【完結】インターネットミームしか喋れないTS強化人間 作:むにゃ枕
地球連邦軍、ペガサス級強襲揚陸艦アルビオンは、二隻のサラミス級と共に、デラーズ・フリートの捜索任務にあたっていた。
艦内は一つに纏まっているとは言えない状況だったが、それでも十分な戦力は有ったはずだった。アルビオン艦長シナプスには、この即席艦隊に自信を持っていたのである。
「右舷四時、熱源探知!! 距離二千!!」
「熱源だと!? 第一種戦闘配備!!」
オペレーターの報告に冷や汗が垂れる。
「ユイリン撃沈!」
「なんだと!?」
「ザンジバル級一隻、ムサイ級六隻、探知しました!」
「クソ! 囲まれた! 敵の戦力が大きい!」
「ナッシュビル……撃沈、しました……」
二隻のサラミス級を瞬時に失った。それは、危険すぎる報告だった。
「敵MS一機、異常に速いのがいます!! 本艦に接近中」
「対空砲火、集中させろ! MS隊の発進はどうなっている!?」
「順次発艦中です!」
低い振動がシナプス等ブリッジクルーを襲った。キャプテンシートにしがみつき、衝撃をやり過ごす。
「報告しろ!」
「本艦第二エンジン被弾! 推力停止状態です!」
明らかに戦況は悪かった。
「バニング大尉がカバーに入りました! 駄目だ、遊ばれている。敵機は……異常だ……」
「敵高速機、離脱しました。敵MS部隊と合流する模様です。我が方は押されています」
「クソっ」
味方はいない。このままでは、アルビオンが沈むのは時間の問題だった。
「なんだ? これは、広域通信です!!」
「敵MS隊、撤退しています。敵艦隊も撤退する模様」
「助かったのか……」
シナプスは溜息を吐いた。キースのジムキャノンⅡとウラキのガンダムGP01はこっぴどくやられている。コクピットユニットくらいしか無事なパーツが無いくらいだ。その他の艦載MSもボロボロの状態だった。
広域通信で流されるエギーユ・デラーズの演説は唾棄すべきものであった。だが、タイミングからしてこの演説が敵艦隊からアルビオンを救ったのだろう。
シナプスの自信は打ち砕かれた。ジオン残党は未だに強大な存在であるということが証明されてしまった。シナプスは幸運を噛み締めるのと同時に小さく疑問を呟いた。
「敵は何故引いたんだ? こちらを沈めるチャンスだったろうに」
「デラーズのやつ、なんだってこんなタイミングで呼び出したんだい!?」
「大規模な連邦艦隊の攻撃だそうです」
「こいつらは贅沢な囮だったってことか。連邦もやるじゃないか」
「急行しろとの要請が届いてますが」
「わかったよ。だが、連絡の不備が有ってアタシらは直ぐに到着できない。そうだね?」
「ええ。連邦艦隊の残敵がしつこかったですからね」
十分な戦果を挙げたシーマは、デラーズ・フリートの中での足掛かりを得ることになった。そして、それは彼女の計画を一歩前進させることになる。
「話は変わるんだが、強化人間ってのはやるもんだね。あんなガキ、戦場で役立つはずがないって思ってたよ」
「一機で六機のMS相手に引きませんでしたからね。恐ろしいですよ」
「それでだ。オサリバンが寄越す新型。あのガキにくれてやりな。アタシが乗るよりよっぽど上手く使えるだろうからね」
「シーマ様、次の目的地は月ですかい?」
「味方の救援にゆっくり行った後でね」
「了解しましたよ」
シーマ艦隊が当該宙域へと到着する。ムサイ級とチベ級で構成された艦隊は、手酷い損害を被っていた。シーマ艦隊は生存者の救助を支援した。
相手指揮官は、部隊の損失にかなり憔悴した様子だったがシーマは相手の顔色を気にしなかった。デラーズ・フリートは一時凌ぎの腰掛けに過ぎないからだ。
月面は、ジオンの色が濃い。その色はジオンの敗戦後も落ちていない。息のかかった貨物船でシーマ等はフォン・ブラウンへと入った。
アナハイムの迎えに応じ、一行はオサリバンの下へと向かう。
「私、月面に来たのはじめてです。綺麗な場所ですね。なんか皆さん静かですね。来たこと有るんですか? 私だけ浮かれてるんですけど……」
「ミレイ曹長、少し年相応の落ち着きを持ったらどうだ」
「レクト大尉は今年26でしたっけ? アラサーのおっさんと違って私は18ですからね」
ナチュラルに口が悪いミレイの発言に、車内の空気が少し悪くなる。
「あっ、シーマさんは美人ですよ。若く見えます!」
「ふぅん。アタシが老けてるって?」
「ノーコメントです!」
空気を凍らせるのはリリアンの得意技だったが、ミレイにもその才能は十分に有った。
当のリリアンは、同じ車内で、ゲーム機を延々と弄っている。テトリスのようなパズルゲームをずっとやっているのだ。
当初は、厄介者が大人しくなったので、皆から歓迎されていたのだが、リリアンがベッドから出てこなくなったので、レクトが世話を焼くことになった。
MSには乗りたがるが、それ以外は食事以外の時間、ベッドに篭り、人間関係を絶ちはじめたリリアン。シャワーを浴びることすらしないため、雨に濡れた犬の匂いが彼女のベッドからするようになった。
それに閉口したレクトは、彼女の好きな激辛料理をフォン・ブラウンで食べさせることを条件にベッドから引っ張り出したのである。
新型MSガーベラ・テトラを預けるのだ、試乗は必要になる。
「リリアン、それ、楽しいのか?」
「……お前は物事を急ぎすぎる」
「じゃあ、やめたら良い。近頃の君は最低限の身だしなみすらしないじゃないか」
「素人は、黙っとれ――」
リリアンはどうやら、スコア上限を目指しているらしい。レクトは彼女にこういった類の玩具を与えたことがなかった。それにリリアンは孤児院から売られた子だ。彼女がゲームにハマるのも仕方ないかもしれない。
普通の子供のような幸せを彼女が得ることは出来るのだろうか。16になった少女は戦場以外の世界を知らないのかもしれない。