ただでさえ遅筆なので補習授業部のキャッキャウフフは各自で補完しておいてください。
ナゴミの苗字も勝手に決めました。良い子はアナグラムとかしちゃいけないぞ。
かき集めた情報を可能な限り多角的に見つめ、仕掛けられているはずの策略を読み取ろうと思考をまわし続ける。おそらくはあと一歩。だけどその一歩が果てしなく遠い。もう時間がない。
「ナギサ様。申請書類の用意ができました」
「ありがとうございますユイカさん」
2枚の復学届けを見る。補習授業部を退学させた直後にヒフミさんと
ユイカさんがそっとティーカップを置く。
「気持ちはわかるがそのへんにしておけ
「
ユイが公私を切り替える。ティーパーティーの主従からひとりの人間として私を心配してくれる友人へと。
「このままなら明日の昼に補習授業部に退学を告げるんだろう。ナギサは居眠りしながら彼女たちを追放するつもりか?」
「そんなつもりは……いえ、その通りですね。せめてキチンと彼女たちに憎まれるようにする必要がありました」
「それに今から寝て起きてもまだ最終試験には時間がある。頭が整理されてひらめいたなら妨害を解除して補習授業部に最終試験を受けさせることもできるかもな。
あくまで補習授業部の彼女たちが諦めていなければの話になるが、オレの見立てだとまだまだ挑むガッツを残してるぞ」
監視によれば試験範囲と合格点が変更された後でも彼女たちは勉強と模擬試験を繰り返していたとのこと。まだまだ彼女たちは追試の合格を諦めてはいない。
「ほら、そのハチミツ入りホットミルクを飲んでゆっくり寝な」
「……じゃあ、寝る前の羽の手入れをお願いします」
「はいはいお嬢様」
カップを両手で包むように持つ。少し熱めのホットミルクが指先を温める。コクコクと飲むといつもの味で心が落ち着く。
「♪~~♪~♪~~♪」
慣れた手つきで羽をすくユイ。なんだか安心してウトウトとまぶたが重くなってくる。
ふわふわとした心地でカップを机に置く。ここで眠ってもユイがベッドに寝かせてくれる。安心してまぶたを閉じる。
「……おやすみナギサ。今はゆっくりしておきなさい」
…………
……
「ああ、君たちか。事情はだいたいわかっている。
ナギサ様を預けよう。ただしこちらにも人質をもらおう。
『先生』の右腕、
一緒に避難? それはできない。
敵に相応のもてなしをしなければティーパーティーでナギサ様が軽く見られる。
なにより、『先生』と話し合うならナギサ様の手元に逆転の手札は置いておかないほうが話がスムーズに進むさ」
……
…………
「あっ、目を覚まされましたかナギサ様」
ゆっくりと身体を起こす。暗い周囲を見渡してここが体育館だと認識する。ヒフミさんと
「あはは、すみませんナギサ様。実は……」
「いえ、だいたいの状況は察しました。ユイカさんが私を預けたということはここが一番安全だと判断したということ。
つまり何者かの襲撃を察知して補習授業部と『先生』は私を守ろうとしてくれているということですね」
「それはそうなんですが、よくわかりますね。私たちが
「眠る前はユイカさんと一緒にいましたから。『先生』のそばに
身体に
"ナギサ、少し話をしようか"
「お互いに急所を握りあってからが本当の対話。『先生』にトリニティの流儀を理解していただけて何よりです」
にこりと笑いながら襲撃者の正体を推理する。遠くから聞こえる銃声と爆発音の規模から中規模。それなら少数による潜入工作を好む青学ではない。今回の騒動に不満を抱えた正義実現委員会? それなら事前の動きを察知できてるはずだしヒフミさんたちが私を避難させる道理がない。ならば考えの読めないシスターフッド、サクラコさんあたりの仕業か?
