猟犬と飼い主   作:嘆きの大平原

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 日付は変われど寝る前に描き上げたのなら、それは毎日投稿説を提唱したい作者です。
 気付けばお気に入り数1495、評価数46と多くの読者様に恵まれまして、とてもありがたく思います。お気に入り500越えた頃は「おー伸びとる」ぐらいの気持ちでしたが1000越えた辺りからちょっとソワソワしてると言うか困惑だったり感じなくてもいいだろうプレッシャーを感じたりもしてますが、ぼくはげんきです。
 今後もお楽しみいただける様、息の長い作品を送り出せるよう精進しますので、お付き合い下さい。
 
 読者の皆様に感謝を。


 in the rain

 日本には四季がある。

 暖かい春、暑い夏、涼しい秋、寒い冬。

 地域ごとに差はあれど、ロアナプラにも存在する。

 一年を通して気温は高いが、最も過ごしやすいのは11月から2月。3月から5月にかけてが最も暑く、6月から10月までは雨季で、通称グリーンシーズンとも。所謂スコールが多い季節であった。

 勿論、スコールに限らず一日中雨の日も多いわけで、そんな夜は人の出入りも少ないのである。

 

「流石に今日は客足も遠のくねー」

 

 ロージィがテーブルを拭いているのを眺めながら、そんな事を呟く。

 顔を見る時間より尻を拝む時間のが長いのは偶然なのか、それともサービス(・・・・)なのか。いずれにしろ眼福眼福……と思わず両手を合わせたくなっても、仕方のないわけで。

 服着てようと下着だけであろうと、何も身に付けてなくても魅力的であるのは確かであった。

 

 彼女と出会って8ヶ月ほど、ロアナプラに来てから大体半年が経つ。

 親の仇ではあるけれど、相手は女性だし、俺は男である。

 互いに年頃で半年以上連れ添っていれば、情の一つもわいて来るし、それなりに距離も近付くものである。

 

 いやま、肝心の行為は今の所無いけれども。

 裸の付き合い……例えば一緒にシャワーを浴びたり、下着で同衾もしてるんだけれど、何かそういう雰囲気にはならんと言うか。

 

 マダム・フローラのお店に()()()()()()()事も、一度や二度ではないから性欲は問題なくあるし『こっちのアナコンダも素敵』と評判だ。たとえリップサービスだとしても、言われて悪い気はしなかった。

 そんな性事情はともかく、飼い主()ペット(彼女)も遠慮? 一線引いてる感じがしなくもないかなーと、最近は思っている。

 

「雨季は大体こんなもんだ。口だけじゃなく手も……大体片付いてんな。今日はもう上がるか? 代わりに飲んでけ」

「売上に貢献しろって?」

「ワンドリンクサービスしてやんよ……ロージィも終わっていいぞ!」

「分かったわ」

 

 やったぜ。

 

「流石バオさん器が違うねー。って事でレジェンダリオの7年」

「私も同じのを」

「あいよ」

 

 コロンビアでの思い出と言えば死体と瓦礫、血と硝煙だけには限らない。

 その一つがアグアルディエンテ。ラム酒同様、サトウキビを原料とする蒸留酒なんだけれど、ラム酒と違って単式蒸留器による1度の蒸留で作られるお酒だ。

 ラム酒よりも素材本来の甘い風味が強く、反面粗さのある味わいが好みだったりする。

 

 レジェンダリオはキューバ原産のアグアルディエンテで、その歴史は古く300年以上前から続いているそうな。国内でも数少ない蒸留責任者(マエストロ)が、今尚古式にのっとり製造していると言うソレが、俺のお気に入りなのである。

 因みにコロンビアでは、テキーラの様にワンショットグラスで飲み干すのが基本。俺? ロックグラスで氷入れるか入れないかは、その日の気分次第かな。

 

「ここんとこ店にいるのが当たり前になってんが、最近殴り合いはしてねぇのか」

「誤解を招く言い方は止めてくんない? 生憎挑戦者がなかなかいなくてさー」

 

 バイパーと呼ばれる様になってから、ゴリラっぷりもすっかり評判な様で声がかからないのが現状である。店に行っても「客としてならいてもいいが、そうじゃないならとっとと帰れ」とツレないし。

 

「まあゴリラじゃなァ」

「そうね、ゴリラ相手は流石にね」

「雇い主と同居人が辛辣な件」

 

 ぐうの音も出ない正論パンチだった。この手の軽口はすっかり馴染みの光景だからして、俺としては全然オッケーだけれども。

 

「他の仕事探すのもあれだしねー。縄張りだのなんだの気ぃ遣うのもダルいし」

 

 悪徳の都ロアナプラは無法地帯ではないのだ。

 いやま、ここに限らず悪党の巣でもルールってのは存在するし、それらを取り仕切る組織があるのは当然だったりする。

 

 例えばミス・バラライカ率いる『ホテル・モスクワ』。

 例えば張さんとこの『三合会』。

 例えばヴェロッキオさんが頭の『コーザ・ノストラ』。

 後はなんだっけ……名前忘れたけれど『マニサレラ・カルテル』。

 

