pixivに投稿していたトウカイテイオーvsトウカイテイオーの第一話をリメイクして見ましたので試しにハーメルンに投げさせていただきます。
pixiv版はこちらから。更新ほぼ停止してますけど()
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=18990620
ウマ娘
彼女達は走るために生まれてきた。
時に数奇で、時に輝かしい別世界の名前と共に生まれ、その魂を受け継いで走る。
それが彼女達の運命。
この世界に生きるウマ娘の未来のレース結果はまだ誰にも分からない。
彼女達は走り続ける。
瞳の先にあるゴールだけを目指して。
そこまで入力すると、パソコンの前の人物はふう、と一息吐き大きく背伸びをした。照明の一つも灯っていない暗闇に包まれた部屋。部屋の中で唯一光源となっている電源の入ったパソコン、そのパソコンの前に座る人物が不気味に照らされている。そしてその人物は椅子から立ちあがろうとし、その直前、思い出したように椅子に座りパソコンに向き直った。
エンターキーを二つ叩く音が反響する。
そして我々もその一員であることを忘れてはならない。
───マンハッタネスカフェオン
─※─※─※─※─※─
ウマ娘というのは割り方本能で生きている種族だ。そうでなければあれほどレースに闘志を燃やすことなんてないだろう。ましてや本筋のトゥインクルシリーズから外れた、規格にハマれないハミ出し者が集うここでは。
怒号。
悲鳴。
歓声。
それらを一身に受けて走る。ここはフリースタイルレース場。
トゥインクルシリーズの枠にハマることを良しとしない荒くれたウマ娘たちが走る場所だ。
ガコン。
『さぁ各バ一斉にスタート!ややバラついたスタートの中、先頭を取ったのは8番!』
実況の声がスピーカーから流れる。ウマ娘達の履いた蹄鉄が芝のコースに叩きつけられる轟音に観客達は劣らない歓声を上げる。
「しっかしフリースタイルレースねぇ」
髪を金髪に染めた男が観客席の中で一番レースに近い場所、最前列で手すりに肘をつきながら呟いた。
「結局はトゥインクルシリーズの追っかけだろ?」
「バッカ分かってねえなお前」
その隣にいる髪型がモヒカンで鼻にピアスを通した男が憤まんやる方ないと言った様子で拳を握った。
「いいか?フリースタイルってのはな、トゥインクルシリーズみたいなお上品なレースじゃねえんだよ」
モヒカン男が熱弁する。
「フリースタイルレースは必要最低のルールしかない。斜行が〜とか身体がぶつかる〜とかそんな細けえことは気にしなくていいんだ!」
ルールがない。それはつまりウマ娘が本能の赴くままに走れるということでもある。
闘争本能を剥き出しにして走るウマ娘。
トゥインクルシリーズでは見られないウマ娘の一面をここでなら思う存分楽しめる。アマチュアに過ぎないフリースタイルレースがトゥインクルシリーズに負けず劣らずの人気を誇っている大きな理由の一つだろう。
「分かった分かった、ちょっと怖いよお前」
熱弁するモヒカン男に若干引きながら金髪男がレースに目をやる。
場面はバ群が向こう正面の直線を過ぎる頃だった。
レースは佳境に入った。
『第3コーナーを抜けバ群の動きが激しくなって……おっと!?』
観客席からどよめきが生まれる。
後方から一人のウマ娘がバ群の中を突っ切って先頭集団に躍り出たのだ。
「おいおい危ねえ走りしやがる」
金髪男が驚く一方、モヒカン男は熱を上げていた。
「いいぞ走れ走れー!!くぅ〜やっぱフリースタイルレースはこれだよなぁ〜、トゥインクルシリーズでは見られないルール無用の破天荒な走り!!たまんねぇ〜!」
そしてバ群は最後の直前に入った。
『後方から一気に上がってきたのは7番!あっ、もう先頭に立った!!』
『まさに驚異的な末脚!今回も彼女がレースの勝利をもぎ取っていくのか!?』
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「オラオラオラオラァ!!」
「クッ……!」
ひたすら先頭を目指し突き進む7番の凄まじい勢いに一人、また一人と先頭争いから脱落していく。その様子を見ていた金髪が感心したように呟いた。
「はー強いなあのカーリーボブの子。あの末脚ならトゥインクルシリーズでも通用するんじゃないか」
「7番か?さすが目の付け所がいいな。去年あたりから出てきた子だけど連戦連勝、直線勝負じゃ負けなしらしいぜ。まさに期待の新星ってやつだな」
「さっきから疑問だったんだけどなんでお前そんな詳しいの?」
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『先頭を突き進む7番、後続は3バ身離れこれはセーフティリードか……あ〜っと!?』
先頭を突き進む7番が何かを感知したかのように後ろを振り返る。
