ハイスクールD×D《MASKED RIDER RYUKI》 作:ライダーマスク
[イッセーSIDE]
アーシアと最悪な再会をしてから3日後。
俺は魔法使いの知人からもらった魔法道具の一つである分身を作る魔法で、その分身に学園に行かせてあの時言った約束通りの場所でアーシアを待っていた。
正直、堕天使レイナーレの拠点はアーシアに案内したあの教会。
今すぐにでも乗り込んで、助けに行きたいが昨日の一件でグレモリー先輩と龍騎士としての俺が協力関係を持っている事が知られた。
もし、俺が下手に手をだせば責任が俺だけにじゃなく、グレモリー先輩達にも影響しこの街で悪魔と堕天使の全面戦争になりかねない。
だけど、アーシア自身がにげて俺が保護すればそういった事は無くなる。
そう咄嗟に判断した俺は、アーシアにあの言葉を残した。
今日で三日―――流石に心配だな。
そう思っていた時だった―――
「イッセーさん!」
「アーシア!?」
アーシアの声が聞こえたと同時に、聞こえた方向に振り向くとそこにはアーシアが走りながらこちらに向ってきた。
「はい、イッセーさん! あの仮面の戦士さんに言われた通りに来ました!」
「そうだったのか。という事は…」
「…はい。私、聴いてしまったんです」
アーシアの表情が暗くなる。
「一体、レイナーレに何を聞かされたんだ?」
「聞かされたというよりは…聞いてしまったんです―――レイナーレ様の目的でこの地で私の神器を奪うという事を……」
「神器を奪う…。そして逃げてきたという事は―――」
「はい。神器を奪われた人間がその後亡くなるのも聞いてしまいました。そして、既に三名の方から神器を奪っているそうです…」
「すでに被害者が…」
アーシアの話を聞いて、レイナーレが
レイナーレの目的はアーシアの神器―――名前までは分からないけど治癒系統の神器を奪う事。
だが、堕天使幹部の知人の話では希少な神器を宿し力を制御できる才能がある人間は殺さず保護し色々と強くしていると聞いている。
そしてアーシアもその神器を初期段階ではあるけど、この前の男の怪我を治した力を見る限り制御できている。
要するに
そんな人材から神器を奪う行為は当然犯罪級の行為。
だが、レイナーレはそれを考えられないほどアーシアの神器を欲した。
なにせ治癒系統はある括りにされている13種の神器並みにレアだからな。
だから、グリゴリの監視が及ばない悪魔が管理する土地で神器を奪うという行為に出た。
三大勢力の情勢を見れば、グリゴリは下っ端程度の行動をここまで監視しないし、グレモリー先輩も勢力関系の立場から下手に手を出せない。
そう考えれば、この町で行動するのは理にかなっているな。
だが、レイナーレが考えたであろうその保険もあのフリードが悪魔が異形関係を管理する土地で、悪魔の契約者を殺した事でそれが全て破綻して既にグレモリー先輩はあいつらの背後関係を洗っている。
俺の勘だともうすぐ、レイナーレ達がグリゴリの命令で動いていないであろう事実を持ってくるはずだ。
「それにしても、良く逃げられたな。監視とかあっただろ?」
「そこに関しては大丈夫でした。その…レイナーレ様の部下の方々は私の事を脅威と見てなかった感じだったので」
「なるほど。でも、レイナーレ達はお―――龍騎がアーシアにかけた言葉とアーシアが持っている勇気を知らなかったと…」
「イッセーさんにお礼を言いたかったんです。教会を追い出されてからずっと一人で…レイナーレ様に拾われて一人じゃないと思い、でも結局私は一人でした。そんな中、イッセーさんと出会わなければ私はあのまま命を奪れお礼も、話すべきことも出来なかったので」
まあ、それが俺なんだけど面倒だし自ら名乗る事でもないしな。
そして―――
「やっぱり正規のシスターじゃなかったんだね」
「はい…」
