【完結】インターネットミームしか喋れないTS強化人間 作:むにゃ枕
エゥーゴをはじめとする連邦軍艦隊は壊滅的な打撃を被った。そして、それはカミーユをはじめとするエゥーゴMS隊の強襲を受けたアクシズ艦隊も同様だった。
そして、ようやく戦況を変える痴話喧嘩に決着が付こうとしていた。
「シャア。お前の手を私のネックレスにしたら、私はずっとお前に抱かれていられる。お前の唇をマスクにしたら、私はずっとお前にキスしてもらえる。シャアシャアシャアシャアシャアシャアシャア」
「黙れ! 失せろ悪霊め!」
クワトロは疲弊していた。ハマーンからの呪詛のような思考。そして断続的なファンネルの攻撃。それらは、クワトロにミスを起こさせるのに十分な要素だった。
「ぐっ、百式の右腕がやられたか」
「お前は退け。ここは俺がやる」
「私の因縁は、私が清算する。キャスバル・レム・ダイクンは死んだ。シャア・アズナブルは死んだ。ここに居るのは、ナタリーの夫のクワトロ・バジーナだ!! それ以上でもそれ以下でもない!」
武装を捨て、サーベルのみを携えたクワトロはハマーンへと特攻する。
「シャア、お前は私がこの手で葬ってやる! シャアも殺す! ナタリーも殺す! ミネバも殺す! みんな殺してやる!」
「させるものか! ナタリー、私に力を」
百式のバイオ・センサーがコクピット周りのサイコフレームと共振する。その光はΖガンダムをも巻き込む。
直進するだけの百式は、ファンネルの格好の獲物だった。だが、光がビームを中和する。
「Iフィールドか! まだ隠し玉を!」
ハマーンの思念が、バイオ・センサーを突き抜け百式へと刺さる。
「クソっ、スラスターが止まった!?」
「私と一つになれぇ! シャアァァァ!」
「俺を忘れちゃ困るな」
バイオ・センサーの光に包まれたΖガンダムが、百式の肩を掴む。推進力を取り戻した百式は、腕を突き立てた。その先のビーム・サーベルが、キュベレイ・ブラウトのコクピットへと吸い込まれていく。
「ごめん。シャア。それでも私はあなたを好きだった。ありがとう。そして、さようなら。初恋の人」
サイコフレームの光に包まれ、消えていくハマーン・カーン。その顔色は安らかだった。
「終わったか……ハマーン……」
クワトロが呟く。サングラスの下を涙が伝った。
「彼女は、何を間違えたんだろうな?」
「あまりにも不器用過ぎたんだ。我儘で独善的だった。でも、想いは真っ直ぐだった」
「……そうか」
AMBACの怪しい百式を、Ζガンダムが守る。二機が艦隊へ戻ると、母艦であるアイリッシュはもうそこには存在しなかった。
アクシズの量産型キュベレイは、艦隊に多大な被害を齎した。リリアンやカミーユが対抗したこと、マスターであるハマーンを失った動揺で、ようやく排除することが出来たのだ。
連邦軍の艦艇が両手足の数で足りる程に減っている中、殆ど無傷であるアーガマとノイエ・リリーは陣営に関係なく連邦軍機をキャパオーバーまで収容することとなった。
パイロットが雑魚寝するハンガーで、アムロは今後の予想をブライトに聞いた。
「アクシズがこのまま進めば、間違いなく地球へ落下するだろう」
「そうか。ブライト、まだ策は有るのか?」
「無いな。アイリッシュごと揚陸艇や資材は吹き飛ばされた。アクシズ内に残党が立て籠もってる。奴らに正気は無い。残った奴らはハマーンに殉ずる気だ」
「民間人も居るんだろう? どうするんだ?」
「殆どの民間人がサイド2で降りている。残っているのはハマーンの狂信者だけだ。それにジオン共和国の過激派もアクシズに入ったらしい」
「死んだ人間に殉ずるなんて、馬鹿げている」
アクシズを制圧し、爆破する。それが、連邦軍に残された唯一の選択肢となった。
「セックス! もっと激しく!」
「カミーユ、あっ。ひ、ひ、人が来るわよ」
「構うものか。見せつけてやれ!」
「カミーユくん。関心しないな」
「恋愛は自由ですよ! クワトロ大尉!」
クワトロは苦い顔をする。カミーユは情事を終えるとシャワーを浴びに行った。
「これが、若さか……」
クワトロの呟きを聞いた周囲のパイロットが、黙って肩に手を置いた。ハマーンが赤裸々に全てを、しかもオープン回線で語ったことにより、クワトロは同情される立場となっていた。
ハマーンとの対峙でクワトロの野心は消えていた。彼の望みは妻であるナタリーに寄り添うことだけだった。
「第二次アクシズ攻略戦だ。残存兵力でもってアクシズを攻撃する。ハマーン・カーンに殉ずる死兵を排除し、地球に明日を与えるのだ。
諸君の背中には、無辜の市民がいる。幼い赤ん坊も、子供も妊婦も、老人も。想像できる全ての弱者がいる。彼女らを守る。名誉ある任務だ。諸君の健闘を祈る」
