とりあえずは初期メンバーです。
さて、國広たちが正式に鬼殺隊に入隊することが決まって二週間。
蝶屋敷で待機していた彼は、天明と共に隊服と武器を支給された。
「成程、これが相棒の着てる隊服ってヤツか」
「……悪くない」
國広と天明は着心地のよさに感心する。
隊服は特別な繊維でできており、通気性がよい上に濡れ難く燃え難く、雑魚鬼の爪や牙ではこの隊服を裂く事すらできない程に頑丈だ。昔はまだ着物の方が多かったそうだが、近代化が進んだということだろうか。
「……で? 俺らの武器は?」
「もうすぐ着くらしいけどよ……」
獪岳はそう説明しつつ、周囲を見回す。
程なくして、風鈴を傘にたくさん付けてひょっとこの面を被った二人の男と、一人の大柄な隊士がやって来た。
「ひ、悲鳴嶼さん!?」
「こいつは縁起がいい。今の内に手ぇ合わせて拝んどけよ、相棒」
「私は仏像ではない……」
鬼殺隊最強の男の登場に、縁のある獪岳はギョッとし、國広は冗句を言って笑う。
そんな中、ひょっとこの面を被った男が口を開く。
「俺は
「あ、私は
「……ひょっとこだな、國広」
「素顔まではひょっとこじゃねぇだろうけどな」
天明と國広は軽口を叩くが、刀鍛冶が来たということは……。
「今日は打ち上がった槍と刀をお届けに上がりました」
蝶屋敷の縁側に鋼鐵塚と鉄穴森は座り、まずは國広の槍の説明をした。
「今までたくさんの刀を打ってきたが……槍は初めてだ。鬼殺隊の歴史でも、槍使いはお前が最初だろう」
「二刀流ならぬ二槍流もすると聞いたので、二本用意しました」
「ああ、荷物持ちだったのか」
「……南無阿弥陀仏……」
なぜ悲鳴嶼と現れたのかという疑問が解決したところで、國広は身の丈より長い風呂敷包みを解いた。
現れたのは、穂の側面に枝刃が付いた両鎬造り――断面が剣のような菱形――の二つの槍だ。
「十文字槍…!!」
「突けば槍、払えば薙刀、引けば鎌……刀で斬れないお前の為に、鎌槍にしておいた」
「まさか戦国武将の武器を造ることになるとは思いもよりませんでしたよ……って、國広さん?」
國広は蝶屋敷の庭で十文字槍を構え、振るい始めた。
突き、払い、打ち下ろし…さらに手の中で回転させて風を起こす。その非常に高い技量を目の当たりにした五人は、國広の強さに圧倒させられた。
一通りの動きを確認したところで、國広は「いい槍だ」と獰猛な笑みを浮かべて見せた。
「驚いた……すごい使い手だな」
「お館様が勧誘するのも頷けますね……」
初めて見る國広の槍術に、刀鍛冶二人も驚いた。
上弦の鬼と戦い、五体満足で帰ってきただけはある。
「気に入ったぜ。この黒い穂先も」
「黒!? 黒だとォ!?」
刹那、鋼鐵塚が立ち上がり、ズカズカと歩いて國広に肉薄した。
「お前は何色が似合うか悩んじゃいたがよ、寄りにもよって黒かよ!!」
「いいだろうが、別に!! 文句なら槍の穂先に言えよ!!」
「自分で打った刃に文句言えってのか!? フザけんじゃねぇぞクソガキ!!」
突然怒る鋼鐵塚に、國広も呆れながら反論する。
そこへ鉄穴森が間に入り、鋼鐵塚を宥めつつ事情を説明する。
「日輪刀は「色変わりの刀」とも呼ばれてまして。肉体や剣術の素養に応じて刀身の色合いが変化を示すんです」
「そんで、黒は?」
「それが……黒刀となる剣士の方は、鬼殺隊の歴史でも数が非常に少なく、一説には出世できない剣士とも言われてまして……」
「要するに俺は短命だと」
あっけらかんと口にする國広に、鉄穴森は必死にそんなつもりで言ってないと弁解する。
しかし國広は、さらに笑みを深めた。
「黒い刃なら、闇夜の戦いで刃渡りを誤魔化せるかもしんねぇな。益々気に入った!」
「お前……」
「あとは実戦だ。こいつの力を最大限に引き出してやる」
黒い穂先を真っ直ぐ見つめる國広に、鋼鐵塚は毒気を抜かれる。
気を取り直し、鉄穴森は続いて天明の日輪刀を見せた。
「天明さんはこちらの日輪刀を……」
刀箱を取り出し、蓋を開ける。
中に納まっているのは、黒い鞘と柄の直刀が二振り。背丈に合わせてか、刃渡りも通常の打ち刀と同じ程ある。
いわゆる「忍び刀」という日本刀だ。天明の出身が音柱と同じだからだろうか。
天明を日輪刀の鞘を抜いて持つと、刀身が橙色に変わった。
「……橙色の場合、俺はどの系統だ?」
「五大基本流派の一つ…〝雷の呼吸〟に近いかもしれん。宇髄はその派生と言える〝音の呼吸〟を駆使する……弟のお前も同じかもしれん。獪岳も雷の呼吸の一門の出と聞いた……あの子に訊くのもいいだろう」
「兄者と獪岳と同じ、か……」
「っつーか、お前産屋敷に日輪刀渡されてたよな?」
不意に、國広は気付いた。
天明は自分が柱合会議に参加する間、日輪刀を渡され任務に行ってたはず。
なのに、新しい日輪刀をこの場で渡されたというのは……。
