トウカイテイオーVSトウカイテイオー   作:イモ天屋

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ついに話数が二桁になったけどここまでトウカイテイオー本人(劇中映像を除く)が出てきてないってマジ?


#10 邂逅 ─selvaggiamente─

 

 阿笠がチームに加わってからL/Roarsの活動は激変を迎えていた。

 

 まずトレーニング。

 

 以前までただひたすら走り込みを行う、という単純なものにテコ入れがなされた。

 走り込みはプロアスリートのウマ娘が走るものに近くなり、さらにタイヤ引きなどトレセン学園で実際に行われているものが導入された。それらは高負荷なものばかりだったが、阿笠の管理によってグレン達に怪我させることなく運動能力の向上に貢献した。

 また食生活にも指導が入った。甘いものやカロリーの高いものは控えめに、アスリートのそれに近しい食生活になった。ポッケは好物のパフェが食べられなくなったことを嘆いていたが。

 

「なんだかんだ言いながらノリノリじゃん」

 

 ニヤニヤ笑っているグレンの言葉に対して阿笠は

 

「職業病ってやつさ」

 

 と嫌そうに顔を歪めた。

 

 

 

 そんな日々の中である。トレーニングの合間の休憩時間に、メイがふと呟いた。

 

「あとはメンバーだな……」

 

「何が?」

 

 それに水を飲んでいたグレンが反応した。

 

「SCORDの中距離は3人だろ?ウチもあと1人、欲しいんだよな」

 

「ああ?いらねーよ!」

 

 エナジーバーを食べていたポッケが吠える。

 

「半端な走りはもうしねえ。今度こそぶち抜いてやる」

 

「もちろん、お前らの実力は信じてるよ。けどSCORDの連中は私らより一歩先を行ってる。何をしてくるか分からない」

 

「要はタゲ分散がしたいってこと?」

 

 グレンの問いかけにメイが頷く。

 

「もう1人、誰か強いやつがいれば……」

 

 メイの願いは意外な形で身を結ぶことになる。

 

 

─※─※─※─※─※─※─※─※─

 

 

 阿笠がL/Roarsに加入して1週間程経った頃。

 

「どこここ」

 

 グレンは迷子になっていた。

 

「こいついっつも迷子になってんな」

 

 自虐するグレン。

 

 なぜグレンが迷子になっているのかというと……。

 

─────

───

 

 チームL/Roarsは土日を除いて昼間はトレーニングがない。

 

 ポッケ達が来れないからだ。

 

「みんな昼間何してんの?」

 

「普通に学校だけど」

 

「ガハァッ……!」

 

 向こうは歴とした学生、こちらは戸籍すら持たぬ居候。歴然とした事実を突きつけられ思わぬダメージを負ったグレンは片膝をついた。

 

「いや、でも俺はショウ南ノ風で働いてるんだし毎日を無駄に過ごしてる訳じゃないからセーフ」

 

「こいついきなり片膝ついたり立ち上がったり忙しいな」

 

 情緒不安定なグレンを見てルーが若干引いていた。グレンが言ったように、彼女は昼間はショウ南ノ風の手伝いをしているのだが

 

─────

───

 

「暇だなぁ……」

 

「だなぁー……」

 

 そのショウ南ノ風も暇となってしまった。

 

 正午前後は混雑するがそれを過ぎると打って変わって店は静寂に包まれる。

 パンは棚一杯に出されているし、調理器具はすでに新品同様の輝きを取り戻しているし、店前は今ようやく枯れ葉の一枚が風によって補充されたところだった。

 することをあらかた終えてしまった店番のグレンとベリーは時間を持て余していた。

 

「グレン、ここは5時ぐらいまでお客さんも来ないだろうしどっか走ってきたらどうだ?」

 

「え?いいの?」

 

「チームのレースが近いんだろ?少しでも走っておけよ」

 

「じゃお言葉に甘えて」

 

 ショウ南ノ風をベリーに任せて、厨房服から市販のジャージに着替えたグレンはショウ南ノ風から駆け出した。

 

