第1節:ぶつかる(炭治郎視点)
「流麗!!練り上げられた剣技だ素晴らしい!名を名乗れ!お前の名は何だ!!覚えておきたい!」
猗窩座は、戦いながらも、義勇さんに話しかけ続ける。
対する義勇さんは、気のない態度をとり続けた。
「鬼に名乗るような名は持ち合わせていない。俺は喋るのが嫌いだから話しかけるな」
「そうかお前は喋るのが嫌いなのか!俺は喋るのが好きだ!何度でも聞くぞ、お前の名を!」
猗窩座はそう言うと、右足を上げた。
「破壊殺・脚式──────流閃群光」
強烈な連続蹴り。
義勇さんはそれを、刀の柄で受けるが、衝撃を受け止めきれず、壁を突き破って吹き飛んでいってしまった。
「義勇さん!!」
「そうか、アイツは義勇という名前なのか」
一瞬にして、俺の懐まで詰めてきた猗窩座。
俺は背後に飛び退き、敵の左手をかわす。
だが、すぐにもう片方の腕が、迫ろうとしていた。
(回避・・・いや違う、ここは受けなきゃ間に合わない・・・!)
(ヒノカミ神楽──────)
「破壊殺──────」
(──────灼骨炎陽!)
「──────鬼芯八重芯」
お互いの技がぶつかる。
と同時に、刀身に強い衝撃が伝わり、体勢を崩しそうになる。
が、俺の身体を誰かが後ろから受け止めた。
(この匂いは・・・)
「待たせたな、竈門」
「・・・村上さん・・・!」
助太刀に入ってくれたのは、村上さんだった。
それを見て、心の底から安心感を覚えた。
そして、敵として対峙する猗窩座はというと。
「また会ったな、鋼・・・!その闘気・・・・あの夜よりさらに練り上げられている・・・!」
「久しぶりだな、猗窩座。今回は勝たせてもらう」
「そうか、それは楽しみだ。さあ、早速戦おう、鋼!」
その言葉の後。
鋼さんと猗窩座は同時に動いた。
最初は、真正面からのぶつかり合い。
お互い、凄まじい密度の応酬を重ねた。
(・・・すごい!稽古の時から思っていたけど、村上さんの動きは、隙がまったく無い・・・!)
だが、猗窩座はあの夜、煉獄さんと村上さんを同時に相手をし、なお余力を残していたほどに、強い。
(俺が助太刀に入らなきゃ、この戦いは勝てない・・・!でも、さっきまで義勇さんからも守られてばかりだった・・・やっぱり、"透き通る世界"が必須・・・どうにか、戦いの中で入るしかないのか・・・!?)
再び俺は、敵の元へ。
だが、入り込みすぎず、さらに2人の隙間を縫うように、太刀筋を入れていく。
すると、猗窩座は拳を上段に構えた。
「破壊殺・砕式──────万葉閃柳」
拳を中心にして床が放射状に砕かれる。
不安定になる足場。
俺は体勢をぐらりと崩してしまう。
そして次の瞬間。
猗窩座の、鋭い殺気を帯びた瞳が俺をまっすぐ捉えていた。
(先に俺に狙いを定めている・・・来るぞ・・・次の攻撃が・・・!)
猗窩座の脚に力が込められたのが見えた。
(下・・・っ!!)
「破壊殺・脚式──────飛遊星千輪」
連続した蹴り上げ。
一発一発が、強烈。
だが、横から村上さんが盾を強く押し付けたことで、猗窩座の攻撃のほとんどは逸れた。
とはいえ、1,2発はもらってしまい、血交じりの口から胃液が飛び出る。
(くっ・・・攻撃を受け切れても、威力が凄すぎて負傷を零にできない!!)
打ち上げられた体制からくるりと回転し、地面に着地。
その後、猗窩座から放たれた裏拳を屈むことで回避する。
そして猗窩座の背後から村上さんの刀身が迫る。
しかしそれを、猗窩座は見ずに避け、その後俺たちから一度距離を取った。
「炭治郎、お前の成長も見事だ。あの夜を思い出すよ。そして鋼。今のお前はそんなものじゃないだろう」
「ふう・・・」
村上さんは、ゆっくりと息を吐いた。
そして、こう続けた。
「ああ。やっと、暖まってきたところだ」
右目の下には、盾のような形をした痣が浮かんでいた。