村上鋼と影浦雅人は鬼を狩る   作:白澄星火

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第30話:赫刀

第1節:斜陽転身(村上視点)

 

不可避ともいえる、ほぼ同時に百発の乱れ打ち。

 

(盾すら破壊してくるとは・・・骨や内臓の損傷は避けれた・・・が)

 

全身の打撲、出血もひどく、膝をついてしまう。

 

(くそっ・・・すぐには立てない・・・それに竈門は無事か・・・?)

 

そんなことを考えている間にも、猗窩座はゆっくりとこちらに近づいてくる。

 

「大したものだ。生きているとは流石だな。致命傷は何とか躱せたか。杏寿郎や炭治郎のように死ぬことは無い。お前も鬼になれ、鋼」

 

そう言って、鬼の勧誘をしてくる猗窩座。

 

その後ろ。

 

(気づいてない・・・?・・・背後の竈門に・・・気配が無いのか?これは・・・)

 

血だらけの竈門が立ち上がり、日輪刀を構えていた。

 

「猗窩座!!今からお前の頸を斬る!」

 

背後から襲えば良いものを、馬鹿正直に竈門は猗窩座を呼んだ。

 

すると猗窩座は振り返り、薙ぐような裏拳を繰り出す。

しかし竈門は屈んで回避し、低い体勢のまま猗窩座の懐へ踏み出す。

 

そして次の瞬間、俺の瞳に飛び込んできたのは。──────

 

 

まるで、上下逆様に映し出された写像のような型をした竈門。

そして、猗窩座の頸に刀身を通し終えた後の光景だった。

 

 

第2節:至高の領域(猗窩座視点)

 

闘気の無い人間を、この数百年一度も見たことは無い。

赤子にすら薄い闘気があった。

 

だというのにコイツはあの一瞬全く闘気が無くなった。

 

そこにいるはずのない異物と対面しているような状態に。

 

感覚が混乱を起こした。

俺の羅針は無反応。

 

だがそんなことは問題ではない。

戦いの場においては。

 

予期せぬこと、初めて遭遇する事態全てを。

即座に理解し対処しなければならない。

 

俺はそれができる。

 

・・・はずだった。

しかし。

 

この短時間の戦闘でコイツは何かを掴み俺の速度を上回った。

数百年間の武術の粋を、正々堂々真正面から打ち砕かれた。

 

その瞳の中には憎しみも怒りもなく、殺気も闘気もなかった。

恐らくその瞳が捉えていたものは。

 

俺の求めていた"至高の領域"、"無我の境地”に他ならない。

その境地があるということを漠然と感じていたが、今尚俺はそこへ辿りつけずにいた。

 

 

第3節:赫刀(村上)

 

ズルッ・・・と、猗窩座の頸が胴体から落ちようとしていた。

しかしそれを、猗窩座は頭部を掴んで、無理矢理命をつなごうとする。

 

(盾の呼吸・弐ノ型──────守護断進)

 

破壊され、随分小さくなった盾を投擲。

猗窩座の後頭部に突き刺さると、怒りに満ちた表情のまま、床に転がっていった。

 

そして、ボロボロと頭部が崩れ始める。

 

(終わった・・・勝った・・・)

 

しかし。

 

(体の崩壊が始まらない・・・これは・・・)

 

──────ドン。

 

鬼の足が床を砕き、そこから雪の結晶が広がっていく。

 

さらに、首の断面がメキメキと再生を始めている始末。

 

そして、まず最初に標的になったのは竈門。

猗窩座の手刀が、竈門の頭部目がけて振り下ろされる。

 

それをなんとか、身体ごと回転させて回避する竈門。

しかし、限界が来たようで、ぐらりとよろけてしまう。

 

その隙を付いた猗窩座。

竈門の横腹に足をめり込ませ、壁まで吹き飛ばした。

 

もちろん、それだけでは終わらない。

とどめを刺すべく、すでに気を失った炭治郎の元へ、猗窩座は駆け出す。

 

(・・・させるか・・・弧の呼吸・弐の型──────閃空・弐閃)

 

猗窩座の右横めがけ、十字の斬撃を放つ。

しかし即座に再生。

 

その後、猗窩座は俺に狙いを定める。

首が無くても衰えを知らない猗窩座の徒手空拳を、なんとか剣術で凌ぎ続ける。

 

(竈門がなんとか頚を落とした・・・この後はオレが・・・)

 

「う・・・おおおおおお!」

 

がらにもなく、気持ちが高ぶってしまったのか、刀の柄を強く握ってしまう。

そしてそれを、猗窩座の腹部に横から叩きつけた。

 

しかし、鍛え上げられた腹筋により、途中で止まってしまう。

 

(くっ・・・抜けない・・・まずい)

 

さらに刀を強く握って、抜こうとした。

すると。

 

刀身が深紅に染まり、猗窩座の身体が硬直した。

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