NGシーンがいつもよりふざけてます。
目を覚ますとそこはトリニティの病室だった。
たしか爆発がおきて……そうだっ、ヤハちゃん!
飛び起きて備え付けの時計を見る。9時15分。追試の試験会場まではトリニティの病院から30分、追試が終わる10時には間に合う。
ヤハちゃんがわざわざ追試を受けに戻ってくるかはわからない。でも、それは私が行かない理由にならない。
ヤハちゃんに会わなくちゃ。
「ねぇ、そこを通してもらえるかな」
何故か旧校舎への道を塞いでいる青学生に声をかける。たしか青学の運び屋。名はシオだったかな。
「いやぁ、しばらくはこの先を通すなって言われてまして。すみませんねぇ。
ん? どうした
「マズいぞシオ、こいつは
クソっ! なんでこんなところに!」
こっちの小柄な娘は瀬戸内と言うらしい。
どうでもいいから早くどいてくれないかな。
「まぁまぁ。我々はあと20分もすれば帰りますんで落ち着いて。
補習授業部や『先生』に用があるならその後いくらでも」
「そうそう。私たちと雑談でもしてれば時間が経つのなんてすぐよすぐ」
強引に押し通る……いや、昨日大暴れした身としてはできれば穏便にすませたい。これは秘密主義の青学から情報を引き出すチャンスでもある。
「ヤハちゃんは、この後どうなるの?」
今一番聞きたい話から聞く。
「うーん。正体のバレたスパイの末路を聞きたいなんて趣味が悪いなぁ。
とはいえこっちから話ふった訳だしね。
青学に生活基盤がないし、まずは
「
ゴミ箱あさり? からだを売る?
聞こえてきた言葉が頭に入らない。
「使い捨てだからそんなに高く売れないんじゃないか?」
「たしか魔術研究会が実験用に欲しがってたぞ。
壊れてもいい
使い捨て、おもちゃ。
愛銃を強く握りしめる。穏便に、穏便に……。
「
馬鹿な真似? 何が?
もしかして私を庇ったことを言ってる?
「自業自得の
「ねぇ、ここ通らせてもらうね」
「うん? いや、だからまだ通っちゃダメだって」
「無理矢理にでも」
青学生たちに愛銃のサブマシンガンを向け引き金を引いた。
ピンク髪がこちらの射線を避けるように跳ね、廊下の窓枠を足場にして天井へと着地する。これまでの交戦から銃や視線で追うとその速さに翻弄されるので気配だけでその動きを探る。
天井で逆さのまま投擲される弾丸を身を投げ出して回避する。話に聞いてた時には冗談としか思えなかった弾丸投げも実際に相手取ると厄介極まりない代物だ。
銃口がなく射角を変えやすく腕の振り以外にも指2本でも動けば投げてくる射線の事前予測のつかなさ。当たってもダメージは低いがこちらの意識の集中を乱す痛み。どちらも相手の銃口を見て射線予測しながら戦うキヴォトスの基本戦術から外れている。
とはいえ弱点もある。銃で撃った時に比べると格段に弾速が遅いので回避はしやすい。よく観察すれば撃たれてからの弾道予測はできる。
「ちょっと失礼しますよっと」
反撃しようとした私の銃口を撫でるように逸らしながら瀬戸内がヌルリと腕の内側に入り込む。怪しげな歩法によって間合いを盗まれた。
私に身を預けるように背中でもたれかけ、瀬戸内のサブマシンガンが私の顔面に放たれる。くらむ目を我慢しながら強引に腕を薙ぐが、もう彼女は腕の中にはいない。
「おいおいマジかよ。あんなガチ恋距離からのフルオートでダメージなしか」
