【完結】インターネットミームしか喋れないTS強化人間 作:むにゃ枕
15 ガンダム売るよ!
地球圏は混乱の様相を呈していた。
30バンチ事件は、地球連邦軍の事故調査委員会により原因究明が為された。その結果、ティターンズによるG3ガスの所持及び使用未遂が裏付けられた。
調査報告書では、連邦軍の急拡大と指導者層のガバナンスの低下が根本原因とされている。
これを受け、連邦政府内では穏健派が台頭。過激派やティターンズの排除はできなかった。しかし、ティターンズに対してのカウンターとして、エゥーゴが、地球連邦軍月面方面軍外郭部隊とされた。
一年戦争とデラーズ事件により肥大化した連邦軍は、もはや統制の取れる軍組織ではなくなっていたのである。
殆どの連邦正規軍はティターンズ、エゥーゴの双方を厄介者扱いしていた。イデオロギー全開の軍閥に関わると碌なことがない。そんな空気感が有り、彼らは傍観派と呼ばれていた。
傍観派からすれば、守るべき市民を毒ガスで殺そうとしたティターンズは唾棄すべき存在である。ティターンズは最早エリートと見なされなくなっていた。さらに、各部隊から優秀な士官の引き抜きをかけるような権力や、特別階級といった権限も失っていた。単なる極右組織であり転属を願い出る人物や構成員となる人物は危険な存在であると目されていた。
傍観派はエゥーゴに対しても同様の目を向けていた。アナハイムの狗であり、一年戦争の惨禍を引き起こしたジオン残党を取り込み、連邦軍籍を与えているエゥーゴも同じ穴の狢だったからだ。
しかし、彼ら自身が市民を守るという強い決意も、強力な指導者も傍観派にはいなかった。
ティターンズとエゥーゴの抗争に、関与せず静観することしかできない。だからこそ両派閥は侮蔑を込めて、彼らを傍観派と呼ぶのだ。
サイド7、グリーン・ノアから少し離れた宙域を航行中のアーガマ。艦内ではちょっとした問題が発生していた。
「アポリー、作戦は成功だ」
「やりましたね大佐、おっと大尉殿」
「で、そのオッサンと民間人はどうするんです?」
「……彼からは特別なものを感じる。かつてのアムロ・レイのような力を」
「民間人連れてきたんですよ。ウチはティターンズじゃないんですよ。真面目に処遇を考えてください」
「そうだな…………」
奪取したガンダムマークⅡ二機。しかし余計なおまけが付いてきた。地球連邦軍大佐ブライト・ノア。民間人カミーユ・ビダン。そしてファ・ユイリィ。
ブライトはともかく、カミーユとファは民間人である。軍艦であるアーガマには本来は乗せることはできない。しかし、ガンダムマークⅡを収容するため、やむを得ず艦内に入れなければならなかったのだ。
「カミーユです。カミーユ・ビダン。僕をこの船に置いてください。でなきゃマークⅡのコクピットからは降りませんよ!」
「それは、困るな。だが君は、軍人じゃないんだろう。MSは戦争の道具なんだ。降りてくれないと困る」
「あんたロベルト中尉って言ったな。もっと上の人を連れてきてください。あなたじゃ話にならない」
「まあ、話を聞いてくれ。民間人に戦争はさせられないんだ。MSに乗るには軍人になるしかない。もっとも大人しくMSから降りてお客様になりゃ、次の寄港地で下ろして家まで送り届けてやる」
「……じゃあ、軍人になってやりますよ! やれば良いんだろう!」
「坊主、本気か?? ……まったく調子狂うぜ」
ロベルトは降参とばかりに両手を上げた。
「大尉を呼んでくる。エゥーゴへの入隊試験と連邦軍籍の発行書類も持ってくるからな……やめるなら、今のうちだぞ!」
「やめませんよ! ティターンズなんて大嫌いだ!」
格納庫には、クワトロ、ブライト、ロベルト、ファの姿が有った。
「カミーユ、軍隊に入るなんてこと言わないで。あなたのお母さんとお父さんが心配するわよ」
「ユイリィ、あんな奴らが僕を心配なんかするわけないだろ。家庭より仕事を優先する奴らだ」
「カミーユ! あなたが軍隊に入るんだったら私も入るわよ! あなた一人じゃ何をするか分からないもの」
「勝手にしろ!」
カミーユとファの交渉は決裂した。カミーユがハッチを開き、顔を出す。
「カミーユくん、本当にエゥーゴに入る決意が出来ているのか? 軍は遊びじゃないんだ」
「遊びでやってんじゃないんだよ。人を殺したんだぞ。もう戻れないんだ」
「そうか。では、エゥーゴに入ると良い。別室で書類を書いてもらう」
「分かりましたよ」
「カミーユ! 本気なの!?」
「ユイリィ、俺は本気だよ」
「私も入るわ。クワトロ大尉、良いですよね?」
クワトロは軽くこめかみを揉む。それからファの入隊を許した。
予定外の人員の加入というハプニングは有ったもののアーガマは予定通りの行動を取っている。エゥーゴの艦艇とのランデブーポイントまでは、30分も掛からない。
カミーユとリリアンを会わせたら大変なことになるのではないだろうか。クワトロの頭に浮かんだのはそんな考えだった。アーガマとノイエ・リリーという別の部隊なので滅多に顔を会わせないだろうが、万が一顔を見合わせた場合は大変なことが起きると安易に想像できる。
ニュータイプというのは厄介なものだな。そんなクワトロの呟きは格納庫の雑音に紛れて消えていった。