【完結】インターネットミームしか喋れないTS強化人間 作:むにゃ枕
シーマ・ガラハウは優秀なジオン将校であった。若くして中佐まで昇進する能力を持っているのがその証左だろう。しかし、シーマは単に優秀止まりだった。
責任を回避する政治力を持たなかったため、彼女はアイランド・イフィッシュへの毒ガス攻撃を仕掛けた戦争犯罪人に指定されることとなった。
故郷のコロニーをソーラ・レイに転用され、帰る場所はない。戦犯指定もあり、シーマ艦隊はどこにも居場所は無かった。海賊行為を行い、生計を立てて来たがそれも限界に近かった。未来が無いことは人間を絶望させるのに十分だった。
絶望から脱却するために、シーマはデラーズ・フリートの情報を連邦軍に流し、自らの居場所を得ることを決めていた。部下とその居場所のため、裏切りすら行う。理想に溺れたデラーズとは正反対な現実のために生きる女。それが、シーマ・ガラハウだった。
「シーマ様、デラーズから連絡です」
「いったい何だい?」
「アクシズの観戦武官を当艦隊に預けるとのことです」
「なんだってうちの艦隊なんかに預けるんだ。嫌がらせか」
シーマが対面したアクシズの観戦武官は、明らかにデラーズとは合わないだろう雰囲気を漂わせていた。
「あんたがシーマ・ガラハウか。ワシはラグロフ。大尉だ。戦犯にしては目に光が有るな。デラーズとは大違いだ。よろしく頼むよ」
「ジャーヴィスのことは知ってるよ。ラグロフ大尉、あんたサイド2への核攻撃でB級戦犯指定されているね。アタシ等のことを言える立場なのかい?」
「核攻撃に関してはワシに責任はない。搭載MS隊の連中がザビ家から核を受け取り撃っただけだ。証拠もある」
「なんだい? 冤罪とでも言いたげだね」
「冤罪さ。あんたらと同様にね」
シーマは一瞬、言葉に詰まった。
「あんた、どこでそのことを知ったんだ?」
「いや、単なるカマかけさ。うちの強化人間が騒がなかったからな。ヤバいことにはならなそうだと思ってな。その調子じゃ本当に冤罪だったらしい」
「ふん。そうかい」
シーマとラグロフは目線を交わしお互いを値踏みし合う。腹を割って話すには、二人とも嫌な経験をしすぎていた。
「開けろ! デトロイト市警だ!」
沈黙を破ったのは部屋に飛び込んできた少女だった。勿論、シーマ艦隊に少女はいない。となると、アクシズから来たのだろうとシーマは推測した。MSに子供が乗っていたという噂は聞いたことが有ったが、それは戦場伝説の一つだと思っていた。
肩より上で揃えられたブラウンの髪。視線は斜視のせいか両目の焦点がズレている。目線の先には壁しか無かった。その漆黒の瞳には、奇妙な星のような虹彩が浮かんでいる。整った顔立ちだが、見ていると不安になる少女だ。
見かけからは、精神障害者のように見える。少なくともシーマはそう思った。
「嬢ちゃん、ノックくらいした方が良いぞ。子供が来る場所じゃないんだ。レクトと遊んでろ」
「遊びでやってんじゃないんだよーっ!」
「耳がキンキンする。急に叫ばないでくれ」
「だが私は謝らない」
「で、なんの用だ? 嬢ちゃんなりに用が有るんだろう?」
少女はこくりと頷いて、シーマを指差した。そして上から下までじっと眺める。男が己を見る時のような視線だ。子供はそんなことをしない。まるで、子供の形をしたナニカではないか。
シーマは、ラグロフの言った強化人間という単語が、眼の前の少女と結びついた。
「いい目をしているな、それに度胸も良い。ますます気に入ったよ。アムロとか言ったな?」
「なんだそりゃ、褒めてんのかい?」
「そうわよ」
「お前が、強化人間か。MSに乗る子供。まさか実在したとはね。てっきり
「ヤツラはラーメンじゃない。情報を食っているんだ」
「で、アタシになんか用か? 大事な話をしてんだ。用がないなら出ていってくれ。頭のおかしいガキに構っている余裕は無いんだよ」
シーマが一瞥すると、少女はビクッと身を震わせた。そして、大人しく部屋から出ていった。
「珍しいな、あの嬢ちゃんが素直に出ていくなんて」
「悪ガキなのかい?」
「碌でもないぞ。部屋から出ていくタイミングでデラーズの禿頭を叩きに行ったからな。レクトが止めなきゃデラーズの頭に紅葉が咲いていただろう」
「そりゃまあ、とんでもないね」
しばし、沈黙が漂う。シーマは自らの計画を眼の前の男に伝えることを決心した。行動を共にするのだ。遅かれ早かれ自らの計画は露呈するだろう。
中々、面白い連中だ。早めに巻き込んでしまえば、状況が好転するかもしれない。シーマはこの事態を好機にするべく、口を開いた。
何やら話が違うのではないだろうか。先程シーマとラグロフの話し合いに乱入した少女、リリアンは内心で考え事をしていた。
リリアンは、美人の艦隊司令が居ると乗組員が話していたのを聞いて、テンションを上げて突撃したのだ。しかし、司令室にいたのは、うちの艦長の爺さんと話していただろう、ケバいババアだった。
ババアといったものの、容姿はまあまあだ。キツめのお姉さんというタイプをリリアンは受け入れた。前世の記憶に熟女ものが有ったかは不明だが、とにかく受け入れてしまった。
好奇心で、軽く感応した結果、なんか辛そうな過去が有ったので、リリアンの可哀想なのは抜けないセンサーが反応した。そして軽めの罵倒をくらい、マゾ精神が刺激される。それで満足したリリアンは、大人しく部屋から抜け出し、今は、レクトに説教をされている。
シーマ艦隊のおっさんが、お節介からリリアンにゲームを与えてしまいドハマリしたリリアンが部屋から出てこなくなるのだが、それは少し後の話である。