「なんで君が追い出されたかは聞かないから安心しな」
「え!? 良いんですか?」
アーシアは聞かれると覚悟したつもりだった様子だった。
「誰にだって話したくない自分の過去の一つや二つあるもんさ―――とりあえずここから移動しようか。真昼間であればレイナーレ達は襲いにくいけど念のためにな?」
「は、はい!」
俺はアーシアを連れて俺が駐車していたバイクの傍に連れて行く。
「あの…これはバイクですか?」
「ああ。俺専用のバイクだ。大型だから二人乗りできるから安心しな」
俺はそのまま座席のシートを開けて予備のヘルメットをアーシアに渡した。
「ヘルメットの付け方は分かるか?」
「えーと…分かりません…」
恥ずかしそうに答えるアーシア。
まあ、元とは言え教会のシスターはこういったバイクとは無縁だよな。
それから俺はアーシアにヘルメットの付け方を教え、バイクの乗り方をもついでに教え、俺の後ろに座りお腹に手をまわした。
「そんじゃしっかり掴まってろよ」
「は、はい!」
アーシアの返事と共に俺はアーシアを乗せて愛車でその場を後にした。
◇
「どうだ?」
「美味しいです!」
アーシアを連れて移動した先は駒王町にある商店街の洋食屋さん。
まずは昼飯という事になったんだけど、アーシアは外国の人で日本系のご飯は食べなれないという事で洋食を専門に扱っているところに来た。
俺が注文したのはオムライス、アーシアが注文したのは卵とベーコンを具としたガレット*1だ。
因みにこの洋食屋は従業員は料理人の旦那さんとホールの奥さんの小さい規模の店。
そして、二人共海外で料理修行をしていたおかげでアーシアの英語も問題なく通じた。
「頂きます」
俺は両手を合わせて日本式の食前の挨拶をする。
「父よ、あなたの慈しみに感謝してこの食事をいただきます。 ここに用意されたものを祝福し、私達の心と体を支える糧としてください―――私達の主イエス・キリストによって」
アーシアは教会出身らしく祈りを捧げていた。
「あ、お待たせして申し訳ありません」
「いや、大丈夫だよ。それじゃあ食おうぜ」
「はい!」
そして俺たちは提供された料理を食べ始めた。
アーシアが注文したガレットは口にあったらしく美味しそうに食べていた。
そして、俺が食べていたオムライスを不思議そうに見ながら「トマトソースで炒めたライスの上に半熟のオムレツを乗せてデミグラスソースをかける料理って珍しいですね~」と興味ありげに見ていたので一口食べて美味しそうにしていた。
そういえば、オムライスは日本のシェフが生み出した和製洋食だったな。
たぶん、アーシアがパスタをケチャップ、ソーセージ、ピーマン、玉ねぎで炒めたナポリタンとか見たら「信じられない!?」とみていたのかもしれないな。
◇
ご飯の後は、今のアーシアに心の癒しをという事で柴犬カフェに連れてきた。
「わぁ、お犬さんがいっぱいです!」
「ここは柴犬という犬種の犬たちとカフェみたいに一息つく場所みたいなところだ」
「そうなんですね…きゃ!?」
アーシアが周りを物珍しそうに見ていると、周りに柴犬たちがアーシアを囲うように集まって来た。
ある柴犬はアーシアの足に体をすりすりしたり、膝に乗ったり、撫でて欲しいなどの仕草を見せた。
「あははは、くすぐったいです」
「ワンワン!」
「クゥ~」
柴犬たちと戯れるアーシアの姿は何とも言えない癒しを感じた。
美少女ともふもち犬の柴犬との光景は眼の保養だな~
◇
それから、アーシアを色んな娯楽施設へと連れて行き、数日前に見てしまった事件での落ち込みを少しでも払拭できるようにした。
途中で、アーシアの体に術式が施されていたのでこっそり解除しておいた。
これでも魔法とか術式に関してはそれなりに出来るからな。*2
後は途中から尾行されていたから、ここに来るとグレモリー先輩にメールを送ったくらいかな?
