アクシズ教徒のアークプリースト!ってなんだろ?   作:しぇふ太郎

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初めての魔法

こっちの方で大きな音がしたけど、なにがあったのかな。

 

 

細い裏道を抜けて騒がしい声が聞こえる方向には大勢の人が崩れた家の前に集まっていた。大声で叫んでいる人達によってどのような状況なのかがいまいち把握できなかった。野次馬になったように人々の隙間を縫って中心のほうへと歩みを進めた。中心地には少し開けたところに数人のケガ人が倒れていた。

 

 

「いったい何があったんですか⁉」

 

『少し前にこの建物が急に崩れてきたんだと。そんでその時にちょうど近くを通りがかった人たちが被害にあって、いま、治療できる人間を探してるらしいぜ。ちなみにあんた治癒魔法使えたりしないか?』

 

「急な事故だったんですね………先ほど治癒魔法のスキルを取ったばかりでもよければ力になりますよ!」

 

『おー!それでもいい助かるぜ!とにかく一番症状の重そうなやつから頼む‼』

 

 

一人ずつ確認していこうか。ここには今ケガ人が三人いて、屈強で比較的大柄な体を持った金髪の女性が足首を痛めていて、冒険者ではない小さい男の子が膝をすりむいていて、一般の成人男性が意識を失い仰向けの状態になっている。

 

最後の成人男性以外は出血もなく本人の意識もしっかりしていて後に回しても大丈夫だと思う。問題の成人男性は意識もなくどこからか出血をしているようで衣服に血がにじんでいる。完治せずとも応援の人間が来るまでの間は対応してあげないとな。

 

 

「まずは習得した治癒魔法の中でも下級のヒールから試していくぞ。よし、”ヒール!”」

 

 

治癒魔法を唱えたとたんに身体から少し何かが抜けていった。これが多分魔力で減るたびに少し気だるくなる感じからして魔力切れは身動きが取れなくなるような状態になるのであって命に関わるほどのことではないのだと思う。幸いにも魔力値は平均以上にあることだし、気にせず使っても大丈夫だろう。

”ヒール!”によって出血は止まったように見えるけど、まだ治ってはないみたいだし中級魔法もかけておこうか。

 

 

「”ハイヒール!”」

 

 

よし、これでとりあえず大丈夫でしょ。思っていた以上にこの世界における治癒魔法は効果が高すぎてやばい。

 

 

「ちょっと!通して!わたしプリースト!」

『おお!姉ちゃんこっちに来て治療してやってくれ!』

 

 

「そこの男性は大丈夫そうね、じゃ残りの二人を治療していくわ!」

 

応援に来てくれた人が治療している間につい逃げ出してしまった。今日は疲れたし、宿に戻って寝よう。

 

 

 



 

 

 

 

「治療していただき感謝する。その子をかばって足をひねってしまってな。私はダクネスという。あなたが来る前に治療していたものにも感謝を告げたいのだが、どこに向かったか知らないか?」

「いえいえ、どういたしまして。んー、わたしが来た時の騒ぎの間にいなくなってしまったみたいだね。」

 

「そうか、ありがとう。力には自信がある、何か困ったときは頼ってくれ。では失礼する!」(話をしてみたかったが仕方ない。そのうち巡り合うこともあるだろう。)

 

 

 



 

 

 

「ん~!っと。よく寝た。今日は冒険者ギルドに行って朝ご飯を食べてみるぞ!」

寝床から身体を起こし、軽く伸びをしておく。朝支度を済ませすぐに外へ向かった。

早朝だと人通りは少ないが朝日がとても気持ちよく、自然豊かな世界なのか空気も澄んでいる。

 

 

「おはようございます。ルナさん、何かクエストありますか?」

「早いですね、田中さん。おはようございます!田中さんにおすすめのご依頼ですとこちらの教会の治療手伝いとプリースト限定のお墓の掃除、それから討伐クエストのジャイアントトード5匹の討伐がございます!」

 

 

全部初心者用だろうけど、まずは手伝いで治療の経験を増やしたりほかのプリースト職の人たちがどんなスキルを持っているのか教えてもらおう。

 

 

「教会の治療手伝いのクエストを受けたいんですけど、何か用意するものあります?」」

「はい、承りました。こちらはエリス教の教会でのお手伝いとなりまして治癒魔法を使えるようであればなにも用意する必要はございませんよ。………ちなみに田中さんはアクシズ教のようですがエリス教に対して敵意はないです…よね?」

 

 

「治癒魔法は使えるんで大丈夫です。あの…アクシズ教とエリス教って仲悪いんですか?」

「ええ、そうですね。水の女神アクア様を信仰しているアクシズ教徒の方々は金銭の単位にも用いられているエリス様を信仰しているエリス教徒に対して一方的に陰湿ないたずらをしているんです。」