 ロアナプラではこの4つの組織を指して『黄金夜会』と呼び、悪徳の都を統べるモノとして畏れ敬われているのである。

 最後だけ扱いが雑? 南米系の組織なんだ。後は察して欲しい。別に彼らが悪いわけじゃないけれど、彼らのルーツが悪いって言うか。麻薬組織自体は好きでも嫌いでもないし、俺がソレ系に手を出す事も無いかなってぐらいだけれども。

 

「立場を弁えてるっつーか、ダルイからってのが如何にもって感じだな。おかげで助かってるから文句はねェが」

「お行儀の良いゴリラだって巷でも評判なので」

「ゴリラは基本的に温厚な気性と言われているわ」

 

 誰が気性難ゴリラだと言うのか。

 いやま、雑食(・・)なのは認めざるを得ないけれど。

 

「日頃っからゴリラゴリラ言ってるが、呼び名と不気味さの方が目立ってンぞ」

「なんで?」

「知り合いは人となりを知っているけど、貴男の笑顔って異質に映るんじゃないかしら」

 

 は? 俺の醸し出す空気はマイナスイオン搭載なんだが?

 血と硝煙の匂いが濃いって? それはそう。

 

「怖くないよ?」

「いや怖ェよ。純度100%の危険物だろうが」

「は?」

「こういうやり取りも、傍から見れば冷や汗モノらしいわよ?」

 

 まさかの不意打ちにロージィの方を見れば、苦笑交じりに肩を竦めてみせた。あらやだ、お酒のせいかこの子ヤケに色っぽい。いやまて彼女酒に弱いわけじゃないから俺が酔ってんのか? 

 それはさておき。

 

「ウソやん」

「本当よ。ジニーが言ってたもの。貴男の雰囲気って日向と日陰の両方が混じっている様で、実は交じってない感じがするのよ。それが強い違和感になってるのかも」

 

 成程分からん。

 

()()()()()()()()()()()じゃんよ?」

 

 俺がそう零すと、ロージィは苦笑を深めてバオは深い溜息を吐いた。

 解せぬ。

 

「主観と客観の違いね」

「言いてぇ事は分かるけどよ? ここの連中は日陰者しかいねぇんだ。日向から追ン出されたり、爪弾きにされたりしてな」

 

 まーそーね。と目線で続きを促せば、空いたグラスに酒を注ぎ、口を開く。

 

「お前さんは自分で選んでこっちに来たんだろうが。事情は知らんし聞く気もねェが。オマエもまぁ、捨てて来たモンがあるだろうよ。けどな、ここの連中からしたら日向の連中が持ってるモノを、自分達が捨てなきゃいけなかったモノを持ってるのに、()()()()()()()()()()()匂いがしやがる。色々持ってンのにちっともイカれてる様に見えねェ。それが理解出来ねェってわけだ」

 

 バオの言葉に目を丸くする。チラリと横を見れば、ロージィも似た様な顔をしていた。

 

「……何だ二人して」

「いや如何にも酒場のマスターって感じなのにすげー似合わねぇ」

「同感ね」

「ざけんな」

 

 酸いも甘いもかみ分けた感と言うか、重ねた年輪と言うか……ガラの悪さが無けりゃなぁ。

 ロアナプラにはお似合い? 大正解。

 

 それにしても、色々持ってると来たか。言われてみれば、成程確かにって感じではある。

 つっても、人なら誰しもが生まれ育ったアレコレを余さず抱えてるんじゃないかなーと思う。

 そうならざるを得なかったって事情は人それぞれなんだけれど、日向とか日陰とか持ちすぎだとか無さすぎだとか、そんなん大した意味も差も無いと思うんだけれどね?

 

 

 

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 そしてそれは俺も例外じゃない。みんな違ってみんないいと思う反面、唯一変わらないものもあるって話なんだけれど。

 そんな事を思いつつ、雨の音とオールドロックをBGMにグラスを傾けるのだった。




 バイパー:股間のアナコンダが評判の胡散臭い男(誤解じゃないけど誤解を招く表現)ロアナプラの人間なら酒とタバコは必須だろうと言う思いと、キャラの掘り下げで好みの酒をチョイスしたら古式のラムに辿り着いた奇跡。初代得物といい酒といい、レヴィの影がチラつくのは原作ファンなら当然でしょうと言い訳してみたり。さておき、好みの女と同衾したりシャワー浴びたりしてるのに一線越えてないとか限定ED説が浮上しそうだけど、なんかそういう関係になるのはまだ早い気もする。
 
 ロージィ:スローピー・スウィングの嬢とも打ち解けており、年相応の女性らしさも醸し出されてきた模様。原作では明記されてませんが、本作中では現在24歳となっております。作者としては、おっぱいのついたイケメンと言う年上お姉さんを普く世界に広めて行きたい思いで一杯です。

 バオ:とかく災難に見舞われがちな彼ですが、本作では酸いも甘いも嚙み分けた渋いおっさんの側面を掘り下げたい。ガラの悪さが目立つ? ロアナプラの住人なら当然だと思います。

 
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