MOMIJI SOULS   作:失敗作のカルボナーラ

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第八話 選ばれた妖怪(不死)…これが?

 光に包まれ消えていく怪物を見て、私は―――

 

「やっとだ〜…」

 

 緊張が解けてヘタリとその場に座り込みました。

 

 弱体化していた割にはうまく動けて良かったです。それにあの怪物自体が鈍いので足の速さには自信がありましたから切り抜けることができました。

 ですがやはり、図体がでかい分体力はありましたね。なかなか倒れてくれなくて倒せるのか心配になりました。まぁでも、霊夢(理不尽の権化) と比べるとやっぱり脅威度が落ちるので、苦戦したかと言われればそうでない気もします。

 

「あッ!」

 

 さっきここに入ってきた扉にかかっていた霧は霧散していきました。やはり、部屋の主と思われる化け物を倒せば霧が晴れて部屋から出られるようになるようですね。これでやっと脱出できそうです。

 

「疲れたら、お腹減って来ましたねぇ…」

 

 そういえば、数日前から何も食べてませんでしたっけ。木の実でも良いのでなにか食べ物ありませんかねぇ。

 と、そんなふうに考えていたら、懐からなにか落ちてきました。

 …エスト瓶です。

 

「あ゙っ」

 

 駄目です。流石にこんな不味い物怪我でもしなきゃ飲めません。いくらお腹すいたからってこれは駄目です。第一怪我もしてませんし、これは食べ物ではありません。強いて言うなら飲み薬ですが永遠亭の薬師でもこんな酷い味がする薬を作りませんよ。

 そう思いながら、サッと、エスト瓶を懐にしまいながら立ち上がったとき。

 

「ん?」

 

 ふと怪物が消えた方を見ると紙切れのようなものが落ちています。

 

「何でしょうか?」

 

 近づいて拾ってみると、それはそれはびっくりしました。

 

「スペルカード!?」

 

 なんとそれはスペルカード。しかもスペルカードの内容は”狗符「レイビーズバイト」“私のスペルです。

 なぜ、あの怪物が私のスペルを持っていたかはさておき、私物が戻ってきたことに深い安心感を覚えました。

 

「よかった〜…」

 

 思わずスペルに頬ずりしてしまいました。仕方ありませんよ。なんせ巫女に叩きのめされる以前はスペルを所持していませんでしたから。ようやくスペルができた時からずっと家宝のように大切にしてきたんです。

 

 スペルを懐にしまい、玄関口に向かう。

 スペルを手元に戻せたのは良いです。けど、次にやるべきことが此の場所から脱出することです。

 

「確かこれを使えば」

 

 オスカーさんから渡された鍵を大扉に差し込み捻る。

 カチリという音がなって開錠しました。あとはこれを頑張って押して開けるだけ。鋼鉄製だからもの凄く重いですし、扉自体が大きい上に分厚いのでとても苦労します。

 

「いよぃっ…しょー!」

 

 なんとか開きました。

 

「さぁ!帰ります!」

 

 てくてくと道に沿って進んで行く。その先には、

 

「が…崖…!?」

 

 いやなんで!?なんで崖なんですか!?

 

 そこは冷たい風が吹く崖の上。雲に手が届きそうな断崖絶壁。見える景色は山、山、山!生憎空は曇ってますし、絶景と言うには、いや綺麗な景色とも言えません。

 せっかく、脱出できたというのに、これじゃあ助けが来るまで待つぐらいしかありません。

 

「うぅ…そんな」

 

 これではオスカーさんの使命もこれでは果たすどころか、家に変えることすらできません。以前なら崖ぐらいスルスル登れましたでしょうが、今は無理でしょう。

 

 そう思ったとき、

 

「え」

 

 人よりも二回りほど大きなカラスがこちらにまっすぐ飛んできました。こちらに向かってきています。

 

「いやなんでぇ!?」

 

 そのまま飛んできたカラスは私の両肩を、その巨大な足でひっつかみそのまま私を連れ去ってしまいました。

 

「いぃぃぃぃぃやああぁぁああああああああ!私、雲より高いところは駄目なんですぅぅぅぅ!」

 

 必死の絶叫は雲の中へと消えました。

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 火継ぎの祭祀場。

 多くの不死が此の場を不死の巡礼のための活動拠点として使う。

 

 古い時代、此の場所はただ人が神をする教会とその広場に過ぎなかった。

 崖の上に建てられている点を除けば、この場所は何処にでもある普通の教会に見えただろう。だが後に、此の場所が多くの不死が巡礼を果たすべく訪れる最重要地点になっている。今や苔むしたレンガと広場に一本の篝火が燃えている以外、その場所には殆ど何も無い。だというのに、不死は皆、此の時、此の場所、此の篝火で、今もどこかで巡礼を果たそうとロードランの地を駆け巡っている。

 

 さて、此の祭祀場、その中心にある篝火の直ぐ側。丁度良いくらいに積まれた瓦礫に一人の男が腰掛けている。

 彼も嘗てはこのロードランの地を駆ける一人の巡礼者だった。

 彼は素晴らしい戦士だった。ロードランの地にたどり着けている時点で、巡礼の資格も十分。そして亡者の群れから異形のデーモンまでバッタバッタと薙ぎ倒す、いわば無双の戦士とも言えた。

