次から無限列車です。
全然関係無いですけど、村上の強化睡眠記憶と、魘夢の血鬼術ってどっちも"睡眠"が関係しますよね。
第1節:退院(炭治郎視点)
「はい、あーん」
「あーん」
「うん、あごは問題無いですね」
機能回復訓練を無事達成し、たった今、傷の治りを蟲柱・胡蝶しのぶさんに診察してもらっていた。
結果は良好。今思えば蝶屋敷での生活も良い思い出だ。
「すみません。見送りはできませんが、これからも頑張ってくださいね」
「はい!ありがとうございます!あっそうだしのぶさん。最後に一つ聞きたいことがあって・・・」
「何でしょう?」
「"ヒノカミ神楽"って聞いたことありますか?」
「ありません」
──────!?
即答・・・
これは想定外だ。
「じゃっ、じゃあ、日の呼吸とか・・・」
「知りません」
これも即答。
うーん、困った。
よし、まずは事情を説明しよう。
◆事情説明中◆
「なるほど。なぜか竈門君のお父さんは火の呼吸を使っていた。火の呼吸の使い手に聞けば何かわかるかもしれない、と」
しのぶさんはふむふむ、と頷いた後、さらに言葉を続けた。
「"火の呼吸"はありませんが、"炎の呼吸"はあります」
「?・・・??・・・同じではないんですか?」
「私も仔細は分からなくて・・・ごめんなさいね。ただその辺りの呼び方についてが厳しいのですよ。・・・"炎の呼吸"を"火の呼吸"と呼んではならない。詳しいことは炎柱の煉獄さんに尋ねてみるといいかもしれません」
しのぶさんはそう言うと、鎹烏に指示を出した。
◇
第2節:不死川玄弥(炭治郎視点)
しのぶさんの診察を終えた後、同じく蝶屋敷にお世話になった人たちへの挨拶に向かう。
道中、廊下を歩いていると、曲がり角の向こう側から足音が聞こえた。
ぶつからないように、俺は内側に身を寄せる。
──────ドン
(避けたのにぶつかって来られた・・・って、あれ?今の人は・・・最終戦別の時の・・・!)
白髪の女の子を殴りつけた人だ。
短期間ですごく体格に恵まれている。
(でも何だろう?匂いが・・・何だろう)
そんな違和感を感じつつも、久々に顔を見たのだから、声をかけてみよう。
「久しぶり!元気そうで良かった!」
──────・・・
何も返事は無かった。
◇
第3節:神崎アオイ(炭治郎視点)
最初に挨拶に向かった先は、場所案内や訓練の説明をしてくれたアオイさん。
「そうですか。もう行かれるのですね。短い間でしたが同じ刻を共有できて良かったです。頑張ってください」
「ありがとう・・・」
「お気をつけて」
テキパキと、洗濯物を干しながらアオイさんは食い気味に話す。
看護や機能回復訓練だけでなく、家事まで・・・
本当に頭が下がる。
「たくさんお世話になったなぁ。忙しい中俺たちの面倒みてくれて、本当にありがとう。おかげでまた戦いに行けるよ」
俺がそう言うと。
アオイさんは目を見開いたまま俺の方を向いた。
しかしすぐに、洗濯物の方へ視線を戻した。
「あなたたちに比べたら私なんて大したことはないので、お礼など結構です。選別でも運良く生き残っただけ。その後は恐ろしくて戦いに行けなくなった腰抜けなので」
「そんなの関係ないよ。俺を手助けしてくれたアオイさんはもう俺の一部だから。アオイさんの想いは俺が戦いの場に持っていくし」
俺の言葉に、アオイさんは手の動きを止めた。
いろんな感情の匂いがした。
これで少しは恩返しできただろうか?