連邦軍残存MS部隊は、おおよそ百機まで減っていた。たったそれだけの戦力でアクシズを落とすのだ。確率は低い。だが、不可能ではない。
「お前、カミーユって言うんだな? 最初女パイロットかと思ったぜ。なかなか腕が良いって聞いたぞ」
「誰です? あなた?」
「ジェリド・メサだ。軌道艦隊のエースだぜ」
「聞いたこと無いですね。そんな人」
「あん? 俺の名声を知らないって?」
「ちょっとジェリド。あんまり絡むんじゃないよ」
「ライラ師匠は、小うるさいねぇ。さて、汚名挽回といきますか!」
「名誉挽回だろ。バカジェリド」
「うるせぇ」
ティターンズ、エゥーゴ、連邦軍傍観派、そこにはもう派閥の垣根はなかった。地球にアクシズを落とさない。その共通目的が、彼らをようやく一体にさせたのである。
「阻止限界点まで、残り1時間か。この攻勢でケリをつけるぞ」
「当たり前だ。こんな石ころ俺のネモで跳ね返してやるよ」
リリアンは、カミーユと先陣を切ってアクシズを防衛するMS隊に突入した。アクシズ防衛隊のMSは骨董品ばかりだった。
「ザクⅡか。こんなので、まだ戦うって言うのかよ!」
「ジーク!! ジオン!!」
「黙れ。テロリストが」
ザクⅡ、リック・ドム、ゲルググといったMSは性能面では劣る。そしてパイロットの練度も連邦軍には劣るものだった。
「ドラッツェ。デラーズの残党か」
「ジオンは終わらん!」
連邦MS隊は、アクシズMS隊を確実に駆逐していった。そして、アクシズへもう少しで取り付けるというところまで迫る。
「ガンダム、ガンダムは敵ッ! 全て殺す!」
「ハマーンが死んだのに、まだやるのか!?」
残存していた量産型キュベレイが、死に物狂いで連邦MS隊に攻撃を仕掛ける。その数は十機だった。
「散弾でなぁ! こうやるんだよ!」
「ヤザン大尉、まだいます!!」
「お前たちでも出来るぞ。点ではなく面で制圧しろ。ファンネルってのは、落とせるんだ」
ティターンズのMSが連携して、量産型キュベレイを一機落とす。アムロらニュータイプが、数を減らす。
「アーガマの意地を見せてやれ」
アーガマ、ノイエ・リリー、生き残りのアレキサンドリア級などが、アクシズに対し艦砲射撃を実施する。
「アーガマ、突撃する」
「了解。ノイエ・リリー突撃する」
「アスワン、続きます」
三隻を筆頭に、連邦艦隊がアクシズに無理矢理接岸する。アクシズも濃密な対空砲火を展開する。
「図体はこのアスワンが一番デカい。壁になる。その隙に進め」
アレキサンドリア級アスワンが、盾となり集中砲火を受け撃沈する。アーガマ、ノイエ・リリーが着底し、数隻のサラミス改も続く。
「リリアン、ソイツで最後だ」
「間に合ったな」
量産型キュベレイの最後の一機を排除し、MS隊はようやく、着底した艦隊の援護に向かうことが出来るようになった。しかし、阻止限界点までの時間はもう殆ど残っていない。
「全艦離脱する。爆破しろ!」
「やったぞ成功だ!」
アーガマの艦橋内が拍手に包まれる。アクシズの爆破は、結果的に成功した。だが、爆破角が浅かった。
「ブライトキャプテン、このままでは、アクシズが地球へ落下します」
「ブライト、聞こえるか? アムロだ。爆破角度が浅かった。重力に引かれてアクシズが落ちるぞ」
ブライトは臍を噛んだ。もう打てる手は残っていない。
「クソ、俺はハマーンの手伝いをしてしまったのか」
「ラサは、事態を把握しているのか?」
「あの腐った連中など、俺は知らん」
一機のMSが、アクシズの破片に取り付いた。機体反応はガーベラ。リリアンだった。
「リリアン、おい。バカな真似はよせ。無駄だ。無意味だぞ」
「あのアホ女、何をしてるんだ? ふん、手伝ってやるよ」
「カミーユ、もう。仕方ない。私もやるわ」
リリアンとカミーユを切っ掛けに連邦のMSがアクシズの破片へと取り付き始める。
「シャア大佐、お久しぶりですね。いやー悪いことは出来ませんね」
「やめろザクⅡなどそんな機体、すぐにオーバーヒートするぞ。この百式なら暫く持つ」
「せめてもの罪滅ぼしです。あー機体がダメみたいですね」
数機がオーバーヒートにより、引き剥がされる。
「愛してるんだ、君たちを! ハハハッ!!」
ガーベラのバイオ・センサーとサイコフレームが、リリアンの意志と共振する。
「リリアン!? やめろお前でなくて良いんだ! 行くな! リリアン!! やめろ!」
レクトのガルバルディβが、ガーベラの手を取る。だが、その手は振りほどかれ、ガーベラはサイコフレームの生み出した光に呑み込まれていった。