ざっとあたりをつけマットに座り直して『先生』と向き合う。
"補習授業部に青学のスパイはいないよ、ナギサ"
? ああそうか。
「そうですね。補習授業部に青学のスパイはいません。
『先生』にこちらの情報を知ってもらうためにも今回の補習授業部についての話をしましょうか」
どこから話すべきかを頭で軽く組み立てる。
「ナギサ様、てっきり私たちにスパイがいると判断したと思ってたんですが、違うんですか?」
「はい烏丸さん。まずは3回の追試に含まれていた意味から話しますね。
最初の追試、補習授業部の合宿が決まる追試ですね。
もし青学生のスパイがいた場合、彼女たちは前後がどんなに不自然になろうと合格点を取りに行きます。これは追試が連帯責任だからです。
青学生は自分のせいで他の娘を不利益に巻き込む状況を嫌います。最初の追試の合格生がヒフミさんと烏丸さんだけの時点で青学生が潜んでいる疑いはなくなりました」
おふたりは元々テストをクリアできる実力があるので除外ですね。
「あはは、たしかにあの点だと」
「そうですよねぇ」
ヒフミさんと烏丸さんも外を警戒しながら苦笑している。
「次の追試は突然合格へのハードルが上がることに対して誰が反応するかを観察するためのものでした。
彼女たち3人は青学生ではないですが、青学生の協力者、つまりトリニティの裏切り者の疑いがあります。
当然ですが退学となっては青学に協力できません。
彼女たちを誰が助けるか。もしくは彼女たちを切って新たに協力者を得ようとする動きはないかを探るための一石を投じるのが2つ目の追試でした」
"青学のスパイそのものじゃなくて"
"青学のスパイに協力してる生徒ってことだね"
「ヒフミさんと『先生』には伝わってなかったようですが、そのあたりは示唆していました。
トリニティの生徒なら単純な金銭で動くとは思いづらいので協力は情によるもの。なら上手くすれば協力者も青学生もこちらの味方につける手もあるかと思っていました」
「あっ、ナギサ様がやけに『愛』を強調してたのってもしかして……」
"そういえば『愛』とか『慈悲』とかよく言ってたね"
伝わってなかったようですが。ティーパーティーの迂遠さやほのめかしは『先生』には向いていなかったかもしれません。
「それはそれとして最後の追試。これは2つの意味があります。
1つ目は協力者の退学の危機に対して青学生がどう動くか。これは成果が見られませんでした。
そして2つ目、最終手段として補習授業部そのものを退学させ、ヒフミさんと烏丸さんをティーパーティーの権限で復学させるという最低の悪手です。
せめてエデン条約を妨害する青学生の目星がつけば追試会場を解放したのですが……」
"ナギサ……"
「あの、ナギサ様。会場はともかく追試のボーダーライン上昇はキツくないですか?」
「? 長期間勉強合宿したならあれくらいはできるかと。『先生』と烏丸さんが教えたんでしょう?」
「ナギサ様、どう考えてもやりすぎだと思います」
「ヒフミ、たぶんナギサ様のまわりのレベルが高すぎて平均値がズレてるんです」
"勉強がんばったから合格したら褒めてあげてほしい"
そうですか? そうですか。
"ひとつ聞いてもいいかな"
どうぞ。
"青学がエデン条約に無干渉って線はないのかな"
「それはありえません」
キッパリと答える。
「まだキヴォトスに来て日が浅い『先生』は実感してないかもしれませんが、キヴォトスの騒動の裏には大なり小なり青学の影響と暗躍があります。
これまでに『先生』が関わった事件にも青学の影がありませんでしたか?」
"たしかにアビドスでもミレニアムでも百鬼夜行でも聞いたよ"
「ならば今回のエデン条約にだけ手出ししないということはありえません。
だって『先生』も思ったことでしょう?
誰がどう見たってエデン条約は
"それはたしかにそうだね"
「絶対に何かしらの手を打っているというのに私にはその一手を見抜くことはできませんでした。
そのツケを補習授業部に払わせようというのだから最悪の指導者と言われても仕方ありません」
外の銃声が近付いてきたからか烏丸さんがソワソワしています。あまり荒事には慣れているとは聞かない方なので緊張しているのでしょうか。
「ところで、襲撃者はいったいどなたですか?」
「アリウスですよナギサ様」
「アリウス……アリウス分派?
