第23話:無限城へ
第1節:爆炎(村上視点)
吹きあがる黒煙。
焦げたような匂い。
(産屋敷邸からだ・・・お館様・・・!)
オレは、一目散に走り出した。
◇
第2節:無限城へ(村上視点)
焦燥感に体を押されるまま、オレは走り続けた。
そしてついに、産屋敷邸"だった場所"に到着した瞬間。
目に入ったのは、焼け野原だった。
「お館・・・様・・・」
(この様子だと、お館様はもう・・・)
諦観の念を抱きながら、辺りを見渡していると。
「テメェかァアアア!!お館様ィイ!なにしやがったァア──────!!!」
「お館さまァ!」
「お館様!」
不死川の怒号を皮切りに、甘露寺、伊黒さんの声が続けて響いた。
さらには、時透や胡蝶も到着。
そして、焼け野原の中心で、鬼と思われる男と対峙していた悲鳴嶼さんがこちらに気づくと──────
「無惨だ!!鬼舞辻無惨だ!!!奴は頚を斬っても死なない!!」
その単語が発されたその瞬間。
オレを含む、柱たちはほぼ同時に、"男"の姿をとらえた。
無数の黒い枝で地面に縫いとどめられてなお、禍々しく強い殺気を放つ若い男。
(!!!・・・この男が・・・!鬼舞辻・・・)
「無惨!!」
一拍遅れて飛び込んできた竈門の声と同時に、柱たちは型の構えに入った。
「霞の呼吸──────肆ノ型」
「蟲の呼吸──────蝶ノ舞」
「蛇の呼吸──────壱ノ型」
「恋の呼吸──────伍ノ型」
「水の呼吸──────参ノ型」
「風の呼吸──────漆ノ型」
「弧の呼吸──────壱ノ型」
「ヒノカミ神楽──────陽華突・・・」
柱たちの渾身の一撃が、無惨に浴びせられようとした、まさにその時。
無惨は、ニヤリ、と笑った。
次の瞬間、何十枚と敷き詰められた障子が地面のあちこちで開き、オレや竈門、そして他の柱たちも飲み込まれていった。
「これで追い詰めたつもりか?貴様らがこれから行くのは地獄だ!目障りな鬼狩りども!今宵皆殺しにしてやろう!」
「地獄に行くのはお前だ、無惨!」
竈門がそう啖呵を切ったのが、壁越しで聞こえた。
それが最後。
オレは、重力のままに下へ落ちていった。
◇
第3節:仇(しのぶ視点)
(血の匂いがする)
この、おかしな城に落とされた後、私は廊下をひとり歩いていた。
建物の中だというのに、板張りの廊下の左手には、蓮の花が咲く水場が広がっている。
(ここはどこ?)
右手には、美しい文様の飾り彫りがほどこされた板戸が延々と続いていた。
その向こうから、物音がする。
私は、用心しながらそっとその戸を引き開け、中を覗いた。
中は──────広い、とても広い不思議な部屋だった。
床には水が張られ、蓮の花が沢山咲いている。
その上を、縦横に、板で出来た橋が渡されていた。
稲妻のようにジグザグに組み合わさった板の橋の、その上には。
十数体の、血まみれの死体が横たわっている。
死体はすべて女で、全員がおなじ、白いゆったりとした長衣を着ていた。
部屋の中央当たりの橋の上、その死体に囲まれて、一人の男が座っている。
ボリボリ、ボリボリ、と死体をかじる音が響く。
「ん?」
長い、白橡色(ごく薄い茶色)の髪をしたその男は、私の気配に気づいたのか、ぐるり、と振り向いた。
口元は人の血で真っ赤だった。
「あれぇ?きたの?」
虹色の瞳。
左目には"上弦"、右目には"弐"の文字。
「わぁ。女の子だね!若くて美味しそうだなぁ。あとで鳴女ちゃんいありがとうって言わなくちゃ」
その鬼の顔。
それが、視界に飛び込んだ瞬間。
私は、姉・胡蝶カナエの最期の言葉を思い出した。