猟犬と飼い主   作:嘆きの大平原

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 原作生存キャラ死亡及び原作死亡キャラ生存のタグが仕事する28話となります。割とさらっと流してますが、それではどうぞ。


 hammer to fxxkin' bastard Ⅱ

「クソッ。ロックのクソボケ……ッ!!」

 

 毒付きながらカトラスのマガジンをリロードする。

 

「手間ッ取らせやがって!!」

 

 ヒズボラ達に弾丸をばら撒きレヴィは建物の隙間に身を滑らせる。路地を塞ぐ様に横付けされたジープを後目に空になったマガジンを吐き出させ、予備のマガジンを口に咥えて横っ飛びしながら無理矢理カトラスへと装填した。

 

「きりが無ェッ! ……あのアホボンクラッ!!」

 

 頬にカトラスの銃床を叩きつける様にマガジンを突っ込み、相手に向けて二挺のカトラスを構えた時、背後で急ブレーキの音が響き、ヒズボラを挟んで路地を塞ぐ一台の車影。

 

「姉ちゃん、頭下げ……」

 

 るよ。と凛とした女性の声が響くよりも先に、腹の底に響く()()が立て続けに吠えたてた。

 

「こいつはオマケだ受け取んなー」

 

 キュボッ! と吐き出されたグレネードが車ごとヒズボラの連中を爆炎に放り込んだ。

 目を白黒させるレヴィの首根っこを誰かが引っ掴み、ズルズルと引きずりながらチェロキーの後部座席とブン投げる。突然の衝撃に文句を垂れるよりも先にバレットМ82の銃口が彼女の鼻っ面にぶつかると、続いてレヴィをブン投げたであろう人物に横へと押しやられる。

 

「オッケー頼むよキャプテン」

 

 ()()()()()()()()()()()男の声と共に、チェロキーのタイヤが悲鳴を上げた。

 

「テンメェ蛇野郎! 何を……」

「張さんの依頼じゃ4人の予定なんだけれど、他の3人は?」

 

 淡々と問いを投げるド畜生に剣呑な視線を向けるも、相手はかつて見せた底無しの双眸をこちらに向けながらバレットのマガジンを装填して背後へと視線を移した。あからさまな()()()()に思わず口を噤み、額に手を当てて彼の問いに答える。

 

「……予定が変わって二人になった。一人はトチってさらわれた」

「おう、お話にならないよ」

 

 ルーフに乗り出していた身体を助手席に滑り込ませたシェンの言葉は、妙に疲れが滲んでいた。吐いた溜め息も何処か気だるげである。

 そんな()()()()()なぞ知った事かとレガーチが口角を上げて言を継いだ。

 

「真っすぐ基地に向かうぜ。とっとと仕事を終わらせてェ」

「いや無理っしょ」

 

 追手の姿が無いのを確かめたバイパーは、М82を軽く撫でながらレガーチを否定する。

 

「本命は人命よりも薄っぺらい紙束だよミスター?」

「話が速ェな蛇野郎」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 皮肉げに嗤う毒蛇に眉を顰めるが、しかしレヴィは同じく口角を上げて問いを投げた。

 

「ハッ……同郷が死ぬのは忍びないってか」

「違うよ姉ちゃん、ご主人サマ言葉足らずね。本音は別ですだよ」

 

 溜息交じりにそう零したシェンは、困ったものだと頬に手を当てる。胡乱な視線を寄越す運転席のジャンキーに視線をやりながら、彼女は言葉を続ける。

 

「……ご主人サマにとって紙束は仕事で本命は連中とアジトその物。()()()()()()()()()()()()()()()()

「おいおい冗談じゃねェぞ坊主」

「全く以て冗談じゃないね、ミスター。対価ってのは()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 言いながらバイパーはポケットからジッポーと白のソフトケースを取り出し、一本咥えて火を点けて隣のレヴィへとジッポーを差し出した。

 

二挺拳銃(トゥーハンド)を運んでハイお終いとなるなら、それでヨシ。けれど人生仕舞うのは別の話……張さんの前で、間抜けなダンスを披露するつもりは無ェんよ」

 

 仏頂面のレヴィが咥えた煙草に火を点けてやると、肩を竦めて言葉を続ける。

 