 

 

「まじすか・・・あ、うぇっと、僕はそういうの大丈夫です。」

「あら。砕けた話し方で大丈夫ですよ。」

 

 

「……わかった!ルナさんもそうしてよ。あと、僕のことも(すい)って呼んで。」

「では(すい)君と呼びますね。 これをこうしてっと、クエストの受託完了したから今日から一週間がんばってね!場所はこの地図の通りに。」 

 

 

「ありがとー!(ボソッ)いってきます///」

 

 

 

「はー、かわいいわね…っ!」

『ちょっとー、ルナさんばっかり仲良くなってないですかー?ずるいですよー』

 

「いいじゃない、年若いあなたたちと違って一番年上の私にだっていい人欲しいのよ…それに優秀で将来安泰な男の子よ!あなたたちには負けないわ‼大人の魅力で捕まえてみせるのよ……っと、無駄話もここまでね。ほかの冒険者たちも来始めたわ。」

『そりゃ、ルナさんにはスタイルで負けてるけど…』『年齢は関係ないでーす。私たちも彼氏ほしいですよー』『はーい、業務に戻りまーす。』

 

 

 



 

 

 

ぐぅ~、ぐるる

 

初クエストのことに夢中で朝ご飯食べ忘れたけど、昼まで我慢するかー。

 

建物自体はそこまで大きくないが、ここが教会だな。支部だろうけど普通に立派なところじゃん。柵で敷地を囲ってあるし、花壇にはきれいな花がいくつも植えられてる。小さいけど耕された畑もあって池もついてるし、立派な木が生えてる。柵の出入り口から教会の扉までは特別な石タイルで舗装されてて、周りの地面と区別して歩きやすくされてる。

 

とりあえず、家ベルもないしノックかな。

/(ドンドンドンドン!

「すいませーん! 今日から教会の手伝いできた田中って言います。どなたかいませんかー?」

 

「聞こえたわー!すぐ行くから、ちょっと待っててー!」

 

 

「はーい おまたせー!わたしはキリア、職業はプリーストよ!依頼について説明するからまずは中に入って。」

 

教会の扉から出てきた髪の短い女性は昨日の事故現場で来たプリーストに似てるが、本人かも?本人ならあの後どうなったかあとで聞いてみるか。

 

(ぐぅ~~

 

「あなた、朝食べてないの?」

「あー、ギルドで食べようと思ってたんですけどそのまま来ちゃいまして。」

 

「ふーん。倒れられても困るし、今から適当に何か用意するわね。」

「すいません、助かります。」

 

「明日からはちゃんと食べてきてよね!」

「はいっす!」

 

 

ささっと用意されたのは食パンの上に炙られたチーズが軽く焦げていて、その上にはピーマンっぽい野菜とソーセージの輪切りが彩られており、ケチャップとマスタードがかけられている。付け合わせにオニオンスープらしきものとミルクも。

「簡単で悪いけどこれで午前中は乗り切りなさい。食べてる間に説明するからよく聞いておくこと!」

「わかりました!いただきます!」

 

 

「今日から一週間はアクセルに住むお年寄りの町民の健康確認期間があるから、あなたはその手伝いでわたしと一緒にここの地区を回るわよ。ーーー」

 

「ーーーお年寄りには指示されたところに集まってもらってるけど、集合場所には同じく一週間、お祭りとして食事処や甘露亭、堀り出し物屋とかも出店しててほかの人も結構来ちゃって、喧嘩なんかも もちろんあるわけ。」

 

 

「だからギルドから発注されたお年寄りの健康チェックと同時にお祭りで発生する有事に治療していくのが今回の仕事となるわ。」

「んぐー。んぐもぐもぐんぐ。ゴクゴク。ふーごちそうさま、大体わかりました。」

 

 

「ところであなたどこまで治癒魔法使える?」

「職業はアークプリーストなんですけど昨日登録と同時に治癒魔法スキルをちょっと使ったくらいで、”ハイヒール”まで使えます。」

 

 

「ふんふん。なかなか優秀ね。なら治癒魔法は”ヒール”だけでいいからあなたに任せるわ。よっぽどじゃないと”ハイヒール”まで使うことはないし、健康チェックとかはわたしがやることにする。何か質問はある?」

「冒険者になったばかりなのでうまくできるか心配なことくらいですかね。」

 

 

「そーねー、実際にやってるとこ見て慣れていけばそれでいいわ。…まだちょっと早いけど、支度も済んだし行くわよ!」

 

 

これから初めてのクエストが始まる。緊張してきたけど、”ヒール”だけだしそんな難しいものではなさそう。一週間乗り切るぞーー!




ここまで読んでいただきありがとうございます。

また次話でお会いしましょう。
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