「クソっ、なんて
聞こえてるからねそこの2人。
青学生のシオと瀬戸内。それぞれの相手に集中できれば何とかなりそうなものを、お互いに好き勝手動きながら隙を見せないコンビネーションによって翻弄されている。単体でも厄介なのが輪をかけて厄介になるコンビだ。
「あなた達姉妹か何か? 息が合いすぎでしょ」
「「ゆゆう
「息を合わせようとする努力くらいは見せようか」
「我々青学生に友情など必要ない」
「それぞれが
「数秒前のことをどこにやったのかな」
ふざけきってる2人だがその実力は本物だ。トリニティの重鎮をしている私より戦い慣れしている。特に自分より強い相手との戦い方を。
挑発するような発言もこちらの冷静さを奪うためのものだ。頭に血が上った状態で勝てる相手ではない。深く息をついて頭の熱を吐き出す。
ブォンと独特な音を立てて瀬戸内が両手のライトセイバーを起動する。白い刀身と黒い刀身。その柄を合わせると合体して双頭刃となり私の銃を跳ね上げる。
「なにそれ青学のおもしろ武器?」
「
ヘラヘラと笑いながら逸らした刀身と逆の刀身を跳ね上げてこちらの腕にプラズマブレードを当ててくる。
こちらの妨害、防御をする動きがそのまま逆の刃の攻撃予備動作となる厄介な戦術。プラズマブレードを押し当てる動きは物理的な武器と違って体重を乗せる必要が無いため小回りが利く。
そして一瞬前まで瀬戸内の頭のあった空間を通って
トビラに体当たりして開き、空き教室に転がり込む。青学生が追ってくる前に机の上を転がるように移動して距離を取る。
入ってきた瀬戸内と机を盾にした銃撃戦を始める。さっきまでと違ってこれなら普通の銃撃戦だ。
シオの投げた弾丸に対して机を蹴り上げて防ぐ。あの弾丸投げは対人性能は高いが机を破壊するだけの破壊力も貫通力も無い。ここでなら盾になる障害物は多い。優位に動けるはずだ。
「着目点は良いけどさ。
ちょっと
結合部を軸にライトセイバーを折り畳むとブレードが消え、代わるようにプラズマシールドが発生してこちらの銃撃を防ぐ。なにそれ。
「盾にもなるのは反則じゃない!?」
「
瀬戸内に目がいった数瞬にシオの姿が消えていた。どこに?
「死角から攻め込んでくるのはパニックホラーの基本だからな。さっきはたまたま廊下だから多角的攻撃だったが姿を消してのスニークアタックも得意な生物なんだよソイツ」
死角の机の下からシオの長身が飛び出し、マシンガンのごとく両手から弾丸を投げ放つ。
無理矢理にでも身体を倒して回避する。あんな痛いの当たってられないよ。
転がって立ち上がるその時、追うようにシオが踏み込んでくる。弾丸投げ? いや違う! 近い!
咄嗟に腕を交差させてシオの拳を防ぐ。ガード自体は間に合ったが、その勢いでドアを壊しながら廊下へと転がる。パワーそのものは私より数段劣るけど、クリーンヒットされれば気絶しかねない威力だ。
教室での戦闘は思っていたより不利かな。そのまま廊下を進み、青学生に追わせる。
数度の攻撃を挟んでわかった。あとは覚悟を決めるだけ。
瀬戸内のサブマシンガンとシオの弾丸投げ。意を決してシオの弾丸へと突っ込む。
剥き出しの神経を無遠慮に掻き毟られるような痛みの嵐。痛みでうずくまりたくなるのを我慢して無理矢理押し通る。痛みはあれどダメージは無いんだから痛みを我慢できれば突き進める!
