第1節:透き通る世界(炭治郎視点)
父さんが教えてくれた"透き通る世界"に入れた時、動きの予測と攻撃の回避の速度が格段に上がる。
相手の肺の動き、血管の流れや収縮が透けて見えて、自らの筋肉の収縮もより速く鮮明に分かった。
猗窩座が恐らく探知している"闘気"を閉じた状態で頸を狙えるかもしれない。
◇
第2節:もう間違わない(村上視点)
竈門がほんの少しの時間、猗窩座を引き付けてくれたおかげで、オレは盾を回収することができた。
今は右手に盾、左手には日輪刀という、守りの姿勢だ。
なぜなら、猗窩座から攻撃が先読みされるようになってきたからだ。
あの夜、初めて戦った時から、何度もオレは強化睡眠記憶で復習してきたというのに。
あの夜の猗窩座なら、完璧に凌げる自信があったのに。
この男は優に上回ってくる。
何という鬼。
これが上弦の参。
この男は修羅だ。
戦うこと以外全て捨てた男だ。
「もう盾の型も弧の型も全て出し尽くしたようだな。もう十分だ鋼。終わりにしよう。よくここまで持ちこたえた!!」
猗窩座はそう言って、右手を振りかぶる。
それをオレは後ろに飛んで回避する。
だが、一定以上の距離を開けることを、猗窩座は許容しない。ピッタリと着いてくる。
一旦距離が欲しい。
オレはけん制も兼ねて、上段から垂直に日輪刀を振り下ろす。
しかしそれを、猗窩座は折るつもりなのだろう。
吸いつくような精度の裏拳が、刀身の側面に迫る。
だが、オレは衝突の直前で、刀を傾けて猗窩座の拳へ刀身をめり込ませた。
ボトリ、と指が床に落ちる。
「な・・・に・・・?」
目を見開く猗窩座。
オレは最後まで刀をふり抜いた後、おもむろに口を開いた。
「あの夜、オレは大事な戦いで刀を折った。あれは最悪だった。でも、二度と同じ間違いは犯さない。オレの強化睡眠記録ならそれが可能だ。そして──────」
言いかけたところで、オレは思わず、言葉を中断した。
なぜなら。
──────ゴトン。
猗窩座の上腕から先の部位が突如として、床に落下した。
(何が──────起きた?)
オレも、猗窩座も呆気にとられる。
なにせ、上弦が反応できない攻撃で、腕が落とされたのだ。
そして次の瞬間。
全てをそぎ落とした、あの目がオレの視界に飛び込んでくる。
(・・・竈門!まさか──────)
猗窩座の横に立ち、振り向いた竈門の表情。
それが、猗窩座の視界にも入った時。
猗窩座は、強烈な殺気を放った。
「──────術式展開」
ドン、と地面を踏み砕く音。
そして。
「終式──────青銀乱残光」
視界が全て、死で覆われた。