【完結】インターネットミームしか喋れないTS強化人間   作:むにゃ枕

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10 いや~、デラーズ・フリートは強敵でしたね

 シーマ・ガラハウは、デラーズ・フリートの星の屑作戦の計画書を無事にグリーン・ワイアット大将へと渡した。それによりシーマ艦隊の身分は連邦軍部隊となることで保証された。

 少なくとも、コンペイトウで観艦式を行った連邦艦隊が、ジオン残党の核攻撃により被害を被ったとの報道が流れるまでは。

 

「シーマ様、ワイアットの奴がしくじったようですね」

「そうだね。奴が更迭されれば、アタシたちの努力がパァだよ」

 

 ワイアットの身柄は無事だが、デラーズ・フリートが観艦式に核をぶち込んだ事実は変わらない。損害が少なかったとしても責任を問われるだろうことは間違いない。

 ワイアットの影響力の低下で、シーマ艦隊の身分保障が曖昧になることは、避けなければならない。

 

「やれやれ、また交渉しなくっちゃね」

「そうですね」

 

 シーマ・ガラハウが交渉相手に選んだのは、連邦軍地球軌道艦隊司令官バスク・オムだった。ゴーグルと巨躯。そして禿頭が特徴的な男だ。連邦艦にシーマは単身乗り込む。

 

「シーマ・ガラハウ、自首でもしに来たのか?」

「まさか。ガラハウなんて人間は知らないね。私は地球連邦軍第506独立艦隊司令だよ。友軍さ。ワイアット大将のお墨付きもある」

「そんなもの紙切れに過ぎない。ワイアットはしくじった。貴様らが友軍だという保証はどこにもない」

「そうかい。なら交渉の手札を提示しようかね」

 

 バスクのもとに、移送中のコロニーがジャックされたという報告が入る。

 

「貴様、コロニー・ジャックをしたな。これで、連邦軍だという欺瞞も使えなくなった」

「はて、なんのことやら。アタシの艦隊はこのことに関与してないからね。デラーズから押し付けられた奴らはアタシの部下ではない、ってことは、あんたでも理解出来るだろ?

 そいつ等に対してアタシは命令権を持たない。たまたま現場のそいつらが暴走しちまったんだよ。残念ながらね」

「減らず口を叩きおって、この場で殺しても良いのだぞ」

「おや、無実の連邦軍中佐を殺すのかい?」

「貴様の狙いはなんだ?」

 

 バスクは額に青筋を立てながら、目の前の自称連邦軍人を睨みつける。

 

「ワイアット大将がこれから失脚するだろうことは、誰の目にも明らかさ。アタシらの身元保証を厚くしてもらいたいんでね。デラーズの身柄、もしくは首と引き換えで、艦隊の身分保障をしてほしい」

「ふん。よかろう。やれるものならやってみるが良い」

 

 ひとまず交渉は成立した。だが、バスクは連邦軍人を騙るジオン残党を対等な交渉相手だとは考えていなかった。利用するだけ利用して惨たらしく殺してやろう。それがバスクの本心だった。

 シーマも、バスクのことを全く信用してはいなかった。シーマの着ている連邦軍制服を睨みつけるゴーグルの奥からは、殺意しか感じられなかったからだ。反ジオン思想にどっぷり浸かっているのだろうとシーマは推測した。

 

 両者には、自らの利益を追求し、互いを信用していないという奇妙な共通点が有った。契約が破綻するのは、間違いないだろう。

 

 第506独立艦隊(シーマ艦隊)は、今や連邦カラーの白に塗装されE.F.S.F.の文字まで入っている。艦隊のMSも同様だった。この状態では、デラーズ・フリートとの合流など出来るはずがない。

 

 旗艦リリー・マルレーンは不思議な力が働いて、アクシズの観戦武官に乗っ取られてしまい、第506独立艦隊(シーマ艦隊)には存在せず、デラーズ・フリートに参加している。

 リリー・マルレーンとアナハイムから流されたムサイ級の廃艦で構成されたこの謎の艦隊は、不思議なことに第506独立艦隊(シーマ艦隊)と同数だ。

 デラーズ側はこの艦隊をシーマ艦隊と呼称しているが、ジオン軍、ジオン残党の中にシーマ・ガラハウ中佐なる人物は存在しない。ア・バオア・クーで彼女は戦死している。少なくともグリーン・ワイアット大将の管理する記録にはそう書かれていた。

 

 

 リリアンはガーベラ・テトラのコクピット内で待機していた。新品の車の匂いがするピカピカのコクピットは非常に良いものである。

 

「リリアンはデカブツを抑えろ。レクトは艦の護衛だ。MS発進!」

 

 リリー・マルレーンのメガ粒子砲が、グワデンを吹き飛ばす。廃艦の無人ムサイが、無差別にビームを乱射しながら突撃していく。

 阻止限界点付近で発生したこの裏切りで、デラーズ・フリートはパニックに陥った。

 

「コロニーを爆破させな」

「はっ、デカい花火ですな」

「リリー・マルレーン以外、全部敵だ。ケツを掘ってやりな」

「了解しました。シーマ様!」

 

 ノイエ・ジールのコクピットで、アナベル・ガトーは怒り猛っていた。

 

「裏切ったなシーマァァ!」

「もう…散体しろ!」

「なんだ、このMSは? くっ、速い。クソ、シーマか!」

「爆発して死ぬのに? 意味ないよ」

 

 赤いMSは、ノイエ・ジールのバイタルパートを的確に抜いていく。Iフィールドは確かに実弾を通してしまう。だが、分厚い装甲がそれを補う。そのはずだった。

 正確無比な強化人間には、それが通用しない。撃ち尽くしたバズーカを捨て、マシンガンを連射する。120mm弾は、ノイエ・ジールには通用しないはずだった。本来なら。

 

「ちょこまかと! 落ちろ!」

「ざーこ♡ ざーこ♡」

「まさか、赤い彗星か??」

「孕めオラァ!!」

 

 ビーム・サーベルが、コクピット付近を貫く。コクピットまで貫通はしていないが、機体へのダメージにはなった。

 弾切れなのか、赤いMSは撤退していく。ガトーはそれを追おうとした。

 その瞬間、地球に落ちるはずのコロニーが爆発した。振り返ると白く塗装されたムサイ級が、味方を撃っている。さらに、前方から連邦軍艦隊が迫っていた。

 

「何故だ? 何故こうなった?」

 

 ガトーの問いに答えるものは誰もいなかった。

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