7番の視線の先、5バ身後ろに離れたバ群。その中から小柄な、黒鹿毛のウマ娘が滑るような動きでバ群の外に抜け出すのが見えた。ゼッケンの番号は9。そのウマ娘はバ群から少し離れたかと思うと、唐突に上半身が地面に向かって芝につかないギリギリまで沈み込んだ。それを見ていた金髪が、モヒカンが、他の一部の観客が怪我でもしたのか、という疑念を浮かべるよりも早く。
芝を蹴り飛ばし驚異的な速度で先頭を走る7番に迫った。
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「なっ、なんだぁ!?」
ターフが爆発したのかと錯覚するほどの轟音と共に加速したウマ娘を前にモヒカン男が驚愕の声を上げた。
「超前傾姿勢!?」
金髪男もまた驚愕の声を上げる。
「「「なんだその超前傾姿勢ってのは!?」」」
金髪男の声を聞いていた周囲の観客が詰め寄ると金髪男は自分の言葉を自分でも信じられないのか狼狽えながら解説を始めた。
「ト、トゥインクルシリーズで何人かのウマ娘が見せた走り方だ……」
走るウマ娘のトップスピードは70km/hに達する。
そしてそんなスピードで走れば当然空気抵抗の影響をモロに喰らう。
「超前傾姿勢は可能な限り身体を地面に向かって倒すことで空気抵抗を軽くし、その分地面を蹴った時のパワーをスピードに変換できる走り方なんだ」
「なるほど〜」
それだけ聞いて納得した周囲の観客に金髪男はズッコけた。
「ここからが大事なところだろうが!」
先ほど金髪男が述べた超前傾姿勢のメリット。それを知りながら走りに採用しているウマ娘は少ない。
それはなぜか。
超前傾姿勢には尋常でない柔軟性が必要となるからだ。身体を可能な限り前傾させることで必然的に脚の動きが制限される中、狭い可動領域の中でスピードを生み出さなくてはならない。
「それはつまり……どういうことだ?」
「あの黒いウマ娘の脚はとんでもなく柔らかいってことだ」
「うおーっ!負けんな7番ー!!」
モヒカン男の声援に周囲の人間が我に返りレースに目を向ける。
レースは最終局面。7番と黒いウマ娘が最後の直線で熾烈なデッドヒートを繰り広げていた。
『7番苦しいが粘っている!9番も追い込んでくる、7番か9番か!?7番か!!9番か!!』
予想していなかった白熱した勝負を目の前にしたことで観客の興奮は最高潮へとなった。
そして歓声を上げる数多の観客達の視線の先で。
7番がクビ差という僅差で勝利した。
今日最後のレースが終了し、観客達が出口へと向かっていく。今日見たレースの感想を興奮気味に語り合いながら。
そうして幾分か静かになったターフに一人、そのウマ娘はいた。
「疲れた……」
9番のゼッケンを引き剥がし脇に置く。黒鹿毛のウマ娘はレースが終わり、人がまだらになったターフで一人座り込んでいた。そんな彼女に歩み寄るウマ娘が一人。
「よっ!」
明るい鹿毛をカーリーボブに纏めたウマ娘。先ほどのレースで7番のゼッケンで走っていたウマ娘だ。
「君は……」
「ジャングルポケットだ」
黒鹿毛のウマ娘が何かを言うよりも前に名乗るジャングルポケット。レースを終えたばかりというのに疲れを見せないタフネスっぷりに黒鹿毛のウマ娘は内心驚いた。ジャングルポケットは側にしゃがみ込むと黒鹿毛のウマ娘をしげしげと覗き込んだ。
「お前見ない顔なのになかなかやるなー」
「そりゃどうも」
ジャングルポケットは口角を吊り上げ、黒鹿毛のウマ娘に向かって右手を差し出す。
「今日は楽しかった。また一緒に走ろうぜ」
「……こちらこそ。今日はありがとう」
握手を交わす二人。握手を交わすとジャングルポケットは仲間に呼ばれてるから、と走ってターフを去っていった。その背を見送ってから立ち上がる。肩を回し、首を回しながら誰もいないターフで柔軟を繰り返していると
『URA!』
レース場の掲示板の横に設置された大モニターから漏れてきた音声を捉え、耳がピクリと動く。
『皆さんこんにちは、URA広報のお時間です。本日はとあるウマ娘にお越し頂きました』
『デビュー以来連戦連勝、未だ無敗を誇る期待の新星!トウカイテイオーさんです!』
画面右に映る女性キャスターの反対側から鹿毛をポニーテールに結えた活発なウマ娘が姿を表した。
『やっほー!トウカイテイオーだよー!』
「おーい!」
モニターに見入っていた黒鹿毛のウマ娘の意識を遠くから呼ぶ声が現実に引き戻した。呼ばれた方を見るとジャングルポケットがこちらに向かって手を振っているのが見えた。
「悪り〜!聞きたいことがあってよ!」
「何ー?」
「お前名前はー!?」
「俺?」
そこで掲示板横の大モニターから振り返りジャングルポケットに向き直る、黒鹿毛のウマ娘。その姿がちょうどモニターに映るトウカイテイオーと重なる。
「グレン」
その容姿。
髪が黒鹿毛に瞳の色が真紅色に染まっていることを除けば、
「俺はグレンだ」
トウカイテイオーに瓜二つであった。
変更点。
レースシーンを新たに挿入しました。