MOMIJI SOULS   作:失敗作のカルボナーラ

4 / 9
戦闘になると第三者視点になる。


第四話 不死院のデーモン

 見上げるほどに巨大な体。

 背骨のような尻尾。

 竜の成り損ないのような羽。

 岩肌のようなゴツゴツした皮膚。

 王冠の様な角に、凶悪な牙と赤く光る目。

 そしてその巨躯から見て短い腕で持つ巨木の様な大槌。

 

 

 そこには悪魔(デーモン)が立っていた。

 

 

 鬼と偶然出会ってしまった。そんな天狗にとっての災難と同等の凶事が起きた。だが椛は普段から哨戒として天狗社会がある妖怪の山で生活しているため、驚きのあまりその場で固まってしまう、なんて失態は侵さなかった。

 ただやはり相手の姿は昔から記憶している地底世界へ消えていった鬼や物の怪共と良く似ている。恐怖心を煽りまくるその姿にすぐに走っていま来た扉に一直線で戻ったのは仕方あるまい。

 だが、

 

「え、な、なんで!?」

 

 先ほど苦労して開けた大扉は霧のようなものがかかっていて進めない。入ろうとしても見えない壁があるらしく、触れた手には霧の冷たさを感じるだけだった。

 

「出してください!早く!誰か!」

 

 ちらりと後ろを振り向く。デーモンは近づいてきてはいるが、やはりその図体通り足はずいぶん鈍い。

 だがそれでも、今の椛が戦ったとしても勝機はほぼゼロ。その手に持つ大槌で潰れた赤茄子(トマト)の様な姿に変えられるだけだ。

 

「え?」

 

 その時、デーモンはいきなり飛び上がり、その背中にある出来損ないの羽でふわふわと彼女の頭上に飛んできた。

 予想外の出来事とはいえまっすぐと彼女に向かって飛んでくるのを見れば、次に彼奴が何をするかは明白。恐怖で頭がいっぱいとはいえ椛はそれを予測できた。

 

「うわぁっ!」

 

 横にローリングする。そしてデーモンがその場にヒップドロップ。当たらなかったとはいえ、近くに落ちてきたせいで体を地面に強く打ち付けられる。

 轟音とともに地鳴りが響く。砂埃が立ち上がり、床が悲鳴を上げる。

 

「はぁっはぁっ」

 

 ヒップドロップを不発に終えたデーモンはのっそりと起き上がり、彼女に向き直る。再度彼女に近づき始める。

 

「いやぁっ!」

 

 椛だって臆病者ではない。哨戒天狗として敵と相対して恐怖で縮こまるような事は今までなかったし、そんな鍛えられ方をされていない。だから普段恐ろしさのあまり逃げ出したりすることなんて無い。天狗の威厳のためというところもあるが、彼女としても一匹の妖怪として怖がっているのではなく怖がられるのが私だという彼女の妖怪としての考えと、普段仕事終わりは食べ過ぎているのでダイエットしなければという自己の品格を怠らぬ彼女の真面目な性格故である。

 だがそんな彼女でも、いやそんな彼女だからこそ、太刀打ちできぬ圧倒的な存在を目の前にしては普段出来ることもできなくなり、逃げることしかできないのだろう。

 

 

 

 ズガァーーーーーーーーン

 

 

「ひゃぁっ!」

 

 後ろから来る大振りをローリングでなんとか回避。

 彼女は今なんとかこの場から抜け出すにはと必死に考えた結果、デーモンが降り立った背後にあった出口らしき門に向かって全力疾走している。

 デーモンの動きは鈍い。そして入ってきた大扉の方に移動してきてくれたお陰ですぐに距離を取ることができた。

 今の彼女にはこの場から抜け出すために頭を働かせる以外、逃げることしかできない。

 だから出口らしき門に向かって走ったのはきっと誰が見ても良い選択だと言えるだろう。

 その扉が開けばの話だが。

 

