【完結】インターネットミームしか喋れないTS強化人間   作:むにゃ枕

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07 また髪の話してる……


 茨の園。サイド5の残骸である暗礁宙域に存在するデラーズ・フリートの拠点である。

 そこに一隻の艦艇が向かっていた。ムサイ改級のカミカゼだ。推進系統が改造された異形のムサイ級であるカミカゼは、茨の園のレーダー上でも不気味な艦艇として映っていた。連邦艦隊の目から逃れるためカミカゼのIFF(敵味方識別装置)が切られていたこともあり、スクランブル警報が発令され数機のMSが茨の園から発進した。

 

 アナベル・ガトー少佐は指揮官としてその中にいた。未確認艦艇からガトーを迎えたのは二機のゲルググだった。一機はフルノーマルのように見える機体だ。もう一機はバーニアが強化されモノアイも拡張された機体だった。

 

「こちら、デラーズ・フリート所属、アナベル・ガトー少佐だ。官姓名を問いたい」

「レクト・レイドだ。アクシズから来た。一年戦争時は大尉だった。もう一機のパイロットは、リリアン・ブーステッド准尉。彼女は強化人間で私の傑作だ。邪魔はしない方が良い」

「了解した。アクシズの助力に感謝する」

「アナル・アサシン!?」

「リリアン、黙っていろ。ガトー少佐、申し訳ない。強化人間は精神的に不安定なのでな」

 

 アナルベル・ガトー。ではなくアナル・ガトー。もといアナベル・ガトーはゲルググで、カミカゼを先導し、茨の園のドックに収容した。長旅のためカミカゼはオーバーホールが必要になる。

 デラーズ・フリートはエギーユ・デラーズ中将の私設艦隊である。要はデラーズが社長のワンマン経営会社のような存在だ。そのため、艦隊の加入者はデラーズ中将をはじめとした幹部との顔合わせが必要になる。人事部とかリクルーターとかは余り機能していない。テロリストなのだ。内実は貧弱である。

 

 カミカゼからは4名がデラーズとの顔合わせに向かうことになった。艦長のラグロフ、整備長のミレイ、そしてレクトとリリアンだ。リリアンは、げんなりした顔をしていた。こういう儀式が嫌いだからだ。

 一行は大広間へ通される。ギレンシンパらしく、ギレンの巨大な肖像画が有ったり、胸像が飾られていたりする。

 

「はるばるアクシズからよく来てくれた。私がこの艦隊を率いるエギーユ・デラーズだ」

「カミカゼ艦長、ラグロフ・ショイグ大尉。そこのインテリがレクト・レイド大尉、子供がリリアン・ブーステッド准尉、とろそうなのが整備のミレイ曹長だ。我々はアクシズの観戦武官だ。戦力としては期待してほしくない。戦争は嫌いなもんでな。それでも良ければ、よろしく頼むよデラーズ中将」

「ラグロフ大尉、貴官のその態度は中将に対する敬意を欠くのではないかな?」

 

 ガトーが厳しい目をラグロフに向けるが、ラグロフはどこ吹く風といった有り様だ。

 

「敬意? 戦争屋さんこそ、裏方の輸送艦には感謝するべきではないかね? ワシ等がいなければ大好きな戦場にすら物資不足で行けないのだからな。こちらに敬意を払ってほしい」

「なるほど。それをアクシズの見解として良いのか?」

「ガトー少佐、艦長が失礼した。我々はジオン独立という一心で協調する仲だ。仲違いしたいわけではない」

「そうだなレクト大尉。我々は敵同士ではないのだから」

 

 ラグロフ艦長が、誰にも聞こえないように「ジオン独立? 御題目だろ。戦争屋め」と呟いたのを、鋭敏な強化人間の聴覚は拾っていた。

 

また髪の話してる……

リリアンちゃん、アレは禿げてるわけじゃなくてファッションなの。静かにしてよ〜。ね

このハゲー!! 違うだろ!!

 

 小声で怒鳴るという奇妙な叫び方をしたリリアン。ミレイは若干自信をなくしてしまう。

 

もしかしたらハゲ隠しのスキンヘッドかもしれないけど……

 

 エギーユ・デラーズはプライドの高い男だった。そして、それは髪型にも適用された。自分の頭をチラチラ見て小声でコソコソ話している二人は非常に不快であった。

 

「貴官らは、我がデラーズ・フリートにとっては外様となる。軍制として、同じ立場であるシーマ艦隊に所属するよう手筈を整える」

「了解しました。艦長、それで宜しいですか?」

「シーマ艦隊というのは、あの海兵隊のシーマ艦隊か? アイランド・イフィッシュに毒ガスを流し込んだ艦隊か? あんな連中と一緒にか? ワシは嫌だ。それにカミカゼはオーバーホール中だ。船が無いと話にならん」

「ガトー、ムサイ級が有ったな? アレは修理が済んでいるか?」

「はい。終わっております」

「ならそれを、くれてやれ」

「分かりました。整備員に伝えます」

「レクト大尉は異存ないようだが、ラグロフ大尉は折れてくれるかね?」

「ここで断れる男だったらワシはここにいない。我ながら情けない爺だ」

「決まりだな。ガトー、取り計らえ」

「はっ」

 

 誰もいなくなった部屋で、デラーズは計画を振り返る。アクシズの観戦武官や、強化人間というパーツは彼の計画に存在しない因子だった。しかし、その程度で星の屑作戦を止めることはない。

 シーマ艦隊という不穏分子と自らの頭を凝視していた強化人間の少女、気に食わない存在を纏めて同じ箱に入れたデラーズは、ギレンの肖像画を見上げる。

 

 ア・バオア・クーで死にそびれた男は、自らの計画をもってジオニズムに殉じるつもりだった。

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