獣狩りの夜
それは古都ヤーナムで度々発生する災害のようなもの。町中に獣の病が蔓延し、人々は獣除けの香を焚いてその夜をやり過ごす。だがそれは一般市民に限った話。
ゴシャァァ!!
飛び散る返り血を全身に浴びて、だがその匂いを一切気にせずひたすら獣を狩り続ける者がいる。
「ふむ、今夜はこれで打ち止めか?」
右手にノコギリの刃が付いた鉈、左手には古めかしい散弾銃を持ったオーソドックスな出で立ちの狩人。彼が得物を突き立てた獣は既に事切れている。
「何があろうとも悪い夢のようなもの。次はどんな夢なのやら」
スゥっと消える狩人。ここヤーナムで活動する狩人は皆夢に生きる。そして夢か現実か曖昧なまま狩りを続ける。今狩った獣とて、それが現実であると証明できる者はどこにもいない。ただ目の前の獣を狩る。それだけだ。もっとも一部の狩人はそれ以外にも生き甲斐を見出だすと言う。俗に言う聖杯ダンジョンと言う奴だ
★★★
「ん?」
それは数えきれないほど獣狩りの夜を繰り返してきた狩人にとって驚愕の出来事だった。獣狩りを終え、次の獣狩りを始めようかと目覚めた狩人の目に飛び込んできたのは
ガヤガヤ…
人。それも群衆。だが、誰一人として武器を持っていない。なにやら板のようなもの(啓蒙によりスマートフォンなる機構と知る)を持ち歩く彼らや町からは
「獣や血の匂いがしない?」
そして狩人の経験と啓蒙が導きだした答え。それは
「ここはヤーナムではない?」
混乱し、発狂しかけ、慌てて鎮静剤を飲用する狩人を使者達だけが灯りを手に見守っていた。
★★★
「…」
ひとまず物騒な武器をしまい、古風な風貌で探索する狩人。彼は狩人の中では珍しい、非常に温厚な狩人であった。ひとえに旧市街でガトリングをぶっ放してきた火薬庫の狩人のお陰である。もっともこちらから殴り掛からないだけで、一度でも敵対されれば情け容赦なく殴り返すし、聖杯ダンジョンに潜ればこちらから獣に襲い掛かる善良な狩人だが
「手記が無い?つまりどの狩人も来たことの無い未踏の地!?」
好奇心が刺激された狩人はウキウキで手記を残しながら探索を続ける。
”一歩前に出てみたまえ”
”草 おお草”
”この先、犬があるぞ”
自分に続く狩人が困らぬように、手記を残しながら進む狩人にひと際目立つものがあった
パッと見た印象は白。とにかく白。髪から着ている服まで何もかも。だが何より狩人の目を引いたのは
「獣か?」
耳と尻尾だ。特に尻尾には五芒星が刻まれており、オーラも相まってそこいらの獣とはわけが違うことは容易に想像できる。
「…」
すかさずノコ鉈と散弾銃を手に近寄る。万が一に備えて鉛の丸薬を服用し、古い狩人の遺骨を使用。変形後のノコ鉈がギリギリ届かない距離を維持して話しかける。この距離ならば何があろうともヤーナムステップやガンパリィが間に合う。
「貴公、何者だ?」
「はい?」
振り向いた獣らしき者はこちらを見、手元を見て青ざめ、周りを見回した後に納得した顔で
「場所を変えましょうか?」
★★★
「で、人気の無い場所へ移動して何の用だ?貴公」
狩人は人気の無い場所へ移動したことで警戒レベルを上げ、本気モードだ。具体的にはノコ鉈が火薬庫の誇る偉大な武器、パイルハンマーへ変わっている。即座に切り替えられるように回転ノコギリも準備してある。隙を潰すためにエーブリエタースの先触れを用意し準備万端。だが意外な言葉が返ってきた。
「確認ですが、あなたには私がどういう姿に見えてますか?」
「白い獣だ」
「当たり、ですね。とりあえず私には敵対の意思はありませんので武器をしまってくれると助かります。そんな物騒なものを突き付けられちゃあビビッて話もできやしねぇ」
「ふむ…」
武器をしまう狩人。だが無手でもやりようはある。先触れはそのままだし、遺骨の効果も上書きしてある。なおそれを見てあっ、知らないのか…と残念そうな声を上げたのは白い獣
「えー、まずは自己紹介ですかね!」
すると両手の親指と中指、薬指を合わせてポーズを取り
「ふわふわしっぽの五芒星!あなたの心の一番星!白上フブキです!」
狩人はこれを特殊な名乗りと判断。即座に狩人の一礼を返し
「名は無い。ただ狩人と呼ばれていた。様々な場所を渡り歩いたが今は火薬庫の狩人をやっている」
カインハーストやら、教会やら渡り歩いた彼がたどり着いたのは工房の異端、火薬庫であった。ボンガボンガと爆発で獣を吹っ飛ばしながら彼は語る”つまらないものは、それだけで良い武器ではありえない。まったくもってその通りだ”と。
「それで、狩人さんは今の状況をどこまで把握してますか?」
「それは…」
狩人は語る。目覚めたらここにいた。自分がいままで過ごしていた環境とは何もかもが異なる異常事態だと。だがそれを聞いたフブキはどこか納得したように
「別の世界から流れついちゃったみたいですねぇ。まれによくあります。とりあえずウチ来ます?根無し草でしょう?行く当ても無いでしょうし雨風しのげますよ?それにもっと詳しく現状説明できますよ?」
行く当てそのものは存在する。この場所に流れ着いた時点で明かりを一つ確保しているため帰ろうと思えばいつでも夢に帰ることはできる。だが、狩人の性、好奇心が勝った。
「ではそうしてくれ」
「はい!白上にお任せあれ!」
ウキウキで先導するフブキを見ながら、新天地への思いを馳せる狩人。まあどんなところだろうとヤーナムよりはマシだろうと思いながら。
好きなものと好きなものを掛け合わせると最強。設定もジャンルも違うモノをいかにして掛け合わせるかがクロスオーバー、SSの魅力だと考えています。構想が浮かばず進まぬ執筆。おお、ゴース、あるいはゴスム、脳に瞳を授けたまえ、、、
フブキは使い勝手が良すぎる。ぱっと見で人間じゃないと分かるし、色々経験豊富で対応力もある。最推しのあずきちはパッと見ただの人間だから初エンカウントには向かんのだ。