 入ってきた大扉と同様の大きさの扉に両手をかける。

 そして力いっぱい押した。

 押して。

 押して…

 押して……

 ………

 

「あ、あ、あぁ」

 

 消え入る様な声で彼女は膝をつく。

 結局扉は開かず、押しても鍵がかかっているゆえに、僅かな金属と金属がぶつかり合う音か、背後からズシンズシンと死へ秒読みが聞こえるだけ。

 絶望的な状況。目に涙を溜めて、椛は背後を見る。もう彼奴があと二、三歩歩けば大槌が十分に当たる位置に付く。

 

 もう終わりだ。

 

「…」

 

 あまりの悲劇に言葉も出なくなった。いや、あの足音が無くなったということは、今、彼女は一種の覚悟の様なものが芽生え、諦めてしまったのか。

 振り上げられる大鎚。吹き飛んでいる天井から見える空は曇り空。

 

「絶対に」

 

 最後に遺言でも残そうと考えたのか、彼女の口から言葉が漏れる。

 

 

「文さんを許さない」

 

 振り下ろされる大鎚。

 だから見る、死ぬ直前の走馬灯。

 そしてなぜか思い出した、彼の憎き上司()の「やらかしちゃった☆(*ノω・*)テヘ」の顔。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その時、視界の右端に抜け道があるのを彼女の目は捉えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼女の体が自然と動いた。

 天国から地獄へ垂れ下がった蜘蛛の糸をすがりつくように登る様に。

 

 大鎚を直前で躱し、躱した勢いで加速する。

 

「ま、だ」

 

 遣り残したこと。

 それは叶えたいと強く願う望み。

 絶望的な状況だからこそ、その時こそ最も強く思うのだ。

 言葉にして叫ぶほど。

 

 

 

 

 

 

 

 

「鯨呑亭の新作"秋の味覚の盛り合わせ定食"、食べてなぁぁあああああい!!」

 

 

 

 

 

 

 慌てた足音が後ろから聞こえてくる。

 だが彼女には今、それが死へと秒読む音には聞こえない。

 

 あと五歩。

 

 突然デーモンが飛び上がる。

 

 あと四歩。

 

 デーモンが彼女の方へと移動する。

 

 

 あと三歩

 

 

 頭上に影が現れる。

 

 

 

 あと二歩

 

 

 

 彼女が飛ぶ。

 

 

 

 

 あと一歩。

 

 

 

 

 デーモンが落ちてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガチャン 

 

 

「うわっと、とととぉ?!」

 

 階段をゴロゴロと転げ落ち、

 

「ブベラ!?」

 

 顔面から着地。

 

「い、ひゃい」

 

 当然顔面から落ちたら痛いが痛い程度で済んでいるのは彼女が妖怪故だろうか。

 

「う、うぅ」

 

 あのデーモンから逃れられ、凄まじい安心感とともに、先程よりも更に涙が出てくる。

 そして直ぐ側に篝火があった。

 椛はそれにすぐに駆け寄り、篝火の温かみに身を包む。

 

 先ほど起こった恐ろしい出来事を思い出す。

 

 開かない二つの扉。

 あの恐ろしい怪物。

 そして唯一自分を救ってくれた抜け道。

 あの抜け道がなければ、今頃…

 

 どうやってあそこの扉を開けるか。

 どうすればあの怪物を倒せるか。

 武器は?弱点は?回復手段は?

 

 次なる壁にぶち当たって、考えにふける。 

 しかし今はそれをする行動力などない。先程の恐怖体験のあまり疲れてしまっている。

 だから今は、

 

「ひとまず、良く休みましょう」

 

 休息を取るほうが重要だ。

 




戦闘回というより逃走回ですね。はい。
最後の方は駆け足で文章力がゴミカス化する癖があるのが分かる。
あとなんかギャグ性が欲しくなってきた。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。