 だが、いやだからこそ、しかし彼は心が折れた。折れてしまったのだ。

 

 いつ、その心が折れたかなんて、不死たる彼は()うに忘れた。

 その理由が、如何なるかなんて、不死たる彼は(ぼう)と忘れた。

 

 だから、ずっとそこに腰掛けているだけ。自分が何者だったかなんて、折れた心では探す気力など起きないし、最後は亡者になるだけだと彼は覚悟していた。亡者になるなら死に身を任せるのが早いだろうに、しかしそれすらも億劫になってしまったから、彼はそうしているのだ。

 しかして彼は、度々訪れる巡礼者に助言を寄越し、その先で皆々が何を見るのか、見物人気分でいる。

 どうせ遅かれ早かれ終わらない使命に心折れるだけだと、内心嘲笑しながら…

 

 さて、数刻前にとある出来事がおきた。

 自分が坐る背後の教会跡。その教会にはいつも“大鴉”というそこら辺の猛獣に勝らずとも劣らぬ巨大な体を持つ鴉がいる。

 この鴉、実は人を自分の卵と見間違えて運ぶというなんとも傍迷惑な特徴を持つ鴉である。

 篝火に坐るこの男も、時偶昼寝でもしていたらいつの間にか知らん場所に連れて行かれたなんて経験があるのだ。

 しかしこの鴉は不死院から不死を祭祀場に役目をなぜか担っており、時偶不死院から亡者化してない不死を運んでくるのだ。

 そして今日、その鴉が不死院のある方向に飛んでいった。

 ということは、

 

「…新顔が来るのか」

 

 フッと鼻息を一つ鳴らし、男は言った。

 また馬鹿な理由でロードランに亡者が増えたと、まだあってもない新しい巡礼者に向かって皮肉る。

 彼の覚えている限り、しかしそんな覚えがあったかどうか忘れたが、もうかなりの数の巡礼者が祭祀場に戻った覚えがない。みんな不死街やらその先へ言ってもう長いこと、いや、途方もないほど長く思うぐらいには、彼が出会ってきた不死たちは戻ってきてない。

 だからロードランには亡者が一匹いれば百匹いる。そこに向かって巡礼の駆け出しが突っ込んだってそいつ等の仲間入りするだけなのだ。

 

 ただし、今回の巡礼の駆け出しは、今までとは若干違っていた。

 

「ん?」

 

 不死院の方の空を眺めていると、鳥にしては異様にデカい影が雲の間から現れてきた。大鴉だ。

 しかし、いつもはまっすぐ篝火付近に飛んできて不死を手放すのに、今日は様子がおかしい。あっちへフラフラ、こっちへフラフラ。覚束無い飛び方をしている。

 不思議に思って遠眼鏡を取り出し、それを大鴉の方へと向けて覗く。

 

「…んん!?」

 

 鴉は確かに不死を運んでいた。

 だが、その運んでいる不死は人と異なり、人には無い異物がついているように見えた。

 白い髪と、緋色の目を百歩譲るとしてだ。どうしてその頭には狗のような耳がついているのだ。どうしてその背後には髪の色と同じ狗のようなモッフモフな尻尾がついているのだ。

 どう見ても人型に何かを付け足した様な不死が、そこにはいるのだ。

 いや、そもそも不死だろうか―――?

 

 そして大鴉が不安定な飛び方をしているのが良くわかった。

 

「離してくださいぃぃぃいい!!もういいですぅぅううう!!」

 

 …絶賛、運ばれてきた不死が大暴れ中なのだ。

 それも手足をバタつかせ、かなり必死で。何なら右手に剣を、左手に盾を持っている。運んでいる不死がそんなんだから、大鴉は剣先や盾が当たらないようこっちもこっちで必死なのだ。 

 

「もう高いところはしばらく嫌なんですぅぅうううう!!」

 

 …大鴉に運ばれているうちに高所恐怖症にでもなったのだろうか。運んで貰っている割には随分要求が多い不死である。

 

「フラフラ揺れないでくださあああああい!!」

 

 それはお前のせいだろうが、と、男は言いたくなった。

 

 そんな調子だからか、ようやく大鴉が広場まで近づいた時、

 

「ガアッ!」

「ふぎゃん!!」

 

 八つ当たり気味に篝火の近くまでぶん投げ、その不死は顔面から地面に突っ込んだ。

 

「いたぁい…」

 

 頭から血を流しながら半ベソをかき、そのまま篝火に火を灯し、うずくまってまたちょっと泣く。

 よっぽど雲の上を飛ぶのが怖かったのだろうが、高所恐怖症だったのかは知らないが、男はどうしても思ってしまう。

 

 こんなのが、巡礼者でいいのか…?

 

 最早呆れる他はなく、皮肉の一言すらでてこなくなった。




椛ちゃんみたいな真面目で可愛い子はいじめればいじめるほど楽しゲフンゲフン書きやすいんです。
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