第1節:無限列車・あらすじ①
無限列車に乗車した村上・煉獄・炭治郎・善逸・伊之助の五名。
しかし全員、強力な血鬼術により夢の中へ。
そんな絶望的な状況の中で、炭治郎だけは禰 豆子の助力と自身の執念により現実の世界へ戻ることに成功。
その後炭治郎は、適格な状況判断により、村上・煉獄・善逸・伊之助ら四名の"紐"を、禰 豆子の血鬼術により焼き切った。
それでも彼らが起きることはなかったため、禰 豆子に車内のことを任せると、炭治郎は汽車の上へと場所を移した。
するとそこには──────
◇
第2節:耳飾り(魘夢視点)
本当は、幸せな夢を見せた後で悪夢を見せてやるのが好きなんだ。
人間の歪んだ顔が大好物だよ堪らないよね。
不幸に打ちひしがれて苦しんでもがいてる奴を眺めていると楽しいでしょう。
だけど俺は油断しないから、回りくどくても確実に殺すよ鬼狩りはね。
インクに俺の血を混ぜた切符。
車掌が切符を切って"鋏痕"をつければ術が発動する。
これは遠隔術。
面倒でもこれが一番術だと気づかれなかった。
気づかれないのは大事なことだ。
夢だと気づくまでそこは現実なのだ。
それなのに。
何でコイツは起きたのかな。
短時間で覚醒条件も見破った。
幸せな夢や都合のいい夢を見ていたいっていう欲求は凄まじいのにな。
「人の心の中に土足で踏み入るな!俺は君を許さない」
目の前の鬼狩りはそう言って、刀を抜いた。
(あれぇ?耳に飾りを付けてるな)
運がいいなぁ早速来たんだ俺の所に。
夢みたいだ。
これでもっと無惨様の血を戴ける。
そしてもっと強くなれたら上弦の鬼に入れ替わりの血戦を挑めるぞ。
◇
第3節:侮辱(炭治郎視点)
距離は車両一両分。
水の呼吸・拾ノ型──────生生流転
鬼との距離を、生生流転の回転とともに、詰める。
車両の半分まで来た。
もう少しで──────
しかし、俺の攻撃が届く前に、鬼は前へと手をかざした。
「血鬼術──────矯正昏倒催眠の囁き」
ぐらり。
視界が反転したと思えば、再び"家族の元"へ。
すぐさま俺は、刀身を首にあてがい──────
再び汽車の上へ意識を戻す。
「眠れぇぇ」
また家族の顔が視界に映る。
間髪入れずに自決。
もはや迷いは無い。
「眠れぇぇぇぇ」
ゆっくりと、だが確実に。
鬼へと近づいていく。
『何で助けてくれなかったの?』
『俺たちが殺されてる時何してたんだよ』
『自分だけ生き残って』
『何のためにお前がいるんだ。役立たず』
『アンタが死ねば良かったのに。よくものうのうと生きてられるわね』
鬼が見せる悪夢。
これにより、俺の怒りは頂点に達した。
「言うはずが無いだろうそんなことを!俺の家族が!!俺の家族を・・・侮辱するなァアアァアアア!!!」
俺が鬼の頸元に刃を振るうと、頭部は後ろに転がっていった。
(手応えがほとんど無い。もしや、これも夢か?それともこの鬼は那谷蜘蛛山の鬼より弱かった?)
そんなことを思っていると、背後から声がした。
「あの方が、"柱"に加えて"耳飾りの君"を殺せって言った気持ち。凄くよくわかったよ。存在自体がなんかこう・・・とにかく癪に障って来る感じ」
その声の方向に、俺は身体を向ける。
そこには、車両に根を張った鬼の頭部が笑っていた。
(死なない・・・!?)
ドクン、ドクンと脈打つ音と共に、鬼は上機嫌で言葉を続ける。
「素敵だねその顔。そういう顔を見たかったんだよ。うふふ。頸を斬ったのにどうして死なないのか教えて欲しいよね。いいよ俺は今気分が高揚してるから。赤ん坊でもわかるような単純なことさ。うふふっ」
鬼はそう言うと、すでに動かなくなった自身の胴体の方へと視線を向けた。
「"それ"がもう本体ではなくなっているからだよ。今喋っている”これ”もそうさ。頭の形をしているだけで頭じゃない。君がすやすやと眠っている間に、俺はこの汽車と"融合"した!」
鬼の言葉を聞いて、背筋が凍った。
この時の、俺の顔が分かりやすいくらい青くなっていたんだろう。
目の前の鬼は、さらに口の端を釣り上げた。
「この列車の全てが俺の血であり骨となった。うふふっその顔!いいねいいねわかってきたかな?つまり、この汽車の乗客二百人余りが俺の体をさらに強化するための餌。そして人質。ねぇ守り切れる?君は一人で。この汽車の端から端までうじゃうじゃとしている人間たち全てを、俺に”おあずけ”させられるかな?」
鬼はそう言うと、汽車に溶け込んでいった。
(どうする・・・どうする!!一人で守るのは二両が限界だ。それ以上の安全は保障ができない・・・!)
「村上さん、煉獄さん。善逸、伊之助──っ!寝てる場合じゃない!!起きてくれ頼む!!禰 豆子──ッ!!眠っている人たちを守るんだ!!」
俺は必死に叫ぶ。
すると、汽車の天井がめこり、と膨らみ、
「盾の呼吸・壱ノ型──────鋼壁推進」
盾を携えた村上さんが、突き破りながら汽車の上に現れる。
「竈門、下の救援を頼む。嘴平と竈門妹が乗客を守っている」
「村上さん!」
「その隙にオレは・・・」
と、村上さんが言いかけた時。
汽車の窓から、乗客が放り出されるのが見えた。
その瞬間。
迷う暇もなく、村上さんは飛び降りて救出に向かった。
「ああっ・・・」
もう姿は見えない。
(けど、柱の村上さんだったら必ず・・・!)
俺は村上さんと乗客の無事を信じて、車内に戻った。