「おいおいおいおいマジか」
トリニティ式タックルでシオの脇下へ頭を突っ込んで抱え込む。そしてそのままシオの身体を盾にして瀬戸内へと銃撃する。
「私ごと撃て!」
「もう撃ってる!」
青学生の狂人たちめ! 銃撃の7割はシオの背中に当たっているのに気にしてもいない。
抱え込まれたシオが背中へとポトポト落とす弾丸が翼を毟り取りたくなるほどの痛みを生み出す。
痛くない。痛くない。こんなの、ぜんぜん痛くない。
無理矢理抑え込みながら接近する瀬戸内へと対処する。
シオの左腕を掴んで自身の身体を時計回りにグルリと回転させる。
「えっ、おおっ?」
接近する瀬戸内に対してシオの身体を薙ぎ払うようにぶつけに行く。
「あっぶねぇなぁもう!」
跳び越えて回避する瀬戸内。ここしかない。勢いのまま手を離してシオを窓へと放り投げる。
右腕を戻す勢いを使った拳。直感的にそのままでは瀬戸内に防御されると悟る。
最短の軌道で、最小のロスで、最速の速さで。
普段の思うままにふるう拳とは違い力を抜いて加速させる拳。
左腕と翼をたたむ力すら上乗せして拳を突き出す。
パァンと音を立てながら突き進んだ拳が瀬戸内の胸へと当たり、当たった瞬間捻り込むように力を押し出す。
窓の外に落ちていったシオ、拳で吹き飛んだ瀬戸内。どちらも大したダメージではないだろうが、先に進むための時間は稼げた。
全身に走る痛みを堪え、愛銃を拾って階段を登る。試験会場は3階。もう少しでヤハちゃんに会える。
後方に警戒しながら2階へ。そして踊り場で折り返したらもう
と思ってたんだけどなぁ。
「そこで引き返してくれたりはしませんかね」
階段の上に立つ青学生。一部では有名な生徒だ。
『はぐれアビドス生 純情派』『卑しか女』『青学生の裏切り者』『名無しのゴミ』『イシス
「『シャーレの
「今回はゴールキーパーみたいな役割なんですがね」
ブォンと両手のライトセイバーが白黒に輝く。
「別に倒してしまってもかまわないんでしょう?」
「やってみなよ!」
全身の痛みを無視して愛銃を構えた。
NGシーン
うーんダメだなこりゃ。神秘量が違いすぎて瀬戸内の攻撃も通じてないし私の弾丸投げも効果なさそう。
しゃーない。やるしかなさそうだし、やるか。
「明日の神秘痛には付き合うよ」
両腕を上下に広げて肉食動物の大顎の如く構える。瀬戸内は手を組んで影絵の犬を作り出す。
私は両腕に、瀬戸内は影でできた犬に神秘を集中させ、解き放つ。
神秘解放!
「神秘✩解放!」
私の両腕に半透明でヒスイ色のウロコが現れ、瀬戸内の影から神秘のこもった砂が溢れ出す。
同時に暴れるようにこみ上げてくる神秘を掌握して己の力と化す。これが星1未満な私たちを星2へと格上げする『神秘解放』である。
「大道芸でも始めたの!?」
ミカから情けとか容赦とかが一切ない銃撃が飛んでくる。
跳んでかわし、不自由な空中を水中のように自在に泳いで加速する。これが星2になった事で得られたスキル『パッシブスキル』の効果である。私の場合は地形適応を得意な水中と同じにして移動速度を上げるという地味な効果だ。
3体の砂人形と共に瀬戸内がコンビネーション攻撃を仕掛ける。その隙に空中を旋回し、更に加速する。
いつもの2倍の加速度で2倍!
腕の3倍の力がある足を使うことで3倍!
更に両足で挟み込む蹴りで2倍!
2×3×2の12倍でミカの1000万
「青学の娘は面白いことするね。私の場合はこうかな?」
瀬戸内の攻撃を防ぐため
「神秘 解放」
爆発的に跳ね上がるミカの神秘によって私の挾み蹴りが防がれる。バカな!
だが嵐のように荒れ狂う神秘を見るにどうやら神秘戦には慣れていないようだな。
うおおぉぉ! 私たちの戦いはこれからだ!
NG理由
キヴォトスは「透き通った青春の物語」であって「限界ギリギリ ブッチギリ! キヴォトスで一番
あとせっかくシオの強さのラインを示す話なのにシオ主観だと緊張感がなさすぎて自分の強さが伝わらない。
神秘解放
シャーレ式の神秘解放と異なり一時的なもの。自身の神格のシンボルとなる形や動作に神秘をこめて解き放つ時間制限式強化。オーフェンとキリランシェロの『我掲げるは降魔の剣』くらいの違い。なお基本的に本編中には使用されない。NGシーンだからね。