「キミだれぇ!?」
トウカイテイオーが叫んだ。
「ええええええええええええええええッッッ!!?」
ようやくトウカイテイオーが二人いることを認識したのかスペシャルウィークも驚愕の叫びを上げる。
「なんだどうし……た」
その声を聞きつけて部室から出てきたゴールドシップ。彼女もまたトウカイテイオーが二人いる異様な状況を目の当たりにした。
「て、テイオーが二人!?」
さしものゴールドシップもトウカイテイオーが二人いると驚愕するらしい。それはともかくかなり不味い状況である。前方にはスペシャルウィークとトウカイテイオー、後方にはゴールドシップ。見事に挟み込まれた形だ。この状況を打開するには、
「あっ!UFO!!」
古典的方法に頼る。大声を上げて空を指差す。別にUFOでなくとも注目の的になっている人物が指をさせば思わずそちらを見てしまうのが人間、ひいてはウマ娘というもの。目論見通り、空を見上げたスピカのウマ娘達。そこを見逃すグレンではない。
「さいならっ!!」
「あっ!?」
脱兎の如く駆け出すグレン。目指すは校門。
「どいてくれぇー!!」
校門に続く道にいるウマ娘達を避けながら走り続けるグレン。何事かと驚くウマ娘達の中には見覚えのあるウマ娘の姿もあったがのんびりと眺めている余裕はない。
「待てやぁー!!」
そこを追いかけてきたスピカ。校門が見えた!だが状況は悪化する。
「あら、テイオーさん。行けませんよ校内を走ったら」
その前に佇むのは緑の制服に帽子を身につけた女性、駿川たづな。どうやら下校するトレセン学園生を見送っていたらしい。
「たづなさぁーん!!ソイツ捕まえてくれぇー!!」
「えっ?」
後から走ってくるゴールドシップの言葉に困惑する駿川たづな。そのゴールドシップの後ろを走ってくる本物のトウカイテイオーに気付き、
「それボクの偽物ー!!」
「えっ!?」
さらに困惑しながらもすかさず校門とグレンの間に立ち塞がった。校門は駄目だ。
「ちくしょー!」
歯軋りをしながらグレンは咄嗟に走る方向を変える。後ろからはスピカ、前には駿川たづな。グレンはトレセン学園内に逃げ込むしかなかった。
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「ハァッ……ハァッ……」
どうにかスピカと駿川たづなを巻いたグレン。特に駿川たづなを巻くことが出来たのは幸運だった、グレンがトウカイテイオーと瓜二つの容姿をしていることに混乱して隙が出来たのだろうか。
現在グレンは校舎らしき建物の陰に隠れていた。正直どこをどう走ったのか全く覚えていない。グレンはトレセン学園内で迷子になってしまった。
「やべえよどうすりゃいいんだよこっから……!」
物陰から覗き見ると恐らくグレンを探し回っているのであろうウマ娘達が見える。しかもサングラスをかけて刺股を手に持っている。恐らく警備の方々。
「まるで不審者が入り込んだみてえじゃねえか……」
不審者が物陰に隠れなおす。
「ただ書類届けに来ただけなのにどうしてこうなるんだ……!」
不法侵入したのが不味かったんじゃなかろうか。だがグレンに己の行動の反省する時間はないようだ。グレンの隠れている場所に向かって警備のウマ娘の方々が走ってくるのが見えた。ここを捜索する気だろう。最悪なことにグレンのいる場所は校舎と塀に挟まれており、しかも突き当たりは行き止まりである。
「年貢の納め時か……!?」
こうなったら一か八か、塀をウマ娘の脚力でもって飛び越えるか。しかし塀はかなり高い。仮に飛び越えられたとしても上手く着地出来なければ命の危険すら有り得る。逡巡しながら塀を見上げた時である。
突然、グレンの背後の窓が開いた。グレンが反応するよりも先に、その中から伸びてきた二本の腕がグレンの肩を掴んだかと思うと一気に窓の中へ引き摺り込んだ。
「おわッ……むぐぅ!?」
驚きの声をあげようとしたグレン。だがまたしても、それに先んじて細やかな手がグレンの口を塞いだ。
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『ここにはいません!』
『むぅ……塀を乗り越えて逃げたか?』
『捜索範囲を広げますか?』
『いや、生徒の安全が第一だ。校内をしらみ潰しに探せ。外に逃げていた場合は、警察に任せる』
『了解!』
複数の脚音が遠ざかっていき、やがて静かになった。それを見計らったのかずっとグレンの口を塞いでいた手も離れる。
「っプハ!」
思わず詰めていた息を吐き出し、窮地を抜け出したことに安堵するグレン。
「危ないところだったな」
頭上から降ってきた声。グレンはその声に聞き覚えがあった。アニメ二期にて活躍し、一時期は主人公ポジションも務めたウマ娘。
ライスシャワー。
(いや待て。それにしては口調が違うような……)
そこで初めてグレンは顔を上げ、自分をこの室内に引き摺り込んだ人物を視界に収めた。
まず目につくのは真っ白な髪。頭頂部からは一対の馬の耳、ということは真っ白な髪は芦毛か。服装は市販のジャージ。トレセン学園のものではないということは生徒ではないのだろうか。
そして何よりも、
「……は?」
素っ頓狂な声を上げるグレンを仏頂面で見つめる蒼い目。
芦毛に、碧眼。その二つを除けば、今グレンの目の前にいる人物はライスシャワー瓜二つの姿をしていた。
そう、グレンがトウカイテイオーの姿をしているのと、同じように。
爆速でテイオーフェードアウトしちゃったんだけど……いいのかこれで