「なんか小さくなったか?この家。」
僕は久しぶりに健介の家の門前に立ちそんな感想を覚えた。
「お前が大きくなったんだよ。」
それもそうか。
僕は高校生になって170cmとなって以降も、未だ順調に伸び続けている。
「でもお前は全然大きくならないよな。」
「ほんとにな。周りからは子供にみられるし、最悪だよ。」
健介は中学生から160cmでピタリと止まってしまった。
健介自身、周りか幼く見られたりすることもあって気にしているようだった。
僕がこいつに勝ってるとこなんて身長くらいのものだよなぁ。
そんなことを考え、ぼくは本題に戻った。
「それで、件の祠ってのはどこにあるんだ?」
なんて、僕は健介の方を振り返った。
しかし、残念なことにそれはかなわなかった。
別に首を痛めて回らなかったとかいうわけじゃない。
なぜなら振り返ったそこに健介はいなかのだ。
その代わりに”それ”はいた。
それは“影”と呼ぶしかないような、体中、と言っていいのか分からないが少しゆがんだ人型の真っ黒なものだった。
人型だから立っていた、と言っていいのだろうか。
でもそれは立っていたというにはあまりにも存在感があった。
さほど大きくはなかったと思う。
それこそ健介と同じくらいだった。
「いや、さすがにないって。」
なにが”ない”のかもよくわからず僕はそうつぶやいた。
すると、影は僕の声に反応したのかこっちを見た。
何故そう思うのか、なんて言われても説明はできないが僕は確かにそう思った。
そして。
目が合った。
その瞬間僕は走り出していた。
後ろなんて振り返らなかった。
息を荒げ、フォームなんて気にせず走った。
とにかく走って、走って、走って。
走った。
脇目もふらず、どころか前も、ましてや足元なんてろくに見ず走った。
だから。
ガツン。
何かにつまずいて、そのまま蹴とばして、僕も一緒に転がった。
「い、いてぇ。」
なんだこんなところに。
「なんだ僕の行く手を邪魔するのは。」
もはや走り始めた理由も忘れ、そんな事を言って蹴とばしたものに目を見やる。
それは小さな古びた祠だった。
残念なことに僕に蹴とばされてバラバラになってしまい、もはや祠だったものになってしまってはいたが。
きっと元々の大きさも大したものではなかっただろう。
サッカーボールくらいの、それこそ蹴とばすくらいにはちょうどいい大きさだったであろう祠。
古びた祠。
それを見て、走り始めた理由を思い出した。
「追ってきては、ないな。」
ぼくは地面に横たわったまま後ろにあの影がいないことを確認した。
「おい、そこで一息ついてんじゃねぇよ、俺の家をぶっ壊してくれやがって。」
頭の上からそんな声が聞こえた。
頭の上からと言っても空から、というわけではなく倒れてる僕からみて頭の方。
そこに猫が座っていた。
それが僕と化け猫との出会いだった。
「ぐ、力が入らねぇ。」
またしてもその場からか逃げようとした僕は今度はそれに失敗した。
先ほどまで後先考えない全力疾走をしていたせいで起き上がることすらままならなかった。きっと祠につまずくまでもなくぶっ倒れていただろう。
「ごめんなさいゆるしてくださいなんでもしますからどうかいのちだけはたすけてください。」
一息だった。
一息つくな、と言われたけれど、僕は精一杯命乞いを一息でやり切った。
もし誰かがこの光景をみれば、猫に全力で土下座ならぬ土下寝をしている不審者に映っただろう。もしかしたら噂の不審者に僕も加えられてしまったかもしれない。
「精一杯なのはいいことだけれど、それじゃあまるで投げやりだぜ。誠意零杯って感じだぜ。」
「アハハ」
つまらないギャグに対しても少しでも情状酌量の余地を、と愛想笑いをする。
「まあ、いい。」
それよりも、と化け猫は続ける。
「お前、なんでもするって言ったな。」
「言いました。」
「ほんとうになんでもだな?」
「できれば痛くも、苦しくもない範囲でお願いします。」
「弱い覚悟だにゃ。」
そりゃあ覚悟なんてない。
あるのは命惜しさだけだ。
「安心しな童、別にお前に何か苦痛を与えたりしようってわけじゃあにゃい。」
「それではわたくしめは何を?」
何をやらされるのだろう。
そんな不安でいっぱいの僕に、めいっぱい下手に出る僕を見て化け猫は。
にゃはは、と笑って言った。
「俺をお前の家に連れて行け。」
あとがき
どうでしたか?
この物語の雰囲気は感じられたかと思います。
テンポを意識して書いてるので、トントン読めるといいです。
第三話は出オチかもしれません。
ぜひ次も読んでね。