村上鋼と影浦雅人は鬼を狩る   作:白澄星火

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第20話:止まるな

第1節:止まるな(炭治郎視点)

 

あれから、21日ほど経過。

日も落ちたので、その21日目も終わりに差し掛かる。

 

そんな中で、俺は未だに"透き通る世界”に入れないでいた。

 

なんなら、甘露寺さんは15日で、時透くんなんて10日で入った。

とはいえ、一度入れば後はいつでも入れる、というわけではないようで、甘露寺さんも時透くんも"まだまだ"と謙遜をしていた。

 

そして村上さんはというと。

"透き通る世界”に入ったのは、二人より遅い20日目。昨日だ。

 

今思えば、きっかけは"痣"が出てからだった。それが19日目。

元々洗練されていた村上さんの剣技が、さらに研ぎ澄まされ、次の日には"透き通る世界”に入ったのだから、おそらく両者は切り離せないのだろう。

 

そして村上さん曰く、"強化睡眠記憶"により、一度入ってしまえば"こっちのもん"らしい。

"入るコツ"をつかみ始め、今では甘露寺さんや時透くんよりすんなり入っているように見えた。

 

そして、そんな三人と稽古し続ける影浦さんもすごい。

まず体力がすごい。

 

そして、当然のことながら、"敵意の無い相手"と戦うのは初めてらしい。

 

実際、"透き通る世界"に入った相手からは、攻撃を受ける回数が多かった。

でも、すぐに適応した。まず、11日目で痣が出た。

次に、敵意の無い相手との戦い方に切り替えた。

互角とはいかずとも、"透き通る世界"に入った柱に食らいついている。

 

俺はそんなすごい人たちを、縁側に座って遠目から見るだけ。

 

(村上さんが、他の柱に頼み込んでまで俺を連れてきてくれたのに、情けない・・・)

 

遅れを取り返そうと、夜も一人で訓練をしようとしたところ、"お前は明日に備えて寝ろ"と村上さんと影浦さんに怒られたっけ。

 

(・・・稽古の最中は、影浦さんに心配させないように、自分を鼓舞しながら打ち込むけど、稽古が終わって夜になると、一気に"来る"なあ・・・)

 

そんな中。

 

「久しぶりだな。竈門少年」

 

後ろから、聞き覚えのある声がした。

 

「・・・煉獄さん・・・!」

 

「うむ!調子はどうだ?」

 

声の主は、煉獄さんだった。

 

煉獄さんは、俺の隣に座る。

隣にいる隠の人に、支えられながら。

 

「君が心配でな!」

 

「すみません、ご心配をかけてしまい・・・」

 

「君が今どんなことを考えているか、俺でも分かる!他の隊士に負い目を感じているのだろう!」

 

「うっ・・・はい・・・」

 

図星だった。

そうだ。俺は村上さんへ申し訳ないと思うこと以上に、俺だけ柱をほぼ独り占め状態で日の出から日没まで、稽古をさせてもらっている、"恵まれた環境"にいるのに、期待に応えられていない。それが辛い。

 

そんな俺を、煉獄さんは優しく微笑みながら頭を撫でた。

 

「成果は目に見えないものだ。特に、自分自身で気づきにくいことが多い。それに、俺もそこまで才能のある方じゃなかったから、竈門少年の気持ちは理解できているつもりだ。だが、君は今まで歩みを止めたことがあっただろうか?あの夜からさらに強くなり、上弦の陸、肆を倒した。だから止まるな、竈門少年。君なら、きっとやり遂げられる」

 

煉獄さんの言葉の後、俺の頬に水滴が伝った。

 

「・・・はい、頑張ります。ありがとうございます!」

 

涙をぬぐいながら、声を絞り出す。

そして、俺は中庭の方を向いた。

 

「影浦さん、稽古を!稽古をお願いします!」

 

俺は、喉の奥から声を出した。

瞬間、柱たちが一斉に動きを止めてこっちを見た。

 

「何言ってるの炭治郎くん!無理はダメだよ!」

 

「そうだぞ竈門。焦って良いことなんて一つも無いからな」

 

甘露寺さんと、村上さんがそれぞれ口にする内容は尤もだ。

でも、みなさんだって、日中は隊士の稽古を、夜は自分たちの稽古をしているじゃないか。

 

一体いつ寝ているのだろう。

特に影浦さん。

 

だから。

 

「一戦で良いんです!俺が一撃受けたら、すぐに寝ます!でも、俺が攻撃を当てたら、影浦さんは今日は寝てください!」

 

俺がそう言うと。

影浦さんは、プルプルと震えだした。

 

「お前・・・本当に・・・」

 

口元を抑え、今にも吹き出しそうだ。

良かった。怒っているのではなく、笑いをこらえているようだ。

 

そして、一通り笑って満足したのか、影浦さんは深呼吸をした後。

 

「竈門、お前本当に面白いな・・・!いいぜ、その誘い、乗った」

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