「あの日輪刀は俺に合わなかった。……そう伝えただけだ」
「ああ、そういう……」
國広は彼の言い分に納得したのか、それ以上は追及しなかった。
「……さて、これで準備はできた。呼吸とかその他諸々は自分で覚えりゃいい。天明、獪岳! 國広遊撃隊、出動だ!」
「ああ」
気合いを入れる國広に、天明は短く答えるが……。
「おい、その前にどうやって鬼を見つける気だよ。てめぇの鎹鴉もいねぇのに」
「――全くだ、それを忘れてた!!」
獪岳のごもっともなツッコミに國広は頭を抱え、天明はジト目で睨んだのだった……。
*
翌日の明朝。
國広はある人物と再会を果たしていた。
「久しぶり、國広」
「真菰か!」
隊服の上に花柄の羽織を着た女剣士に、國広は明るい笑みを浮かべる。
藤襲山にて手鬼を共に討伐した間柄である真菰だ。彼女は正式に鬼殺隊士になって以降、着実に成果を上げていき、今では十段階ある階級の中でも上位である
「國広も鬼殺隊に入ったんだね。聞いたよ、上弦と戦って生還できたんだって?」
「まぁな。……実はちょうど遊撃隊を組織することになってな。お前もぜひ加わって欲しいんだが」
「遊撃隊?」
國広は事情を説明する。
「俺が指揮する遊撃隊は十二鬼月の疑いが少しでもあればすぐ駆けつけ、調査・索敵・殲滅するのが任務だ」
「やってることが柱だね」
「最高戦力が減ると困ると
國広が頭数だけでも揃えたいと頼み込むと、真菰はあっさりと了承した。
「いいよ、仲間がいた方が心強いしね」
「ありがとよ。やっぱ華がねぇのはよくねぇな」
「てめぇ喧嘩売ってんのか」
國広のボヤきに獪岳が睨みつける。
だが、これで小隊としては問題なくなった。剣才のない戦闘の達人、生存率の高い剣士、元忍び、そして機動力の高い女剣士……それぞれが個性的だが、上手く組み合わせばかなり強い部隊となるだろう。
「まぁ、最初の内はこんなもんか。とりあえず出かけるぞ」
「どこにする?」
「どこってお前、そりゃあ――」
天明の質問に答えようとした矢先だった。
「カァァ! 國広遊撃隊ィ、炎柱ノ担当区域ヘト迎ェェ!」
「鬼狩リトシテノォ、最初ノ仕事デアル! 心シテカカレェェ!」
「……あれ、お前らのじゃないか?」
二羽の鎹鴉を指差す國広に、獪岳と真菰はスッと目を逸らした。
「……まぁいいや。
「っつうか、炎柱担当って……まさかサボってんのかよ?」
「流石は鬼殺隊最高位。俺らと違っていい御身分だ」
「「違ウワバカ共ガァ!!」」
早速自分たちに尻拭いが回ったのかと勘繰る國広と獪岳に、鴉達は青筋を浮かべて怒鳴る。
曰く、最愛の妻が病死したことで意気消沈し、酒浸りの日々を過ごして職務怠慢が目立ってきたらしい。
しかし、親族に母を殺された國広や過酷な幼少期を過ごした獪岳、忍びとして親兄弟に諸問題を抱えてきた天明にとって、それは些事でしかなかった。
「贅沢だな。俺なんか母親を親族と村人に惨殺されてるってのに」
「嫁さん死んだだけで心折れるんじゃねぇよ…鬼がいる時代に畳の上で死ねたんだから上等だろうが」
「家族の死を口実に逃げる柱か……」
「オ前ラニ人ノ心ハアルノカァ!!?」
鴉たちは國広たちにガミガミと文句を言う。
しかし辛辣が過ぎる言葉ではあるが、それはそれで正論である。鬼殺隊士は鬼との戦いに明け暮れる日々…ましてや隊士たちをまとめ上げる柱が、病とはいえ五体満足で穏やかな最期を迎えた家族の死をきっかけに引退となれば、鬼に家族を殺された者が多い隊士たちから間違いなく反感を買う。
もしかすれば、圧倒的な強さを有する一方、繊細な心の持ち主だったのかもしれない。だからと言って、それで鬼狩りの職務を放棄するのは言語道断である。
「……ちなみに炎柱って、何歳だ?」
「そこまで詳しくないけど、10年以上前から柱やってるそうだよ?」
「何だよ、いい年したおっさんがだらしねぇ」
そうボヤきつつも、國広は戦意を滾らせる。
「ダラダラ言っても仕方ねぇ。國広遊撃隊、行くぞ!! 記念すべき初任務は、知らない内にやさぐれた上官の尻拭いだ!!!」
十文字槍を包んだ風呂敷を携え、箱を背負いながら意気込む國広。
國広は遊撃隊隊長として、鬼殺隊士として新たに始動するたのだった。
「ってか…実際聞くとやる気出ねぇな……」
「それ言うなよ、相棒……」
さて、ついに装備が支給されました。
國広のは隊服は黒い詰襟と洋袴とブーツ。機動性重視なので、羽織は着ません。
背中には色々な武器が入った霧雲杉の箱を背負ってます。デザインは炭治郎のと瓜二つです。
十文字槍は哀絶と同じ型の十文字槍で、穂先が黒刀になってます。長さも哀絶のと同じです。
天明は直刃の日輪刀が二振り。刀身がだいだい色である点を除けばかなりシンプルなデザイン。はっきり言って地味です。
隊服は天元と同じノースリーブとなっております。