ヒフミさんが嘘をつくとも思いませんが何故そんな古い勢力が?」
外から補習授業部の3人が駆け込んでくる。
「ヒフミ、ヤハタ、『先生』戦闘準備を」
「わかりましたアズサちゃん」
「ナギサ様、お話はまた後です。『先生』と後方で支援をお願いしますね」
『先生』がタブレット端末に声をかけ、補習授業部が銃を構えると体育館の入り口から戦闘部隊があらわれた。
「ペロロ様、お願いします」
「うわぁなんだこのバケモノ!」
「気持ちの悪いカバだな!」
「落ち着け! そんなデザインに失敗した鳥なんかに気を取られぐわっ!」
「あはは……」
ある部隊には敵の前でよそ見をした者は撃たれるという普通のことを普通に叩き込み。
「敵はまとめた。コハル任せた」
「訓練どおりに、訓練どおりに、よしっ」
ある部隊にはアリウス式と正実式の異文化交流戦術で正面から撃ち合い。
「うわっ、なんかここヌルヌル滑るぞ」
「今ですよヤッちゃん」
「はいですハナちゃん」
ある部隊には足止めトラップとスナイパーという王道の戦術で刈り取りにかかる。
本来ならば相手にならないほどの戦力比。それを『先生』の指揮と地の利を活かした戦術で対抗する。
だが次から次へとやってくるアリウスの部隊との持久戦は不利。かつてアビドスがカイザーのPMCを攻めきれなかったように『先生』の指揮によるバフは延々と戦い続ける物量戦相手には向いていないのだ。
「うーん、まだ攻めきれてないかぁ。アリウスも思ったほど強くはないなぁ」
「ミカさん……?」
「あ、ナギちゃんここにいたんだ。うん、じゃあ宣言しておこうかな。
私がトリニティの裏切り者。今回の襲撃の黒幕だよ」
「そんな……なんでっ!」
「ナギちゃんを
セイアちゃんもいない今、そうすればスムーズに青学に攻め込めるじゃんね」
「そんな理由でっ」
"ミカ……"
「あ、先生やっほ。
ゴメンね騙すような形になっちゃって」
あまり悪いと思ってない顔で笑う。
"どうして青学に攻め込むの?"
"ナギサにひどいことをしてまで"
ミカの顔がスッと真顔に戻る。
「だって青学の子って気持ち悪いじゃん。
ゲヘナ以上に何をしたいのか何を考えてるのかわかんない。いつもヘラヘラ笑っててわけわかんない。
それじゃダメ?」
他校嫌いのパテル派とはいえ普段はそこまで踏み込んでいないのだろう。自派閥のトップの言葉にヤハタもショックを受けているようだ。
"それが親友を捨ててまでミカがやりたい事とは思えない"
「そうだね。ならちゃんと話そうか。
ナギちゃんはたぶんエデン条約に対する青学の動きがないことについては話してるよね。
逆なんだよ。もう動き終わってるから青学は動かないんだよ」
「どういうことでしょうか聖園ミカさん」
「トリニティとゲヘナの同盟が組まれるならそのトップの1人を洗脳してしまえば効率良く2校を操れると思わないかな?
ましてやその娘が元々未来視を活用していたなら多少の言動の不自然さは誤魔化せると思わない?」
「まさかミカさん、セイアさんが青学に洗脳されていると?」
「いくらなんでも暴論ですミカ様」
青学が洗脳技術を持っているというウワサはキヴォトスで聞いたことのない者はいないだろう。
「ナギちゃん。人質をとっておいてなんの要求もしないなんてね、それは人質自身に価値があるか時間を稼ぎたいかだよ。
青学は救護騎士団が喉から手が出るほど欲しがっている医療技術がたくさんある。政敵を売り飛ばすことでそれを貰えるなら安いと考えるんじゃないかな?」
「だからナギサ様を幽閉するんですか。青学に攻め込む責任をひとりで負うために」
「私にはね、どんな手を使っても青学からセイアちゃんを奪い返さなきゃいけない責任があるんだよ」
"責任……?"
ミカの顔が暗くなる。
「だって、だってセイアちゃんが入院することになった原因は私だもん。
私がセイアちゃんへのイタズラをアリウスに頼まなければこんなことにはならなかったよ。
だから、青学に付け入る隙を作っちゃった私が何があってもセイアちゃんを助けなくちゃいけないの」
「ミカさん……」
ミカがこちらに手を差し出す。
「ねぇ『先生』。『先生』は生徒の味方だって言ってたよね。
ならさ、私の味方になってよ。
私の親友を助けるために、私の親友を軟禁して、青学に攻め込む手助けをしてほしい。
見返りはなんだってするからさ、私を助けて」
青学時空のセイアの流れ
・アズサボンバーで秘密裏にミネが入院させる
・その支援に275(救護騎士団の青学スパイ)が頼まれる
・ミネに口止めされながらもナギサに遠まわしにセイア生存を伝える275(ガバ)
・遠まわしなので盛大に救護騎士団とアンジャッシュするナギサ(ガバ)
・ありもしない腹を探り続けるナギサVS腹を探られていると気付いてない275
・セイアは入院してるしナギサは補習授業部設立しようとしてるから原作通り進んでるなヨシッ! なボンクラ青学猫