第1節:竈門炭治郎 対 影浦雅人(炭治郎視点)
(ぜんっっっぜん攻撃が当たらないぞこの人・・・!)
影浦さんとの稽古開始から、半日ほど経過した。
にもかかわらず、俺は一度も攻撃を当てられていない。
なんなら、影浦さんから数えきれないほど木刀を叩きつけられ、身体中アザだらけだった。
(蛇のような変則的な攻撃・・・俺の防御を簡単にすり抜けてくる・・・!)
影浦さんは、伊黒さんの継子で、蛇の呼吸の使い手だった。
さらに。
休憩時間にチラッと耳にした、"感情受信体質"というもの。
村上さん曰く。
"自分に向けられた他人の意識や感情を肌で感じ取ることが出来る。"
とのこと。
つまり、影浦さんに攻撃を当てるためには・・・
(・・・ッっと!?)
・・・危ない!
考えごとをしていたら、危うく目と鼻の先に景浦さんの木刀が迫っていた。
それを紙一重で回避し、一旦後ろに下がる。
(辛い、苦しい・・・こんな強い人に攻撃を当てるなんて、本当に俺に出来るのか・・・?)
弱音を吐きそうになる。
だが、影浦さんの体質は、俺の心に一瞬差した影さえ、受け取ってしまう。
「どうした竈門ォ!早く見せてみろよ。"透き通る世界"ってやつをよ」
煽り立てる影浦さん。
これがこの人の優しさなのだろう。
俺は影浦さんに気を使わせてしまったこと悔やんだ後、すぐに気持ちを切り替え木刀を構える。
「すみません!時間はかかるかもしれませんが、必ず影浦さんに攻撃を当ててみます!」
「ケッ・・・あんまり待たせるなよ?」
「・・・ハイッ!」
この日の稽古は日が暮れるまで続いた。
◇
第2節:初日の稽古の後(炭治郎視点)
結局、一度も影浦さんに攻撃を当てることができなかった。
稽古が終わり、俺は今は盾屋敷でお風呂に入っている。
(痛い・・・沁みる・・・!)
思わず悶えそうになる。
早く出たいが、疲れも取りたい。
(影浦さん、強かったな~・・・村上さん、申し訳ないな・・・俺の稽古が長引いたせいで、村上さんは影浦さんとあまり稽古できていなかったようだし・・・にもかかわらず、お風呂まで貸してくれるなんて、良い人だな・・・とはいえ、長湯するのは申し訳ないので、そろそろ出ようか)
お風呂から上がり、服を着て廊下に出る。
寝床も貸してくれるらしいので、明日のためにも布団へ直行だ。
そんな中、中庭から何かがぶつかり合う音が聞こえた。
俺は急いでその音の方向へ向かう。
すると。
「今日は一段と前のめりじゃねえか、鋼!」
「まぁな、あまり稽古が出来ていなかったからな。でも竈門の姿を見ておくのも、大事だと思ってる」
「ケッ・・・!そんなに大層なモンなのかよ?"透き通る世界"ってのは」
そう言葉にしながら、村上さんと稽古をする影浦さんの動きは、俺と稽古していた時より、別人のようだった。
(・・・速い・・・これが柱級の隊士同士の戦いなのか・・・!)
俺はなんとか、二人の戦いから盗める技術が無いか、目を凝らして観察する。
そんな中。
「隊士みんなにパンケーキを振舞っていたら遅れちゃったわ!ごめんなさい」
なんと、盾屋敷に現れたのは、甘露寺さんだった。
彼女の声が中庭に響くと、村上さんと影浦さんはピタリと静止し、声のする方へ顔を向けた。
「ケッ・・・おせーよ甘露寺」
「柱稽古お疲れ。甘露寺」
影浦さんが咎め、村上さんが労う。
甘露寺さんは顔の前で手を合わせ、甲高い声をずっと響かせていた。
それにしても。
(なんだか、意外な組み合わせだな・・・)
そう思っていたのは、俺だけではないようで・・・
「甘露寺と稽古か・・・何気に初めてじゃねーの?伊黒さん抜きで会うことなんてまずねーし、二人で稽古なんてしようもんなら、伊黒さんからなんて言われるか」
「オレも一緒だ。だが、痣が出た柱との稽古はこれと無い機会だしな。ちなみに明日は時透が来ることになってる。日替わりだ」
「そうかよ。どっちも天才チャン、天才クンじゃねーか。つーかよく伊黒さんの許可が出たな」
「伊黒さんの説得は時間がかかったよ。でも、オレはどうしてもこの二人が良かった。もちろん、不死川さんや悲鳴嶼さんより経験の面では不足だ。でもやっぱり、甘露寺も時透も本当に才能がある。だからこそオレは、竈門よりも早く、この二人が"透き通る世界"に入ることもあり得ると思ってる」
俺はその言葉を聞いて、少し複雑な気持ちになった。
(・・・うん、そうだよね。甘露寺さんと時透くんは凄いもんね・・・)
村上さんはさらに続ける。
「ただ、竈門も食らいついてくるはずだ。オレは今日の稽古を見て、確信したよ。あいつは絶対強くなる」
村上さんの言葉が、胸に沁みる。
明日も頑張ろう。
俺はそう思いながら、寝床へ向かった。