直ぐ返信が来て―――
―――「後、30分持たせて頂戴」
と返って来た。
そして、今は駒王町にある噴水広場のベンチで少し離れた店で買ったクレープを食べ終わった頃だ。
「少しは楽しめたかな?」
「はい。今まで体験したことがないものばかりで楽しかったです!」
「それは良かったな」
少しは楽しんでくれてよかったよ。
いかんせんデートなんてしたことなかったからな…。
まあ、レダが人間の事を知りたいとかであらゆる場所に連れまわされたことがあるけど…それってデートって言えるのか?
ま、良いか。
「あの、イッセーさん。少し良いですか?」
「ん?」
突然アーシアに話しかけられ、彼女の顔を見ると覚悟を決めながらもどこか寂しげな表情をしていた。
「イッセーさんは、私がどうして教会を追い出されたか気になっていますよね?」
「俺はいままではぐれと呼ばれる存在と沢山あってきた。大半の奴らは自分勝手で組織から追放されていても同情できない奴等ばかりだった。でも、アーシアは自分勝手な行動はしない。むしろ、助けを求める誰かを迷いなく救える優しい美少女って感じだったからな」
「そう…思ってくれるんですか?」
「ああ。だって、国も違えば言葉も交わせない子供を迷いなく君の力―――
「知っていたんですね…。確かにこの力は主からもたらされた素敵な力です………あの、イッセーさん―――私の過去を聞いてくれませんか?」
「良いのか?」
「はい。イッセーさんには知ってもらいたいんです」
それからアーシアが自分の過去を語りだした。
◇
アーシアは、イタリアのとある教会に書置きもなく玄関に置かれた赤ん坊だった。
それそ不憫に思ったシスターと牧師は、自分たちが居た協会が孤児院も兼ねていた事で赤ん坊だったアーシアを育てる事に。
それから、アーシアは順調に育っていった。
ある時、教会近くの道路で車にはねられた子犬を歩道で見つけた。
アーシアはそれを見て子犬を救おうとしたが自分は何もできずにいた。
そして、神様に子犬を救える力を祈りながら望んだ瞬間―――神器の力が覚醒しその力を使い、助からないであろうと思われた子犬の怪我が瞬時に治っていった。
しかし、運命のいたずらか神の導きか、その光景を見回りに来ていたバチカンの使者に見つかりすぐさまバチカンへと連れて行かれた。
そこからアーシアの人生が急転し、あらゆる怪我を治療できる力を持った[聖女]として祀り上げられた―――アーシアの意思など関係なく。
しかし、根が優しかったアーシアは他者のケガを治すこと自体は嫌いではなく、むしろ多くの人を救えることが嬉しかった。
だが、そのころのアーシアはまだ子供も同然。
窓から見える同じ歳の子供たちが友達と遊ぶ光景を見て、自分の本音を語れる存在が誰もいない寂しさを感じた。
それでも自分が背負った聖女という名と人を助けたいという思いで、自分の願いを抑え込み聖女として教会に貢献した。
そして、数年前―――地方での聖女の活動をしていたアーシアの目の前に大怪我を負った悪魔が現れた。
その時のアーシアでさえ、悪魔は滅ぼすべき存在であり見付けたら問答無用で殺すことが決まっていた。
だが、相手が悪魔とは言え自分が救えるのであれば、相手が敵であろうとも放っておけないと自分の意志で悪魔を治療した。
だが、その光景を自分が治療した悪魔を追っていた悪魔祓いに見つかりすぐさま宗教裁判にかけられ〔悪魔をも癒せる異端な魔女〕と言われ、今までの聖女としての功績を鑑みて教会を追放される事になった。
そして各地を彷徨いずっと一人のままだと絶望しかけていた時に、レイナーレと出会い自分はまだ一人ではないと救われた。
だが、そんな思いもフリードが起こした惨殺事件やレイナーレのやってきた事、自分にこれからされることでその救いさえ無いことに気付いてしまった。
これも神が自分に与えた裏切りの罰なのだろう。