───

─────

 

 そして今に至る。

 

「何も考えずに走ってたら気持ち良くなって道忘れちゃったよ……」

 

 ここに転生してきた頃から何も成長していないグレンであった。

 

 取り敢えず広い道路に出て歩いていればいずれ見覚えのある地名が見えてくるだろう、と極めて甘い考えを展開したグレンは二車線道路の横に引かれた歩行者レーンをてくてくと歩き始めた。

 

 思えばこうしてのんびり外を歩くのはいつぶりだろうか。

 

 車の往来が少ない道路を歩きながらグレンはふと思った。

 転生してきてからというもの、ショウ南ノ風の店の手伝いをしてポッケ達とフリースタイルレースで鎬を削って、かと思えばチームに誘われて。

 あの高架下で目覚めたのが去年の4月20日。今は2月の上旬なのでまだ1年も経っていない。その割に随分長い時が経ったと感じるのは日々の濃さが前世のそれと比較にならないからだろうか。

 

「楽しいもんだな人生ってのは」

 

 前世のグレンならば思いもしなかっただろう。

 

 そんなことを考えながら歩いていた時のことである。対面から一台のトラックがやってきた。運転席に座っているのは禿頭の男で──

 

「なんか前にもこんなことあったな」

 

 つくづく転生初日のことを思い出す日である。向こうもグレンに気づいたのか、ウィンカーを点滅させ、トラックは道路脇に停車した。

 

「何してんだお前こんなところで」

 

 窓から顔を出したのは案の定、本多であった。

 

「走ってたら道に迷っちゃって☆」

 

「この先は埼玉に行く道だぞ?」

 

「マジすか」

 

 埼玉に用事はない。

 

「この前のレース場でいいなら乗せてってやるが」

 

「お願いします」

 

 本多が鍵を開けてくれたドアを開き、グレンはトラックに乗り込んだ。

 

 

─※─※─※─※─※─※─※─※─

 

 

 着いた先は、グレンが初めてフリースタイルレースを走ったあのレース場である。

 

「今日って何かレースやってるんですか?」

 

「あー、確かフリースタイルの小さいレースが二つ三つだな」

 

 グレンは時計を見た。現在時刻は2時。先ほど地図でここからショウ南の風までの距離も確認した。ショウ南ノ風が混み始める時間帯まで帰り道を考慮してもまだ余裕がある。

 

「せっかくだし見ていくかな」

 

 グレンはレース場に脚を踏み入れた。流石に平日の昼間ともなると観客はまばらだ。端の席で座席を3つ程占領し、新聞を顔にのせていびきをかいている中年の男性が1人くらいであった。

 ターフに視線を移すとちょうどレースが始まるところだった。とはいえゲートも観客席と同様に空いているところが複数ある。

 

 最大で12人入れるゲートが今は6人……いや、7人。

 残りの1人に気付かなかったのはそのウマ娘がやけに小柄だからだろうか。トウカイテイオーかライスシャワーよりも小さい。下手をするとニシノフラワーと同程度の背丈。

 

(あんなに小さい娘もフリースタイルレース走るんだな……)

 

 グレンの視線の先で、肩より下ほどに伸びた黒鹿毛が、走る構えを取ったことで揺れた。

 

 ──ガコン。

 

 ゲートが開いた。

 

 一斉に飛び出すウマ娘達。バラバラな纏まりのないスタートの中、

 

「おっ……」

 

 あの小さなウマ娘がゲートが開いたと全く同時にスタートを切った。一気に先頭まで駆け上がる。素人目のグレンから見ても見事と思えるスタートだった。

 しかしそのウマ娘は取った先頭を維持しようとはせず、追い付いてきた他のウマ娘に譲りバ群の後方に下がっていった。

 

「おお……?」

 

 なんか動きが精錬されている。…… ような気がする。レースに対する知識が浅いのでフワッとした感想しか抱けないグレンを他所にレースは淀みなく進んでいく。

 

 

───

─────

 

 

 終盤に差し掛かった頃である。

 

