トウカイテイオーVSトウカイテイオー   作:イモ天屋

15 / 26
ぶっちゃけSCORDのメンバーの名前は覚えなくていいです


#14 虚突 ─Outwit─

 

グローリーチャレンジャーレース、マイル部門。

 

 L/Roarsからはメイとルーが参戦。SCORDからはレイジアというウマ娘が出てきた。他チームからは5人のウマ娘。

 総勢8名のウマ娘がゲートに収まっていくのを見ながら、グレンは側に立つ阿笠に問いかけた。

 

「さっきメイ達に何を言ってたの?」

 

「秘密さ」

 

「は?」

 

「お楽しみってやつだよ」

 

 首を傾げるグレン達を他所に、レース開始の時間がやってきた。

 

─※─※─※─※─※─※─※─

 

 ──ガコン。

 

 ゲートが開いた。

 

 ウマ娘達が駆け出していく、

 

 声援の中、グレンは目を凝らしてチームメンバーの姿を探した。

 

「いた!」

 

 先頭から三番手のところにメイの姿を見つけたグレンは、

 

「えっ」

 

 次に最後尾にルーの姿があることに気づき思わず声を上げた。

 

「どうしたんだルーのやつ、出遅れか!?」

 

 グレンの隣のポッケも同様に驚きを隠せないでいる。それもそのはず、ルーは今まで先行策で走ることが多かったのだ。レース本番でいきなり追い込み策に打って出るとも思えず、だとすれば思いつくのは出遅れくらいだ。

 

「あぁ、あれ僕の指示」

 

 混乱するグレンとポッケに悪びれることなく答えたのは阿笠。当然2人に詰められることになる。

 

「どういうつもりだお前!?」

 

「まあまあ、見てなって」

 

 だが一向に飄々とした態度を崩さない阿笠に、それ以上何も言うことができずグレンとポッケは元の場所に戻った。

 そうこうするうちにバ群はスピードを上げていき、縦長の展開となってきた。先頭集団に喰らいつくメイと、未だ最後尾にいるルーはかなり間が開いてしまっている。

 

「おいおい大丈夫なのかよ……」

 

 不安げなポッケ。しかも状況は悪化する。

見るとメイの周りにバ群が形成され始めている。

 

「またアレかよ!」

 

 シマの時と同じ展開。歯噛みするグレンらの見つめる先でバ群は第4コーナーに入る。そこを抜ければもう最後の直線だ。

 

「メイさ──ん!ルーさ──ん!頑張って──!!」

 

 メイが声援を送る。が、コーナーを回るメイの顔を苦しげに歪んでいる。グレンとポッケ、ドゥラメンテも声援を送るがそれを嘲笑うかのようにSCORDが追い上げてきた。

 最終コーナーを抜けた。どんどん加速していくSCORDのレイジアが先頭に立ち──そのときどよめきが生まれた。

 大外。そこには誰もいないはずのレーンをひた走るウマ娘の姿があった。

 

「ル────ッ!!」

 

 チームメイトの姿を視界に収めたポッケは感情を抑えきれずにガッツポーズを決めた。

 

「おっしゃあ!いいぞルーッ!!」

 

 ルーの加速はレイジアの比では無い。鍔迫り合いすら起こらない、起こさせない。

 グレン達の前で、1バ身抜け出したルーが、誰よりも早くゴール板を突っ切っていった。

 

─※─※─※─※─※─※─※─

 

 SCORD優勢と思われていたグローリーチャレンジャーレース。だがしかし、L/Roarsがついに白星を奪取した。

 思いも寄らなかった展開に、観衆は盛り上がっている。一方、レースを終えたばかりのルーはというと、流石に体力を消費したのかフラフラと身体が揺れている。そこにメイが近づき、ルーに肩を貸した。そのまま二言三言、なにか言葉を交わした2人は観衆に向けて手を振った。

 その様子を満足気に眺めていたグレンだったが、今のレースは何かと不可思議なことが多かった。すぐ隣に立つ男を問い詰めなければなるまい。

 

「説明してもらおうか」

 

「簡単なことだよ」

 

 肩をすくめて阿笠は話し始めた。

 

「メイはいつも通り、先行。ルーにはワザと出遅れて後方につくように言っただけさ」

 

「それが分かんねえよ。なんでわざわざ後方?」

 

「妨害を受けないからさ」

 

 腕組みをした阿笠は続けた。

 

「SCORDの娘達がL/Roarsを舐め腐ってるのはシマとの走りでよく伝わってきたからね。だからちょっと芝居を打てば、ご覧の通りよ」

 

「ほーん……」

 

「案の定、ルーは出遅れと決めつけ、早々にマークを外した。だからメイに攻撃が集中したけど、それが運の尽きだったってわけ」

 

 阿笠のあくどい一面に、グレンは若干引いた。

 

「それにしてもルーのやつ、いきなり追い込みに変えたっつーのによく走りきれたな」

 

 ポッケが感嘆の声を漏らした。

 先行と追込ではスタミナの使い方がかなり違う。先行は前目につけ、スタミナを使いつつチャンスを待つ。追込はスタミナを温存しつつ最後の最後で一気に勝負に打って出る。

 故に少しでもスタミナの使うところを間違えたらレースを走り切ることさえままならなくなる。それを防ぐため、レース本番では走り慣れた作戦で挑むのが定石なのだが。

 

「それはルーのスタミナが凄いからだろうね。あの娘ならトゥインクルシリーズの長距離でもいい成績を残せそうだ」

 

「へえ……」

 

 阿笠の作戦は大成功。メイとルーは勝負に勝ち、L/Roarsは優勝まであと一歩のところまで駒を進めた。

 だが。

 

「……」

 

 グレンは阿笠に気取られない程度に横目で彼を盗み見た。

 マスターの話では、トレセン学園の元トレーナーとのことだったが……。

 

『ワザと出遅れる』

 

 阿笠はしれっと口にしたが、とんでもないことだ。トゥインクルシリーズはウマ娘にとって晴れ舞台。クラシック級に至っては一生に一度しか挑戦することを許されない大きな舞台である。

 そんな舞台で、ウマ娘を指導していた者が果たして『ワザと出遅れる』などと口にするだろうか。

 

(コイツ……)

 

 一体何者なのか。

 

 グレンの横にいる男は、角度の問題でどんな表情を浮かべているのか分からない。

 だがどうやらメイとルー、今走り終えたばかりのウマ娘2人を見つめているらしいことは見当がついた。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。