そう自分を戒めながらも、神への感謝を忘れず今での祈りを捧げている。
◇
「イッセーさんは、私が優しそうに見えると言ってくれましたがれっきとした裏切り者です……自分のやりたいことをしてしまったが為に私をお世話してくれた教会の皆さんを裏切ったんです」
「………」
感情論で言えばアーシアがやってきたことは正しくて、教会が行った罰は腹が立つ。
俺もそれだけの事で…っと一瞬思ったけど理由はどうであれアーシアがいままでお世話になった人達が大切にしてきた教えに背き裏切ったのもまた事実。
こうして異形世界を知った俺の考えに「追放で済んだだけマシ」っていう考えもある。
昔の俺だったらこうした事なんて考えずにアーシアを肯定していた。
これも、ライダーバトルにおける人間と異形世界の闇を見てきたからなのだろう。
「これは罰なんです。人を恨具れば裏切られるのは当然、こうしてレイナーレ様に神器を奪われるのも神が与えた私への罰なんです。ですから私はその罰を受けて亡くなる前にイッセーさんと会ってこのことを伝えたかったんです」
「…」
アーシアはそこまで覚悟していたのか。
まだ17歳くらいの少女が、自分の死さえ受け入れようとしている。
でも、アーシアは少しだけ勘違いしている。
それを気付かせてやらないとな。
「アーシア、君の覚悟は凄い事だ。だけど、死ぬ事は罰でもないしレイナーレの為に死ぬのは間違っている」
「で、ですが…」
「すでに君は追放という罰を受けた。それ以上の罰は自分自身…そして君に救われ恩返しを願っているであろう人たちの想いを裏切る行為だ」
「イッセーさん…」
「良いか、アーシア。もし自分が裏切った事に罪の意識を感じるならそれを背負っていくことが君ができる唯一の贖罪だ。それに今の君は聖女でもない―――アーシア・アルジェントという一人の少女だ」
「私が…ですか?」
「ああ。罪を背負っていかなくちゃいけないけど、君が夢見た友達と本音で語り合ったり遊んだりすることが出来るんだ―――たった一度与えられた命はチャンスだから、アーシア自身の望みを叶えたって良いじゃないか」
俺の言葉にアーシアは両目から涙を流した。
「良いん…ですか? こんな私が…願いを叶えても…?」
「願いを叶えようとする行為は生きとし生ける者すべてが持つ特権だ。誰も奪えないし誰も犯すと事も出来ない―――でも、これだけは覚えていて欲しい」
俺はアーシアの肩を掴み、かつて自分が戦い抜いたバトルロワイアルを思い出しながら言う。
「自分の望みは誰かの望みを奪い踏みにじる事。そこに正義も悪もない事をな」
俺がアーシアにこのことを最後に言ったのは、自分は裏切り者で裏切った相手に少なからず不幸を望まれているという事を忘れされない為だ。
そして正義とか悪とかそんな簡単に区別できる程、
「はい…ッ!」
アーシアはそう返事をして涙を拭った。
「ま、けっこう小難しい事は言ったけどアーシアの願いをもう叶っているんだよな」
「え?」
アーシアは俺の言葉に呆けた。
「この国じゃ、一緒に行動して飯を食べて一緒に遊ぶって間柄を友達って言うんだぜ? 歳だって同じだしな!」
俺はアーシアの頭をなでながらそう言った。
まあ、肉体年齢はとっくに成人しているからちょっと違うけど、些細な事だから問題なし!
「私がイッセーさんの友達……ありがとうございます! 私、頑張って生きて生き抜いてみます!」
「その調子だ」
俺はアーシアの笑顔を見て、さっき程この場所を書くように展開された結界と、俺達を囲うように包囲している堕天使共とはぐれ神父に敵意を向けた。
「さて、1人の女の子が生き抜くと決めた時に、人払いの結界を張って雰囲気台無しってのは野暮だよな―――レイナーレ?」
「それはそっくりそのままお返しするわ―――こんなバカなシスターを肯定する下等種族が」
俺が言うなりレイナーレが俺たちの前に現れた。
次回からオリジナル展開が来ます!