「面倒なのは確かなんだけれどね……何ならヤル気が出るよーな話、聞いとく?」

「自信満々か。そこまで言うなら聞いてやらんでも……」

「白いお薬1kg」

「よし任せとけトチロー! 今の俺なら月まで吹ッ飛んでやるぜェ!!」

 

 手のひらドリルでやる気を漲らせた逃し屋に、女二人の冷たい視線が突き刺さるも、当の本人は月どころか土星あたりまで飛んで行きそうな勢いでアクセルを踏み込んだ。

 それを眺めながら、後部座席に押し付けられた毒蛇は肩を竦める。

 

「まだ魂だけになるつもりはないんよ」

 

 月面旅行は止めてもろて、と溜め息を吐いた毒蛇にレヴィが問いを投げる。

 

「……親の仇は手前の女(ペット)だろ。他のテロなんぞどうでもいいだろうが」

「テロっつーか思想? 信仰? 呼び方は何でもいーけれど、その手のお題目を有難がった結果なーんの関係もねーのが死ぬじゃん。第二、第三の俺が生まれるかも知んねーし」

「無ェよ」

「そりゃねーよ坊主」

「絶対無いよ」

 

 疾風迅雷の三段ツッコミにやれやれと首を振る男は、分かってねーなとでも言いたげな顔で二本目のアークロイヤルに火を点ける。

 

「じゃ、こう言えば納得出来る? 悪党は悪党らしく。日陰でちまちま生きてるのがお似合いって事。過激派だか革命派だか知らんけれど、日向にしゃしゃり出て来んなって話」 

「手前のドコがチマチマ生きてンだよ」

 

 レヴィはそう返すが、毒蛇の言わんとする事は察した。掃き溜めとお花畑は重なってはならないと……明るく眩しく温かな場所に、昏く冷たく穢れたモノを持ち込むなと。

 

「ま、好き嫌いで言えば嫌いだから始末すんだけれど」

「……ハッ。そっちの方がよっぽど()()()()()()()()

 

 揃って悪い顔で嗤う二人に、レガーチは溜まらず愚痴を零した。

 

「結局それかよ」

単純(シンプル)なのは好い事ね。分かりやすいよ」

「ま、それはそれとして報酬上乗せはよろしくー。お仕事だからね」

 

 バイパーの揶揄う様な言葉に、レヴィは苦虫を噛み潰した様に口をへの字にひん曲げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 双頭蛇が牙を剥き、カトラスが獰猛に吠え、ククリナイフが風を裂き、ヒズボラと言う名の死体が迅速に積み上げられていく。

 当初の予定では夜襲をかける筈だったのだが、何処ぞの毒蛇がМ82とグレネードをブッ放したおかげでそんな話は吹き飛んだ。それこそ胡瓜に驚いた猫の如く跳ね飛んだジープと同様に。

 おかげで3対数十人と言う乱戦になってしまったが、どうせ根絶やしだから後でも先でも変わらないと言わんばかりにバイパーは奮戦した。

 

「めちゃくちゃ活き活きしてやがんな……」

「あんなに()()()()ご主人サマは初めてですだよ」

 

 早々にМ82を撃ち尽くしたバイパーは、いつもの相棒をブン回してご満悦だ。穏やかな笑みこそ普段と変わらないが、身に纏う空気は血と硝煙の匂いに歓喜している様にも見える。

 

「姐御の突撃隊(ヴィソトニキ)と張り合えるんじゃねェか」

莫斯科飯店(ホテル・モスクワ)と喧嘩する気はないね」

 

 手始めにМ82とグレネードで車を根こそぎ吹き飛ばしてから、相棒によるヘッドショットカーニバルを開催する毒蛇の動きは、レヴィが見てきた中でも最速かつ緻密で、身のこなしのキレが尋常じゃない。

 

「もう全部アイツ一人でいいんじゃねェかな」

「さらわれたボンクラが人質にされたらどうするね」

「アタシ達がいても変わンねェだろ」

「今のご主人サマの調子だと止めないとそのまま殺すしますよ。きっと」

 

 周囲に生きているのは3人だけとなった所で、双頭蛇をリロードしながらバイパーが口を挟む。

 

