「寒い」
家の布団の中で包まって寝ていたからぬくぬくの暖かさに包まれているはずなのに、それとは全く別の感覚に、目を開ける。
…此処は…?
あたりを見回してみた。
目に映るのはゴツゴツとした無機質な石レンガと赤錆びた鉄格子。
天井に穴が空いていて、そこから光が漏れている。
「え?」
そこは牢獄だった。しかもかなり古い。
「えと、あれ?」
え?え?
どういう状況なんですかこれ?
私、仕事しない文さんの溜まった分の仕事を本人に押し付けてお夕飯食べてお風呂入ってお布団入って寝ましたよね?
目が覚めたら牢獄の中なんてどういう状況ですかこれ?
物語の序盤で主人公が牢獄に入れられちゃったなんてシーンありますけど、これ現実にあり得るような話じゃ無いですよね?
―――じゃぁこれは、
「文さ〜ん。開けて下さ〜い。いくら仕事やらされたからって、こんな仕返しはないですよ〜」
きっと文さんのせいだ。間違いないですね。
いっつも仕事ほったらかしてイタズラして来る文さんのことです。今回もそのイタズラに違いありません。その上今回は溜まって多分の仕事をやらせた分何時もより質が悪いイタズラを仕掛けに来たんでしょう。にしても酷いです。牢獄の中なんて。悪いのは全部文さんなのに。
「文さ〜ん。文さ〜ん?あ〜け〜て〜く〜だ〜さ〜い〜」
なるべく聞こえるよう、と言うかどうせもう朝ですし待っている文さんだって寝てるはずなので大声で鉄格子の向こうに向かって叫びました。
けれども文さんは来ません。絶対聞こえるくらいには発してるはずなんですけど…
仕方ありません。
いくら呼べども来ない文さんなんかもう知りません。他にここから出る方法がないか探しましょう。
「あ、おーい。そこにいるお方ー。ちょっと此処の鍵を開けてくれませんかー」
ちょうどここから少し離れた左手側に人影が見えました。もしかしたらここの牢獄の管理している天狗でしょうか?鍵を持ってるかも知れません。
「おーい。聞こえてますかー?ここから出して下さーい。おーい!」
…おかしい。いくらなんでもこの距離でこの声が聞こえないのはおかしいです。耳がものすごく遠いのでしょうか。
ていうかここ、すごい腐臭がします。それに牢獄自体すごく汚いです。いくら天狗が妖怪だからって、牢獄の中を汚くして中に入れられた人を病気にして死なせるなんて酷いマネはしません。中に人がいない時は二周に一度くらいの頻度で当番がちゃんと掃除してるはずです。
…あ。もしかして文さんが私をここに入れることができたのもそれが理由でしょうか。今日の掃除当番は文さんのはずですし。
でも、あれ?家に鍵閉めてたはずな―――
「あ…あぁ…」
え?
急にうめき声が鉄格子の奥から聞こえてきました。それも先程の人影から。
人影の姿を良く見ようと椛は少し目を細める。
すると、人影が振り返ってきた。
「うわぁぁあああああああああああああああああああああ?!」
その振り返って来た人影の姿を見て驚きの余り私は大声で叫ぶ。それどころか、尻餅をついて反対側の壁まですごいスピードで後退りするほど。
「な、ななななん、ななな」
なんですかあれはぁ?!ホントに人なんですかぁ?!
あいや、ココ天狗の牢獄だし、人はいないか…じゃなくてぇ!?
何なんですかあれ?!目が赤いし、肌カラッカラだし、すっごいやせ細ってるし、なんか良く見たら壁に頭打ちつけてるし。
「あ…あああ…」
「ヒィッ?!」
またうめいたぁ?!怖い!!
私はそのまま獣耳をパタンと閉じ、頭を抱えてしゃがみ、そのうえで尻尾で体を守るように巻きつける。さながら紅魔の館の主の防御態勢にも似ているが構いません。
「くぅうん、ひゅぅうん」
哨戒天狗として最低限の威厳をもって生きてきたつもりでした。プライドとか体面的なものもしっかりしてたつもりでした。
ですけど…怖いものは怖いです。嫌です。私だって女の子です。文さんみたいな無鉄砲な楽天家で、取材の先々で焼かれたり斬られたりしても平気な顔してまたしつこく取材しに行く怖いもの知らずな人じゃないです。こういう時、はたてさんがいればなぁ〜。
うっ…はたてさ〜ん…何処ですかぁ…文さんがいじめる〜…
「ていうか…」
改めてあたりを見回す。
ゴツゴツとした石レンガに、天井は四角い穴。
鉄格子の奥には長い廊下の他に牢獄と、まるで干からびた死体が動いているような人(?)達。
どうみても、
「ここ、天狗の牢獄じゃなぁい…」
そうです。そうですよ。
ここ、天狗の牢獄じゃないです。
じゃぁここどこですか?
「うぅ…文さ〜ん…ひどいです〜」
まさか知らない場所のに、それも牢獄に、ぶち込むこと無いじゃないですか。それもどうしてあんなミイラの中身がみたいなの人達がうろついてる場所に。こんな場所、幻想郷中探し回ってもありませんよ。
「…」
私は天井の穴を見る。
能力で外の様子を見ようとも思ったが、なぜか目覚めてから能力が使えない気がするのだ。それに普段スペルカードで弾幕戦できるくらい妖力があるはずなのに、今は体からその気配が全く感じられません。妖怪は大抵妖力を使って飛ぶのですが今の私にはまったくないので飛べません。
「はあぁ…」
部屋の隅の体育座りで縮こまり、これからのことを考える。
ふと手を見ると、なぜか指輪を嵌めていますけど、何か特別な力を感じるわけでもないし今はする気にもなれません。
「…」
今の状況が理解はできません。それに今何かできることもありません。
でもいつか脱出できるようにはします。
そしてその暁には…
「文さん…絶対許しません」
こんな事した文さんにはキッチリ罰を受けてもらいます。
多分これも投稿はかなり遅い。