【完結】インターネットミームしか喋れないTS強化人間   作:むにゃ枕

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06 総督の娘のスカートを捲ったら追放された件

 高速試験輸送船カミカゼ。ムサイ級軽巡洋艦に、廃艦となった同型艦や、チベ級巡洋艦のブースターを大量に付けたイカれた艦である。ザンジバル級並みの高速性を持ったが、当然ながらコストが掛かることが判明し一隻のみで終わった。

 

 ずんぐりした図体をしており、全長が非常に長い。また、推進系を優先したため武装は一切存在しない。つまり、ただ速いだけのデカい的だった。

 この艦は大飯喰らいであり、燃費が悪く取り回しも非常に悪かった。解体され資源利用される予定だったが、丁度とばかりにデラーズ・フリートへの足になるのだ。

 

「あの! なんで私が機付き長になってるんですか!?」

「いつもながらうるさいな、君は。ミレイ曹長。昇進おめでとう。君の努力の結果だよ」

「なんで、ハルトマン准尉とか整備員の先輩がいないんですか?? 私が整備責任者になってるんですけど……なんで……」

「だから、君の努力の結果と言っただろう。スミレ・ホンゴウ准尉仕込みの技術は、このゲルググカスタムの性能を維持するのに必要だ」

「うぅーー。出世するんじゃなかったぁぁーー」

 

 艦長のラグロフ大尉をはじめとしたカミカゼのクルーは、ほとんどがジャーヴィスからの移籍組だった。

 アクシズから、サイド5の残骸にある暗礁宙域は遠い。そのため、途中で補給が必要となる。

 

「年寄りを扱き使うね。ジオン軍もアクシズもさ」

「艦長のキャリアなら、まだまだ現役でいて欲しいものです」

「ワシはずっと輸送艦乗りだよ。戦闘艦は嫌いさね。ムサイの戦闘は嫌だった」

「連邦艦艇を5隻沈めておいてです?」

「運が良かっただけだ。ワシは戦争もザビ家も嫌いだ。船乗りに殺し合いをさせるなんて残酷過ぎる」

 

 レクトは、キャプテンシートに座っているリリアンを見やる。リリアンがそこに座っているのは単に彼女のわがままからという理由ではない。強化人間の非常に優れた感覚は、敵をレーダーより早く遠距離から感知する。

 さすがのリリアン(人間レーダー)も無防備な輸送艦ごと敵艦に吹き飛ばされるのが嫌だったのか、お巫山戯はしていない。

 

「ガンダム、ガンダムは敵!」

 

 素早くキャプテンシートから飛び降り、操舵員に方位を示すリリアン。連邦軍のパトロール艦隊を探知したらしい。レーダー上には何も映っていない。

 本当に進路上にパトロール艦隊がいたのかは不明だが、何回か転針し、カミカゼは無事に中継地点で補給を受けることができた。

 

 

 疲れが溜まっていたのだろう。リリアンは、中継地点で降りてすぐにベッドに転がり込んだ。すやすやと寝息をたてる彼女は単なる子供のように見える。レクトは、リリアンを起こさないように静かに部屋の扉を開けた。

 薄茶色の髪を整え、優しく頭を撫でる。

 いつも人の顔を伺い、怯えていた少女が、とある実験の後に人が変わったように変に図太くなった時はさすがのレクトも驚いたものだった。

 

「リリアン。俺の顔を伺ってビクビクしてたこと覚えているか? あの時の実験で俺は、意図的に負荷を上げたんだ。サイコミュへの適性の低い孤児をいたぶり続けることへの意味を正直見失っていた。いっそ死んでくれればと思っていた。その後で俺は軍を辞めるつもりだった。

 フラナガン所長の理論を素晴らしいと思ったんだ。ジオンのためになると思った。ニュータイプの力をモノに出来れば、家族を守れると、国を守れると思ったんだ。一人でも多くの兵士を家族の元へ返せると思っていた。

 

 だけど、眼の前の子供すら救えないんだ。子供を犠牲にしたこんな研究に意味が有るわけないよな。

 我に返った俺は、取り返しのつかないことをしたと思った。でもお前は生き残った。ありがとう。生きててくれて。そして許してくれ。君を未だに利用していることを」

 

 実は、レクトが部屋に入ってきた瞬間に覚醒していたリリアンは、ばっちりレクトの告解を聞いていた。そして、内容の重さにドン引きした。

 リリアンは阿呆である。原作知識は有るが、パチスロで見たことある顔しか知らない。非常に曖昧な知識である。

 

 ベッドに腰掛け項垂れていたレクト。その頭を抱え込む。

 

「べ、別にあんたのためじゃないんだからね」

「起こしたか?」

「勘違いしないでよね!」

「離してくれないか。少々力が強いんだ」

 

 腕に込めていた力を緩める。レクトが逃げようとする気配が有った。

 

「ふーん、エッチじゃん」

「慰めようとしているのか? 不要だ。やめてくれ」

 

 なんとなくガチで嫌そうな気配を感じたリリアンは、レクトを解放した。泣き顔だったらちょっと見たいなと思っていたのだが、冷静に考えたら男の泣き顔見たくないなとなったが故だった。

 

「酒! 飲まずにはいられないッ!」

 

 リリアンはジュースサーバーを占拠していた。この女、過剰にスパイスを振りかけた肉と、バカ甘いジュースしか摂取していない。外付け良心回路、ストッパー、保護者、パパと呼ばれているレクトは現在、会議に参加しており食堂にはいなかった。

 船員の気を紛らわすため基地側が提供したビュッフェ方式の食事が仇となった。ちなみに、リリアンは文字が読めないし、書けないし、喋れない。そして短気で力が強い。割とパワー系強化人間なので元ジャーヴィスの船員以外からは遠巻きに見られていた。

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