 ウマ娘達が各々最終直線に差し掛かり加速を始める。その時固まったバ群の中から黒い影が飛び出した。

 

 あの小さいウマ娘だ。

 

(あのちっちゃい身体でよくスタミナ持つなぁ)

 

 と思いながら彼女の顔を見た時である。

 

「……!?」

 

 

 

 思わず息を詰めたのは驚愕か、衝撃か。

 

 

 

 グレンの推測はまるで見当違いだった。スタミナは持つどころか恐らくすでに尽きている。現に焦点は定まっておらず、よく見ればコース取りも不安定で身体が左右に揺れている。

 だがあの眼。爛々と光るあのウマ娘の眼だけは、ブレることなくゴールを見据えている。

 

(なんでアレで走れる!?)

 

 思わず身を乗り出したグレンの脳裏にとある光景が蘇った。

 

 目前を駆け抜けていく白い影。そして、周囲の声援。

 

 

 

 

── 『『『『オグリキャップゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!』』』』

 

 

 

 

 あの有マ記念。

 

 あのオグリキャップと、目の前のウマ娘の姿がどうしても重なる。呼吸すら忘れるグレンの目前を、漆黒のウマ娘が駆け抜けていった。

 

 

─※─※─※─※─※─※─※─※─

 

 

 レースが終わった。

 

「今の娘は……!?」

 

 あのウマ娘のゼッケン番号は8番。掲示板に出された着位は──

 

 3着。

 

「ン1着じゃないんかい!!」

 

 思わずズッコケた。

 

 だがあの走り。

 

 グレンは確かにあのウマ娘の走りに、有マ記念でラストランを飾ったオグリキャップを見た。

 疲弊し、極限まで追い詰められてもなお、ゴールまで駆け抜けたオグリキャップ。あの小さいウマ娘が最終直線で見せた顔が、オグリキャップのそれをフラッシュバックさせる。

 あのウマ娘は一体、何者なのか──。気付いた時にはグレンは駆け出していた。

 

─────

───

 

「尾形さぁん!!」

 

「はいはい……あれ、グレンちゃんじゃないか。どうしたの?」

 

「今ここを小さい黒鹿毛のウマ娘が通らなかった!?」

 

 突然のグレンの訪問に困惑しつつも尾形は頭を捻る。

 

「1人通ったよ」

 

「いつ!?」

 

「今」

 

「いや俺ちゃう!!」

 

 確かに黒鹿毛だが。

 

「ゴメンゴメン、誰も通ってないよ」

 

「じゃまだ中か……ちょっと入ってもいい?」

 

「構わないけど今日のレースはさっきので最後だよ?」

 

「大丈夫!」

 

 返事をするのももどかしく感じながらグレンは走り出した。

 

───

─────

 

 問題のウマ娘はすぐに見つかった。

 

 ターフで念入りに柔軟をしている姿が遠くからでも見つかったからだ。

 

「お─────い!」

 

 反応はない。多分自分が呼ばれていることに気付いていない。

 

「君!君───!」

 

 叫びながら走っていくグレンを本多が何事かと見ているが今はそっちに構っている気持ちの余裕はない。

 

「君!!」

 

「えっ?」

 

 間近で呼びかけて初めてこちらに気付いたウマ娘がグレンを見上げる。

 その顔を見て思ったよりも幼い顔立ちをしていることにグレンは気付いた。

 

「き、君……名前は……?」

 

「わ、私ですか?」

 

 走ってきたことで体力を消耗し、息も絶え絶えの中、グレンはウマ娘に名を聞いた。

 なおそのせいでハァハァと息遣いを荒くしながら幼いウマ娘に名前を聞くウマ娘、という地獄のような光景が爆誕してしまいそれを見た本多がすわ事案かと走り寄ってくる。

 幸い、本多がグレンを取り押さえる直前にウマ娘が質問に答えてくれたのでグレンは黒鹿毛のウマ娘の名前を聞くことが出来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ドゥラメンテといいます」

 

 

 

 

 

 




展開早いのか話がちゃんと分かるようになっているのか分からない。
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