荒船さんも本当にチラっとだけ登場します。
第1節:魘夢
「どんなに強い鬼狩りだって関係ない。人間の原動力は心だ精神だ。"精神の核"を破壊すればいいんだよ。そうすれば生きる屍だ殺すのも簡単。人間の心なんてみんな同じ。硝子細工みたいに脆くて弱いんだから」
汽車の上で風にあたりながら、男はそう独り言ちる。
◇
第2節:黒い影
"あの人"から渡された縄は、特別な能力を行使することができた。
それは、繋げた者の夢の中に侵入できるというもの。
信じられないと思う。
でも実際、私は今、布で包まれた大きな板を抱えた短髪の男の夢の中に居る。
そこは、どこかの屋敷の敷地だった。
(・・・!・・・危ない。本体がいる)
中庭に入ろうとした瞬間、視界に入ったのは、木刀を構える短髪の男と、彼を指南する茶色い髪の男。
(気づかれないようにしないと・・・)
私は踵を返すと共に、足音を殺して、"夢の端"まで急ぐ。
(あった。"壁"だわ。早くこいつの"精神の核"を破壊して、私も幸せな夢を見せてもらうんだ)
私は、その"壁"に錐を突き立てる。
すると、布のように空間が破け、壁の向こう側が現れた。
(大きな・・・本棚?それに、なんなのこの膨大な量の本は・・・)
見渡すと、四方八方に巨大な本棚がそびえ立っていた。
その中心には、黒い人影がひたすらに筆を動かしている。
(そんなことより、"精神の核"を・・・)
私は"壁"の向こう側の世界を歩く。
ただ、"精神の核"を探すと同時に、影へと視線を向けるのを忘れなかった。
探索と警戒。
二つの動作を交互に行う。
とても非効率だが、私にとっては必要なことだった。
・・・どれだけ、視界を動かしただろうか。
相変わらず、黒い影は手を動かし続けている。
特に何も起こらないため、少しだけ緊張感が解れていた。
そう、私は"警戒"を怠り、"探索"に集中したのだ。
そしてついに、本の隙間から、"精神の核"を見つけた。
それと同時に、何かを忘れているのではないか、と思った。
私は反射的に振り向いた。
──────"ソレ"はピタリと筆を止め、私のほうを見ていた。
目も、鼻も、口も無い。
例えるなら、底の無い穴。
私は"ソレ"を見た瞬間、身体が引っ張られるような感覚に陥った。
◇
第3節:おはよう(炭治郎視点)
『目覚めろ!目覚めろ!』
誰かが俺に語りかける。
『目を覚ませ!』
この声は・・・
「ああああああああ!」
飛び跳ねるように上半身を起こす。
そしてすぐさま、首に手を当てた。
(・・・大丈夫。生きてる)
首がつながっていることと、汽車にいること。
全てに安堵を覚えた。
(・・・そうだ!)
俺は禰 豆子を探す。
(正面にはいない、どこだ)
上半身をひねり、後ろを向く。
するとそこには・・・
「禰 豆子!大丈夫か・・・!」
妹に手を伸ばす。
その瞬間、自身の手首に焼き切れた紐がぶら下がっているに気づいた。
(微かだけど鬼の血の匂いもするぞ・・・そうだこれ・・・!)
俺は懐から切符を取り出す。
(やっぱりこれも微かに鬼の匂いがする。切符を切った時に眠らされたんだな。鬼の細工がしてあるんだ。これだけの微量の匂いでこれ程の強い血鬼術を・・・)
考えを巡らせている中、汽車内の状況に心臓が跳ねた。
「煉獄さん!、村上さん!、善逸!、伊之助!」
みんな意識を失っている。
事態の深刻さを痛感した俺はすぐに、椅子の下に隠してあった日輪刀を取り出した後、改めて状況を整理した。
(手首を縄で繋がれてる・・・)
煉獄さん、村上さん、善逸、伊之助それぞれと縄で繋がれているのは、知らない乗客だった。
それを見た俺は、"この縄を日輪刀で断ち切ると良くない"という直感が働いた。
「禰 豆子頼む!縄を燃やしてくれ!」
汽車の中で、炎があがった。