「また怪我したら頼むね」
そして俺は、アオイさんの元を後にする。
◇
第4節:栗花落カナヲ(炭治郎視点)
アオイさんの次は、機能回復訓練で苦戦したカナヲの元へ。
「俺たち出発するよ。色々ありがとう」
「・・・」
「君はすごいね。同期なのもう”継子”で。俺たちも頑張るから」
「・・・」
「えーっと」
「・・・」
カナヲは何も話さない。
俺の言葉に、ただ黙ってニコニコと笑顔を返すだけだった。
しばらく沈黙が続いた後、カナヲは銅貨のようなものを、懐から取り出した。
次に、空中に弾き上げた後、落ちてきたものを手で受けとめる。
そして、手の甲にあるものを見たカナヲは、おもむろに口を開いた。
「師範の指示に従っただけなので、お礼を言われる筋合いは無いから。さようなら」
喋ってくれた!
俺は嬉しくなり、もっとカナヲと話したくなった
「今投げたのは何?」
「さよなら」
「それ何?」
「さよなら」
「お金?」
俺が何個か質問をする。
しかし、カナヲは答えない。
でも、さっきは話してくれたし・・・
もっと距離を詰めた方が良いのかもしれない。
俺は諦めず、カナヲの隣に座った。
「表と裏って書いてあるね。なんで投げたの?」
「・・・」
「あんなに回るんだね」
「指示されていないことはこれを投げて決める。今あなたと話すか話さないか決めた。"話さない”が表、"話す"が裏だった。裏が出たから話した」
カナヲは、銅貨のようなものをまっすぐ見ながらそう言った。
俺は、カナヲの生き方に興味を抱くと同時に、放っておけないと思った。
「なんで自分で決めないの?」
「・・・」
「カナヲはどうしたかった?」
「どうでもいいの。全部どうでもいいから、自分で決められないの」
「この世にどうでもいいことなんて無いと思うよ。きっと」
俺はそう言った後、何がカナヲをそうさせているか考えてみる。
「カナヲは心の声が小さいんだろうな。・・・うーん。指示に従うことも大切だけど」
言葉にしながら思考を巡らせている中、閃く。
「それ、貸してくれる?」
「えっ?うん、あっ・・・」
「ありがとう!」
俺は、カナヲから銅貨のようなものを借りると中庭に出て、カナヲの方に身体を向けた。
「よし!投げて決めよう!」
「何を?」
「カナヲがこれから、自分の声をよく聞くこと」
俺は、銅貨のようなものを上空に指で弾いた。
けど、少し飛ばしすぎたかもしれない。
「表!表にしよう!表が出たら、カナヲは心のままに生きる!」
今日は空は青かった。
日の光で、銅貨のようなものがキラキラと輝く。
裏と表、どちらになるだろうか。
俺は落下を待っていると。
ビュウ、と強い風が吹いた。
「わっ、あれっどこ行った?おっとっと・・・」
見失いそうになるが、なんとか受け止める。
「とれたとれた!カナヲ」
俺は銅貨のようなものを手の甲に乗せたまま、カナヲの元へ駆け寄る。
そして、覆いかぶさっていたもう片方の手を、カナヲの前で退ける。
すると。
「表だ──────!」
気持ちが高揚した。
俺は思わず、飛び跳ねて喜んでしまう。
「カナヲ!がんばれ!人は心が原動力だから!心はどこまでも強くなれる!」
俺は、カナヲの手を握り、目をまっすぐ見ながら語り掛ける。
すると、先ほどまであまり表情が動かなかったカナヲだったが、今は動揺しているのが分かるくらい口を開けている。
「・・・」
「じゃ、またいつか!」
俺が出来るのはここまで。
カナヲが、心のままに生きてくれたら嬉しい。
少しずつでも変わっていけたらな。
俺はカナヲに挨拶を済ませると、次の挨拶回りへ向かう。
すると、背後から声がした。
「なっ・・・何で表を出せたの?」
「偶然だよ!それに裏が出ても表が出るまで何度でも投げ続けようと思ってたから」
俺がそう言うと、カナヲはポカンと立ち尽くした。
そんな彼女をしり目に俺は走っていく。
「元気で~」