ勝ち目がねえ!」

 

「これじゃあ2年前とおなじだァ!」

 

 

 

 そしてゲレッカの方も、徐々に押されつつあった。

 

 仲間達の解放にトータスの士気が上がり、槍の切れ味がどんどん増してきていた。

 

 

 

「グワッハッハ!! あいつらさえ起きちまえばこっちのもんだ! おら! 遊びは終わりだ!」

 

 トータスが大きく槍を振り切ると、ゲレッカの丸太がついに限界を迎え、真っ二つに折れてしまった。

 

 これはやべえ。ちんたら走り過ぎた。

 

「クッ!」

 

「貴様も死罪じゃ! 怪力女!」

 

 

 

 トータスの凶刃がゲレッカを斬り裂こうとするまさにその時、なんとか俺は二人の間を遮った。

 

 

 

「“根性バット”!!」

 

 

 

 槍を受け止めたのは俺の二本の金属バット。

 

 トータスはそのバッドを力で押し崩そうとしたようだが、俺の方が力が上回っているようで、徐々に押し返している。

 

 

 

 

 

「なんだ貴様は!?」

 

「俺はただのウイスキーピークの賞金稼ぎさ。こいつらと同じな」

 

「ルイス!」

 

 

 

 突然の助けに戸惑うゲレッカ。

 

 その言葉には獲物を取られた悔しさと、それよりもずっと大きな気恥ずかしさが詰まっているように見えた。

 

 

 

「ゲレッカ、お前は他の奴らを助けてやってくれ。こいつは俺が受け持つ。異論は?」

 

「くう……、無いわ。そっちは任せた」

 

「任された。それじゃ一旦」

 

「「バイバイベイビー」」

 

 

 

 ゲレッカが苦戦している町民達の元に走り出した。これであっちは大丈夫だろう。こいつとの一騎打ちに集中できる。

 

 トータスは隙ありと槍を振るうが、全て金属バットに防いだ。予想通り、力は強いが機敏さには劣るようだ。

 

 何度か打ち合っている内に、トータスの息が上がってきていた。もうちょっとだな。

 

 

 

「無闇に槍を突いていいのかい? 刃こぼれに気をつけな!」

 

「朕の槍はそれ如きでは傷一つ付かんわい!」

 

「へへへ。ならば俺のアクロバットについて来れるか?」

 

 

 

 たんたん、とその場で軽くジャンプすると、回転をしながら殴りかかった。

 

 回転が加わった殴打はなかなか重たいだろう? ビリビリと衝撃が加わり、奴の足元がグラついてきている。

 

 そしてまた違う方面から、バットが振るった。この身のこなしと殴打の乱舞こそ俺のアクロバットの真髄だ。

 

 気がつけば俺の攻撃一方となっていた。

 

 

 

「小僧……なかなかやるではないか!? 朕も本気を出さねばならんようだな!!」

 

 

 

 唐突に奴は自身の王冠を投げ捨てた。

 

 すると体が見る見るうちに膨張し、2メートルほどの大男になったではないか。

 

 俺の足が思わず止まる。

 

 

 

「まさにドビーンだな! さっきの比じゃねえくらい強くなってら!」

 

「グワッハッハ!! 朕の王冠は力を御する不思議な宝具。言わば制御装置みたいなものよ! こちらの姿が真の朕の力! バットの男よ、貴様もこれで終わりだ!」

 

 巨大化したトータスは槍を振り降ろした。

 

「暴政槍術“都落ち”!!」

 

 

 

 地面が砕け、衝撃波が家屋を次々薙ぎ倒し、その一撃は遠く離れたサボテン山に傷を付けた。

 

 

 

「トータス様が本気を出されたぞ!」

 

「船に逃げろ、俺たちまで危ねえ!」

 

「逃がさないよ! カ・イ・リ・キ、メリケン!!」

 

 

 

 他の海賊達とゲレッカの声が聞こえてきた。あっちの方は安心して良さそうだ。

 

 こちらもそろそろ終わりにしたいところだ。

 

 

 

「俺もいっちょ本気出させて貰うぜ?」

 

「ほざけ! この状態になった朕に敵う奴は居らんわ!」

 

 

 

 トータスが槍を大きく振り上げた。今までで一番デカイのが来る。

 

 俺は再び回転を加えて、奴の元へと飛びかかっていく。

 

 

 

「暴政槍術“酒池肉林”!!」

 

「熱血バット“葬嵐ホームラン”!!」

 

 

 

 奴の槍と俺のバットが交錯し、月明かりが俺たちを照らす。

 

 

 

「グアアアアア!!」

 

 

 

 そして遠くのサボテン山が両断されると同時に、トータスが断末魔とともに空へと吹き飛んだ。

 

 

 

「バイバイベイビー!」

 

 

 

 意識のないトータスにいつもの決め言葉を言えば、他の海賊たちを制圧したゲレッカや町民たちが歓声を上げていた。

 

 どうやら今日も生き残ることができたらしい。そう思うと、一気に力が抜けてきた。

 

 思わず膝をつくと、右肩から左の股関節にかけて、ザックリと服が切れている。それが大きな切り傷だと気づくいた途端、俺は意識を手放した。

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