第1節:甘露寺蜜璃 対 結晶ノ御子(甘露寺視点)
(四体の氷像で限界だったのに、今度は六体!!さすがに無理!!!)
津波のように押し寄せる敵の血鬼術を相手に、私はただ逃げ回るだけ。
(もう無理・・・!でも伊黒さんも心配だわ!)
私がもっと強ければ、助けに行けたのだけれど・・・
そんな葛藤を抱いていると。
氷像の背後に、本来そこにあるはずの無い長い髪がさらりと揺れたのが見えた。
(蝶の形をした髪飾り・・・でも色はしのぶちゃんのとは違う・・・)
逃げながらも観察を続けていると、氷像同士の隙間から顔がチラリと見えた。
(あの娘はたしか、しのぶちゃんのところの・・・・カナヲちゃん・・・!)
増援であるのと、見知った顔の隊士であることにほっと胸を撫でおろす。
そんな私をよそに、真剣な表情のままカナヲちゃん。
ジグザグに動いて遠回りしているように見えるが、どうやら氷像六体の死角に潜り込んでいるのだろう。
とんでもない観察力だ。
(すごい・・・本当に目が良いんだね・・・そういえばしのぶちゃんも嬉しそうに言ってたっけな・・・)
そんな風に、師範が誇るほどの継子である彼女。
どんどん氷像へ近づいていき、ついに刀を振り下ろした。
しかし。
刀身が氷像に当たる直前、六体のうち二体が一気にカナヲちゃんの方へ向かっていき、氷の蔦や氷柱を飛ばした。
それに対し、カナヲちゃんは振り下ろしていた刀をピタリと静止させ、敵の攻撃を回避する。
(どうして!?さっきまで全然気づいてなかったのに・・・いや、もしかして・・・)
私は、"本体"の様子を一瞥する。
すると、薄笑いをした鬼の表情が、一瞬だけ映り込んだ。
(ずっとこっちを見てた・・・!?伊黒さんと戦いながら、氷像の補助もしてたってコト・・・!?どれだけ出鱈目なの!!)
でも。
(今、カナヲちゃんの方に三体、私の方に三体・・・)
攻撃するなら、今だ。
私は、氷像の攻撃が当たるギリギリの場所まで踏み出すと。
「恋の呼吸 参ノ型──────恋猫しぐれ」
幾重にも重なる斬撃を高速で繰り出す。
すると、三体の氷像の内、一体の腕が砕け、飛んでいく。
(やった・・・!攻撃が当たった!噓みたい!)
久しぶりに、確かな手ごたえを感じる。
それと同時に、伊黒さんとカナヲちゃんの安否を確認するため、視線を動かす。
(カナヲちゃんは・・・なんとか敵の攻撃を回避できているわね・・・伊黒さんは・・・)
私は、本体の鬼の相手をしている伊黒さんの方を見た。
その瞬間、彼の様子がいつもと違うことに気づいた。