「や、流石にロックは殺さんけれど?」

「……理性あったね」

「シェンは辛辣だなー。そー言うとこ好きだけれど」

「乳繰り合うんなら後にしろ」

 

 3人がそんな事を言い合っている所に、日本人の中年に捕らえられたロックとヒズボラの残党らしき3人が姿を現した。

 

「……おいおい、日本人にしちゃこりゃヒデェな。一体何の恨みがあ」

 

 るんだか。

 そう言い切る前に双頭蛇が中年の額をブチ抜いた。力無く身体を傾ける男の惨状にロックが顔を青褪めさせる中、バイパーは眦を吊り上げ二挺の双頭蛇を構える。

 

「伏せろロック!!」

 

 ロックはレヴィの叫びに慌ててしゃがみ込む。その頭上を計11発の,44マグナム弾が掠めた。

 

「……タケナカ?」

 

 イブラハは、呆然と()()()()()()()()()に視線を向けた。

 それは確かにかつての親友だったモノだった。四肢はえぐり千切られ、首から上も初めから無かった様にブチ抜かれ見分ける顔すら四散していたが、確かに日本を捨てた同志。そのはずだった。

 

「タケナカ……? あぁ元赤軍の竹中さんか。どっかで見た顔だと思ったら、テレビってより交番だったかな?」

 

 いつの間に近付いていたのか、タケナカを解体した男はイブラハの額に銃口を突き付けていた。

 

「マグダレナの悪夢出張版でーす。残るはアンタだけ」

 

 男の口から零れた単語に、イブラハは全身から冷や汗が噴き出すのを感じた。

 かつて南米のコロンビア共和国で行われた、最凶最悪のカウンターテロの化け物の異名。

 

「……嘘だ」

「ウソでもホントでもいんじゃない? アンタは悪くないけれど、テロリストって親の仇だからさ? この世から根絶して欲しいんだよね、俺」

 

 親の仇。

 

「嫌だ……死にたくない」

 

 首を振りながら後退るイブラハに、訝しむ様な視線を向けたバイパーが問いを投げる。

 

「なんで?」

「やっとここまで来たのに……ここで死んだら俺のしてきた事が無駄になる! 報いを受けさせる事も出来ずに死にたくない!」

 

 ピクリと双頭蛇の銃口がブレる。

 眉間に皺を寄せた毒蛇は、続けて問いを投げた。

 

「アンタにとって大切なのは復讐?」

「そうだ。87年のベイルート……あの日の出来事を奴に見せてやる」

「それは思想より大事なん?」

「当たり前だっ! 俺がここにいるのが何よりの証だ!!」

 

 不機嫌そうに舌打ちをすると、バイパーは双頭蛇をホルスターに仕舞った。頭を搔きながら溜め息を吐くと、イブラハから視線を外す。

 

「テロリストは赦さんけれどアンタは殺さん。仇討ち頑張れば?」

 

 地面に蹲って胃の中身をブチ撒けるロックと彼の背中をさするレヴィに視線をやり、こちらを見るシェンと視線が絡まると、肩を竦めて彼女の方へと歩き出す。

 

「アンタがあの世で息子に説教される事ぐらいは、祈ってやんよ」

 

 俺は親に顔合わせらんないからさ。

 そう言う毒蛇の顔に浮かんでいたのは、自嘲めいた薄い笑みだった。

 

 

 

 




 飼い主:ヒャッハー!からのスン……で情緒の心配がされる。
 シェン:ちょっとお疲れのご様子。次話で癒やされるし、癒やすので多分大丈夫。
 レヴィ:なんとなく毒蛇との距離が近くなったかも。
 ロック:セリフはないがゲロはあった。
 レガーチ:この後火星どころか金星にブッ飛んで戻って来なくなる。
 タケナカ:わずか十数文字で退場。さらば公衆の敵。
 イブラハ:生き残ったけど手勢は全滅したし苦難の道しか残ってない。彼が息子の敵討ちを出来るかは分からんけど、死後息子に説教される事だけは作者として保証する。

 次話で二章終了、章間エピソードを何話か挟んで3章に入ります。尚、3章は日本編からのスタート予定です。
 次回投稿は09/22の予定です。それではまた次回お会いしましょう。
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